安倍政権打倒の道程-参議院選挙とTPPシリーズ(18)

安倍政権打倒の道程-参議院選挙とTPPシリーズ(18)


《TPP交渉に「日本はイカサマ麻雀にハメられた」》
<米、カナダ、メキシコはグル>
  4日間も延長し「大筋合意」したとされるTPP交渉。安倍(戦争)総理は「国家百年の計」「国益にかなう最善の結果を得た」と悦に入り、大マスコミは〈巨大経済圏の誕生〉〈参加12カ国の経済活性化〉と手放しでホメちぎっているが、真に受けたらダメだ。衆院議員時代からTPPの危険性を指摘し、米アトランタで開 かれた閣僚会合をウオッチした反対派の急先鋒、TPP阻止国民会議事務局長の首藤信彦氏は「安倍政権はTPPの罠に見事に引っかかり、タヌキの葉っぱを買わされた」と断じる。
―甘利TPP担当相が行司役として「大筋合意」をまとめたと伝えられていますが?
首藤:甘利大臣は行司すらやっていませんし、日本は交渉なんかしていません。他国は2国間協議で丁々発止やりあっているのに、日本は蚊帳の外だった。日本の交渉団メンバーは所在なさげに街中をぷらついたり、近くのホテルでコーヒーを飲んで時間を潰す有様だったのです。アトランタ会合は猿芝居、つまりヤラセだった。開催前から内閣府が自民党議員や農業関係団体等に「必ず決めますから、ぜひ現地入りしてください」と触れ回っていたのです。おかしな話でしょう。自動車の原産地規制をはじめ、新薬のデータ保護期間や農産品等、問題は山積みなのに。前回のハワイ会合から2カ月足らず、たった2日間でまとまるなんて考えられない。「大筋合意らしきモノ」をつくりたかった日本の強い働きかけで形式的に集まっただけだったのです。
――アトランタ会合前に話はついていたということですか?
首藤:要するに“シャンシャン総会”だったんです。閣僚会見後に行われた渋谷内閣審議官によるブリーフィングで、内閣府と農水省が大量のペーパー資料を配布したことでも分かるように、東京でお膳立てしてあったのです。来夏の参院選での争点化を避けたい安倍政権は、一刻も早く「大筋合意」という形をつくって予算をバラまき、批判の矛先をそらそうと焦っていた。それで7月に開催された前回のハワイ会合で全てのカードを切って決着させようとしたんです。ところが思わぬ誤算が生じた。乳製品の輸出拡大を狙うニュージーランドと自動車の原産地規制に拘ったメキシコです。日本から見れば最後の瞬間に会合をブチ壊され、米国は、それを止めようともしなかった。結果ハワイは見送り。9月21~22日にサンフランシスコで日本、米国、カナダ、メキシコの4カ国が自動車を巡って協議した。パニクった日本が折れて、部品の域内調達率を45%程度とすることになったのです。
――メキシコはなぜそこまで強硬姿勢を貫けたのでしょうか?
首藤:日本以外の3カ国は裏で握っていたとみています。メキシコ政府の後ろにはカナダ政府がいて、更に、その後ろにはカナダ自動車労組(CAW)、全米自動車労組(UAW)、米国の民主党――と繋がっている。つまりメキシコの主張は米国案。日本はイカサマ麻雀に誘い込まれたようなものだった。だから、アッ という間に決着し、アトランタ会合への流れができたのです。
――日本はカモにされたのですね?
