安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(21)
安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(21)
《【闇のTTP1】「農林水産物で1兆円、加工品で1.5兆円の被害」》
炊立ての御飯に味噌汁、納豆、焼き魚。御馴染の朝食を囲む食卓。そんな光景がTPPによって一変するかもしれない。私達が当り前のように口にしてきた多くの食べ物が、今と同じ値段、同じ品質で手に入らなくなる可能性があるのだ。
これまで日本では、輸入品に高い関税をかけて自国の農産物を守ってきた。「輸入品が入ってくれば値崩れは防げません。家みたいに小さな農家は品質を維持してブランド米を作る体力もない。後継者不足もあって、既に自分達だけでコメを作っている農家は少ない。減反政策も中止される。この先どうなってしまうのか……」岩手県のコメ農家・Oさん(82)がこぼした言葉は、今や多くの生産者に共通する思いではないか。「既にTPPの影響が現場で出始めています」(東京大学大学院農業経済学・鈴木宣弘教授)そしてこう続ける。「生産者にとっては大変な内容が決まったと言える。政府が勧めるような投資もできない、子供にも継いでもらえない、もう辞めるという人が既に増えています」(鈴木教授)
政府はコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の『重要5項目』について「守るべきは守った」(甘利明TPP担当相)と交渉の成果を強調する。だが蓋を開けてみれば約3割が関税撤廃、農産水産物全体で81%が関税ゼロになる。この交渉結果に鈴木教授は憤りを隠さない。「重要5項目の関税維持を求めた国会決議に違反しているのは明らか。その他の農産物も無税枠を作ったり、関税を大幅に引き下げたりして、ここまで譲れるのかというほど譲りまくっている。7年後の再交渉で日本は更に譲歩することになるでしょう」(鈴木教授)
とりわけ打撃を受けるのは畜産だ。「牛肉は関税38.5%が9%の引き下げ。安い輸入品につられて全体の価格も下がるため、高級な和牛も無傷とはいかない。もっと影響が大きいのが豚肉。安い豚肉で4割価格が下がると全体的に価格が4割下落します。収入が4割減るに等しい大赤字で経営分析からいけば、ほぼ全滅です」(鈴木教授)主食であるコメは、アメリカから7万トン、オーストラリアから8400トンの輸入枠が新設される。「輸入枠を使えば、その分だけ何もしなくても日本に買わせることができる。アメリカは関税交渉をするより、この枠をジワジワ広げる方向で実利を増やしていく方がメリットになると考えているのでしょう」(鈴木教授)輸入に相当する量を政府が備蓄米として買い上げるため、値崩れの影響はないとしている。「どこかのタイミングで在庫を市場に出さなければならず、やはり需給緩和の圧力となって値崩れを招く。私の計算では在庫が1万トン増えると、生産者価格が1俵(60キロ)あたり41円ぐらい下がります」(鈴木教授)こうした価格下落の影響を受けて、政府は生産額が最大2100億円の減少と見積もるが『攻めの農業』による設備投資等の対策効果で相殺できると主張。「控え目に計算しても農林水産物で1兆円、加工品で1.5兆円の被害が出る」という鈴木教授の見立てとは随分、異なる。「『攻めの農業』の実態は、大農場を構えるような企業だけが僅かに生き残ればよくて、今まで頑張ってきた小規模農家は潰れても構わないということ」セレブ向けの農業だけが生き残ると何が起きるのか。鈴木教授は酪農を例に説明する。「ニュージーランドの多国籍乳業メーカー『フォンテラ』は日本へ進出して、北海道の酪農家等に声をかけて一緒にビジネスをやろうと持ち掛けています。乳製品は本国から全て輸入、飲用乳だけ北海道で生産して、それを中国や韓国に売る計画もある。ニュージーランドとしては、日本より中国の方が市場として有望だと思っている訳ですから、乳製品も中国がドンドン買ってしまうとバター不足に陥ったときのように需要が逼迫します。日本に回す分がなくなる恐れは十分ありえる」(鈴木教授)最終的には国産品は店頭の棚から消え、輸入頼みになり食料自給率も低下。
