「戦争法案-粉砕」から「安倍政権‐打倒へ」(40)

「戦争法案-粉砕」から「安倍政権‐打倒へ」(40)


《「戦争関連法案」成立後のどよめき》

<「戦争関連法案」-自衛官「リスクは覚悟」:家族は「想定外」>
「戦争関連法案」が可決し自衛官や家族はどう思っているのか。
国会審議で争点の一つであった自衛官のリスク論議。法案が成立して自衛官は海外の紛争地等で新たな任務を担うことになる。北海道の陸上自衛隊第2 師団に所属する男性自衛官(30代)は「リスクは高まる」とみる。「(政府は)抑止力が増えると言っているが、危ないことも増えると思う」という。それでも任務が広がることは歓迎だ。「平和維持活動(PKO)の人気は高い。行ってきた先輩たちが一回り大きくなって帰ってきた感じがする。自衛隊は訓練が多い。PKOはある意味で本番。やりがいを実感したい」ショックだったのは、学者の多くが法案を「違憲」と指摘したことだ。
「俺たち違反のことをさせられるの?」と驚いた。
危険でも行く覚悟はある。だが国民に白い目で見られるのは辛い。「行くからには胸を張って行けるようにしてほしい」という。別の地域の陸自ベテラン幹部は「戦争法制」について「家族と真剣な話ができていない」と打ち明ける。「家族に心配をかけたくないと思い、話したくないという隊員が多くいる」海外派遣等の経験が豊富な海上自衛隊中堅幹部(40代)は「今以上に任務を増やすことが本当にできるのか」と話す。海自はソマリア沖の海賊対処や、尖閣諸島のある東シナ海での警戒監視等に護衛艦を派遣している。更に米軍と南シナ海でも警戒監視をする議論が進む。
「米国に何でも応えようとする幹部は少なくない。本当に現場が対応できるのか。日本の防衛に必要なのか。よく考えないといけない」と訴える。海自幹部(1等海尉、40代)が勤務する西日本の基地には、一般人から「自衛隊は戦地に行かず、活躍の場は災害だけにしてほしい」と電話がかかってきた ことがあった。各地の抗議行動について「即座に戦争に行くように主張するのは違和感を感じる。法案の全てが理解できているのだろうか」と話す。

■家族「本当は反対って叫びたい」
 自衛官の家族は不安を抱いている。「危ないなら、辞めて戻ってきてもいいんだよ」。かつてイラク派遣に参加した関東地方陸自幹部の母親は、今回の「戦争関連法案」の審議中、息子に電話して訴えた。
 だが息子は「命令があったら、次も僕は行く」。その後も何度か電話をかけ続けると、最近は出てくれないという。「本人は使命感でいっぱいなのだと思います」。迷惑をかけると思い、母親は抗議デモへの参加は控えている。「本当はデモに加わり『反対』って叫びたいくらいです」静岡県内の陸自隊員の妻(40代)は、国会審議が「議論を尽くしているとは思えない」と感じる。「憲法からして日本は国際紛争には関らないと思っていた。夫が紛争地域に行くとは想定していなかった」と戸惑う。
航空自衛隊浜松基地(浜松市)に所属している自衛官の母親(50代)は、息子の入隊に最初反対したが、災害時に働くことに共感して認めた。法案の成立が視野に入る中「成立後、どんどん話が進んでしまいそうで怖い。政治家には『自分の子供が行くとしたら、送り出せますか』と聞きたい」と話した。

<新潟県弁護士会「戦争法案」成立「おかしいだろこれ」>
19日未明に参院本会議で可決、成立した「戦争関連法」に対し、新潟県弁護士会が平哲也会長名で発表したコメントが、斬新だと話題になっている。
 「安全保障関連法案の強行採決についての会長コメント」というタイトルに続くコメントは、大文字で「おかしいだろ、これ」同弁護士会はこれまで、一貫して法案に反対の姿勢を表明。コメントは、法案が与党等の強行採決で成立したことへの疑問が簡潔に表現された内容になっている。一方で、コメントとしては異例の「超・短文」となった。
