「戦争法案-反対」から「安倍政権‐打倒へ」(8)

「戦争法案-反対」から「安倍政権‐打倒へ」(8)


《「戦争法案」衆議院平和・安全保障特別委員会で「強行採決」警戒警報!》
【「7月13日;衆議院平和安全特別委員会公聴会・平和安全法制特別委員会の概要】
<衆議院平和安全特別委員会公聴会の概要>

【「戦争法制」:5人中3人「違憲」…中央公聴会、有識者が意見】
 中央公聴会で憲法や外交・安全保障の専門家ら5人が出席。野党推薦の3人が同法案に否定的な見解を表明し、与党推薦の2人が賛意を示した。中央公聴会は採決の前提と位置づけられており、与党側は採決の前提環境が整いつつあるとして週内の衆議院通過を目指す構えだ。野党推薦は小沢東京慈恵医大教授(憲法学)▽木村首都大学東京准教授(同)▽山口法政大教授(政治学)の3人。小沢教授は、法案に盛り込まれた集団的自衛権行使の規定が「歯止めのない行使に繋がりかねない」と批判。「学界には政府の閣議決定に合理性・正当性がないという点で幅広い一致が見られる事を重視してほしい」と求めた。木村准教授は集団的自衛権の行使容認は「日本への攻撃の着手がない段階で武力行使を根拠付けるもので、明白に違憲だ」と指摘。こうした見解で「法律家の大半が一致しており、裁判所も同様の見解をとる可能性は高い」と述べ、行使容認には憲法改定が不可欠との見方を示した。山口教授も集団的自衛権の行使容認を「専守防衛を逸脱し、憲法違反だ」と批判。政府側が行使の判断を「総合的に決める」と説明していることを挙げ「明確な定義がなく、武力行使を制約する縛りにはならない」と懸念を表明した。一方、与党推薦は外交評論家の岡本行夫さんと、村田晃嗣同志社大学長(政治学)の2人。岡本さんは海外で外国軍隊が日本人を救出した事例を紹介し「戦争法案」に関し「各国の善意と犠牲で国民の生命、財産を守ってもらい『それでよし』としてきた日本のあり方を転換する歴史的な分岐点だ」と高く評価した。村田学長は同関連法案を巡って憲法学者から「憲法違反」との指摘が出ていることについて「憲法の精神を守るのは言うまでもないことだが、これは安全保障の問題でもある。安保の学会では多くの専門家が肯定的回答をするのではないか」と主張。集団的自衛権行使の規定等に曖昧さが残ることを認めた上で「いまだ起きていない事態を想定し、曖昧さを払拭するのは難しい」と理解を示した。(という事は「安保学会」からの政府への同情的意見である)

