安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(6)

安倍政権の破滅的リスクと参議院選挙の展望(6)


《武器輸出解禁で強まる国の企業統制と密室性「平和を語れない国」》
<民生用中心から軍事用との「二重利用」優先へ>
 日本政府による武器輸出が本格的に始まろうとしている(注)。防衛装備庁を新設して関係企業を統制下におき、政府主導で武器を売り込む体制が整った。国の科学技術政策も、これまでの民生用中心から軍事用とのデュアルユース(二重利用)優先に変わろうとしている。しかし何より重要な変化は、戦後70年間平和を維持してきた日本が経済利益と引き換えに、世界に向けて平和を語れない国になることだ。
<国民の目が届かない密室性>
 政府は12月、特定秘密保護法(2014年12月施行)に基づく身元調査の結果、秘密を外部に漏らす恐れがない「適正評価」を得た公務員と民間人が計9万8千人いることを明らかにした。内、民間人は2,200人。その大半が防衛関係であり、今後の武器輸出の秘密を扱う有資格者になる。秘密を指定した各省庁は、同法10条で「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼす恐れがある」と判断すれば、国会への秘密の提供を拒否できる。内閣官房は会計検査院への資料提供にも消極的で、国民の目が届かない密室性が高まる。この特定秘密保護法は、武器輸出三原則見直し(13年10月)、「戦争関連法」(15年9月成立)と共に武器輸出の土台を形成している。同三原則は元々、1976年に三木内閣が示した統一見解を根拠にしている。その後、日米間で共同研究の案件が生じた場合等に官房長官談話で例外として認めてきた。今回の解禁はそうした運用を廃止し、経済戦略として積極展開するのが目的だ。解禁にはそれなりの「理屈」がある。経団連によると、我が国の武器市場は、これまで自衛隊しかなく、生産量が少ないために価格が割高だ。世界の兵器はドンドン先端化しているが、メーカーにとって世界の水準に追いつき、かつ製造設備を維持するのは容易ではない。
<韓国の武器輸出拡大が刺激に>
 そこで輸出に踏み切れば、製造コストが下がり、防衛予算にも貿易面でも有益だ。近代兵器は機械、電子、化学、通信、IT、光学など広範な技術が必要で裾野が広い。そこでのイノベーションが民需部門に波及する効果も期待できる。先行する成功事例が、韓国の武器輸出である。2006年には2億5300万ドルだったが、15年は40億ドルになると予測されている。9年間で16倍の成長率だ。初期は兵士の装備品や部品、弾薬だったが、今では超音速高等練習機T-50をインドネシア、タイ、フィリピン、イラクに輸出している。これは米ロッキード・マーチン社が開発した戦闘機で、重要部分は殆ど米国製。それでも経済効果は1機あたり中型自動車1200台に相当する。経団連や政府が刺激を受けたことは想像に難くない。総務省が発表した昨年の政治資金収支報告書では、企業・団体による自民党への献金が22億1500万円で突出している。献金の旗を振るのは経団連だ。法人税減税だけでなく武器輸出解禁で動いてくれたことへの謝礼の意味もあるだろう。
<米国の「産軍複合体」のミニ版>
 武器輸出の相手として想定しているのは、米国、欧州、NATO(北大西洋)、豪州、東南アジアなど。自衛隊向けとは別に輸出専用の新規の武器も開発する。当然だが民間企業は自由に売って良い訳ではない。地域別戦略の下、政府が相手国の政治情勢や武器の使い方を分析し、第三国移転や目的外使用のリスクがないかを判断する。実際には内閣官房、防衛省、防衛装備庁、外務省、経済産業省がチームを組む。相手国に購入費を支払う余裕がない場合、政府資金援助や外債発行の引き受け、信用供与等が必要になるので、金融機関が動員される。商社も現地の政治情報を収集する役目を担う。武器輸出を軸に政府と経済界全体の一体化が進み、メーカーには官僚の天下りが増えるだろう。こうした政府と企業の密着は、20世紀前半の欧州の有力武器メーカー(英国のヴィッカーズやアームストロング社、仏シュネーデル・クルーゾー社、独クルップ社等)に、そのモデルを見ることができる。米国でも戦後、軍需企業、官僚、軍隊、政治家が形成する強固な「軍産複合体」が形成され、米政府の外交、軍事政策の決定に強い影響力を持っている。いわば、そのミニ版が日本にもできるわけだ。
<戦争当事国の片方に肩入れすることに>
 最大の問題点は、武器輸出が基本的に国際紛争や緊張関係が激しくなるほど儲かるビジネスであるために、危機の高まりや戦争の発生、武器の消耗を内心で期待するようになることだ。また企業にとっては政府から指定される秘密の種類や量が増え、株主や世間に開示できない閉鎖性が高まる弊害がある。しかし経団連はじめ関連企業の、この面での自覚は薄そうだ。それどころか不況期には業績向上の期待を武器輸出拡大に託すことが当たり前になるのではないか。日本政府は交戦中の国には武器は売らない方針だが、もし売った後に戦争が起きた場合、債務を返済してもらうには、その国が勝たねばならない。武器の修理や補給等のアフターサービスも必要になる。つまり戦争の片方に肩入れすることになり、中立的立場は取れない。日本は、もはや世界に向けて平和を語ることなどできなくなる。最後に科学技術政策。2016年1月に策定される「第5期科学技術基本計画」の検討段階では、「軍事用・民生用の両方に使えるデュアルユースの重要性」が強調されており、従来の民生用中心の方針ががらりと変わる。つまり国の科学技術予算は軍事用に使えるものを優先する配分になるということだ。企業の技術はもともと軍事用にも民生用にも使えるものが多い。そうした先端技術が軍事に配慮して密室に置かれた場合、民生分野の新製品開発やオープンイノベーションを阻害することも懸念材料になる。
(注)日本政府による武器輸出の近年の事例
米国:ペトリオットミサイル部品の輸出(2014年7月)、護衛艦イージスシステムのソフトウェアと部品輸出(15年7月)
英国:空対空ミサイル共同研究の開始(14年11月)
豪州:潜水艦共同開発・生産の可能性調査(15年5月)
インド:救難飛行艇(US-2)の輸出を協議(12年~)
(WEBRONZA:木代泰之)

