リベラル勢力総結集で政権交代!(390)

《Ken Sway Kenと管理者の【緊急事態条項等、憲法改悪阻止】》
《【講演録】何も知らない自分を知る/大越健介(NHK記者主幹)》

 私は高校時代から野球をやっていまして、高校3年生の夏に甲子園まで後、ほんのちょっとのところで負けてしまいました。大学でも野球を続けたいと思い、1年浪人して東京6大学野球に加盟している東京大学に入学しました。まだ入学式も済んでいないのに、合格発表を見たその足で野球部に入部して、翌日から練習に出るという、そんな大学野球生活のスタートでした。東大野球部の党首としての成績は通算8勝7敗でした。はっきり言って東大は強くないので、4年間在籍して8勝したのは、なかなかのものだと言えるかもしれませんが、27敗となると微妙ですよね。3年生の時には大学野球部日本代表に選ばれました。アアメリカチームと7試合戦いまして、私の出番は4戦目、高校時代は行く事のできなかった甲子園球場での試合でした。ただ成績は、中継ぎで投げて打者2人に対して1アウトも取れませんでした。
 対戦相手にマーク・マグワイアという選手がいました。彼は後に大リーグでホームラン王となる等、日本でも、その名を知られたホームランバッターで、私は彼をアウトにできなかったのですが、レフト前ヒットに抑える事ができた唯一の男です。
 皆さんの日々従事しているカウンセリングの仕事は、人と相対して、話を訊いて、相手の本音や悩みを引き出すというものですよね。僕は記者として取材の仕事をしていますが、似たところがあると思っています。取材というのは、例えば事件が起きると記者が現場に行って、被害に遭った人達や家族、その関係者等の証言を集めて回らなければならず、人々にマイクを向けて話を聞きます。これは取材する方も辛いもので、事件の当事者達は心を閉ざしていることが多く、「構わないでくれ、うるさいな」という目で見られることも多いです。

 記者の仕事は、そうやって人からの蛇蝎の如く嫌われる事もあります。でも人間は、やはり、どこかで話したい、自分の思いを伝えたい生き物だと思います。だから彼等の言葉を待つ、それも大事な仕事なのです。私自身、2011年の東日本大震災の時は非常に辛い思いをしました。当時は「ニュースウオッチ9」という番組のキャスターで、あれだけの出来事が起きたのだから、どうしても現場に行きたいと思い、1ヵ月後位に福島県の南相馬市に行きました。津波の現場に行きましたが、津波によって根こそぎ一切なくなっていて、ひしゃげた鉄塔ぐらいしかなくなっていて、家も土台しか残っていなくて、それが、ずっと海の方まで続いていました。すると家を流された土台の辺りで、3・4人の親子連れが一生懸命、探し物をしている様子が目に留まりました。「何か、お探しですか」と声をかけたら、私と同い年くらいのご主人と思わしき方が、こちらをキッと見て「母を探しいてるのです」と言ったんです。「何か物を探しているのじゃないか」と思って声をかけた自分が、如何に想像力が欠如していたか、「自分はニュース番組のキャスターをしていながら、何も知らない人間なんだ」という事を思い知り、その後、被災地を肌で感じるために、番組が休みの日は、被災地に行く事を暫く続けました。石巻市の仮設住宅で、息子さんと娘さんを亡くされた御夫婦と出会いました。小学校5年生のお兄ちゃんの方は、御遺体が見つかったのですが、小学校3年生の娘さんの御遺体が、まだ見つかっておらず、発災の直後から、御母さんは仕事を辞めて娘さんを毎日、探していました。初めてお会いしたのが震災の年の秋頃で、それから1年以上が経た冬の終わり頃、もう一回その御母さんと再会したら「この頃、寒いと感じるようになりました」と言うのです。「私は今まで、なりふり構わず、とにかく骨の欠片でもいいから出てきてほしいという一心で娘を探して、どんなに気温が低くても寒いと思ったことが無かったのに、今は寒いと感じてしまっている。苦痛を感じている自分が許せないのです」と言って、初めて僕の前で涙を流されました。この時、僕は、人間の悲しみというのは一回のインパクトでは終わらない、津波のように形を変えて、状況を変えて、何度も何度も押し寄せるんだな、災害の残酷さとは、そういうところにあるのだと思いました。