弁護士会は超・短文コメントをフォローする形で、同時に「採決強行に抗議し、法案の廃止等を求める声明」も発表した。 こちらは長文で「立憲主義、民主主義を真っ向から否定する暴挙である。断じて許されない」と、強い調子で同法案を批判している。
同弁護士会は、法案が国会で審議される直前の今年5月22日にも「憲法の恒久平和主義に反する」とした反対決議を採択。参院特別委員会での採決を控えた今月15日には、採決の中止を求める声明も発表した。

<「戦争関連法案」可決-不意打ち、うそつき、だまし討ち>
不意打ち、うそつき、だまし討ちだ。安倍政権が「強行採決(?)」した「戦争関連法案」。
17日の参院特別委員会「強行採決(?)」では鴻池祥肇委員長の不信任動議の否決直後、採決が強行され、予定された締めくくり質疑も、すっ飛ばされた。安倍(戦争)総理=自民党は、怒号しか聞こえない委員会室で、日本の安全保障政策の根本を変える重要法案を数の力で押し切った。「安倍政権の政治は三流、五流」。数の力に敗れた野党の怒りも、空しく響いた。与党が周到に準備した採決のタイミング。野党には、不意打ちの形で訪れた。
民主党等が出した鴻池委員長の不信任動議が否決された午後4時半「鴻池」が席に戻り、安倍戦争)総理も委員会室入り。民主党の福山議員が「次の議題は何か」と立ち上がると、質疑打ち切りの声が聞こえ、その瞬間、自民党議員10人以上が「鴻池」の防御へ委員長席にダッシュした。実戦に備え、当日朝、極秘練習も行った。完全に出遅れた野党は慌てて突っ込んだが、築かれた「鉄の守り」は崩せなかった。与野党が激しく掴みあい、肘鉄を食らわせた議員も。「だめだ」「暴力はやめろ」。怒号が飛び交う中、満を持して「守備」についた元プロ野球選手の石井議員が、野党の攻撃を完全ブロック。民主党若手の小西議員は「鴻池」の頭上からダイビングしたが撥ね退けられ、眼鏡が吹っ飛んだ議員もいた。
白いパンツ姿の牧山ひろえ議員も「乱闘」に突っ込んだが止められなかった。怒号で「鴻池」の声は聞こえず、自民党議員が与党議員らに起立を合図し次々と法案は可決。合図役の議員は笑顔で「OK」を連発した。採決は10分足らずで終了。乱闘劇の余韻が残った委員会室を、首相は淡々とした表情で後にした。委員会は、この日朝「騙し討ち」で幕を開けた。
「午前8時50分に理事会室で理事会」という与野党合意は反故にされ、与党は理事会室ではなく委員会室に入って待機。想定外の奇策に野党は「うそつき」と反発したが後の祭り。予定された締めくくり総括質疑も、行われなかった。
 民主党の抵抗で委員会が止まった16日夜「強行採決やむなし」の空気が強まっていた。
法案成立ありきで一刻も早く採決に進みたい自民党は、議論の場まで「封殺」した。早期成立に反対という多数の国民の声も数の力でねじ伏せた。野党は、為す術がなかった。福山委員は「民主主義の終わりだ」と述べ、重鎮の北沢元防衛相は「安倍政権で日本の政治は三流、五流の政治になっ た」。民主、維新、共産、社民、生活の5野党は今後とも「闘いはこれからだ」と共同行動で「安倍内閣-打倒!」を意思統一した。
(管理者:なお弁護士有志(225名)は、そもそも「開会宣言(議事内容提示等)なし、採決議事録なし、賛否人数なし、地方公聴会(横浜)報告なし等々で、あるのは騒乱状態のテレビビデオだけ」という事で「参議院規則及び会議体の議決の一般原則への違反」による「採決不存在確認訴訟」を起こす事を予定している。もう一つの松坂市長が中心に進める「戦争関連法案違憲訴訟」があるが、これは訴訟対象になる具体事実がないと、一般的には棄却の恐れも大きい。その意味でも前者訴訟の方が裁判所も判断し易く、ハードルも低い。特に本訴「採決不存在確認訴訟」までに「仮事務執行停止」も得られやすく安倍政権にとっては、それだけでも痛手だ。ただ「採決不存在確認訴訟」でも同関連法公布より早く行った方が「採決不存在確認」は、より得られやすい。)闘いの手は、まだまだある。諦めずに頑張ろう!

