安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(11)

安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(11)


《野党3党首“激論”紹介「安倍政権の暴走を止める」》
“一強多弱”の勢力図を塗り替えるには野党協力が欠かせない。野党研究が専門の吉田徹・北大教授が、3党首の胸の内を探った。(但し本稿は昨年12月14日時点の討論紹介で、時系列に多少、齟齬があることをお許しください)
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吉田徹・北海道大学教授:「戦争関連法制」反対のデモが大きな注目を集めました。野党に追い風が吹いている。これに、どう帆を張り、民意を形にできるか。“一強多弱”の構図の下で問われているのは野党間の協力です。そこで共産党から出てきたのが、連立政権を前提とした国民連合政府構想でした。
志位和夫・共産党委員長:私達の提案というのは非常にシンプルでありまして、先ず戦争法・安保関連法制を廃止しよう、そして安倍政権を打倒する闘いを発展させようと呼びかけています。日本の政治に立憲主義と民主主義を取り戻す闘いをやろうじゃないかということです。戦争法の廃止は、衆参両院で廃止法案を可決すれば可能です。ただそれだけでは問題は解決しない。集団的自衛権の行使を容認した2014年7月の閣議決定が残る。自衛隊の海外派兵の火種が残り、立憲主義を破壊したデタラメな憲法解釈が続くことになる。戦争法の廃止と閣議決定の撤回。二つの仕事をやろうとすれば、どうしてもそれを実行する政府が必要になる。
●立憲主義取り戻す政権
松野頼久・維新の党代表:僕らは今、民主党の岡田さんのところとですね、先ず基本政策を一致させようということで、政調会長同士の協議をさせて頂いています。もう殆ど内容は詰まってきているんですけれども。基本政策を詰めることができれば、来年1月の通常国会の前までに統一会派を組み、きちっと一つの塊で国会に臨む。なるべく大きな塊をつくって、その姿を国民に見て頂く。今の選挙制度の中で一つの政党をつくり、きちっと有権者の声を拾える状態をつくるということが、民主党との間でやっている作業です。岡田さんは、その先の新党までは慎重だという報道がされていますけれど、将来の新党を排除しないということは言って頂いている。
志位:野党間には基本政策の違いがある訳ですね。だからといってバラバラのままでは安倍政権が続くことになる。ですから基本政策の違いがあっても、それは横に置いて戦争法廃止、立憲主義回復の一点で政権を構成する。現在の非常事態を打開するというのは、これ以上ない憲政上の大義ある課題だと考えています。
吉田:共産党は、連合政府では「日米安保条約の廃棄」「自衛隊の解消」等、これまでの方針を凍結すると踏み込みました。
志位:日米安保条約について、私達は国民多数の合意を得て廃棄するという方針です。ただ、この方針を連合政府に求めることはしない。連合政府としては安保条約に関わる問題は凍結し、これまでの条約と法律の枠内で行動する。
松野:14年の衆院選でも、岡田さんとは随分、選挙区の候補者調整をやって、維新と民主の候補はなるべく1人に絞るという作業をやりました。両党がぶつかった選挙区より状況は良かったと思いますけれども、予想した票よりも半分ぐらいしか乗らなかった。あのとき共産党は殆どの選挙区に候補者を立てましたので相当、共産党の票も伸びたと思います。今後の国政選挙での協力に関して、僕は志位さんと同じ認識です。ただ、ちょっと失礼なことを言わせて頂くと、やっぱり僕たち保守政党にとって共産党は対極の政党ですから、アレルギーがあることは確か。それに基本政策というのは必ず問われるので、そこのところを横に置いてということにはならない。さっき仰った日米安保条約に加えて、消費税も各々が違うスタンスなので、いざ政権を一緒に運営するとなると、足がもつれることは間違いない。ちょっと厳しいかなというふうに僕は思います。
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●連合政府は「キツい」
吉田徹・北海道大学教授:岡田さん、民主は共産、維新からラブコールを送られている状況です。どう受け止めますか。