「地域の文化やコミュニティーも壊される。農村は荒廃します」(鈴木教授)水田に張られた水が風雨から土壌の浸食を防ぐように、農村では災害防止の知恵が培われてきたが、それも失われる。「安全な食べ物を選べなくなります」(鈴木教授)(週刊女性)
《【闇のTPP2】「狙いは“国民皆保険つぶし”でなく“形骸化”」》
TPPの「大筋合意(?)」が報じられた昨年11月から、テレビや新聞は歓迎ムード一色。生活への影響は大。何がどう変わって、いったい誰がトクしてソンするのか?そこで識者にTPPによる変化について教えてもらった。近い将来TPPが発効すると、アメリカ医産複合体は日本の医療制度に必ず食い込んでくると『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ!日本の医療〉』等の著書で知られるジャーナリスト・堤未果さんに話を聞いた。アメリカの医産複合体は、日本の皆保険制度を破滅させることはしないと堤さんは断言する。「彼らは全国民が加入し、未就学児10割、大人7割を税金が負担する日本の皆保険制度を残したまま、アメリカのように適用範囲を風邪や小さなケガ等に狭めたい。そうすれば日本人の税金が外資製薬会社や民間保険会社に流れるからです。狙いは“国民皆保険潰し”でなく“形骸化”です」こうなると見えてくるのは「金持ちしか助からない」という将来図だ。アメリカで自己破産した人の内、原因の6割を医療費が占めるという。今後、日本もそうなるのだろうか。TPPで堤さんがもう一つ問題視するのがISD条項。相手国に投資した企業が相手国の政策によって損害を被った場合、相手国を提訴できる制度だ。アメリカの製薬会社が“日本政府が薬価を安価に維持するのは、公平な競争を邪魔している”と訴える事も可能になる。その裁判所となるのが、世界銀行傘下の『国際投資紛争解決センター』。3人の裁判員が判決を出すが、一人は訴えられた国から選ばれ、一人は訴えた企業から、もう一人は双方が合意した人。そんな人は現実にはいないから3人目は世銀総裁が指名する。世銀総裁はずっとアメリカ人。果たしてアメリカのISD裁判での敗訴はゼロ。訴えられた国は勝っても負けても最低約8億円の弁護士費用の一部支払い義務があり、更に裁判に負ければ、数十億から数百億かもしれない賠償金を支払う。TPPから私達は逃れられるのか。まだ時間はあると堤さんは訴える。「『大筋合意』は最終決定ではありません。まだ各国での“承認採決”が残っています。TPP全文は公開されましたが、日本政府は1月7日に日本語訳の全文を公開するまで、ほんの僅かな翻訳しか出していませんでした。
今、全文を準備できたとの事ですが、実態は「細部重要事項ひた隠し」。「これでは国会審議できない!」と国会議員が直接要求しないと出てこない。安倍政権が「臨時国会召集-拒否」した理由には、この「全面敗北-大筋合意」への追及から逃亡したかったのも理由の一つと言われている。他の参加国のように「政府自ら積極的に公開しなければならない」との観念のない安倍政権だから国会議員の逃がさない追及意識に、ひたすら、かかっている。医療だけでも私達の暮らしを大きく変えてしまう内容なので、アメリカでも反対の声は大きい。中身を全部読まずに契約したらダメです。周りの人や地元の国会議員にTPPの中身によく注意するよう、ぜひ呼びかけてほしいですね」(週刊女性/管理者一部編集)
《【闇のTPP3】TPPで固定化⇒「日本の医療は確実にアメリカ型に」》
日本に米国型医産複合体が食い込むのは「薬価の高騰からだ」と前章-堤さんは言う。
