安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(61)
《【作家・辺見庸さんと会って:随想】この国はどこへ行こうとしているのか》
<美談で隠す「戦争」体験:従順、調和重視…国民性利用する政府>
東京郊外にある料理店で待っていると、窓越しに作家、辺見庸さんの姿が見えた。前に会ってから3年。脳出血による麻痺で、右手をみぞおちの辺りに持ち上げたままの姿勢は変わっていないが、足元を見ながら歩くリズムは幾分遅くなったようだ。
辺見さんとのやり取りは常に刺激に満ちている。だから席に着くなり「震災から間もなく5年になりますが、それに絡めたお話を」とお願いした。辺見さんも余計な前置きはしない。「僕がずっと読み込んできた戦争の話と震災を短絡させるのは何なのだけど」と、直ぐに語り始めた。「3・11を単なる自然災害と決めつけてしまうのはいけないんじゃないかな。東日本大震災は戦争経験に近いものだと思う。それまで戦後の日常で露出してこなかったもの、剥き出しになってはいけないものが、はしなくも出てきてしまった瞬間というのか。例えばカメラマンが、どう隠そうにも、フレームの端々に出てしまう死体の映像がそうだよね」 5年前。大津波に襲われた直後の東北沿岸部は爆撃を受けたような状態だった。辺見さんは続ける。「米軍の支援活動や、アメリカの駐日大使や天皇が被災者を慰問している映像を見ていると、震災は戦時的なイメージととらえたほうが分かりやすい。まさに戦争状況なのです」 辺見さんが生まれ育った宮城・石巻の町の風景も大津波が奪った。メディアは定点観測で時の流れを表そうとするが、辺見さんは上辺だけの表現を嫌う。「テレビのクルーも独創的な特集を作ろうなんて発想ないよ。何周年って言っては被災地に入って、定食屋の弁当みたいに同じ物を作っている」。そんな考えもあり、震災を軽々しく語ってこなかった。東京電力福島第1原発事故についても、こう見ている。
「チャイナシンドローム(炉心溶融)、いや、核爆発のイメージだね。まさに戦時だと思うけど、政府はこうした空気をうまく利用している。安倍政権が憲法9条の改正(改悪)よりも先に、憲法に緊急事態条項が必要だと言い出したのは、“例外状態”を作り基本的人権を制限したいから。まさに3・11と今後、起きるだろう巨大地震を、単なる災害ではなく戦争と同等に捉え、言論統制を恒常化しようとしている。一方、民衆は強い指導者を求めようとする。現政権は大衆の移り気と大勢順応的メディアの習性を熟知している。戦後民主主義のメッキが剥がれて、またぞろ全体主義的な実相が剥き出しになってきている。
北朝鮮がもし日本にミサイルでもブッ飛ばせば、愛国心が一気に強まり、日本の政治状況は今よりもっと翼賛化するでしょう」。政府は震災をテコに、あるいは利用して、この国を変えようとしていると言うのだろうか。話が一段落したころ、辺見さんはさりげない感じで切り出した。「僕もあと1、2年の命だと思うから……」 2004年に脳出血で倒れ、05年には大腸癌が見つかり、外科手術や放射線治療を受けてきた。「これが最後だ」という思いから出た言葉なのか。病と闘いながら00年代から「ファシズム」という言葉を鍵に、日本の状況を炙り出してきた。今月19日に亡くなったイタリアの作家、ウンベルト・エーコ氏らを引用しながら説く現代のファシズムを次のように短く要約してみた。
第二次大戦で独伊の独裁者が突き動かした全体主義のような、あからさまな抑圧ではない。責任を負う中枢も本質もハッキリせず、市民一人一人の内面に癖や処世という形で蔓延る。メディアの自粛や、権威や他者を異常に気にする忖度、奇妙なムード創りが、その典型−−。 辺見さんは震災後の日本に、それを感じている。復興祈念公園の整備を計画している宮城県石巻市の南浜地区。大津波は沿岸部を破壊し尽くした。「みんなで『花は咲く』を歌って、なんとなく、まとまる気持ち悪さ。この前、日本人を称えるNHKの番組を見ていたら『ニッポン凄い』も、ここまで来たかという感があったね。援助物資を受け取る時に列を乱さない日本人は美しいと言うけれど、僕は薄気味悪い。どうして、もっと言挙げしたり、怒ったり、嘆き悲しんだりしないのかって。遺体から指輪を持ち去った話なんてのは隠されて美談ばかり並べて。