《「戦争総理=安倍総理!」「戦争関連法案‐廃案!」の声・抗議行動!》
<「戦争関連法案-芸能界でタブー」超え主張始めたタレント>
戦後の安全保障体制を根本から変える「戦争関連法案」を巡り、著名なタレント達が続々とテレビ番組やネット上で自分の立場を鮮明にしている。その大部分は 「法案反対」だ。
「芸能界で政治色はタブー」(専門家)とされてきたが、法案への国民の関心の高まりを受けて、タレント達が沈黙を破って訴え始めている。「普段、人間として(政治のことを)考えていても放送で言おうと思ったことは一回もない。プロに任せればええって言うけど、もう任せていたらあかんと」8月8日に放映された東海テレビ「樹木希林ドキュメンタリーの旅」。録画放送だったが、ゲスト出演した笑福亭鶴瓶さん(63)は「政府がああいう方向に行ってしまうというのは、止めないと絶対だめ」と発言。レギュラー出演するNHKの番組「鶴瓶の家族に乾杯」の名前も挙げ「(戦争になれば)そんな番組なくなる」と危機感を語り、視聴者に強い印象を与えた。フジテレビ系の情報バラエティー「ワイドナショー」では、高校生らの反対デモについて「ニュースに誘導されている」との見方を示したコメンテーターの 「ダウンタウン」松本人志さんに対して、SMAPの中居正広さんが「若い子が声を上げるのはいいことだと思う。僕はうれしかった」と反論 する一幕もあった。
またSHELLYさんや渡辺謙さん等、ツイッターで公然と「戦争関連法案」を批判するタレントも少なくない。芸能評論家の肥留間正明氏は「ファンの支持政党は様々で、それに配慮し政治色を出さないのがタレントの道とされてきた。しかし今回は戦争に反対するという趣旨でスポンサー離れの心配もない上に、『平和だから芸能界で生きてこられたのだ』という思いもあり、発言せずにいられなかったのだろう」と見る。またタレントもツイッターやフェイスブック等のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で生活の様子を綴り、自由に意見を述べるのが当たり前になった事で「(思想的に)真っ白で可もなく不可もなく、というスタンスでは支持されないという損得勘定もあるのではないか」と分析する。

<「戦争法案」36カ国331団体から国際共同の反対声明>
 海外で人道支援活動に取り組む「NGO非戦ネット」のメンバーが10日、東京都内で記者会見し「戦争関連法案」に反対する国内外36カ国の計331団体による国際共同声明を発表した。「日本の戦争行為によって再び人々が殺し殺される関係に立ち、アジア太平洋地域が再び悲惨な戦争の惨禍に見舞われることに強く反対する」等と訴えている。非戦ネットは日本国際ボランティアセンター(JVC)等で組織し70団体が賛同している。
会見でJVC代表理事の谷山博史さんは「(法案は)『日本のNGOを助けるため』というが、自衛隊による救出は現実的ではなく危険の方が数倍、数十倍大きい。紛争現場で活動している人はそう感じている」と指摘した。
 祖国アフガニスタンの医療、教育を支援するNGO「カレーズの会」理事長を務めるレシャード・カレッドさんは「我々がアフガニスタンなどで活動できるのは、日本が信頼されているから。多くの国々が日本に期待しているのは軍事的支援ではない」と訴えた。

<日本は米国憲法を持つ国になったのか――改めて法的安定性を問う>
「戦争法制」今国会論議で憲法の「法的安定性」が議論になったが、この国の主権者は誰なのか。それだけ考えても、安倍政権は憲法の法的安定性を守るつもりはないことは明らかだ。「戦争法制」成立により日本の自衛隊は国民の意思と関係なく、米国の軍事戦略に組み込まれ世界で活動する軍隊となる。つまり日本から憲法9条の指し示す「法的安定性」を失い、実質、米国憲法を持つ国になる。本欄の読者の中にも「第3次アーミテージ・ナイ・レポート」(2012年8月公表)について、記憶がある方がおられるだろう。アーミテージ氏とナイ氏は、米国の対日・極東政策を策定して来たオバマ政権の外交・軍事ブレーンだ。山本太郎議員は、自衛隊に米軍との共同作戦行動を強く求めるだけに留まらず、日本国内政策にもあからさまに口を挟む内容の、このレポートを12項目の提言に要約。
