安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(70)
《【闇のTPP】何故、急ぐ?TPP承認案と関連法案を閣議決定》
政府は8日、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認案と関連法案を閣議決定した。
同日中に国会に提出し、今国会での協定承認と法案成立を目指す。提出する法案は、農林水産関連の4法案と、著作権法改正案など協定に合わせて国内制度を変える7法案の改正案をまとめた一括法案。農林水産関連では、畜産農家の赤字補填割合を引き上げるなど農家への影響緩和策を盛り込んだ。著作権は保護期間を従来の50年から70年に延長する。
国会審議では衆参両院に特別委員会を設置し、4月に衆院で審議入りする見通し。
野党は農産物の大半の関税が撤廃となることを「国会決議違反だ(自民党の一昨年総選挙の公約違反でもある)」と批判している。安倍政権は7月の参院選前に承認手続きを終え、選挙での争点化を避けたい考えだ。TPP協定は12カ国が参加し、関税をなくす品目の割合を示す自由化率が95%と高いのが特徴だ。内訳は、工業品は最終的に100%、農林水産品では82%。特に野菜や果物、魚類等は将来、関税がなくなる。特に日本が聖域として位置づけていたコメや牛・豚肉、乳製品など5項目は結局、大譲歩して大幅に関税が下がる。牛肉は現行38.5%だが16年目に9%に、豚肉も従価税は10年目でゼロ、従量税も低い価格帯にかかっている1キログラム482円の関税が10年目に50円になる。特にコメは段階的に関税引き下げで、当面は関税維持したものの、関税ゼロの抜け穴特別輸入枠を課せられ実質的打撃は大きい。外国産の安い農産物が大量に入ってくる可能性が高いことに加え、消費者には安価な外国産農産物が提供されるようだが「遺伝子組み換え食品」は非表示にされるなど「安全な食品の選択」も含めて考えると、総じて消費者にも農家にも恩恵より打撃が大きい。一方、日本が攻め分野と言われた米国向け自動車は、乗用車は現行2.5%関税が25年目、トラックは25%が30年目に各々、先延ばし撤廃され「こんな先では事実上、撤廃されていないと同様」と批判意見が上がっている。また自動車部品は「米国向け87%を即時撤廃」となったが、自動車部品には「原産地規則」があり、TPP域内での部品生産でないと「即時撤廃」とならない。ところが日本の自動車部品製造はTPP域外の中国等が多く「即時撤廃」の実質効果は55%程度ではと言われている。(日本自動車工業会)そこでTPP効果額が重要な判断指標となるが、政府はTPP全体でGDPの押し上げ効果を14兆円との試算額を示しているが、政府はTPP交渉に参加する前の2013年3月で、この時のGDPの押し上げ効果は3.2兆円と示しており随分、開きがある。これには2013年には「農林水産物生産額3兆円減少」が、今回試算では1300億~2100億円と大幅に縮小見做し。更に先述した「関税ゼロの抜け穴特別輸入枠(7万トン以上)」によるコメの生産減少額がゼロ、安い輸入品が入る牛肉の生産減少率もゼロ、更に輸入牛肉の8割、輸入豚肉の7割が「調製品」だが、こうした「調製品」も影響試算に含まれていないことが明らかになった。まだある。政府が影響試算の対象とした農産物は19品目(産出総額約5兆873億円)だけで、それ以外の農産物(同約3兆4875億円)の生産減少額は試算に含めておらず、政府は試算から除いたものは「影響が小さかった」と言い訳するが、生産当事者=JA長野中央会は19品目に含まれないブドウ等7品目で1県だけでも約75億円も生産額が減少すると試算し反論。要は無茶苦茶な粉飾計算で、これで「TPPでGDPはアベノミクス目標2020年600兆円が達成される」と詐欺セールスマンのように大言壮語している。では何故、安倍政権は今国会でのTPP批准承認と同関連法案の成立に急ぐのか。実際、仮に日本が国会承認を終えても直ちに協定の発効には至らない。