日本人には大きな出来事の背景に聖なるものを感じてしまう癖があるのじゃないか。冗談を言ったり、場違いな事をしたりしてはいけない雰囲気が凄く嫌だね」 「サムライ」や「なでしこ」といったイメージをかぶせ、正直で勤勉で調和を重んじる「美しい日本」を自ら謳う社会。日本人の持ち味と言われる従順、恥の感覚を殊更、強調するムードが、辺見さんは嫌いなのだ。「原発事故の責任をアヤフヤにしたまま『花は咲く』で覆い隠すかのように原発も武器も輸出する。3・11の時に予感した以上のことが5年後にハッキリ起きている。予感以上の進行速度で」。原子力行政の責任や罪が問われないまま、原発を再稼働させて先に進もうとする政治、社会を批判する。
<「忘れたふりにたけている」>
「ヘイトスピーチなど排外的なムードも、ここ5年で急速に目立ち始めた。排外姿勢や原発輸出は安倍内閣だけでなく世論が許している。敢えて短絡的に言えば、戦争を起こすのは容易いと思う。戦争とは呼ばなくても、局地戦は簡単に起きるなあ‐と」辺見さんは新刊「1★9★3★7」で、日本軍が南京大虐殺を起こした年に焦点を当て、日本人の内面に共存する「獣性と慈愛」を探ろうとした。「1937年7月、日本が中国侵略を本格化したあの時、誰も戦争だなんて思わず、国民は呑気に暮らしていた。震災5年の状況も、どうしても、そこに重なってしまう」執筆には個人的な動機もあった。中国に出征し戦後、母に言わせれば「お化け」のように人が変わった父の内面に分け入り、自分をも含めた日本人を考えたかった。父は訪ねてきた、かつての上官に真剣な表情で敬礼してみせた。
子供の空気銃でスズメを1発で撃ち落とした時の恐ろしい目。暇があればパチンコ台に向かい、抜け殻のようになっていた姿…。中国人を殺したのか。それを聞き出せないまま父は逝ったが「長く、父親がした事を自分の問題として考える意欲に欠けていた」。
その思いが震災後に湧いてきた。「僕は中国で長年、特派員をしていましたが、自分は父親とは何も関係なく、何も受け継がず、忘却する権利があると思っていた。ところが先が長くないと思い始め、今の世の中の状況を目にすると、やけに気になる。自分で『自らの記憶に決着をつけたい』という思いで、取りつかれたように本を書き始めたら、基本的な事実を知らないだけでなく、知ろうともしていなかった自分に、ビックリしたのです」
〔おずおずと父のいた過去を覗く。すると彼の記憶の川が、知らず知らずに、まだ生きてある私の記憶の伏流に流れ込んでくる気がしてくる〕(「1★9★3★7」)
多くの文献、資料に当たる内、元兵士の証言から浮かぶ情景が辺見さんの頭から離れなくなる。「原野で兵士2人が、別々に中国人女性を犯しながら互いに手を振り合う。その様子を見ながら行軍している兵隊達が小銃を振り上げ『がんばれ!』と言ってゲラゲラ笑っている。でも彼らに犯罪意識はなかった」。天皇制軍国主義がもたらした、凄まじい負のイメージを感じる。戦後の日本人は忘れっぽいとよく聞くが、辺見さんの見方は違う。
「忘れたふりをして昔を残しておく。その素振りに非常に長けている。過去の過ちも責任も曖昧にして、忘れたふりをするには、鉛のような無神経さが必要。それが日本人の意識の底に、ずっとあると思う」震災で現れた「むき出しの日本」。原発事故で今も約10万人の避難者がいるのに、責任が曖昧な状況を許す、この国の姿と日中戦争での皇軍の姿が辺見さんの中でつながる。戦争被害者が被災者に重なるという事ではない。自らの行いを深く自問せず、さしたる葛藤もなく、やり過ごすところが今の日本人につながる‐と。
時空を超え、連綿と続く自分達自身の危うさを知れ。辺見さんの語りには、そんな提言が込められているように思える。
【人物略歴:へんみ・よう】
1944年宮城県石巻市生まれ。共同通信記者を経て52歳で独立。小説「自動起床装置」で芥川賞受賞。精力的に執筆活動を続け、小説、ノンフィクションの著書多数。
最新刊は「増補版1★9★3★7(イクミナ)」。
《【腐蝕する安倍内閣】緊急拡散!官房機密費開示訴訟、高裁でも開示命令の画期的判決!かつて、ジャーナリストに「盆暮れに500万円ずつ」》
マスコミの幹部が安倍(独裁)総理の接待漬けになっている事は広く知られているが、まさか内閣官房機密費から現ナマが送られているということまでとは酷すぎて驚きだ!
