安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(51)

《【亡霊のアホノミクス5】[FT]マイナス金利はスタートしたが-:効き目は懐疑的-試される日銀(日経)》

マイナス金利政策(NIRP、negative interest rates policy)は、しっかり守られている秘密に少し似ている。隠されている間はよいが、より一般に知られるようになると効き目が弱くなってしまう。この非伝統的金融政策の先駆者は欧州に見出すことができる。

スイス、スウェーデン、デンマークの3カ国は近年、互いに絡み合う懸念事項―望まない通貨高、弱々しい経済成長、低インフレ、そして資本の流入―に対処すべくNIRPを用いてきた。2014年には欧州中央銀行(ECB)がこの仲間に加わり、先月には日銀も予想外のマイナス金利導入を発表し、宗旨変えを果たしている。中央銀行の政策手段としてのNIRPは量的緩和と同じ部類に属し、資産買い入れに資金を投じることなく金融を緩和することを目指している。NIRPは為替レートを管理する意図的な試みのようにも見えるが、実は中央銀行に打つ手がないことを曝け出しているに過ぎないのではないだろうか。

<効果的にする条件、揃う兆なく>

  NIRPや量的緩和は、利回りのより高い資産を探すよう投資家に促すことから通貨安を招くはずだというのが、そもそもの考えだ。その通りになる可能性が最も高いのは、外国に経済成長の兆しが見られたり、自国通貨が割高だったり、NIRPを導入した国が経常赤字を出していたりといった多くの要因が働いている場合だ。だがECBと日銀については、NIRPを効果的なものにするこれらの条件が揃う兆しが殆どない。ユーロ圏も日本も多額の経常黒字を計上している上に、新興国は小幅な経済成長しか遂げないとみられている。通貨はドル安に一役買っている、次第にハト派色を強める米連邦準備理事会(FRB)の発言に苦しめられている。「FRBに対する予想の見直しが非常に大きいために、金利差がドルに有利に働く度合いがかなり小さくなった。おかげでマイナス金利であっても上昇する通貨が出てきている」。野村の外国為替ストラテジストは、こう語る。もしNIRPを導入したECBの狙いが通貨の競争力向上だったとしたら、少なくとも最初だけは「目的を達成した」ことになると、BNYメロンは指摘する。14年6月にECBがNIRPを導入した時のレートは1ユーロ=約1.37ドルだった。NIRPはユーロ安に貢献し、15年3月には1ユーロ=1.05ドルに達する場面もあった。だがユーロはその後7%上昇している。昨年12月に預金ファシリティー金利が更に引き下げられたにも関らず-だ。

ギリシャ危機や、昨年8月及び今年1月の中国の為替ショックといったリスクイベントが持ち上がる度に、市場の資金はユーロや日本円といった安全な避難先に向かう。マイナス金利はまた、さえない市場心理を更に悪化させるだけだ。日銀によるNIRPが酷いスタートを切ったのはそのためだ。円はNIRPの発表後に短期間安くなっただけだった。日銀の政策が対抗できないほどの円高をもたらす要因がもっとあるという事が、直ぐに市場で理解され始めたからだ。この望まれない円高は先週、1ドル=110~112円の範囲にまで進んだ。大和証券の株式ストラテジストらによれば、1ドル=110円の水準が長期化すると東証株価指数(TOPIX)採用銘柄の増益分は事実上吹き飛んでしまうという。