首藤:メキシコ、カナダにもメリットがありますが、最も利を得るのは米国。米国の中小企業から部品をドンドン買え、ということなのです。米国はアトランタ会合がスタートする前にキックオフパーティーを開いていたのですが、その席でUSTR(米通商代表部)のカトラー次席代表代行は「米国の中小企業のためには、 世界の貿易協定に空白をつくってはならない」「我々は死に物狂いでTPPに取り組んでいる」と強調していました。TPPは対中国戦略の側面もある。中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を創設して攻勢を強める一方、米国の衰退は誰の目にも明らか。米国は何としても身内の仕組みが欲しい。内容はともかくとして、形だけはつくっておこうと。だからTPPは竜頭 蛇尾で十分なのです。
日本にとってTPPは農業には大ダメージだけれど、商工業は輸出増で潤うと思われているようですが、それは大間違いです。日本企業の輸出が増えるのではなく、米国の中小企業が日本にドンドン輸出してくるのです。日本政府が外国企業の活動を後押しすることも取り決められています。
<会見で「おめでとう」と言った日本メディア>
――日本の大マスコミはそうした情報を一切伝えず、お祝いムードに加担していますね?
首藤:閣僚会見の質疑で「おめでとうございます!」と切り出した日本のメディアには呆れました。その時点ではロクに情報を得ていなかったはずです。政府は交渉内容を明かそうとしなかったし、会合の会場は出入り禁止だった。渋谷審議官のブリーフィング資料でようやく概要が分かった程度でしょう。そもそも日本では「大筋合意」に達したと報道されていますが、それ自体も怪しいものです。〈大筋合意したのか?〉と問われたUSTRのフロマン代表はイエスともノーとも答えず言葉を濁していた。共同宣言もありません。それもそのはずで、貿易協定が一変する重要な会合だったにも関わらず、3カ国は代理出席だった。「大筋合意することに合意した」というのが真相に近いという感触です。
――日本からむしり取ろうとする米国も妥結を急いでいたのでは?
首藤:一言で言えば、TPPは米国が周到に仕掛けた罠なのです。TPPは表部隊と裏部隊がワンセット。 表のTPPと裏の2国間協議は一体化されていて、TPPが発効しなくても2国間協議の合意事項は効力を発する仕組みになっているんです。米国はTPPがどう転んでもオイシイ思いができる。渋谷審議官の会見で配布されたペーパーにも記してありますが、日米間はあらゆる分野で交換文書をまとめている。例えば、自動車の非関税措置はTPP発効までに実行することになっています。
――日米並行協議ですね。いつの間に、そんな不平等条約を押し付けられたのですか?
首藤:安倍(戦争)総理は、野党時代はTPPに反対していました。それなのに政権に返り咲くと掌を返し、アベノミクスを進めるために米国にTPP参加を頼み込んだ。それで突き付けられたのが日米並行協議です。米国は日本との間に経済問題が持ち上がると、必ず安全保障問題で攻めてきます。50年代に起きた日米貿易摩擦は「糸と綱を取り換えた」と言われた。糸は繊維、綱は沖縄。繊維で譲歩して、沖縄返還に至ったのです。TPPでは中国の尖閣諸島進出や北朝鮮の核・ミ サイル開発をネタに揺さぶられ、バンザイしてしまった。どれも架空の話で、まるでタヌキの葉っぱですよ。日本は米軍の力を借りなければ情報収集はおろか、自国防衛もままならない。軍事オンチだからシーレーン(海上交通路)の脅威を煽ればたちまちヘタる-というのが米国の認識なのです。
――TPPはどこに向かっていくのでしょうか?