そのパネルを示し「今回の憲法違反の閣議決定から憲法違反の『戦争法制』まで、殆ど全てアメリカ側のリクエストによるものだ。今回の『戦争法案』は、このレポートの完コピだ」と政府を追及した。山本太郎議員は先ずレポートの「提言1-原発再稼働」「提言3-TPP交渉参加」「提言8-国家機密の保全」その他「12-日本防衛産業の技術輸出」を挙げ、既に安倍政権で実行されていることを指摘。その上で残る8項目の内「4-日韓歴史問題の直視」を除く7項目について「戦争法制」の内容とそっくりであることを追及した。山本議員がパネルで紹介した7項目は、次の通りだ。
「2-シーレーン保護」「5-インド、オーストラリア、フィリピン、台湾等との連携」
「6-日本の領域を超えた情報・監視・偵察活動、平時、緊張、危機、戦時の米軍と自衛隊の全面協力」「7-日本単独で掃海艇をホルムズ海峡に派遣、米国との共同による南シナ海における監視活動」「9-国連平和維持活動(PKO)の法的権限の範囲拡大」「11-共同訓練、兵器の共同開発」「12-日本の防衛産業に技術の輸出を行うよう働きかける」
 因みにレポートで何が書かれているか。山本議員も質問で使った海上自衛隊幹部学校のHPで紹介されているので、参照して戴きたい。

●第3次アーミテージ・ナイレポート
 山本議員ならずとも、この7項目が「戦争法制」に盛り込まれたものの丸写しであることはすぐ分かる。山本議員は「そっくりそのままですよ。こういうのを完コピって言うのですよ」と追及したが、誰が見ても今回の「戦争法制」はアーミテージレポートの「完コピ」であることは一目瞭然。中谷防衛相の答弁は以下の通り何とも苦しい。「平和安全法制は、あくまでも我が国の主体的な取り組みとして国民の命と平和な暮らしを守るというために作ったわけで…、ナイ・レポート等の報告書を念頭に作成したものではない。しかしレポートで指摘をされた点と、結果として重なっている部分もあるが、あくまでも我が国の主体的な取組として検討、研究をして作ったものです」
 更に2日には、共産党が自衛隊の河野統合幕僚長が昨年12月の総選挙直後に訪米した時の秘密文書を入手。オディエルノ陸軍参謀総長と会談の際「戦争法制」制定について「来年夏までには終了する」との見通しを伝えたと暴露した。この二つの事実を重ね合わせるなら、安倍政権の本質が改めてよく見える。安倍(戦争)総理は、2012年12月の首相就任直後から、既に公表されていたアーミ テージレポートの実現を政権目標にしていたのは間違いないだろう。安倍(戦争)総理が政権獲得に当たっては、米国の陰に陽の後押しがあったのかも知れない。もちろんレポートにある政策を実現するには、集団的自衛権を否定している9条が障害になる。安倍(戦争)総理は「米国から押し付けられた憲法を排し、自主憲法制定を目指す」とし「美しい国を作る」とナショナリズムを煽った。レポートで1点だけ安倍政権が「完コピ」していないのが、4項目目の「日韓歴史問題の直視」だ。
靖国参拝・歴史問題発言で中国・韓国の反発を買って嫌中・嫌韓気運を盛り上げ、ナショナリズムを高めた方が「戦争法制」制定に有利で結局、米国のためになると踏んだのだろう。

◆祖父もなし得なかった米国との約束を果たそうと「燃えて」いるのか?
 案の定、日本の戦後の歴史をまともに勉強もしていないネット右翼の若者が、この言葉に踊り「押し付け憲法改正」と9条改正を政治日程に乗せることまでには成功した。昨年12月の「アベノミクスを問う」とした解散も、実際は経済運営でボロが出ない内に国会で自民党議席を更に伸ばし、レポートで米国から求められている政策の実現に万全を期すことだったのも、もはや誰の目にも明らかだ。安倍(戦争)総理の具体的指示があったか否かは、今のところ定かでない。しかし河野幕僚長の訪米時の発言も、制服組トップが勝手に米側に伝えられる事ではない。 当然、政権から何らかのサインが出ていたと見る方が自然だ。ただ「今年夏までに」米国に約束した「戦争法制」を制定するとなると、9条が障害になり、政治的日程を考えても到底無理。国民の抵抗も強い以上「憲法解釈変更の閣議決定」で凌ぐという奇策を繰り出した。こう安倍政権の軌跡を見て行くと、内閣にとって「聖域」であるべき解散権すら、米国のために行使したことがよく分かる。
