リベラル勢力総結集で政権交代!(228)

《Ken Sway Kenと管理者の【緊急事態条項等、憲法改悪阻止】》
《【学生貧困化】ヤミ金化する奨学金/大内裕和-中京大学国際教養学部教授》

 私も大学生時代に奨学金を利用していました。1967年生まれなので入学は約30年前です。
 当時、奨学金を利用していたのは全体の2割弱でした。改めて奨学金問題に注目したのは9年前の2010年7月です。札幌の市民グループ「こどけん」(札幌市子どもの権利条例市民会議)で講演した際、非正規の先生だけでなく、正規の先生も貧しいという話を聞きました。
 どうしてかと聞くと「最近の若い先生は奨学金を返しているから」と言うのです。
 当時は松山大学(愛媛県)に勤務していました。近所にある国立の愛媛大学でも教職課程の科目を教えていました。そこで愛媛大学の学生にアンケートを取ったところ、奨学金の月額が8万・10万・12万円という学生が大量にいて、しかも100人の受講生の内、半分以上が利用している事が分かりました。3回目の講義の時、90分の講義を60分で打ち切って討論しました。学生達は「不安で仕方がありません」と言いながらも「頑張ります」。
 でも頑張っても無理な話ですよね。で、なんとかしたいなら「会を作りなさい」と言いました。こうして「愛媛大学-学費と奨学金を考える会」が授業中に結成されました。
 会では私の講演や、奨学金についての学習会等、様々な活動をしました。
 これが私の現在の活動の原点です。11年4月に愛知県の中京大学に移りました。
 愛媛県は一人当りの県民所得が47都道府県中で下位に入る。対する愛知県は一人当りの県民所得が東京、神奈川に次いで3番目か、東京に次いで2番目の豊かな県です。
 同じように奨学金の話をしても「噛み合わないかな」という不安がありました。
 しかし、その予想は簡単に覆りました。奨学金を多数の学生が借りているという点では、全国どこも同じだったのです。11年11月23日、「教育の機会均等を作る『奨学金』制度の実現を目指すシンポジウム」に参加しました。そのことが5日後の『東京新聞』に大きく取り上げられてから今日に至るまで、マスコミの取材を受けない週は今日まで一度もありません。
 それは奨学金問題が単なる制度の問題ではなく、日本社会の将来を決定するほどの重要な問題であることにメディアが、気がついたからだと思います。
 日本の奨学金制度の大半を占めているのは日本学生支援機構の奨学金です。
 日本学生支援機構の奨学金は、第1種(無利子)と第2種(有利子)の2種類あります。
 日本学生支援機構の前身、日本育英会の奨学金は全て無利子でした。
 35年前の1984年に日本育英会法が「改正」され、初めて有利子となりました。
 当時は「奨学金に利子がつくなんて何事だ」という反対運動が起きましたが、それを押し切って当時の政府与党(中曽根康弘政権)が、有利子枠を導入しました。
 反対があったので「育英奨学事業は、無利子貸与制度を根幹として、その充実、改善に努めると共に、有利子貸与制度は、その補完措置とし、財政が好転した場合には廃止等を含めて検討する」という付帯決議がつきました。この時点では無利子中心でしたが、この付帯決議は守られませんでした。政府は大学の学費を引き上げる一方、99年に財政投融資と財政投融資機関の資金で運用する有利子貸与制度をつくり、一般財源の無利子枠は拡大せずに、有利子枠のみ、その後の10年間で約10倍に拡大させました。