  《日銀‐黒田総裁が“ブン投げ”辞任の可能性》
 原油価格の暴落は、日銀—黒田総裁にとって地獄の苦痛に違いない。
 石油関連商品は値下がりし、既に過去最低水準の燃油サーチャージも 更に引き下げられ、海外へのフライト代も安くなる。発電コストも大幅に抑制されて、電力各社も思い切った値下げに踏み切るかもしれない。庶民には“原油安サマサマ”だが、2%の物価上昇目標を掲げる黒田総裁は、壮絶なデフレ圧力にのたうち回るハメとなる。
 マーケットからの追加緩和圧力に加え、7月には参院選が控える。何としても株高を演出したがる安倍政権からの矢のような催促に屈する形で、恐らく春先から夏前に「バズーカ3」を発射せざるを得なくなるとみられている。「15年末に日銀の国債保有シェアは総発行分の3割を突破しましたが、更なる緩和に踏み切れば軽く4割を超えてしまう。欧州中央銀は保有シェアを33%までに抑えるルールを課していますが、黒田日銀は無軌道過ぎます。中央銀行の健全性を損なって財政や通貨の信認を傷つけても、得られる効果が薄いことは過去3年で証明済み。結局は原油安に太刀打ちできず、2%の物価目標も達成不可能です。当初は『2年で達成する』と豪語したはずが、延期を重ね、達成目標は『16年度後半頃』までズレ込んだ。さすがにマーケットからも見放されると思います」(斎藤満氏=前出)総裁任期は18年までだが、ずっと緩和を続けられるわけがない。16年度後半に2%がムリとなったらどうするのか。
 プライドが人一倍高い人物だけに、市場から退場勧告を突き付けられる前にケツをまくって辞める可能性もある。国民は黒田と心中はゴメンである。(日刊ゲンダイ)

  《吉永小百合が「1億総活躍社会」に苦言》
 12月30日放送の「報道の日2015」で女優の吉永小百合が、安倍政権の目標として掲げられている「1億総活躍社会」に苦言を呈する場面があった。番組VTRでは「吉永小百合と辿る戦後70年」と題し、司会の関口宏と吉永が、対談形式で戦後の日本の歩みを振り返った。その中で、2011年3月11日に発生した東日本大震災の話題になると、関口は吉永に震災時の状況を訊ねた。当時、渋谷にいたという吉永は、急に目眩の様な揺れに襲われたと話す。直前に歯医者で打った麻酔の影響だと勘違いするほどだったそうだが、周囲の店から人が飛び出してきたため、地震だと気付いたのだという。「それから後に大変な津波が起こってね。暫く置いてから原発の事故を知って…」と話す吉永に、関口も「多くの日本人が引きずっていますよ。あのショックは」と語りかけた。すると吉永は「忘れちゃいけないことだと思いますよ」「特に、まだ福島の人達が10万人以上も故郷に帰れないでいるってことを忘れて、1億総活躍とか言ってはいけないのじゃないかなって気がする」と、安倍政権の掲げるスローガンに苦言を呈した。吉永は、被災地の帰還困難区域にも足を運んだことを明かした上で「放射性廃棄物がビニールみたいな大きな袋に包まれて、田んぼや畑に置いてあるんですよね」「それは、どうにもならないくらい辛い光景でしたね」と、声を絞り出すように語った。更に吉永は「原発のことも皆で痛みを分かち合わないと。『私達は汚染が怖い』とかじゃなく、この国に暮らしている人達が、もっと考えていかないといけないと思う」と訴えた。(live door’NEWS)

【紹介1】「平和の琉歌」http://bit.ly/1MQbwcr :YouTube:伊波 洋一 (いは よういち)

【紹介2】アムネスティ・インターナショナル日本(Amnesty International Japan)
<書き損じハガキで国際協力~声をあげられない人びとのために、あなたの力を~>
うっかり書き間違えてしまったハガキや、買い過ぎて余ってしまった切手等がありましたら、ぜひ、アムネスティに送って下さい。署名や要請書を送る際の送料に使用させて頂くなど、活動を支える大切な資金になります。送り方は簡単です。封筒などにハガキを入れて、アムネスティ日本の東京事務所までお送り下さい。
ご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。
※使用済みの切手、使用開始したテレフォンカードは受け取れません。
ご了承ください。
[詳細は:アムネスティhttp://www.amnesty.or.jp/get-involved/donation/various_donation/postcard/]
【送り先】
公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
〒101-0052 東京都千代田区神田小川町2-12-14 晴花ビル 7F
「書き損じはがきキャンペーン担当」まで
(民守 正義)