安倍(戦争)総理自身が「尊敬してやまない」と公言するのが、祖父の故岸信介・元首相だ。右翼の大物との深い親交でも知られ、戦前の軍国主義復活を考えているようなタカ派発言を繰り返し、復古派のナショナリストと目されていたのが岸氏であり、私には安倍(戦争)総理と岸氏が重なって見える。岸氏は開戦時の東條英機内閣の閣僚であったことから、極東軍事裁判でA級戦犯被疑者とされ3年余り拘留された。その後、米ソ冷戦の激化で世界情勢が一変すると不起訴になり、政界に復帰している。その後は右翼の大物の後ろ盾を得て「日本再建同盟」を設立、「自主憲法」「自主軍備」を唱えた。しかし一方で、米国中央情報局(CIA)から多額の工作資金を受け取り、政治を操って来たのではないかとの疑惑が囁かれてきた。最近になって公開された米側秘密文書等も通じ、次第にその輪郭も明らかになって来ている。確かに米国は戦後、数年間は日本軍国主義の復活を恐れ9条制定にも関与、武装解除政策を進めた。しかし冷戦の緊迫で「9条はプレゼントし過ぎだった」と気付いた米国は、その後、一貫して日本の再軍備、米国と作戦行動を共にする自衛隊の強化を押し付けて来ている。CIA資金を受け取っていたとするなら、岸氏は米国が求める日本の再軍備政策を進めるための「代理人」との見方が浮上する所以でもある。もちろん、岸氏や米国の思い通りに日本がならなかったのは「もう戦争はこりごり」との日本の世論であり「軍事より経済優先」との自社両党の微妙なバランスで出来上がっていた55年体制でもあった。
その意味では安倍政権は、55年体制の決定的破滅を意味する民主党政権の、その崩壊の間隙をついて出来上がった鬼っ子とも言える。安倍(戦争)総理は祖父同様、自らナショナリストぶることで、このドサクサに紛れ、祖父もなし得なかった米国との約束を孫としてこの際、果たそうとの気概に燃えているのかも知れない。

◆日本と米国は憲法も異なり「法的安定性」も異なる
 そこで憲法の「法的安定性」に関する礒崎陽輔首相補佐官の発言を、改めて精査しておきたい。礒崎氏は7月の大分市内の講演で「戦争法制」について「(憲法解釈と)法的安定性は関係ない。国を守るために必要な措置かどうかは気にしないといけない。政府の憲法解釈だから、時代が変われば必要に応じて変わる」と語っている。中国の海洋膨張政策や北朝鮮の核開発で東アジア情勢は、岸氏の時代より更に緊張感を増しつつあるのは私も否定しない。米国の外交・軍事力も低下している。礒崎氏には、安倍(戦争)総理のように岸氏との肉親感情はないだろう。今の東アジア情勢を考えれば、今は憲法9条・集団的自衛権否定に拘束されている場合ではない。米国の要求もある以上、米国の軍事力が低下している分、日本の自衛隊が補完して対抗する以外に、米国も日本を守ってくれないとの思いがあるのだろう。
しかし極東の緊張・中国・北朝鮮の軍事力脅威は、自衛隊が米軍の補完勢力となることだけで解決するものではない。あまりに安易・短絡的である。むしろ極東で軍拡競争を助長するだけだから、私は礒崎氏の考えに同調しないし、もし安倍(戦争)総理や礒崎氏がそう考えているとしても、姑息な解釈改憲で「戦争法制」を拙速に成立させることではあるまい。
安倍(戦争)総理は礒崎氏以上に「憲法9条は邪魔」と思っているのは間違いない。政権が代われば、法律だけでなく憲法解釈まで自由に変えられるとの前例を作ったのも安倍(戦争)総理だ。その安倍(戦争)総理が「集団的自衛権を容認しても、戦争に巻き込まれることはない」「徴兵制の導入は政権が代わっても絶対にない」と口先で答弁されても「信用せよ」と言われても無理な話だ。集団的自衛権を容認するなら、自衛隊が海外で武力行使や後方支援する機会は確実に増える。海外に敵を作れば日本本土も標的になる。戦争に巻き込まれる危険が確実に増える。当然、自衛隊員の戦死者も出る。誰も死にたくはない。隊員の志願者が減れば給料を増やして募集するしかない。しかし、この国では高齢化で益々、財政は逼迫、軍事費のこれ以上の増大は許容範囲を超える。結局、徴兵制に移行するしか道はなくなる。安倍(戦争)総理は、誰にでも透けて見える内実・本音を隠し説得力を持たないまま、無理やり集団的自衛権容認で日本は安全になるかのように言い張る。だから国会論議は深まらないし、憲法の「法的安定性」が維持されるとは誰も思っていないのである。しかし安倍(戦争)総理は礒崎氏と違い、少なくとも国会答弁で「法的安定性に十分留意した」とする。
であるならば憲法の前文・条文に照らし、安倍(戦争)総理の守るべき憲法の求める「法的安定性」とは何か。国是の原点に戻り、きちんと論議することから始めなければならない。