 2007年以降は民間資金の導入も始まりました。民間資金、銀行・証券会社、金融機関です。金融機関が奨学金という名前なのに金を貸し出して莫大な利益を上げていることを借りている本人・保護者も学校関係者も十分に分からずにきました。無利子貸与の希望者は近年、毎年増加していますが、枠が少ないために多くが不採用になってしまいます。
 奨学金は本人の成績と親の年収で基準が設けられていますが、その基準を満たしていても通りません。枠が少ないからです。更に小中高校の教員が返済を免除される制度は1998年に既に廃止されており、2004年には日本育英会自体が廃止され、独立行政法人日本学生支援機構となり、その時大学等の研究職も返済免除職ではなくなりました。
 延滞金発生後の支払いでは、お金は先ず延滞金の支払いに充てられ、次に利息、最後に元本です。だから元本がなかなか減らせない。元本が払えなければ半永久的に延滞金を支払い続けることになります。60代になっても学部時代の奨学金が終わっていない人から電話相談を受けたことがあります。聞いてみると、既に借りたお金の5倍以上払っているのですよ。
 延滞金ばっかり払っているから元金返済に進まない。酷い話ですね。「借りたものを返すのは当たり前」じゃないですよ。「借りたお金の5倍以上を払っても終わらないことがあるようなシステムを何とかしろ」と言っています。重大なのは、この延滞金と利子がどこにいっているかです。日本学生支援機構は「一生懸命返しなさい」「これから利用する学生の原資になる」と。ウソです。原資にするなら順番は元本からでいいはずです。
 なんで延滞金にしたのか。それは延滞金と利子で儲かる所に便宜を図っているからです。
 儲かる所とは債権回収専門会社と金融機関です。2014年の利息収入は378億円、延滞金収入41億円。これらのお金は経常収益ですから元金・原資とは無関係のところにいっています。
 この行先は銀行と債権回収専門会社です。10年で約1兆円あって貸付残高未払いが23億円で12年度の債権回収を担当した日立キャピタル債権回収会社は21億円以上回収していて、1億7826万円手数料として受け取っています。ですから現在の奨学金制度は奨学金事業ではなく「金融事業」で、かつ若者を食い物にする「貧困ビジネス」であると考えています。
 一昨年に早稲田大学で奨学金をテーマに講義をしましたが、あの大学まで首都圏から通う学生が7割になっていると聞いてびっくりしました。
 約30年前に私が入試を受けた際、試験会場では東北弁、九州弁、関西弁が飛び交っていました。つまり30年前は「全国大学」だった。しかし今は完全に首都圏の大学。
 何故か。地方から仕送りする事が極めて困難になっているからです。「そんなに借金を抱えるくらいなら、無理して大学に行かずに高卒で働けばいい」と主張される方もいます。
 確かに1980~90年代までは、高卒でも就職はかなりの程度可能でした。

 しかし、その後、新規高卒者の求人数は激減しています。大学卒業後の就職難もあることは皆さんご承知の通りです。大学生の就職率は、90年前後の約90%から、2000年前後には約60%に下がりました。「最近は人手不足で求人が増えたからいいじゃない」と思われるかもしれませんが、今でも大卒正社員の3年以内の離職率は約3割です。
 つまり就職率が99%であっても、3年後には約3割が辞めています。99%なんていう瞬間風速に騙されてはいけません。だいたい、あんな有名な広告代理店(電通)が女性の優秀な社員を1年目で過労自殺させるような労働現場がある訳ですから、雇用状況が改善したとは、とっても言えない。だから奨学金は、わざと返さないのじゃなくて、返そうと思っても返せないのです。平日だと1日数千件の電話が日本学生支援機構に架っています。
 おそらく多くが返せないという悲鳴だと思います。滞納者33万人、滞納額2660億円、ブラックリスト化も1万人を超えました。支払い督促も激増です。給与の差し押さえや、あるいは預貯金の差し押さえも行なわれています。つまり今日のテーマは奨学金の善し悪しではなくて、奨学金が奨学金の役割を果たしていないということです。
 具体的には①適格者が無利子奨学金を得ていない。②卒業後の返還が困難で卒業後に結婚、出産、子育てができない。③将来の返済不安から奨学金を借りることを抑制する。
 奨学金を名乗るのであれば、それに相応しい制度にせよと提案したい。
 お金のない学生は、大学=バイトのようなバイト漬け生活を強いられます。
 ブラックバイト問題です。自分が作った言葉が、こんなに流行るのは初めての事です。
 ブラックバイトとは、学生であることを尊重しないアルバイトのこと。
 フリーターの増加や非正規雇用労働の基幹化が進む中で登場しました。
 低賃金であるにも関わらず、正規雇用並みの義務やノルマを課せられたり、学生生活に支障をきたすほどの重労働を強いられることが多い。この定義に従って全国の大学生約5000人に調査を行ない、約7割がブラックバイトを経験しているというデータを出しました。
 それに基づいて書いたのが私と今野晴貴さんの共著『ブラックバイト』です。