<顧客の日銀に対する期待の低さに当惑>

 日銀への信頼が試されている。コメルツ銀行の為替リサーチ部門は、日銀の拡張政策に対する日本の顧客の期待が低い事に当惑しており「拡張的な金融政策が中長期的にインフレ効果をもたらすと誰も信じていないのであれば、そうした政策手段が為替レートに及ぼす影響は弱くなる」と話している。円は年内に1ドル=120円の水準に戻り得るとの見方を変えていない為替ストラテジストはまだ多いものの、今後数週間で市場のボラティリティー(変動性)が小さくなると予想している向きは殆どいない。各国中央銀行は当面、各々のNIRP戦略を修正しながら維持していくだろう。JPモルガンによれば、ユーロ圏ではマイナス4.5%、米国でもマイナス1.3%まで金利が低くなる可能性があるという。しかしマイナス金利の幅を広げれば広げるほど、武器としての威力は弱くなる。「市場心理が更に悪化するにつれて、そして他の中央銀行もマイナス金利の採用に向かうにつれて、その効き目は明らかに薄れていく」とコメルツ銀行は言う。先週の日本の金融株の急落は「NIRPのせいで銀行と証券会社が収益を生むのが難しくなる」との懸念から一層、激しくなった。更に悪い事に、みずほ証券のチーフ為替ストラテジスト曰く、こうした株価急落は「日銀が更に利下げを進めるのが難しくなるほど」円相場に上昇圧力をかける恐れがあるという。 効き目を失いつつあるのはNIRPだけではない。この政策の提唱者である中央銀行自身もそうだ。 金利が下がり続ける「悪循環」を受けてFRBが金利正常化の動きを止めたり、反転させたりすれば、中央銀行は金融政策がインフレを生み出すのに失敗していることを自覚するはずだという。「もしかしたら、政策立案者が、ただ問題の症状を治療するだけでなく、問題の根っこに対処すべき時なのかもしれない」と市場関係者は話している。【マイナス金利政策は、期待より裏目の出だしのようだ】

《【亡霊のアホノミクス6】マイナス金利-逆に不安を広げている》

日本の長期金利が9日、初めてマイナス圏に突入した。世界でもスイスに次ぐ2例目だ。

大幅に円高が進み、株式市場も日経平均株価が900円以上急落する等、市場は激しい動揺に見舞われている。国内外の様々な要因が絡み合った結果ではあるが先月末、日銀が決定したマイナス金利の導入が響いているのは間違いない。金融機関が日銀の当座預金に預けた資金の一部から日銀が利息を取るのがマイナス金利政策だ。預けたままにしておくと金融機関は損をするので、融資や投資に資金を回すようになる、との論理である。

ところが日銀は同時に国債を大量に買う政策も続けている。満期まで持てば損をするのが確実なほど値上がりした国債でも、日銀が必ず高値で買ってくれるとの安心感から結局、金融機関は国債を選ぶ。市場で繰り広げられる国債の争奪戦の結果、利回りがマイナスになる国債が、ついに満期まで10年という代表的な長期国債にまで及んだのだ。日銀の政策変更には、今年に入り不安定な動きを続けていた市場を、再び円安・株高方向へ誘導する目先の狙いがあった。だが世界経済の先行きを懸念する投資家が、資金を日本国債に集中させ、日銀の思惑とは反対の流れが生じてしまった。このままでは返って不安心理が広がり日銀発の景気悪化ともなりかねない。「2%」の物価目標も一段と遠ざかる事になろう。日銀はマイナス金利がもたらす負の影響を精査し、場合によっては撤回も排除しないといった柔軟な姿勢で対応を検討すべきではないか。それにしても経済の実体とかけ離れたところで歪なマネーゲームが繰り広げられているとしか言いようがない。何より世界で最も重い借金を抱えた国である日本が「借りるほど儲かる」というマイナス金利で多額の資金を調達できること自体、異様な現象である。問題はマネーゲームの結末が一般市民の暮らしに跳ね返ってくる事だ。預金金利の一段の低下や年金の運用難、金融機関の業績悪化等が心配されている。住宅ローンや設備投資を刺激し、経済にプラスになるとの指摘もある。ただ、ここまで異常な金利水準になれば、むしろ経済全体の先行きが心配になり、大きな買い物は控えようという逆の効果も考えられる。デフレからインフレに変わる−。

異次元緩和というショック療法で人々の心理に働きかけ、実際の物価を押し上げようというのが、黒田日銀の政策の肝だった。「マイナス」が付く今回の政策は、その心理をかえって悪化させている。【管理者:黒田総裁が「まだ第二・第三の『マイナス金利政策』がある」との強気発言が、逆に市中銀行に「ならば、もう少し国債を預けておこう」という逆の市場心理を働かす事になった。黒田総裁の大失言だ】