「日本の薬価は現在、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会で約4千人の医療関係者が決めています。でもTPPが発効すれば“フェアに自由競争をさせろ”と外資製薬企業が介入してくるでしょう。更にいろいろな方向から薬価は値上がりする。これらは既に公開されているTPP文書に書いてあり、各国の医療関係者が強く批判しています」しかし自由競争であれば、薬価は下がるのでは?「逆です。例えばアメリカでは半数以上の州が僅か1、2社に独占されている。製薬業界は世界的に大手の寡占化が進み、自由競争は、むしろ消えつつある」(堤さん)確かに今年9月もアメリカのあるベンチャー企業が、HIV治療薬の企業を買収した後、価格を1錠1620円から9万円へと一気に55倍に値上げした。そんな高い薬は日本政府が拒否すればいいのでは?「TPPの合意事項は参加国の国内法よりも上にくる。日本政府の一存で翻す事はできません。日本政府は、保険の適用薬と適用外薬を同時に処方する『混合診療』を拡大する法律も今春に通しましたが、これがTPPで固定化されれば日本の医療は確実にアメリカ型になっていきます」(堤さん)混合診療とは、一つの治療に保険診療と保険外診療を組み合わせる事だが、国が認めた一部の例外(差額ベッド代や医療機器の治験等)を除き原則禁止されている。もし混合診療を行った場合、治療全てが保険外診療と見做され、患者は医療費10割を負担する。例えば一つの治療で2種類の薬が必要な場合、保険薬Aが2千円、保険外の薬Bも2千円とする。混合診療禁止の現状では、Aは保険外薬品と見做されるから、患者は全額自己負担の4千円を払う。だが、もし混合診療が解禁されると薬Aは3割負担の6百円となり、A+Bの支払合計は2600円となる。となると全額負担よりは安いから、混合診療解禁を-との声は当然あがる。だが多くの医療団体は混合診療には反対だ。国が現在認めている「保険外療養制度」は、全額自己負担部分の治療は、その後「保険適用すること」が前提で、上記の薬Bもやがては600円になる。ところが、混合診療を固定化させてしまうと、自由診療分の診療費を決めるのは国ではなく医療機関になるため医療費の高騰が始まるのだ。整理しよう。
薬価が上がると医療費も上がる。すると日本政府も医療費の7割負担が難しくなり、患者の窓口負担または毎月の保険料を値上げするか、医療機関への診療報酬を下げる。最後の選択肢が最も患者負担がないように見えるが、それは甘い。診療報酬を下げられると医療機関は赤字倒産を避けるため、保険点数の低い小児科や産婦人科等の治療をメニューから外したり保険の効かない自由診療を増やすしかなくなるからだ。「すると国民は、公的な健康保険証1枚だけでは足りなくなる。そこでアメリカのような民間医療保険が登場します。“医療費で困らないために民間保険にも加入しておきましょう”と。そして毎月の保険料が増えていくのです」(堤さん)【管理者:日本の健康保険制度等は、まだこれでも「社会主義的」と言われるほど「公的相互扶助」を基本に制度設計されている。これを事実上「混合診療」を名目に「公的健康保険制度」を崩壊させ、米国のような「市場競争型健康保険制度」に浸食させることは、本当に目もあてられないボロボロの「格差健康保険・医療実態」になることは火を見るよりも明らか。安倍政権は、それが一定、予想されているのに(医師会等々、反対声明は続発している)明確に米国に拒否意思を示さず、むしろ、なし崩し的に認めようとしている。これでは日本国民を米国医療・薬業メーカーに「どうぞ!市場として使ってください」と差し出すようなもので「売国奴行為」と言われても仕方ない。これでも安倍内閣の支持率が回復しているというのだから、多くの有権者の無知・バカさ加減にも呆れる。私はバカな有権者の「安倍政治-選択」の迷惑をかけられるのは真っ平御免。何としても安倍政権を倒したい。】(週刊女性/管理者総合編集)
【書籍紹介】世界を視るフォトジャーナリズム月刊誌「DAYS JAPAN」
[2月号「安倍政権に命の舵は渡さない」]
秘密保護法、安保法制を強行させ、安倍政権は「戦争ができる国」への地ならしを着実に、強引に押し進めています。
「戦争法制」を廃止し、改憲を不可能にする最後のチャンスが、この夏の参院選です。
2月号では「日本の未来を大きく変える重要な年になる。」 この2016年をどう生きるか、ジャーナリスト、学者、弁護士、映画監督他26人の方から大事なメッセージ寄稿いただきました。30ページにわたる渾身の大特集です。
DAYS JAPANは、これからも最悪の事態に突き進もうとする現政政権にNOをつきつけていきます。2月号、ぜひ一人でも多くの人に手に取っていただけることを心から願っています。
どうぞ宜しくお願い致します。