岡田克也・民主党代表:参院選を含めて、民主党は過去3回の国政選挙で3連敗中なのですけれど、それは何故かといえば、第三極が出てきて野党が分裂したことも大きい。自民党や公明党の得票数が増えている訳ではないのです。野党が分裂することによって小選挙区で勝てない。この状況を変えないといけない。我々は、国会での統一会派を維新の党に呼びかけている訳ですけれども、ぜひですね、国会では一塊になって、巨大与党に立ち向かっていきたいと思っています。で、志位さんからは、かなり思い切った提案をして頂いたと思います。ただ、やはり国民連合政府は、率直に言ってキツいというふうに……。
吉田:どこが「キツい」のでしょう。
●選挙協力だけでは限界
岡田:政府を構成するということは、国民に対して重い責任を負います。価値観を共にした強い政府でないとスタートして直ぐに意見の違いが露呈したり、思い切ったことができなかったりする。国民連合政府は、基本的な理念や政策で大きな開きがあり、その上で一つの事だけをやるということですが、その間にいろんなことが起き得るわけです。例えば日本有事や国債市場のクラッシュです。そういうことまでキチンと対処できる政府が必要と考えると、民主党と共産党が組むという選択はできないと判断しています。
吉田:現政権の問題は皆さん共有し、何らかの協力が必要だということも理解している。問題はその一歩先に踏み込めないことです。14年の衆院選で、共産党を除く野党間で選挙協力できた小選挙区は194。そのうち与党候補に勝ったのは僅か42。単なる選挙協力では限界があることが露呈しています。
岡田:14年の衆院選で、民主と維新の候補者がバッティングした選挙区で、自民党候補に勝った民主の候補者は2人しかいない。逆に言うと小選挙区で勝った他の候補は、維新と調整ができていた。立候補調整だけでもそれだけの効果がある。ですから小選挙区で一番有力な候補者に絞るということが非常に大事になる。次の選挙で徹底的に安倍政権と闘うということであれば、共産党さんにも思い切った決断をしてもらいたい。選挙区の中で最も有力な候補者は多くの場合、民主や維新の候補であるわけですから、そこに共産党が候補者を立てることが無いようにして頂く。私はそれが次の選挙の勝利に繋がると思います。
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志位和夫・共産党委員長:民主党政権のことは言いたいことがいろいろありますが、今日は、コメントは控えます。ただ安倍政権の経済政策への批判という点では、共有できる部分があると思うのです。というのはアベノミクスの本質はトリクルダウンです。つまり先ず大企業に儲けてもらえば、それがいずれは家計に回ってきますよということです。しかし14年度から今年度の4~6月期、7~9月期にかけて、GDPがマイナスにも関わらず、大企業の経常利益は過去最高益なのですよ。これは戦後、一度もなかったことなのです。
松野頼久・維新の党代表:企業の内部留保も増えた。
志位:そうです。アベノミクスは、大企業の内部留保を積み増しただけです。その一方で日本経済全体は低迷が続いている。トリクルダウンが成り立たないということは明瞭になったわけで、ここは政策転換をやる必要がある。具体的には人間らしい雇用のルールをキチンとつくっていく。これは民主党とも一緒に反対しましたが、労働者派遣法が改悪され、正社員から非正社員への流れが加速している。この流れを逆転させて正社員が当たり前の社会にしていく。それは全体の賃金を押し上げます。最低賃金も思い切って底上げしていく。政治のリーダーシップで、大企業の儲けを社会に還元させていく。アベノミクスを転換するという方向は、話し合えば共有できるのじゃないかと思うのです。
●内部留保に課税せよ
松野:全く同じ認識です。志位さんは随分、柔らかく仰ったけれども、僕は法人税減税をするならば内部留保への課税をセットでやるべきだと考えます。法人税減税で企業の活力は支えるけれども、それは内部留保に回すためじゃなくて、市場に回すためなのだというメッセージを込める。低率でいいので、内部留保に課税するべきというのが僕の持論です。
岡田克也・民主党代表:経済政策でいえば、個々に一致できるものはあると思う。例えば法人税を一律で減税しても投資拡大や賃金アップに繋がらない事は、過去の安倍政権の結果から実証済みです。それよりも強力な投資減税を行うべきです。但し「大企業は悪」みたいなね(笑)、そういう発想はちょっと違って、そこまで言わなくていいじゃないかと思いますが……。