 それから私が書いた『ブラックバイトに騙されるな!』という本も、ぜひ読んで頂きたい。家庭教師を辞めると言ったら損害賠償50万円とか、コンビニで働いていたら売上げノルマを課せられて、ノルマを達成しなければすべてを買いとらされるとかね。そういうことが日常化しています。(管理者:管理者に寄せられる「労働相談」も若者の世間知らずに付け込んだ「不当な労働契約」が最も多い。)一つ目は貧困の深刻さです。最近変わったなと思うのは学食です。7年前、内の大学の学食は混んでいました。それが今年はガラガラです。
 学食で一番安いのは300円。学生が1日に使えるお金が790円だとすると、昼300円払うのは無理です。ゼミ学生の内3~4人は「あんな高いとこ行ったことない」と言っていました。
 元々、学食は外の食堂よりも安く設定している。学生に優しい。
 量も多くて。それなのに、そこに届かない学生がずっと多いです。昔の学生はバイトの収入を主として趣味や旅行、サークル等に使っていた。今は主として生活費です。
 稼がなければ大学生活が続けられない。労働市場では、非正規雇用が激増しています。
 前は非正規がいなかったから学生バイトは貴重でした。今はフリーターがいっぱいいるし、フリーター限定のバイトも多い。大学生が「今日は授業がある」「試験勉強するから休む」と言うと、「お前使えねーな」と言われてしまう。私達が2013年3月に奨学金問題対策全国会議を結成するまでは、借りたお金を返せないなんて最近の若者はなってないという趣旨の報道が多かったのですけど、運動を開始してからは「若者がなってないのではなく奨学金制度の側に問題がある、有利子や延滞金、そして若者の貧困そのものに問題がある」という報道が増えました。14年には早くも制度の改善が進みました。延滞金の賦課率が10%から5%に削減され、返還猶予期限が5年から10年に延長されました。
 それ以外にも、いろんな制度が変わりました。更に無利子が増加しました。
 まだまだ十分とは言えませんが、悪くなりっ放しだった流れを変えたという点では、とても重要な転換点だと考えています。猶予期限の5年から10年への延長は改善ですが、10年後には年収が幾らでも返さなくてはいけない点はダメですね。期限ではなく、本人の年収を基準にして猶予・減額・免除を認めるべきです。延滞金5%の引き下げも改善ですが、返せない人間に更にペナルティを科す延滞金制度そのものを廃止すべきです。
 また個人保証の廃止と、機関保証を利用する場合の保証料の引き下げも必要です。
 返済に困ったら法的整理が有効です。法的整理、つまり自己破産、個人再生ですね。
 最近、個人再生で、ある学生の奨学金返済額を600万円から120万円に圧縮しました。