http://www.daysjapan.net/bn/1602.html
特集:安倍政権に命の舵は渡さない。2016年をどう生きるか。
《【闇のTTP1】「農林水産物で1兆円、加工品で1.5兆円の被害」》
炊立ての御飯に味噌汁、納豆、焼き魚。御馴染の朝食を囲む食卓。そんな光景がTPPによって一変するかもしれない。私達が当り前のように口にしてきた多くの食べ物が、今と同じ値段、同じ品質で手に入らなくなる可能性があるのだ。
これまで日本では、輸入品に高い関税をかけて自国の農産物を守ってきた。「輸入品が入ってくれば値崩れは防げません。家みたいに小さな農家は品質を維持してブランド米を作る体力もない。後継者不足もあって、既に自分達だけでコメを作っている農家は少ない。減反政策も中止される。この先どうなってしまうのか……」岩手県のコメ農家・Oさん(82)がこぼした言葉は、今や多くの生産者に共通する思いではないか。「既にTPPの影響が現場で出始めています」(東京大学大学院農業経済学・鈴木宣弘教授)そしてこう続ける。「生産者にとっては大変な内容が決まったと言える。政府が勧めるような投資もできない、子供にも継いでもらえない、もう辞めるという人が既に増えています」(鈴木教授)
政府はコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の『重要5項目』について「守るべきは守った」(甘利明TPP担当相)と交渉の成果を強調する。だが蓋を開けてみれば約3割が関税撤廃、農産水産物全体で81%が関税ゼロになる。この交渉結果に鈴木教授は憤りを隠さない。「重要5項目の関税維持を求めた国会決議に違反しているのは明らか。その他の農産物も無税枠を作ったり、関税を大幅に引き下げたりして、ここまで譲れるのかというほど譲りまくっている。7年後の再交渉で日本は更に譲歩することになるでしょう」(鈴木教授)
とりわけ打撃を受けるのは畜産だ。「牛肉は関税38.5%が9%の引き下げ。安い輸入品につられて全体の価格も下がるため、高級な和牛も無傷とはいかない。もっと影響が大きいのが豚肉。安い豚肉で4割価格が下がると全体的に価格が4割下落します。収入が4割減るに等しい大赤字で経営分析からいけば、ほぼ全滅です」(鈴木教授)主食であるコメは、アメリカから7万トン、オーストラリアから8400トンの輸入枠が新設される。「輸入枠を使えば、その分だけ何もしなくても日本に買わせることができる。アメリカは関税交渉をするより、この枠をジワジワ広げる方向で実利を増やしていく方がメリットになると考えているのでしょう」(鈴木教授)輸入に相当する量を政府が備蓄米として買い上げるため、値崩れの影響はないとしている。「どこかのタイミングで在庫を市場に出さなければならず、やはり需給緩和の圧力となって値崩れを招く。私の計算では在庫が1万トン増えると、生産者価格が1俵(60キロ)あたり41円ぐらい下がります」(鈴木教授)こうした価格下落の影響を受けて、政府は生産額が最大2100億円の減少と見積もるが『攻めの農業』による設備投資等の対策効果で相殺できると主張。「控え目に計算しても農林水産物で1兆円、加工品で1.5兆円の被害が出る」という鈴木教授の見立てとは随分、異なる。「『攻めの農業』の実態は、大農場を構えるような企業だけが僅かに生き残ればよくて、今まで頑張ってきた小規模農家は潰れても構わないということ」セレブ向けの農業だけが生き残ると何が起きるのか。鈴木教授は酪農を例に説明する。「ニュージーランドの多国籍乳業メーカー『フォンテラ』は日本へ進出して、北海道の酪農家等に声をかけて一緒にビジネスをやろうと持ち掛けています。乳製品は本国から全て輸入、飲用乳だけ北海道で生産して、それを中国や韓国に売る計画もある。ニュージーランドとしては、日本より中国の方が市場として有望だと思っている訳ですから、乳製品も中国がドンドン買ってしまうとバター不足に陥ったときのように需要が逼迫します。日本に回す分がなくなる恐れは十分ありえる」(鈴木教授)最終的には国産品は店頭の棚から消え、輸入頼みになり食料自給率も低下。