先ず憲法前文だ。「日本国民は」「我等と我等の子孫のために、諸国民との協和による成果と、我が国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚する」「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我等の安全と生存を保持しようと決意した」「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」「全世界の国民が、等しく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」。「主権が国民に存することを宣言し」「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」。「我等は、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」である。
9条では「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」としている。「戦争」と「武力による威嚇又は武力の行使」を「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄」したのが、この国の憲法である。「恒久の平和の念願」「人間相互の関係を支配する崇高な理想の自覚」「平和を愛する諸国民の公正と信義への信頼」を時代が変わろうとも国民の変わらぬ「決意」として、国際社会の中で「我等の安全と生存を保持」を委ねる外交政策を貫くことが、憲法の「法的安定性」を守ることなのである。つまり憲法改悪することなく、自国が攻撃されていないのに武力行使を発動できる「集団的自衛権」は憲法違反となる。「政府の憲法解釈だから、時代が変われば必要に応じて変わる」では、当然「法的安定性」を満たしていないことになる。「平和を愛する諸国民の公正と信義への信頼」は、中国や北朝鮮、中東の 紛争地域の人達へも「平等、均等」に向けるのが憲法の要請である。こちらが敵視すれば、相手も快く思わない。誤解、憎しみの連鎖が多くの戦争を生み出したのも世界史からの教訓でもある。
米国憲法の前文を次に記す。「我等合衆国人民は、より完全な結合(Union)を形成し、正義を樹立し、国内の静穏を確保し、共同体の防衛に備え、一般的福祉を促進し、我らと我らの子孫に自由の恵沢を確保する目的をもって、アメリカ合衆国のため、ここにこの憲法を制定し確立する」米国憲法は「共同体の防衛」という言葉を使い「武力の行使」を否定していない。「自由と民主主義」が米国の国是「正義」であり、そのためには武力行使を辞さないというのが、米国憲法の「法的安定性」と言うべきだろう。米国憲法の「正義」は、大きな大戦で負けたことのないという自信と資源・技術力も含め、強大な経済力に裏付けられている。「自由と民主主義」は、私も共鳴するところが多いし、米国が第2次大戦後の世界で「一定の役割」を果たしたことも否定しない。しかし「9・11同時多発テロ」に象徴されるように、全ての世界の人々から「信頼」を集めたとまでは言えない。その中で米国自身、自国の多くの若者の命を戦場で散らせてきた。元々、資源も国力でも大幅に差がある日本と米国だ。憲法が「国民の代表者」・権力者に求める「法的安定性」つまり国是「国家の基本戦略・政策」は違っていて当然なのだ。元々、戦後長く日本の為政者は米国との国力の違いを「深く自覚」していた。その結果55年体制の中で、親米の与党とブレーキ役の野党が各々の役割分担を果たしてきた。だからこそ過度に軍事国家に傾斜することなく、今の日本の経済的繁栄と若者も戦場に行かず、平和な暮らしを享受することを両立出来た。
礒崎氏が言うように「時代が変われば必要に応じて変わる」政策はある。
しかし「政府の憲法解釈」「法的安定性」までを変えるのでは、憲法の「法的安定性」を基礎とする立憲国家ではない。百歩譲っても「主権が国民に存することを宣言」したのが憲法前文だ。もし「時代が変わり、必要に応じて」「法的安定性」に関る政策変更が必要だとするなら、事情を積極的に主権者である国民に情報公開し、憲法改正手続きを踏むのも憲法前文の「法的安定性」からの要請である。多くの憲法学者も「違憲」と断ずる集団的自衛権容認を前提とする「戦争法制」が、例え成立したとしても、それを政策として執行すれば、憲法の「法的安定性」を損ね、国会答弁に反する。つまり日本は米国憲法を持つ国となってしまう。