発効には参加国全てが2年以内に国内手続きを終えるか、域内のGDP85%以上を占める6カ国以上の国内承認が条件。つまり必然的に12カ国のGDPの約8割を占める日米の承認が必須となる。しかも、その米国は大統領選で民主党有力候補ヒラリーも共和党有力候補トランプとも「TPP反対」を表明している。その意味でも国内農林・水産業者の反対を押し切って、かつ先述した総選挙公約違反を犯しても今国会早期TPP批准・同関連法案成立を目指すのは、菅官房長官の表向きの「TPPはアベノミクスの成長戦略の切り札」は真っ赤なウソ(むしろ「TPPは日本経済を一層、閉塞させる」との経済学者の大勢意見)で、安倍(経済音痴)総理の真相心理は①参議院選挙前に決着を図り、選挙争点逸らしを狙いたい②既に米国オバマ大統領から「TPP開国」を迫られ承諾した事がある。つまり「安倍」は相変わらず「集団的自衛権-戦争法・米国武器購入」と同様、売国的に日本の国益を売り渡しても「日米同盟基軸外交優先」の日本会議的外交基本政策を微動だに動かす気はないのである。しかし、この「安倍」計算には2つの要素の計算漏れがある。一つは米国大統領選挙で民主党後補ヒラリーまで反対を表明した事でTPP発効自体、漂流化する事が十分に考えられる。現に、それに近い事を自民党‐稲田朋美議員が「米国のTPP批准自体、2~3年はかかるかもしれない」と言っている。もう一つの計算漏れは「参議院選挙争点逸らし」といっても4月衆議院審議入りで事実上、選挙ムードに入っており、かつ「TPP交渉差止・違憲訴訟:第4回口頭弁論」が同じく4月に予定されおり、この巨大原告団の取り組みも強化され、むしろバッドタイミングと言える。この姑息な「安倍計算」が良と出るか否と出るか、その重要な要素は「TPP交渉差止・違憲訴訟の会」をはじめ、我々リベラル国民とTPP反対野党の有機的連携の下「TPPの売国的欺瞞性」を暴き、逆に参議院選挙に有利な争点化に持ち込む事が最も有効戦略・戦術だ。(文責:管理者-民守 正義)
《【虚像のアホノミクス1】色あせるアベノミクスへの期待、エコノミストが辛口採点》
本ブログ「リベラル広場」では「アベノミクスは経済政策の体もなしていない」との基本論評の下にシリーズで解説・分析を記載してきたが、同じ「アベノミクス批判」でもリベラル評論家によって批判の論拠・論理が多少、異なっている。従って本章では他のエコノミストのアベノミクス批評を紹介し、読者の参考に資したい。
[ブルームバーグ]:一進一退を続ける日本経済の再生にアベノミクスは、あまり大きな成果を上げていない--。ブルームバーグ・ニュースが実施したエコノミスト調査でこんな評価が出た。調査は3年間に亘る「3本の矢」による経済政策アベノミクスの効果について、エコノミスト23人を対象に2月26日から3月4日まで実施した。それによるとアベノミクスの総合評価は10点満点で4.6点となった。アベノミクスの下で日本銀行は量的質的緩和を導入し、円相場は大幅に下落。第2次安倍政権が発足した2012年の終盤から昨年にかけて株価も大幅に上昇した。しかし景気は同じようには回復せず、14年の4-6月期と7-9月期は2四半期連続してマイナス成長を記録、その後も実質国内総生産(GDP)は一進一退を繰り返している。持続的成長のためには構造改革が必要というのが多くのエコノミストの見方で安倍政権が、これを実行できるかに焦点は移っている。安倍首相の任期は2018年まで。既に道半ばを過ぎ、労働市場改革や指導的役割に就く女性の増加など大胆な改革の実現に残された時間は少なくなってきている。
<下振れ圧力>
安倍晋三首相は2013年9月にニューヨーク証券取引所で「ジャパン・イズ・バック」「バイ・マイ・アベノミクス」と訴えたが、背を向け始めている海外投資家もいる。米アトランタに拠点を置き425億ドルを運用するリッジワース・インベストメンツのシニアストラテジスト、アラン・ゲイル氏は「日本の物語は多くの人が期待していたようには展開していないので、先行きは日本市場に下押し圧力がかかるだろう」と指摘する。ゲイル氏は日本を含めた海外投資を減らしたという。「日本人はいろいろ試みているが、牽引力にはなっていないようだ。聞こえてくるコメントの大部分は、潜在力を解き放つために日本は構造改革に本格的に取り組まなければならないという考えの周辺を漂っている」と話す。
<売り越し>
