「戦争法-暴力採決(?)」の怨念-チャンネルが切り替わらなくて(9)

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《アベノミクスは経済政策でもない!GDP成長率から誤解!改めて学ぶ!「経済学の基礎」直近5年の日本経済を振り返るために》
内閣府発表のGDP情報は1月-3月、4月-6月、7月-9月、10月-12月の四半期に分けて発表されます。
<前置き:3つの指標>
本稿を理解する予備知識としては、3種類の指標の理解が必要です。
①名目GDP ②実質GDP ③季節調整済実質GDP
①:名目GDPとは
「世界中の消費者が1年間で消費したある国内産の何かの総額」をさします。
別の表現をすれば「国内の生産者が作った物や提供したサービスの売れた総額」あるいは「全労働者の収入と全法人の純利益の合計」となります。表現が違うだけで同じお金の流れのです。
基本的に名目GDPが上昇傾向であれば好景気、下降傾向であれば不景気となります。
例:25年度名目GDPが500兆円、26年度が550兆円⇒10%の経済成長率であるということ。
②:実質GDPとは
「名目GDPに対し物価の影響を考慮にいれた経済指標の一つ」をさします。
例えば[26年度の実質GDP=26年度の名目GDP÷26年度の物価×基準年の物価]となります。
例:①の条件に加えて、26年度物価1.1、25年度物価1とすると550兆円÷1.1×1=500兆円となります。この500兆円という値は、5年度名目GDPと同額です。
従って10%の経済成長が起こったが物価も10%上がったため「生活の豊かさ」という観点からすると前年度と同じである‐という事を示しているわけです。実質GDPとは基準年度に対する今年度の実質的な生活や商業レベル等を示す指標なのです。
③:季節調整済実質GDPとは
物価の他に季節、傾向、循環(何年周期の流行など)、不規則要因(消費増税やリーマンショックなど経済的影響の大きいイベントによるもの)といった要因を考慮し、もしそれらの影響が無かったとしたらどうか?というif的指標です。
例えば1-3月期より4-6月期が普通の実質GDPではプラスだったが、季節調整するとマイナスだった、と言う場合
【季節調整済みGDPの意義】
これについて一言で言うのは少々困難ですので、生ビールを例にあげ、検討していった上で、その意味をお伝えしまいます。
先ず生ビールの売れ具合の主要変動要因及び変動率が以下の3つであるとします。
・市場傾向
年間売上の20年分の推移を見ると平均で毎年2%ずつビールの市場は伸びている(傾向)
⇒四半期ごとに約0.495%(0.5%とします)増えているとみなせる
・季節傾向
春季・秋季と比較し夏季は売り上げが30%増え冬季は30%減る
・気温傾向
年間平均気温が例年に対し1℃増減すると、夏季の売り上げが1%増減する
以上を踏まえて例題です。
例題
とある年の春季の生ビールの売り上げが10億円だった時、同一年の夏季の売り上げは、幾らになることが見込まれるか。但し年間平均気温が例年に対し2℃高い年であったとする。
答え
春季の生ビール売上に対して、市場傾向(四半期後)・季節傾向(春→夏)・気温傾向(+2度)の比率を掛ければいいのです。意外に簡単ですよね。
【10億×1.005(+0.5%)×1.3(+30%)×1.02(+2%)≒13億3200万円】となります。
(前期比+33.2%などといった表現になります)
【数値から読み取れる事実】
上記気候条件の下、ある企業の、ある年の春季の生ビールの売り上げが10億円、同一年の夏季の売り上げが12億円ジャストだったとしましょう。
13億3200万円の売上予測に比して、1億3200万円も少ないことが判ります。
四半期での売上自体は伸びていますが、これでは目標(あるいは当然獲得すべき売上)に届いておらず、これは大きな問題です。
会社の営業戦略や生ビールの品質に問題があったのではないか、と議論対象になることは当然のことでしょう。
季節調整済みGDPは、こういった季節要因を「家計の最終消費」や「企業の設備投資」といった非常にマクロな単位で行うというものです。季節調整実質GDPへの計算に用いられる係数はより複雑になります。