こっそり解釈改憲による「戦争法制」成立の時期まで、自衛隊制服組が訪米、米当局者に約束して来るのは論外である。何故こうした重要な二つの国会質疑を「知る権利」を持つ国民に向けて大きく報道しないのか。既成メディアの姿勢に対して私が疑問を抱かざるを得ないのも、その点にある。米国の政策が常に正しく、追従するのが日本の生きる道なのか。決してそうではない。その事例として想い出すのは、私が政治記者・海部氏の首相番をしていた1990年に起きた湾岸戦争の時のことだ。イラクがクウェートに侵攻、米軍をはじめとした多国籍軍が対抗した。この戦争を境に米国は、自衛隊の海外派遣要求を格段に強めた。首相番として政権を間近に見ていた私には「血を流さない日本」批判が高まったと感じられた。だが日本は何をすべきか、真剣に考える時が、この時から始まった」等と、安倍(戦争)総理に近い政治評論家がしたり顔で今、語っていることとは相当の開きがある。
イラク・フセイン政権には「ならず者」とのイメージがある。しかし、そもそもクウェート侵攻は米国の後押しもあってイランと戦争を始めたにも関らず、米国から買った多額の武器調達費が払えず困り果てていた。その穴埋めにと原油の値上げを画策したが、同一歩調を取らないクウェートに怒りを募らせたのが、そもそもの発端だ。時の海部首相も何もしなかった訳ではない。実は米国の軍事行動が始まる前、和平のために極秘に日航機をチャーターして中東を訪問する計画を極秘で立てていた。
しかし止めたのは、日本の外務省だった。元々、非キリスト教国の日本。中東で嫌われる存在ではない。当時はバブルで使い道に困るほどの多額の税収が入っていた。イラクに対し資金援助をし、日本の仲介で和平を成立させることも、全く荒唐無稽な話ではなかったのだ。
だが当時の米国は、軍需産業を強力な支援者とする共和党・ブッシュ政権。冷戦時代に有り余っていた武器を使い、イラクを叩き潰したいのが本音で、欧米の持つ石油利権に日本が一枚加わるのを避けたいとの思惑もあったはずだ。戦後、成し得なかった日本の軍事国家化への千載一遇のチャンスと見たのだろう。各国に抜け駆け交渉しないよう釘を刺し、日本にはひたすら自衛隊の派遣のみを強力に求めた。対米追従体質が染み込んでいるのが日本の外務省だ。その意向をテコに制空権を米国が握っているにも拘わらず「民間機は撃ち落とされる心配がある」との理由で、海部首相の中東歴訪を幻にしたのだ。
しかし米国の、この時の軍事介入が、如何に失敗だったかは今となっては明らかだ。
イラクと対立していたイランには対抗馬がなくなり益々、中東で強大な存在になり不安定化が進んだ。原油もむしろ暴騰。日本のバブル崩壊の引き金にもなった。イラク軍をクウェートから追い出した後も、米軍がサウジに駐留したことで元々、親米だったはずのアルカイダのビン・ラーディンを敵に回した。その結果、9・11同時多発テロの原因になるとともに、報復としての米国のイラク、アフガン攻撃も泥沼化してゆく。数多くの米軍戦士の命が散り、イスラム国まで生みだすことに繋がってきた。米国の言いなりに日本が多国籍軍に参加し自衛隊が中東に出て行っていたとしても、世界の平和に何ら貢献しなかった事は、この経過からも明らかだ。むしろ海部首相の和平がどんな形であれ、少しでも功を奏す足跡を残していれば、世界から「さすが憲法9条を持つ国は違う」と、今では評価されていたはずである。
この国を軍事大国にしたい人は、政界にも巷にも今も昔も一定程度はいる。しかし米国の強力な軍事力をもってすら、この有様に陥っていると言うしかないのである。日本と米国は憲法も異なれば、その「法的安定性」つまり外交政策は違って当然なのだ。
当面の極東情勢からは、米国の軍事力関与は欠かせず必要悪だと私も思う。
しかし日本の役割、立ち位置は違う。安倍(戦争)総理が本当に憲法の「法的安定性を維持する」と言うなら何故「戦争法制」よりも「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」平和外交、歴史認識でも共有の道を模索、極東融和に一歩踏み出せないのか。
少なくとも日本のとるべき道は、靖国参拝や歴史認識問題で中韓を刺激し、こっそり対米追従の「戦争法制」を成立させ、軍事的緊張を更に高めることではあるまい。
安倍(戦争)総理に改めて問う。「戦争関連法」を早速、運用して、貴方の言う「美しき国-日本」を米国に売り渡す気ですか?(管理者:一部編集/民守 正義)