上脇博之教授らが共同代表を務める市民団体「政治資金オンブズマン」のメンバーが、国に小泉政権時代と麻生政権時代の官房機密費の内訳を開示するように求めたのに対して、不開示決定が出た事に対して決定の取り消しを求めた裁判の控訴審判決が出た。大阪高裁も一審の大阪地裁と同様に「具体的な使途や支払先が特定されないと判断した一部文書」の開示を命じた。裁判所が具体的に開示を命じたのは「政策推進費の支払いの合計額などを記した受払簿▽機密費の出入りを集計した出納管理簿の一部▽大まかな用途別に分類した会計検査院に提出する支払明細書」等。判決後、原告弁護団長の阪口徳雄弁護士(大阪弁護士会)は記者会見し「提訴から10年近くかかったが、高裁レベルでも国の秘密主義に風穴を開ける事ができた」と評価している。
<2015年12月4日:首相動静より、安倍(独裁)総理と東京・京橋の日本料理店「京都つゆしゃぶCHIRIRI」で会食したマスコミ幹部・ジャーナリスト達一覧>
◎朝日新聞の曽我豪編集委員、毎日新聞の山田孝男特別編集委員、読売新聞の小田尚論説主幹、日本経済新聞の石川一郎専務、NHKの島田敏男解説副委員長、日本テレビの粕谷賢之メディア戦略局長、時事通信の田崎史郎特別解説委員。(殆どメンバーが同じだ!)
◎政権によるマスメディアに対する「おもてなし」が従来から慣行的に行われているが、安倍政権になってから、特に派手になってきていると言われている。かつて野中広務氏は自分が官房長官時代に、内閣官房機密費から「ジャーナリスト」に大金を配っていたことを明らかにし「言論活動で立派な評論をしている人達のところに盆暮れ500万円ずつ届ける事の空しさ」と語っている。野中元官房長官から官房機密費を受け取らなかったジャーナリストは田原総一朗氏だけだったそうで、田原氏によると野中氏が渡そうとした金額は、1000万円!だったという。今回の判決は、機密費というだけあって、開示を命じられたのは「具体的な使途や支払先が特定されない」ものに限られているのが残念だ。
★しかし、もっと重大な問題は、今も、より派手に官房機密費で大手メディア幹部・ジャーナリスト達に「接待会食」が続いているという事実。加えて安倍(独裁)総理に「官邸記者クラブ‐女性記者達」が誕生日プレゼントをするという癒着ぶり等々、枚挙に暇ない。
ついては、とても本稿では書ききれない位の癒着・贈収賄・不正支出等の実態が掲載されている【サイト/官房機密費開示訴訟、高裁でも開示命令の画期的判決!かつて、ジャーナリストに「盆暮れに500万円ずつ」】を一読して頂くと共に[緊急拡散!]に御協力して頂きたい!(参考文献-エブリワン/文責-管理者:民守 正義)
【ご案内1】
「沖縄に『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」
◎活動のご案内と寄付のお願い
*詳しくは【サイト/[島ぐるみ会議]http://shimagurumi.org/】をご覧ください。
T-nsSOWL west × SEALDs KANSAI × SADL
〔安保法制の廃止を求める大阪デモ〕
日時:3月6日(日)14:00~集会スタート(14:30~デモ出発)/集合場所:靭公園
【ご案内2】
[ナビラ募金]パキスタンでの戦争やテロによって教育を受けられなくなったナビラさんの兄妹たちが、教育設備の充実したペシャワールの「Smart School等」で寄宿舎生活により教育を受けることができるよう「ナビラ募金」を起ち上げ、早急な支援を実施していくことといたしました。
年間で二百万円ほどの資金が必要です。募金先は、三菱東京UFJ銀行赤坂見附支店、普通預金口座0280580「一般社団法人現代イスラム研究センターナビラ募金」。問い合わせは当センター☎042(426)8280までお願いいたします。多くの皆様にご賛同頂き、ご協力を賜りたく思います。
一般社団法人 現代イスラム研究センター
*なお「現代イスラムセンター」理事長 宮田律さんは、「リベラル広場」にも投稿していただき、イスラム諸国の平和立国としての日本の価値と非武装・非軍事援助の重要性を「戦争関連法」反対の中で力説しています。
【ご案内3】
なくせ原発!再稼働反対!3.5大阪大集会&パレード
3月5日(土)14時15分 屋内集会(中之島中央公会堂)
16時30分 パレード出発
主催 原発ゼロの会大阪
(民守 正義)
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