 あるいは700万円の奨学金を自己破産でゼロにすることもやりました。700万円がゼロになった学生は、これで人生が変わるといって泣いていました。給付型奨学金の拡充と奨学金制度全体の改善が必要です。多少よくなったとはいえ、未だに有利子の方が多い。
 有利子を廃止し、最終的には給付型のみの世界標準の奨学金制度にすべきだと考えます。
 安倍政権は「子供の貧困対策大綱」に、欺瞞的にも、この給付型奨学金を導入しませんでした。そこで私達は地方自治体での改善を訴えました。この間、「今年から孫の奨学金を年金で払い始めました」という84歳の女性から手紙がありました。「後19年、生きる自信はありません、先生何とかしてください」という趣旨の内容でした。
 こういう手紙が結構、来ます。祖父母が孫の奨学金返済を支えている。だから、この問題は若者だけの問題ではない。親世代、祖父母世代も関係するという訴え方をしました。
 その御蔭で給付型奨学金の導入を求める署名が予想を超えて300万筆も集まりました。
 16年3月、私はこの署名を持って生まれて初めて首相官邸に行き、生まれて初めて文部科学大臣と直接やり取りをしました。この頃から新聞で、「安倍政権給付型奨学金導入か」という記事が出るようになりましたから、運動の成果であることは明らかです。
 その後、院内集会を開催しアピールも出しました。同年末、政府与党が政府レベルでの給付型奨学金の導入を決めました。17年度から先行実施、18年度から本格導入しました。
 これからの具体的な取り組みについて話します。先ず「奨学金問題対策全国会議」、労働者福祉中央協議会(中央労福協)、「愛知県-学費と奨学金を考える会のホームページ、フェイスブック」にアクセスしてください。奨学金やブラックバイトは、事の重要性に比べて、まだまだ知られてはいません。米国の政治家、バーナード・サンダース氏の事は全米の大学生が知っています。私の活動が、そうならなくてはダメです。奨学金の問題を言う人間が日本中に知られなければ変わりません。非常に多くの若者が負債を抱えています。
 今日の話に興味を持ったら、私のフェイスブックにも友達申請してください。
 承認します。ツイッターもフォローしてください。次に奨学金やブラックバイトについて、自分の言葉で友達や知り合いに伝える事です。今日の講演について新聞に投書してください。ブログ、ツイッター、フェイスブック、ライン等を活用すると若い層との接点が作りやすいのです。そして学校単位、地域単位でブラックバイト、奨学金、労働法の学習会や講演会をやる事が大事です。最後に大学や地域単位でネットワークを作る事です。
 現在の貸与型奨学金は1種と2種合わせて年間1.1兆円です。これを全部給付型に変えましょう。世帯の純金融資産が1億円以上の富裕層は、2000年の83.5万世帯171兆円から、15年には121.7万世帯272兆円に増えています。年平均6兆円以上増加しているのです。私は、これを奨学金の財源にしたい。日本の富裕層は激増中です。

 富裕層の富の急増をちょっと減らすだけで、全部給付型は簡単に実現します。
 企業の内部留保も446兆円と過去最高を更新しております。本人ではなく生まれた家庭にお金がないという理由だけで進学できないとか、勉強することが妨げられるというのはおかしいし、そんな敗戦直後の「社会常識」は消え去るべき。だから教育の理想について、いろいろな考え方があっても、全ての人が学べる社会というのが共通の要求になり得るだろうと思います。そこで奨学金制度の改善と授業料の引き下げが重要です。
 若者が希望を持てる未来を考えた時に、奨学金債務そのものの帳消しが求められます。
「奨学金を借りた人に『借りた金を返さないのは甘えだ』と批判する一方で、親に教育費を払ってもらって奨学金を借りないで済んでいる人を『甘え』とは批判しない『家族主義』は、『生まれた家の経済力による格差』を容認する。生まれ持った経済力による教育格差を是正するのが奨学金の本来の役割だ」とツイッターで書いたら、多くの反応がありました。
 次の日、大学へ行くと、授業を聞いていない学生からも「先生、バズったね」(大きな話題になったね)と言われました。学生に大きな反響があったということです。
 財源は富裕層の課税や、金融取引課税、累進課税の強化、法人税の強化など応能負担に基づく税制で賄えます。これをやれば奨学金の完全給付化や大学学費引き下げが可能です。
 奨学金の問題は、若年層の構造的貧困の問題です。まさに「格差と貧困のスパイラル」をどうするか。それは皆さんの、そして地域の将来に関わっている。
 力を合わせて一つでも解決をして頂きたい。(管理者:部分編集)

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《輝け憲法!平和といのちと人権を!:おおさか総がかり集会》

◎スペシャルゲスト:「安倍政権大失政の6年」
 ●講師:二宮 厚美さん(神戸大学名誉教授)
◎ミニコンサート:長野たかし&森川あやこ
◎主催:おおさか総がかり行動実行委員会
 ●連絡先:大阪憲法会議・共同センター(電話06-6352-2923)
      戦争をさせない1000人委員会・大阪(電話06-6351-0793)
      しないさせない戦争協力関西ネットワーク(電話06-7777-4935【SORA】)
◎日時:2019年5月3日(金)午後1時30分開会
◎場所:扇町公園(Osaka Metro(旧大阪市営地下鉄)堺筋線「扇町駅」2号出口すぐ
         /JR環状線「天満」駅西へ徒歩100ⅿ)


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(民守 正義)