安倍政権打倒の道程-参議院選挙とTPPシリーズ(2)

安倍政権打倒の道程-参議院選挙とTPPシリーズ(2)


《TPPとは何か?その交渉の真相と国益は?》
<TPPのあらましと直近の交渉状況>

1.TPPとは=環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)のこと。
2.2005年6月3日にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国の経済連携協定として始まり、2006年5月に発効となった。
3.2006年1月1日から加盟国間の全ての関税の90%を撤廃を目指し、対象品目・サービス事業等は産品の貿易、原産地規則、貿易救済措置、衛生植物検疫措置、貿易の技術的障害、サービス貿易、知的財産、政府調達(国や自治体による公共事業や物品・サービスの購入など)、競争政策を含む自由貿易協定の全ての主要な項目をカバーする包括的かつ加盟する他国籍間の協定となっている。
4.目的=一応の目的の一つとして「加盟国の戦略的提携によってマーケットにおけるプレゼンスを上げること」となっているが、実態は[各国の主要産業・サービス事業ごとの弱肉強食]となっており、現状は米国に極めて有利に協議(大筋合意事項、含む)が進んでいると言われている。
5.原則、非公開¬=TPPは原則非公開とされ全文の閲覧が行えるのは、この協定に関わる各国の3名ずつのみとなっている。
6.TPPの実態=加盟国・交渉国に日本を加えた10か国のGDP(国内総生産)を比較すると域内GDPの91%を日本とアメリカの2か国が占めており、実質は日米のFTAだとする見方もある。
7.交渉上の内容的「大枠合意」=2011年11月12日に加盟国拡大により交渉上の内容的な分野等について「大枠合意」に至り、輪郭が発表された。その「重要な特徴」5項目が以下のとおり。
(1)包括的な市場アクセス(関税その他の非関税障壁を撤廃)
(2)地域全域に跨る協定(TPP参加国間の生産とサプライチェーンの発展を促進)
(3)分野横断的な貿易課題(TPPに以下を取り込みAPEC等での作業を発展させる)
①規制制度間の整合性:参加国間の貿易を継ぎ目のない効率的なものとする
②競争力及びビジネス円滑化:地域の経済統合と雇用を促進する
③中小企業による国際的な取引の促進と貿易協定利用を支援
④開発:TPPの効果的な履行支援等により、参加国の経済発展上の優先課題が前進
(4)新たな貿易課題:革新的分野の製品・サービスの貿易・投資を促進し、競争的なビジネス環境を確保
(5)「生きている」協定:将来生じる貿易課題や新規参加国によって生じる新しい課題に対応するため、協定を適切に更新
なお同大枠合意に示される以上の交渉内容の詳細については、交渉参加国から公表されていない。
8.交渉参加後発国の追加条件
(1)既に交渉を始めていた先行九カ国から「『交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある』『既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できない』との追加条件を承諾した上で参加を認められる」との追加条件。日本政府は当初「日本はそうした条件の提示はされていない」と否定したが、最近になって、なし崩し的に、ようやく認めている。
9.投資家対国家紛争解決(ISD)条項
2013年11月6日に「紛争解決」制度として導入に合意した。この制度は、不利益を被った企業が国を訴えるルール。但し訴訟の乱発を防ぐことが条件。この制度は一部メディア等で「海外進出する日本企業には追い風になりそう」と評価する意見もあるが、このISD条項活用国で米国は全勝無敗。
 また例えば、米国等が、このISD条項を武器に日本の生命保険・健康保険等の社会保障制度に至るまで「市場開放=民営化」を求められたら対抗できない」とリベラル野党を中心に、すこぶる評判が悪く「これだけでもTTPから即刻、脱退すべきだ」との声も大きい。なおTTPは事務形式上(各国とも自国の国会承認が必要で、米国でさえ2年後くらいはかかるのではないかと言われている)は、即刻脱退は、その後の経済友好関係等を度外視すれば可能。
10.ラチェット(Ratchet)条
 この条項は、国が自国の産業を守る為、外資を規制する等が出来なくなる仕組み。原則、法律で再び規制すること等を禁止する。あくまで原加盟国4か国間で発効している環太平洋戦略的経済連携協定の拡大である。日本は2013年11月23日に批准した。
11.日本の交渉状況
(1)安倍政権は昨年12月総選挙公約で「例外なき関税撤廃(TPP)は絶対反対」を掲げて闘ったものの、実際には一昨年2月22日、既に安倍(戦争)総理とオバマ米大統領との会談で「TPPでは『聖域なき関税撤廃』が前提ではない」と約束していた。つまり、その約10か月後の昨年12月総選挙時には、ウソツキ公約を堂々と掲げていたことになる。自民党内でも「例外なき関税撤廃(TPP)は絶対反対」を掲げて選挙戦に臨んだ候補者も少なくなく、おそらく自民党内にも安倍(戦争)総理は「ナイショ・ウソツキ」で身内も騙し選挙戦に臨ましたのであろう。
 オソロシイ安倍(戦争)総理だ。
(2)一昨年7月15日から25日まで、マレーシアのコタキナバルで、第18回TPP交渉会合が開催され、その期間中の7月23日午後、日本は正式に交渉参加した。
12. [大筋合意]が[大筋合意]か?=本年10月5日、米アトランタにおいてTPP交渉が行われ、安倍(戦争)総理は、実際の[大筋合意]の記者発表前にフライングして「大筋合意」を発表した。
 ただ、この「大筋合意」も「この目安で大筋合意しよう」という程度のもので、いわゆる「大筋合意」のレベルに達したものでもないという評価も飛び交っている。しかし一応、農林水産省や経済産業省等が大筋合意内容結果の概要を公開しているので、それを掲載する。
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コメ‐日本は778%の高い関税を維持する一方で、最低輸入量に従い、1割に当たる年77万トンを無関税で輸入する。更にアメリカとオーストラリアからの無関税の輸入枠を新設する。これに対して、日本政府は新たな輸入枠で国内に入るコメと同量の国産米を備蓄米として買い入れ、価格への影響を抑えることを検討している。
肉類‐牛肉、豚肉の関税を段階的に大幅に引き下げる。牛肉は現行の関税38.5%を当初27.5%に。その後段階的に引き下げ、16年目以降は9%となる。豚肉はソーセージなどに使われる安い価格帯のものへの関税は、現行の1kg当たり482円を当初は同125円に。その後段階的に引き下げ10年目以降は50円になる。日本政府は畜産農家の経営悪化を考慮して、参加国からの輸入量が急増した際に高い関税に戻す「セーフガード」(緊急輸入制限措置)が設ける方向で調整を続けている。
水産物‐マグロ、サケ、マスなどは11年目までに、アジ・サバは12~16年目までに関税撤廃する。
乳製品‐バターや脱脂粉乳などの乳製品に低関税の輸入枠を設ける。  チェダー、ゴーダ、クリームチーズなどは16年目までに関税を撤廃。 2015現在の日本は国内の生乳生産の減少により、バター不足が慢性化し、一部輸入に依存する状態であった。
小麦‐アメリカ、カナダ、オーストラリアに小麦の輸入枠を新設。当初は計19.2万トン、7年目以降は25.3万トンとし、関税は維持。代わりに国が輸入して製粉会社に転売する時に上乗せする輸入差益を発効から9年目までに45%削減。
酒類‐ボトルワインの上限税率(125円/リットル)は、関税削減期間中は維持し、8年目までに関税を撤廃。清酒、焼酎は11年目にそれぞれ関税が撤廃されることが明らかになった。
自動車・自動車部品‐日本から輸出する製品に対する関税の99.9%を撤廃する内容で合意した。
医薬品‐加盟国のバイオ医薬品の独占的に販売を認めるデータ保護期間(製薬会社に独占的に販売を認める期間)が実質8年間とした。元々、日本ではバイオ医薬品を含む新薬の再審査期間は原則8年間と規定されているため、結果的に国内事情に大きな変化は生じない公算が高い。
著作権‐原作者らの告訴がなくても、著作権を侵害した者を刑事裁判の被告にできるようにする「非親告罪」が導入される。