<「記号」を超えて想像力を働かせる>

 人々は僕らを“マスコミ”という記号で見て、「マスコミ=うるさい人たち」とレッテルを貼り、僕達も人間たる自分よりも、マスコミという記号を大事にして仕事をして、結果を出そうとする、という局面があります。しかし同じ人間として心が共に震える、共振する、という局面も、これまで何度もありました。歌舞伎役者の市川海老蔵さんに主演映画についてのインタビューをしたとき、彼は最初どこか気乗りしない様子でしたが、インタビューが進み、亡くなられたお父様の團十郎さんの話になったら表情が生き生きとしてきて、「私は、どうやったら父に追いつけるか、その事ばかり考えています」と、非常に熱く語ってくれました。海老蔵さんには歌舞伎役者という記号、そして私にはインタビュアーという記号がありました。でも、お互いその記号を取り払って、仕事に生きようと日々煩悶としている人間と、その姿に心を打たれて話を聴いている人間、というように、私達は記号対記号の関係から、人間対人間で話をする関係に変わっていたのです。
 この経験を通して、相手を記号で見ることはしない、と心に念ずるようになりました。
 最近のニュースを見ていても、元高級官僚が犯した事件、高齢ドライバーによる事故等が報道されています。しかし、その人はいろんな顔、いろんな側面を持って生きてきたはずなのに、「元高級官僚」や「高齢ドライバー」と記号でくくってしまうと、それ以上は思考停止に陥って大事な何かを見落とす場合があるのではないでしょうか。
 ニュースはどうしても、短いコメントの中でその事件の特色を言い表さなければならないので、カテゴライズした方が分かり易いです。もちろんメディア側の人間がリテラシーを持つ事は大事ですが、受け手の皆さんがメディアやインターネット等の情報を咀嚼して、情報の先にあるものを想像する心の余白を持つことが、今の社会は大事なんじゃないかと思います。近頃「ひきこもり=犯罪予備軍」というような言説が氾濫しています。
 でも、そうした記号化に縛られた、固定化した考え方こそが危ないのではないかと警鐘を鳴らす方もいます。内閣府の調査では、100万人以上が、ひきこもりの状態にあると言われていますが、その内の約61%が40歳から64歳までです。病気になった方、リストラにあった方等、仕事を辞めざるを得なかった様々な事情があったと思います。
 40歳を過ぎて再就職といっても、なかなかできず、そうして、やむを得ず、ひきこもり状態になっている人達に、犯罪予備軍という記号を乗せてしまう事は危険だと思います。

 それはマスメディアの責任も大きいですが、インターネットがこれだけ発達して、個人による情報発信ができて、一人一人の発信は小さくてもそれが巨大な塊となって社会の同調圧力を形成するという新たな今の時代の状況の中では、各々がリテラシーを持って、情報を発信することの責任を感じることが大事です。「この人は、こういう人だ」という決めつけが入って思考停止になったら、その時点でコミュニケーションは終わりです。
 大事なのは、そこから先の想像力です。ニュースというのは全体像のほんの一部しか切り取りません。それで分かったつもりにならず、「何も知らない自分」を認識して、一人一人の心持ちになっていかないと、どんどん息苦しくて不自由な社会になってしまうと思います。一方、国際社会の動きに目を向けても、不穏なものを感じ取る事が屡々です。
 例えばヨーロッパにはEUという連合体があります。あの狭い土地の中で争いを続けてきた国々が、「これからは共存共栄しようじゃないか」と国家を超えた枠組みを作り、これまでは、うまくいっていました。EUに加盟している国同士は、自由に行き来ができるし、関税もかかりません。しかし中東からの難民問題をきっかけに、その空気がガラッと変わってしまいました。徐々にEUの中で不協和音が起こり、ヨーロッパの各地で自国第一主義が台頭していきます。人々の不満をかき立てるような事をポピュリズムと呼んでいますが、現在そのポピュリズムが暴走し始めているのかもしれません。
 トランプ大統領も、まさにポピュリストの一人と言われていますし、フランスで極右政党が国民の支持を得ているという事も、その一つだと思います。