<衆議院平和安全特別委員会の概要>

 同特別委員会では政府案や維新の党が提出した対案等に対する質疑が行われた。維新の党対案提出者は、政府案について「防衛力の強化が必要だという意味で方向性は共通の認識がある」と述べる一方で、集団的自衛権を行使する要件が広すぎると指摘した。この中で自民党‐岩屋元外務副大臣は「我が国の防衛のために活動しているアメリカ艦船が攻撃された場合、我が国も武力を行使し攻撃を排除しなければいけない場合がある」と指摘した。これに対し民主党‐大串国会対策副委員長は「個別的自衛権で行うところがあるのではないか。武力攻撃着手の議論を、もう少し深めていくのが、有り得るべき手段だ」と述べた。また維新の党‐今井政務調査会長は「防衛力強化が必要だという意味で、方向性は共通の認識がある」と与党案に同調的意見を述べた。
 公明党‐伊佐衆議院議員は「維新の党の対案が自衛のためで目的が同じなら、政府案を『合憲性バツ』と指摘するのはおかしい」と質した。これに対して維新の党-今井委員は「政府案は『構成要件が曖昧で違憲だ』という意見が多い。直接、武力攻撃を受けていない事態でも新3要件に当たれば適用できるという構成要件は広すぎる」と指摘した。民主党-後藤政策調査会副会長は、政府が集団的自衛権の行使の事例として挙げている日本周辺で有事が起きた際の公海上での日本人を輸送しているアメリカ艦船の防護について「艦船に対する攻撃の着手がない段階で何ができるのか」と質した。
これに対し中谷防衛大臣は「アメリカに武力攻撃が発生した後、アメリカ艦船に対する攻撃が『存立危機武力攻撃』であれば、終結させるため排除に必要な措置を実施するが、そうでなければ艦船の防護はできない」と述べた。その上で中谷大臣は「個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合し客観的、合理的に判断する。攻撃着手の有無を含め、艦船にどのような事態が発生すれば『存立危機事態』になるかは一概に言えない」と述べた。維新の党-水戸衆議院議員は、グレーゾーン事態に対処するため民主党と維新の党が共同で提出した「領域警備法案」に関連して「安全保障法制というのならば、グレーゾーン事態に対処する法制化の優先順位の方が高い」と指摘した。これに対し中谷大臣は「海上警備行動や治安出動を発令する手続きを迅速化する閣議決定を行い、警察や海上保安庁等の関係機関が、対応能力の向上や相互の連携を強化させる等して、切れ目のない十分な対応を確保するための態勢が整備できた。新たな法整備が必要と考えていない」と述べた。
 共産党-宮本衆議院議員は、防衛装備品の調達費用について「政府法案が通れば、装備体系もアメリカの戦争支援が形でできるようになり、厳しい財政状況の中で未来の世代にまでしわ寄せがいく」と批判した。これに対し中谷大臣は「防衛大綱に基づいて計画的に防衛力を整備しており、長期契約の導入等、一層の効率化や合理化を図っている。国民に見えにくい形で未来世代の負担を増やしている事はなく、常に公開しながら整備している」と述べた。