首藤:17年に誕生する米国の次期大統領が新体制を敷くまで進展しないでしょう。TPPは「参加6カ国以上、GDP合計が85%以上」という条件をクリアしな ければ発効できず、日米のどちらが欠けてもパーです。これから事務レベルで内容を詰め、2~3カ月以内に最終的な協定案をまとめて署名する。その後、議会で批准する手続きを踏まなければなりませんが、米国は署名90日前に議会への通知を求められる。急ピッチで作業が進んだとしても署名は来年1月。経済効果等の調査もありますから、審議入りは2月以降でしょう。その頃は大統領選の予備選挙が本格化していて、TPPどころではありません。
――有力候補とされる民主党のヒラリー・クリントン前国務長官やバーニー・サンダース上院議員は反対派。共和党のドナルド・トランプ氏も猛批判しています。
首藤:過去にも国連の前身の国際連盟や40年代のITO(国際貿易機構)等、主導した米国が議会に拒否されて参加しなかった例は幾つもある。米国はTPPに拘る必要がありませんから、発効しない可能性が高いとみています。しかし日本は日米並行協議を背負わされてしまった。全産業がリスクにさらされ、国のあり方そのものが変容する危機に直面しているのです。
▽すとう・のぶひこ 1945年、中国・大連生まれ。慶大大学院博士号取得(経済政策)。
(日刊ゲンダイ)

《「地域と国会をつなぐ活動が重要」民主党:TPP対策本部・経済連携調査会全国幹事会議》
民主党は12月15日「TPP対策本部・経済連携調査会全国幹事会議」を党本部で開いた。
 会議では、これまでの国会状況の報告、各省庁の担当者からのヒアリング、各地の取り組み状況の報告を受けて意見交換会を行なった。党の政策作りは、各地域の声をよく聞く事から―との考えから、各地で活動している衆参各選挙区の公認内定者(総支部長)が幹事として出席した。郡司彰TPP対策本部長(参院議員)は会議冒頭の挨拶で「TPPが10月5日に大筋合意され、11月25日に政府の対策案が発表されたが、具体的な中身は来年の秋以降だという。これは参院選次第だという脅しのようなやり方だ」と政府の対応を批判した上で、「生産者、地域、関係する加工業界の方達や消費者と共に食の安全保障については、我が党こそが自信を持って農家に訴えることができるという事を示していきたい。皆さんの意見を聞いて、今後の対策のより具体的な形に生かしていきたい」と述べた。
枝野幹事長は「今の安倍政権に対する不信・不満が高まっていると思う。本来そうした地域を支える政策、農業政策を中心にやってきたのは民主党であるという自負はあるが、まだまだ十分に伝わりきっていない。今回、総支部長の皆さんにはTPP対策本部の幹事になって頂いたが、農山漁村を守るという観点に立った活動をお願いすると共に、党本部としても、この本部の議論を通じてサポートしていきたい」「地域によって差はあるが、この会議を通じてTPPの問題点について共有を図ることが重要だ」等と訴えた。関係各省からのヒアリングに続いて、鳥取県連の湯原俊二総支部長が現地調査結果を報告。湯原総支部長は、鳥取西部の農協、酪農、畜産業の人々から出された「コメについては、産地表示の明確化をしてほしい」「大規模農家だけではなく、兼業農家も支援してほしい」「戸別所得補償制度を復活して欲しい」「多額の借金をしている状況で、次世代に繋げようという気になれない」「農産物を海外に輸出というが、ノウハウもなく間のエージェントが儲けるだけではないか」「子牛価格が上がっており、今の内に売って廃業してしまった方がいい」等の意見を紹介した。その後の意見交換でも、各地の声等が報告された。
 会議の終わりに古川調査会長は「地域の皆さん、候補予定者の皆さんと連携を取ることが大事だ。これからも、こういう機会をいろいろな形で作っていきたい」「TPPについての我が党の基本的な考えは、TPPを含む高いレベルでの経済連携を進めていくということで、民主党政権の時から変わってはいない。しかし今回の『大筋合意』については、これは極めて大きな問題があり、どう指摘しながら対応していくのかだ。政府からは試算や情報が出ていない中だが、情報を集約して、更に地域の声を聞きながら、最終的な党としての考え方を出来るだけ早く示したい」「頂いた地域の声を国会での質疑に活用する等して、地域と国会を繋げる活動とする事が、次の選挙へとも繋がる事になる」等と述べた。
(民主党広報委員会)
【紹介】「平和の琉歌」http://bit.ly/1MQbwcr :YouTube:伊波 洋一 (いは よういち)
(民守 正義)