「地域の文化やコミュニティーも壊される。農村は荒廃します」(鈴木教授)水田に張られた水が風雨から土壌の浸食を防ぐように、農村では災害防止の知恵が培われてきたが、それも失われる。「安全な食べ物を選べなくなります」(鈴木教授)(週刊女性)
《【闇のTPP2】「狙いは“国民皆保険つぶし”でなく“形骸化”」》
TPPの「大筋合意(?)」が報じられた昨年11月から、テレビや新聞は歓迎ムード一色。生活への影響は大。何がどう変わって、いったい誰がトクしてソンするのか?そこで識者にTPPによる変化について教えてもらった。近い将来TPPが発効すると、アメリカ医産複合体は日本の医療制度に必ず食い込んでくると『沈みゆく大国アメリカ 〈逃げ切れ!日本の医療〉』等の著書で知られるジャーナリスト・堤未果さんに話を聞いた。アメリカの医産複合体は、日本の皆保険制度を破滅させることはしないと堤さんは断言する。「彼らは全国民が加入し、未就学児10割、大人7割を税金が負担する日本の皆保険制度を残したまま、アメリカのように適用範囲を風邪や小さなケガ等に狭めたい。そうすれば日本人の税金が外資製薬会社や民間保険会社に流れるからです。狙いは“国民皆保険潰し”でなく“形骸化”です」こうなると見えてくるのは「金持ちしか助からない」という将来図だ。アメリカで自己破産した人の内、原因の6割を医療費が占めるという。今後、日本もそうなるのだろうか。TPPで堤さんがもう一つ問題視するのがISD条項。相手国に投資した企業が相手国の政策によって損害を被った場合、相手国を提訴できる制度だ。アメリカの製薬会社が“日本政府が薬価を安価に維持するのは、公平な競争を邪魔している”と訴える事も可能になる。その裁判所となるのが、世界銀行傘下の『国際投資紛争解決センター』。3人の裁判員が判決を出すが、一人は訴えられた国から選ばれ、一人は訴えた企業から、もう一人は双方が合意した人。そんな人は現実にはいないから3人目は世銀総裁が指名する。世銀総裁はずっとアメリカ人。果たしてアメリカのISD裁判での敗訴はゼロ。訴えられた国は勝っても負けても最低約8億円の弁護士費用の一部支払い義務があり、更に裁判に負ければ、数十億から数百億かもしれない賠償金を支払う。TPPから私達は逃れられるのか。まだ時間はあると堤さんは訴える。「『大筋合意』は最終決定ではありません。まだ各国での“承認採決”が残っています。TPP全文は公開されましたが、日本政府は1月7日に日本語訳の全文を公開するまで、ほんの僅かな翻訳しか出していませんでした。
今、全文を準備できたとの事ですが、実態は「細部重要事項ひた隠し」。「これでは国会審議できない!」と国会議員が直接要求しないと出てこない。安倍政権が「臨時国会召集-拒否」した理由には、この「全面敗北-大筋合意」への追及から逃亡したかったのも理由の一つと言われている。他の参加国のように「政府自ら積極的に公開しなければならない」との観念のない安倍政権だから国会議員の逃がさない追及意識に、ひたすら、かかっている。医療だけでも私達の暮らしを大きく変えてしまう内容なので、アメリカでも反対の声は大きい。中身を全部読まずに契約したらダメです。周りの人や地元の国会議員にTPPの中身によく注意するよう、ぜひ呼びかけてほしいですね」(週刊女性/管理者一部編集)
《【闇のTPP3】TPPで固定化⇒「日本の医療は確実にアメリカ型に」》
日本に米国型医産複合体が食い込むのは「薬価の高騰からだ」と前章-堤さんは言う。
「日本の薬価は現在、厚生労働大臣の諮問機関である中央社会保険医療協議会で約4千人の医療関係者が決めています。でもTPPが発効すれば“フェアに自由競争をさせろ”と外資製薬企業が介入してくるでしょう。更にいろいろな方向から薬価は値上がりする。これらは既に公開されているTPP文書に書いてあり、各国の医療関係者が強く批判しています」しかし自由競争であれば、薬価は下がるのでは?「逆です。例えばアメリカでは半数以上の州が僅か1、2社に独占されている。製薬業界は世界的に大手の寡占化が進み、自由競争は、むしろ消えつつある」(堤さん)確かに今年9月もアメリカのあるベンチャー企業が、HIV治療薬の企業を買収した後、価格を1錠1620円から9万円へと一気に55倍に値上げした。そんな高い薬は日本政府が拒否すればいいのでは?