《TPPの日米並行協議と米国の日本への要求》
【TPPの日米並行協議】=日本が環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加を認めてもらう条件として、4月の日米合意に盛り込まれたもの。米国の要望に沿った協議内容で、合意事項はTPP発効時点で効力を持たせる。具体的な米国の要求事項と、その対応は以下のとおり。
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金融分野‐金融分野において、自見庄三郎郵政・金融担当相が、2011年11月9日の記者会見で、TPPに関連してアメリカが日本の郵政改革に関心を持っているとし、その件で同年8月にブレイナード財務次官から指摘を受けたと話している。
医療分野‐医療分野においては2011年11月7日、外務省は民主党プロジェクトチーム(PT)総会にて文書で「議論される可能性は排除されない」との見解を表明した。
◎2011年9月、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)は「医薬品アクセス強化のためのTPPでの目標」(以下の9項目)を公表した。
①革新的医薬品・ジェネリック医薬品へのアクセスの「TPPアクセス・ウィンドウ」を通じた迅速化
②ジェネリック医薬品の製造業者にとっての法的予見性の強化
③医薬品に対する関税撤廃
④税関における障壁の低減
⑤模倣医薬品の貿易阻止
⑥各国内における医薬品の流通障壁の低減
⑦透明性と手続きの公平性の強化
⑧不要な規制障壁の最小化
⑨TRIPS及び公衆衛生に関するドーハ宣言の再確認
 なお日本医師会など医療四団体や民主党の反対派は、今後の協議において混合診療、病院の株式会社経営の許可等をアメリカが要求する可能性があると警戒している。
農業分野‐農業分野においては、アメリカ内では日本の交渉参加にあたって全米商工会議所等43団体が「いかなる産業分野、商品、サービスも除外しない包括的な協定を達成すること」を要請する嘆願書を大統領に提出しており、アメリカ政府も数年前のAPEC全品目の関税撤廃の原則受け入れを求めている。
製造分野‐製造業分野においては、日本の自動車市場が閉鎖的とされ、APECではその開放が要求されている。対して11月15日の記者会見で日本自動車工業会の志賀俊之会長は反発、「どこを閉鎖的と言っているのか、具体的な中身を知りたい」と語っている。自動車分野では日本車の輸入が急増したときに関税を元に戻す制度や、軽自動車の優遇税制の見直し等がテーマ。
 その他、保険分野や公共事業の市場開放、食品添加物の安全基準等も話し合われている。
 一般的に日本における「TPP問題」とは米等の農産物関税撤廃・自由化問題と、上記「日米並行協議」で米国からの要求が、日本国内の社会保険制度等や医療関係制度等の公的制度が自由市場化され崩壊する可能性が多く、国内的に対抗措置を取る事すら「ISD条項」で多額の損害償請求がされることも大いにあるなど、実質的に我が国の主権侵害・米国民間制度の影響化(属国化)に組みされることの危惧総体を言う。次回からは、TPP交渉の実態エピソード等を紹介したい。

【紹介】「平和の琉歌」http://bit.ly/1MQbwcr :YouTube:伊波 洋一 (いは よういち)

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■場所:シアターセブン BOX1(阪急「十三」西口徒歩5分)
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松本亜季さん(引き取る行動・大阪)
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■主催:実行委員会 連絡先TEL06-6364-5604(民放労連近畿地連)
(民守 正義)