TOPIXは今年に入って12%下落、日本の株式売買の7割を占める海外投資家は8週間連続で、ネットで売り越した。2013年に海外投資家が15兆円を日本の株式市場につぎ込んだのとは対照的だ。ブルームバーグの調査では、アベノミクスの3本の矢の内、成長戦略のための構造改革に取り組むという3本目の矢により手厳しい評価が下った。持続可能な成長軌道に日本経済を乗せるという項目の評価は平均4.1点、構造改革で将来の基盤をつくるという項目の評価は4.0点だった。これに対しデフレマインドの払拭は5.1点だった。
日本経済新聞とテレビ東京が2月26から28日まで実施した世論調査でも、アベノミクスを「評価しない」が50%と初めて5割を超え「評価する」は31%に留まった。
<大きく進まぬ構造改革>
信州大学の真壁昭夫教授は、アベノミクスの問題点として過度な金融政策への依存を挙げる。今後、金融機関の収益懸念が高まる可能性やマイナス金利で消費者心理が悪化する恐れもあり「デフレ経済からの脱却に更なる時間がかかることに繋がる可能性がある」とみる。また「株価が上昇している間に財政再建、規制緩和等の構造改革が大きく進まなかった事も中長期的な成長基盤弱体化の一要因になる恐れがある」という。アベノミクスで消費者物価指数の下落基調には歯止めがかかり上昇基調に転じた。生鮮食品やエネルギーを除けばインフレ率は0.7%に達している。最近までは円安は輸出企業に記録的な利益をもたらした。とはいえアベノミクスが狙い通りに効果を発揮していないことを示す事実には事欠かない。
* 厚生労働省によると賞与や残業手当を含めた2015年の実質賃金は4年連続で減少した。
* 内閣府によると2014年4月の消費税増税後、民間消費は2年連続で減少した。
* 国際通貨基金(IMF)によると、日本の1人当たりGDPは2012年から2015年までの3年間で2.8%増加したが、その前の3年間の6.4%増に及ばない。
<ゲームの終わり>
バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「そろそろ『期待』だけではなく、実体経済の潜在的な成長力に働き掛ける政策を明示してほしい」という。4年目に入ったアベノミクスには衆院議員の任期に相当する期間が経過しつつあることを意味すると指摘し「労働市場改革、法人税率の更なる引き下げ、幅広い規制緩和等、まだまだ重要課題は残されている」とみている。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは、「最近の安倍首相からは、岩盤規制の改革に向けた意欲を失いつつあるようにみえる。規制改革が歩みを止めてしまったら、アベノミクスはジ・エンドである」という。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは25歳になる息子さんの人生は、これまで全てがデフレだったことに触れ「3年くらい、やったくらいでは意識は変わらないと思う。人生を否定することになるので」とコメントした。(MSN)
《【虚像のアホノミクス2】10~12月期GDP改定値、年率1.1%減に上方修正も株価は小幅下落》
<10~12月期GDP改定値、年率1.1%減に上方修正>
内閣府が8日発表した2015年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%減、年率換算では1.1%減で、これは2月15日公表の速報値(前期比0.4%減、年率1.4%減)から上方修正したものにはなっている。しかし「アベノミクス目標2020年名目GDP600兆円」達成には上方修正と言えどもマイナス修正では到底、無理。エエ加減、安倍(経済音痴)総理も「アベノミクスは間違っていた」と率直に認めるべきだ。そこからでないと「デフレ不況から脱却」政策見直しの入り口にも立てない。
QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値は前期比0.4%減、年率1.4%減となっており、速報値から横ばいになると見込まれていた。生活実感に近い名目GDPは前期比0.2%減(速報値は0.3%減)、年率では0.9%減(1.2%減)だった。実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は0.9%減(0.8%減)、住宅投資は1.2%減(1.2%減)、設備投資は1.5%増(1.4%増)、公共投資は3.4%減(2.7%減)。民間在庫の寄与度はマイナス0.0ポイント(マイナス0.1ポイント)と設備投資を除いて全てマイナス。実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス0.4ポイント(マイナス0.5ポイント)だった他、輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.1ポイント(プラス0.1ポイント)で、総じて政府の「デフレ不況から脱却した(しつつある)」は到底、言えない。