《【亡霊のアホノミクス7】マイナス金利:スタートして-恐い家計への副作用》

日銀のマイナス金利政策が16日からスタートした。2015年10~12月期の国内総生産(GDP)成長率がマイナスに転じ、アベノミクスに黄信号が点滅する中、既に本来のお金の流れが投資や消費に向かわせる狙いよりも金融機関の収益の悪化や預金金利の低下など企業や家計への副作用の方が現れてきている。マイナス金利の対象は、金融機関が日銀に預ける当座預金の内、積み立てが義務づけられている額を超える「超過準備預金」。

当座預金の全てにマイナス金利を適用すると、金融機関の収益に与える影響が大きいため、これまでの残高については現行の金利0.1%を維持する。これから増加する残高の内、一定割合はゼロ金利とし、マイナス金利の対象は10兆~30兆円程度に抑える考えだ。

マイナス金利の一般預金者にとっての副作用の一つは、金融機関は、これまでと同じように資産運用で利益を出す事が難しくなるため、その損失分を預金者に転嫁する事が十分、考えらる。既に定期預金の金利の引き下げが相次いでいる他、三井住友銀行はマイナス金利実施の前日(15日)、普通預金の金利を過去最低水準の0.001%に引き下げると発表。

15年1月からマイナス金利を導入しているスイスでは、一部金融機関の個人預金金利がマイナスとなり、お金を預ける際に手数料を取られる格好になっている。15日の衆院予算委員会ではマイナス金利の効果や副作用が審議されたが、日銀の黒田東彦総裁は「個人預金の金利がマイナスになるとは考えていない」との見方を示した。しかし本当にマイナス金利とならないのか、金融機関の対策議論には全く排除されていない上に、マイナス金利とまで言わずとも、更に金利の引き下げが拡がる可能性は十分にある。また現金自動受払機(ATM)の手数料が上がる事も、ほぼ間違いなく、一般預金者にとっては実質、マイナス金利と同様の効果だと思うのだが、日銀-黒田総裁は国会衆議院予算委員会(16日)で「金融サービスの手数料は、預金金利とは別問題だ」と突っぱね、つれない態度だった。

総じて「マイナス金利政策」の本来狙いは的外れで、市中銀行等は実体経済とは関係のない海外株式や為替差益への投機に走り一時的バブルはあっても、いずれは金融恐慌になる可能性大。(海外金融機関は「日本発-国債乱発金融恐慌」を常識的に予想・警戒している)または市中銀行の「どうせ国債は、日銀が高く買い取ってくれるだろう」との裏読みと、その日銀-国債マイナス金利の含み損は財務省の買い上げで結局、国民の税金で補填することになる。そして、こうした「マイナス金利政策」の失敗は実体経済の更なる冷え込みと一層の実質賃金・年金の目減り(年金減額は既に「安倍」が考えていると国会答弁)の中、国民=勤労者への更なる収奪・犠牲の「副作用」になる事が明白になってきた。

以前から何回も述べてきたとおり勤労者にとっての「デフレからの脱却」と大企業・金融資本にとっての「デフレからの脱却」とは対立的に方策が違う。ピケティ理論等の説く「大企業の内部留保の吐き出し=法人累進課税」と社会的再配分と個人消費(実質賃金)への直接的還元しか実体経済の活性化と健全経済成長は成しえない。そのためには経済暴走ドライバー=安倍政権退陣を求める事が、先ずは初手の初手と言わざるを得ない。

【ご案内1】

「約束と違うぞ! 詐欺求人相談ホットライン」

2月25日(木)15時~21時

相談電話番号 06-6364-9023(当日のみの特設回線です)

共催:大阪労働者弁護団・民主法律協会・ブラック企業被害対策弁護団

大阪での事前お問い合わせ 大阪労働者弁護団:06-6364-8620

【ご案内2】

働くあなたを応援する 2016LA-LA公開講座1

「障害者雇用の法制度とその対応」/講師:池田 直樹 弁護士

◎日時:3月2日(水)午後6時30分~8時30分

◎会場:大阪労働者弁護団 事務所

◎参加費:1000円(当日いただきます)

大阪労働者弁護団HP http://www.lalaosaka.com/

公開講座の頁 http://www.lalaosaka.com/#!open-lecture/c1ciw

(民守 正義)