「TPPの合意事項は参加国の国内法よりも上にくる。日本政府の一存で翻す事はできません。日本政府は、保険の適用薬と適用外薬を同時に処方する『混合診療』を拡大する法律も今春に通しましたが、これがTPPで固定化されれば日本の医療は確実にアメリカ型になっていきます」(堤さん)混合診療とは、一つの治療に保険診療と保険外診療を組み合わせる事だが、国が認めた一部の例外(差額ベッド代や医療機器の治験等)を除き原則禁止されている。もし混合診療を行った場合、治療全てが保険外診療と見做され、患者は医療費10割を負担する。例えば一つの治療で2種類の薬が必要な場合、保険薬Aが2千円、保険外の薬Bも2千円とする。混合診療禁止の現状では、Aは保険外薬品と見做されるから、患者は全額自己負担の4千円を払う。だが、もし混合診療が解禁されると薬Aは3割負担の6百円となり、A+Bの支払合計は2600円となる。となると全額負担よりは安いから、混合診療解禁を-との声は当然あがる。だが多くの医療団体は混合診療には反対だ。国が現在認めている「保険外療養制度」は、全額自己負担部分の治療は、その後「保険適用すること」が前提で、上記の薬Bもやがては600円になる。ところが、混合診療を固定化させてしまうと、自由診療分の診療費を決めるのは国ではなく医療機関になるため医療費の高騰が始まるのだ。整理しよう。
薬価が上がると医療費も上がる。すると日本政府も医療費の7割負担が難しくなり、患者の窓口負担または毎月の保険料を値上げするか、医療機関への診療報酬を下げる。最後の選択肢が最も患者負担がないように見えるが、それは甘い。診療報酬を下げられると医療機関は赤字倒産を避けるため、保険点数の低い小児科や産婦人科等の治療をメニューから外したり保険の効かない自由診療を増やすしかなくなるからだ。「すると国民は、公的な健康保険証1枚だけでは足りなくなる。そこでアメリカのような民間医療保険が登場します。“医療費で困らないために民間保険にも加入しておきましょう”と。そして毎月の保険料が増えていくのです」(堤さん)【管理者:日本の健康保険制度等は、まだこれでも「社会主義的」と言われるほど「公的相互扶助」を基本に制度設計されている。これを事実上「混合診療」を名目に「公的健康保険制度」を崩壊させ、米国のような「市場競争型健康保険制度」に浸食させることは、本当に目もあてられないボロボロの「格差健康保険・医療実態」になることは火を見るよりも明らか。安倍政権は、それが一定、予想されているのに(医師会等々、反対声明は続発している)明確に米国に拒否意思を示さず、むしろ、なし崩し的に認めようとしている。これでは日本国民を米国医療・薬業メーカーに「どうぞ!市場として使ってください」と差し出すようなもので「売国奴行為」と言われても仕方ない。これでも安倍内閣の支持率が回復しているというのだから、多くの有権者の無知・バカさ加減にも呆れる。私はバカな有権者の「安倍政治-選択」の迷惑をかけられるのは真っ平御免。何としても安倍政権を倒したい。】(週刊女性/管理者総合編集)
【書籍紹介】世界を視るフォトジャーナリズム月刊誌「DAYS JAPAN」
[2月号「安倍政権に命の舵は渡さない」]
秘密保護法、安保法制を強行させ、安倍政権は「戦争ができる国」への地ならしを着実に、強引に押し進めています。
「戦争法制」を廃止し、改憲を不可能にする最後のチャンスが、この夏の参院選です。
2月号では「日本の未来を大きく変える重要な年になる。」 この2016年をどう生きるか、ジャーナリスト、学者、弁護士、映画監督他26人の方から大事なメッセージ寄稿いただきました。30ページにわたる渾身の大特集です。
DAYS JAPANは、これからも最悪の事態に突き進もうとする現政政権にNOをつきつけていきます。2月号、ぜひ一人でも多くの人に手に取っていただけることを心から願っています。
どうぞ宜しくお願い致します。
http://www.daysjapan.net/bn/1602.html
特集:安倍政権に命の舵は渡さない。2016年をどう生きるか。
(民守 正義)
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