なお総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてプラス1.5%(プラス1.5%)だった。
<東証寄り付き、小幅続落:円高を嫌気、GDP改定値は反応限定>
8日前場寄り付きの東京株式市場で日経平均株価は小幅続落し、前日に比べ20円ほど安い1万6800円台後半で推移している。外国為替市場で円相場が1ドル=113円台前半で、やや円高・ドル安基調に推移し、輸出採算等の悪化等による影響を懸念した売りに押されている。自動車株やゴム株、非鉄株などの下げが目立つ。JPX日経インデックス400と東証株価指数(TOPIX)も軟調に推移している。上記前章で述べた「昨年10~12月期国内総生産(GDP)改定値:実質年率1.1%減‐上方修正」は、修正幅が小さく市場の反応は限定的だった。(日経/管理者部分編集)
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政治家に放送法の遵守を求める視聴者の会: 岸井さん応援署名に続く第二弾!
「【高市総務大臣「電波停止」発言に抗議する放送人の緊急アピール】を応援します」署名に賛同を!→https://goo.gl/TNskKX
2/29にTBSの岸井さん・金平さんはじめ6人のジャーナリスト達が高市総務大臣の停波発言に抗議する記者会見を行いました。現役のキャスター達が、こうした会見をするのは、非常に勇気あることだと思います。これで他のジャーナリスト達も後に続くのか、政権のメディア圧力は異常だという声を大きくしていけるのかが今、問われています。ただ残念なことに、この会見を伝えるテレビニュースの多くは、短いものでした。報道ステーションもNEWS23も、短く伝えてコメントもありませんでした。これは視聴者が応援するしかありません。署名という目に見える形で、テレビ局に「高市発言はおかしい」という声をつきつけましょう。電波は、放送は、メディアは国民のものです。政府や、大臣や、総務省のものではありません。
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※2/29の会見で、岸井さん応援署名を岸井さんご本人が紹介してくれました!署名用紙も手に持って。その部分を書き起こしましたのでご覧ください↓https://goo.gl/O7blS
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◎活動のご案内と寄付のお願い
*詳しくは【サイト/[島ぐるみ会議]http://shimagurumi.org/】をご覧ください。
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パキスタンでの戦争やテロによって教育を受けられなくなったナビラさんの兄妹たちが、教育設備の充実したペシャワールの「Smart School等」で寄宿舎生活により教育を受けることができるよう「ナビラ募金」を起ち上げ、早急な支援を実施していくことといたしました。年間で二百万円ほどの資金が必要です。募金先は、三菱東京UFJ銀行赤坂見附支店、普通預金口座0280580「一般社団法人現代イスラム研究センターナビラ募金」。
問い合わせは当センター☎042(426)8280までお願いいたします。多くの皆様にご賛同頂き、ご協力を賜りたく思います。[一般社団法人 現代イスラム研究センター]
*なお「現代イスラムセンター」理事長 宮田律さんは、「リベラル広場」にも投稿していただき、イスラム諸国の平和立国としての日本の価値と非武装・非軍事援助の重要性を「戦争関連法」反対の中で力説しています。
(民守 正義)
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