志位:悪と言っているのじゃないですよ。私達は大企業を潰すとか、敵視するということでは毛頭ないのです、岡田さん。その社会的力にふさわしい責任を果たしてくださいというのが、私達の立場なのです。アベノミクスはあまりに大企業に軸足を置いた政策で、そこを転換して暮らしに軸足を置く。そうした方向性は共有できるのじゃないでしょうか。ただ消費税増税という問題があります。税制に対する考え方を一致させることは難しい。しかし先ず問われるのは、17年4月に消費税を10%に上げていいかどうか。ここは税制に対する考え方の違いはあっても、今の経済情勢の下では増税しないという方向で話し合う余地があるのではないでしょうか。
吉田徹・北海道大学教授:アエラの読者アンケートでは、野党に進めてほしい政策は社会保障が72.9%でトップ。子育て支援、教育と続いて、安全保障は37.3%で4番目だった。安保関連法制には反対が多数を占めるかもしれない。しかし貧困が広がっている中で、国民が政治に求めるのは日々の生活を守ることです。野党が安保関連法制反対で一致できても、その他の身近な政策でまとまれるかが問われている。
●参院選は安保に比重
岡田:そこは痛し痒しです。安倍政権としては、世論の反対の強い安保関連法制から、他の政策に関心を集めたいと思っている。その路線に乗ってしまうことになりかねない。次の国政選挙は参院選で、政権選択選挙じゃない。やっぱり安全保障の比重というのは、かなり高くなると思っています。
志位:経済の問題は大事で、私達も国民の暮らしを第一に考えた対案を出していこうと思います。しかし経済の問題と立憲主義の回復という問題は次元が違う。安倍政権の独裁を止めるのは、暮らしにも関わる大問題だという事を訴えながら、経済政策の転換も訴えるという事になると思います。
岡田:議論をしてきて、政治家同士の信頼関係って非常に重要だと思っています。もちろん松野さんとは長い間の信頼関係がある訳です。志位さんとは路線は全く違うのだけれども、政治家として信頼している。そういう中で、これからいろんな可能性があるのだろうと思っています。
志位:今、岡田さんから信頼という言葉を聞いて大変、嬉しい思いです。岡田さんは、議員として私の1期先輩で、長い付き合いの中で私も同じような信頼を感じています。お互いに信頼感を大事にして何とか一致点を見出だしていきたい。先ずは参院選で勝つために、筋が通った形で選挙協力をどうやってやるか、話し合いを続けたいと思っています。
岡田:話し合いを継続していくというのは確認していますね。
松野:共産党という政党と考え方は違いますが今回、初めてジックリ話してみて、志位さんという政治家は魅力的だと感じました。安倍政権によって憲法という民主主義の土台が崩れるという危機感は一緒です。
志位:その危機感を共有できたのは非常に大事なことですね。
吉田:“一強多弱”の責任は野党にもある。一緒にやることの不自然さを乗り越える事こそ政治ですから期待しています。
【管理者一言:本稿の感想は読者の各々に任せるが、管理者として「リベラル野党総結集」の最もネックになっているのは、やはり「民主-岡田」と言わざるを得ない。その最も凝縮されているのが①「政府を構成するということは、国民に対して重い責任を負います。価値観を共にした強い政府でないとスタートして直ぐに意見の違いが露呈したり、思い切ったことができなかったりする」と②「選挙区の中で最も有力な候補者は多くの場合、民主や維新の候補であるわけですから、そこに共産党が候補者を立てることが無いようにして頂く」との発言。①発言は「民主党だけの自己運動でも思い切った戦略・戦術が取れていない日和見主義者が何をエラそうなことを言っているのかと思う。②発言も、ハッキリ言って「選挙区の中で最も有力な候補者は多くの場合、民主や維新の候補であるわけですから」って何を根拠に言っているのか?共産党候補の方が魅力的な場合も少なからずある。そこは「候補者調整する」と言っているのだから民主党が共産党候補を応援する事もあることも含めて個別選挙区事情に応じた個々適切判断する事で、いきなり「そこに共産党が候補者を立てることが無いようにして頂く」等という発言は、力もないくせに、あまりにも上から目線だ。民主党のまだまだ反省のないのは「民主党政権崩壊」の7割程度は民主党自身にある事を真摯・細部まで総括できていない事だ!】(AERA:管理者一部編集)

【紹介1】東日本大震災で74人が犠牲になった南三陸町病院が再建され開業。総工費56億円の内「約22億円」が台湾からの寄付によるもので、現地の方々が「日本でもっと知らしてほしい」という事なので紹介します。

【紹介2】アムネスティ・インターナショナル日本(Amnesty International Japan)
<書き損じハガキで国際協力~声をあげられない人びとのために、あなたの力を~>
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(民守 正義)