<人間関係が引き寄せた首相就任の特ダネ>

 今までの取材で一番印象に残っているのは、政治記者として故・橋本龍太郎さんの担当になったときの事です。橋本さんの元へ通うようになり最初は、けんもほろろでしたが、半年くらいするとNHKさん、と呼んでもらえるようになり、その内NHKの大越さん、と呼んでもらえるようになり、そしてついにNHKという記号が取れて「大越くん」と僕自身を見てくれるようになりました。当時は自民党・社会党・新党さきがけという3党による連立政権で、社会党の村山富市さんが総理大臣を務めていました。そのときの自民党の総裁が橋本さんで、村山内閣では通産大臣でした。あるとき村山総理が辞意を固めたらしいという情報を得まして、そうなると「次に総理大臣になるのは自民党総裁の橋本さんだろう」という事で通産大臣室に裏を取りに行きました。普通は、なかなか会えないのですが、僕は何度も通っていて秘書官達とも面識があったので「どうしても大臣と一対一で会わせて欲しい」と頼みましたら、僕の気迫に押された秘書官が「わかった」と言って、会議中だった橋本さんを呼んで来てくれました。僕は橋本さんに「握手しましょう」と手を差し出し、握手をしながら「もう逃げませんね」と言いました。すると橋本さんも僕の本意に気づいて、「逃げないよ」と返してくれました。これはどういうことかというと、「若い頃に総裁候補に推されたけれども、何度か逃げた事があるのだよね」という話を橋本さんから聞いた事があったのです。
 それを踏まえての「逃げませんね」「逃げないよ」というやり取り、つまり「総理大臣の座に就くという道から逃げない」という裏を取った訳です。しかし橋本さんと僕の間でしか通じない、このやり取りを、どう原稿に書いていいのか分かりませんでした。「これだけじゃニュースにできないな」と思っていたら、そんな僕を見て橋本さんが「12時に官邸で僕と村山さんと武村さん(当時の新党さきがけ代表)の3人で会って今後のことを決める事になっている。もう話はできているから大丈夫だよ」と言ってくれました。それで直ぐデスクに電話をして「村山総理辞意固める、後任橋本通産大臣」というニュース速報が流れました。
 大特ダネです。それを見て慌てて他社のマスコミが通産大臣室に殺到しました。
 特ダネというのは結果ではなく、人間関係の過程によって導かれるものであって、橋本さんのところに通い続けて、いざという勝負時に「お前の仕事は分かっているよ」と言わんばかりに「逃げないよ」と言ってくれた、という事が僕にとっては大事なのです。「何度もお互いの顔を突き合わせて、記号という余計な鎧兜を脱いで話してこそ人間関係を築いていける」それが僕の一つの信念です。僕もいい年齢ですけれども「最後まで第一線に立つ人間として体を張って、心を張って、自分の言葉をかけて仕事を全うしたい」と思っています。
 ブロードキャストですから、多数に対して、できるだけ伝わるようにしますが、それは視聴者を記号として見るのではなくて、「一人一人に伝えるように話す-という気持ちでやる事によって、その結果多くの視聴者と繋がる事ができればいいな」と思っています。(基本文献-JAICO(産業カウンセリング)/推奨-産業カウンセラー:民守 正義)
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《カジノあかん!夢洲あぶない!ここで万博?だいじょうぶ?10.22市民集会》

◎日時:10月22日(火-祝日)13時30分~15時30分
◎場所:エルシアター(エルおおさか本館2F:大阪市中央区北浜東3-14)
 ●Osaka Metro(旧大阪市営地下鉄)谷町線・京阪天満橋2番出口より徒歩約670m)
◎主催:カジノあかん!夢洲あぶない!ここで万博?だいじょうぶ?10.22市民集会実行委員会(事務局:大阪市北区天神橋1丁目13-15おおさかグリーン5F)
 ●℡080-3836-3771(薮田)


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(民守 正義)