<節調整済実質GDPを読み解く>
ここまで読んでくださった方々には、ここで読むのを中断して2015年の1-3月期のGDPに関して一度ネット検索を行っていただきたいのです。
2015年1〜3月の実質GDP速報値 前期比年率換算で+2.4%(FNN)
1~3月期GDP、年率2.4%増 設備投資プラスに(日経)
実質GDP、年率2.4%増 消費増税のダメージやわらぐ(テレビ朝日)
1~3月期のGDP、年2.4%増 2期連続のプラス成長(J-cast)
どうでしょうか。「実質GDP、年換算2.4%」という見出しの記事が目に付きませんか?
なお、ここでいう実質GDPとは「季節調整済実質GDP」を指し示しています。
2015年1〜3月の実質GDPは、前の期に比べて+0.6%、年率換算では2.4%となった。
個人消費は、冷蔵庫、テレビ、携帯電話などが増え、3期連続プラスとなった他、設備投資と住宅投資は4期ぶりのプラスとなっている。
概ね、こういった記事内容となっています。まるで打ち合わせしたかの ような、似たような記事です。確かに1-3月期で0.6%なら年率で2.4%ですから、これだけ見れば「前年度より2.4%生活が豊かになる見込みである」という風に捉えられることは不自然な話ではありません。しかも「季節調整済実質GDP」の値ですから、より尤もらしく感じられます。
しかし実態は、決して安心できる状態ではないのです。
<季節調整済実質GDPの内訳【寄与度】が大問題。>
GDPには「寄与度」という考え方が存在します。GDPの分類がそのGDPに占める額、あるいはGDPの増減に占める割合を示したものが寄与度です。国内総生産(0.6%)は
・民間最終消費支出・民間住宅・民間企業設備・民間在庫品増加・政府最終消費支出
・公的固定資本形成・公的在庫品増加・純輸出の計8項目の単なる足し算です。
<民間在庫品増加をよく考えてみる>
さて今回の0.6%の内、最も寄与度の高いものは何かというと民間在庫品増加(0.5%)です。
民間在庫品増加とは言葉通りではありますが、民間企業において在庫品が増えた場合「それが全て購入されたと見做して計上する」というものです。
在庫品は販売しなければ利益になりません。従って必ず、在庫増→在庫減→在庫増の波があり、年単位で考えれば、どのタイミングかで確実に在庫は減少します。
もちろん、例えば同一四半期内に1000個を全て売り1200個仕入れたという場合は、継続的な在庫の増加は達成されます。
しかし実際は在庫の増減サイクルが四半期サイクルと一致するとは限りませんから、寄与度が維持される可能性は限りなく低いと考えていいでしょう。
<実際の好景気要因を絞る>
従って8項目の内、増える事が年間に渡り好景気要因だと見做せるのは
・民間最終消費支出・民間住宅・民間企業設備・政府最終消費支出・公的固定資本形成
・純輸出の6項目です。
<まとめ>
有効値を用いた場合の、実質的な年換算GDP成長率が、たったの0.4%という数字を隠して「日本経済は好景気に向かっている。生活レベルは向上している」と話の筋を持って行っているのが大手マスコミで、政府もそれを否定しません。
それはまるで政府がマスコミに対し、何らかの報道統制を敷いているかのようです。
もし「季節調整後の本当の意味で、実質GDP成長率が年率2.4%だ!増税の影響なく成長しているぞ!」等という理屈がまかり通れば、政府が行う経済政策が今後、過剰に縮小されるか、あるいは増税しても問題無い等という論調が強みを帯びる事になるでしょう。
各政策の是非は、ともかく私達は誤った分析に基づいた政策の施行には、否定の意思を示さなければなりません。

【紹介】「平和の琉歌」http://bit.ly/1MQbwcr :YouTube:伊波 洋一 (いは よういち)

【ご案内】大阪弁護士会主催「戦争法止めよう!――大阪の取り組み」
12月19日(土)
今、沖縄を知る~基地、そして地元メディア~
■開始:13:30
■場所:シアターセブン BOX1(阪急「十三」西口徒歩5分)
■講師:松元剛さん(琉球新報報道本部長)
松本亜季さん(引き取る行動・大阪)
■資料代:500円
■主催:実行委員会 連絡先TEL06-6364-5604(民放労連近畿地連)

(民守 正義)