《「戦争関連法案‐反対!」の声・抗議行動が、まだ押し寄せる!》
<デモにも参加、高畑勲監督「戦争法反対」に本気の理由は?>
 今週15日にも与党が強行採決に持ち込むと見られる「戦争関連法案」。これを「違憲」とする多数の憲法学者を始め、文筆家、役者、芸人、アーティストと様々な方面から「反対」の声が上がっているが、こうした著名人の中で、とりわけ地道に活動に取り組んでいるのが、スタジオジブリの高畑勲監督だろう。
 今更、紹介するまでもないが、高畑監督といえば『火垂るの墓』(1988)や『かぐや姫の物語』(2013)等で、世界的に高い評価を得ている映画監督。米国アカデミー賞の選考委員候補に選出されたという報道があったが、当の高畑監督はこうした“巨匠待遇”とはうらはらに、市民集会等に参加して、もくもくと戦争法案に反対している。そんな高畑監督が7月7日、東京都武蔵野市で講演会を行った。三鷹9条の会が主催する「戦後70年‐憲法の9条はいま」と題された今回の講演で、高畑監督は「戦争法制」と安倍政権について語った。「今『戦争のできる国』になろうとしていますが、政府はなんだかよくわからない『限定』をつけていますね。日本を取り巻く事態が根本的に変わった等と、そういう言葉で脅しながら「これだけ『限定』をつけているんだから」と安心させようとする。『臨機応変に対処する』というような事を為政者は常に言います。けれども成功した事はないですよ。僕は、それを“ズルズル体質”と呼んでいます」
 確かに具体的な説明をせず危険な本質をごまかして、なし崩し的に侵略戦争さえ可能な悪法を成立させようとする安倍政権のやり口は“ズルズル体質”そのものだ。しかし高畑監督が問題視するのは、なにも政府の卑劣なやり口だけではない。この体質は、我々国民にも共有されているのだと指摘する。
 「よく日本人は集団指向と言われます。『和をもって貴しとなす』とね。もちろん、これにはいい側面もあります。しかし若い人の中で『空気を読む』という言葉が広がってきたとき、僕はもう絶望したんです。全然変わっていない。戦前からずっと変わっていない」高畑監督は語る。日中戦争から太平洋戦争への移行期、日本の中には「絶対的な国力で上回るアメリカと戦争をしても勝つ見込みはない」と考える人が大勢いた。一部の軍人だけではなくアメリカ文化を好む若者の間でも、そう言われていたという。しかし、そんな彼らも開戦するや否や日本の戦争を否定しなくなった。故に高畑監督は「この戦争初期の人々の体質が、戦後に変わったと言えるのか」「一度戦争のできる国になったら、必ず国民もズルズルといってしまう」と釘をさすのである。「それは論理的に考えて『当然だ』という事を解って欲しい。日本は島国で皆、仲良くやっていきたい。『空気を読み』ながら。そういう人間達は、国が戦争に向かい始めたら『もう勝ってもらうしかないじゃないか!』となるのです。わかりますか?負けちゃったら大変ですよ。敗戦国として酷い目にあう。だから『前は勝てっこないなんて言っていたけれど、もう勝ってもらうしかない』となるんです」つまり高畑監督のいう“ズルズル体質”とは政府だけの問題ではないのだ。むしろ今、戦争への道に反対する人々に対してこそ投げかけているのである。「だから我々自身が胸に問うてほしいのです。戦争になったら、やっぱり皆さん、日本国を支持するんじゃないですか?それで支持しない人を非国民って言うんじゃないですか?」
 高畑監督が引き合いにだすのは詩人・金子光晴だ。明治28年生まれの金子は「反体制文化人」として戦中も戦争反対を貫いた。息子にも、わざと一 晩中雨にうたせる等、あの手この手を使って体調を崩させ兵役を逃れさせたという。戦後、金子の行為は一部で賞賛されたが、高畑監督はここにリアリズムとも言える視線から一石を投じる。「しかし考えてもみてください。あなた、自分の息子が、あるいは自分の夫が徴兵をくらって戦争にとられてね。お隣の金子さんの家じゃあ行かないというのですよ?非国民って言いませんか?ここにいる人の90パーセントが、こういう人に対して非国民と呼ぶと思います。それは人間として当然の反応でしょう。だから、みんなが自分の意見を貫くということに期待してはいけない」
 この指摘は極めて重要だろう。昨夏の朝日新聞の慰安婦報道問題を思い出してほしい。勝ち馬に乗ろうとしたメディアは一斉に「反日」 「売国奴」と大合唱をし、保守派やネット右翼だけでなく、それまで関心のなかった人々まで“朝日バッシング”へと傾いてしまった。ましてや一度、戦争が始まれば「負けたら大変な事になる」という「空気」一色となり、戦争反対を訴える人々は排除されていく。それが自然な流れだと高畑監督は言い放つのである。 この戦争に対する論理的な思考、冷静な視線は、自身の作品に対しても同様だ。本サイトでも以前お伝えしたが、高畑監督はこれまで「『火垂るの墓』では戦争を止められない」と幾度も主張してきた。曰く「昨今の良心的な反戦映画」もそうだ。現在の「反戦映画」は「自分は家族を守るために戦地へいく」としきりに強調する。だが高畑監督は、それは「お国のため天皇陛下万歳では、今の人が共感できないから、そのかわりに客の同情を得るためです」と分析し、こうした言葉は「詭弁だ」と断言するのだ。
 これは高畑監督自身が、小学校4年生のときに空襲を受けた体験があるからこそ言える事だろう。空襲の夜、焼夷弾が降り注ぐ中、高畑監督は姉と2人、裸足で逃げた。爆弾の破片が身体に突き刺さり失神した姉を必死で揺り起こしたという。一夜明け、自宅の方に戻ると遺体だらけだった。「生きているかのような姿で亡くなっていた。ガタガタと震えが止まらなかった」。そう、先月の岡山市での講演会でも語っている。
 戦禍の悲惨さは彼自身が身をもって知っている。それでもなお、こうした体験を語ったとしても戦争を止める力にはなりえないのだと言う。なぜならば、どれだけ戦争被害の苦しみを表現しようが安倍晋三のような政治家は必ず「二度と悲劇を繰り返さないために、自衛力を強化する」と主張するからだ。戦争体験を描き、語ることは人々の情緒に訴えかけるが、しかし同時に為政者によって「そんな酷い目にはあいたくない」という切実な思いを利用され「自衛のための戦争」に向かわされてしまう。しかも日本は戦前からの“ズルズル体質”を受け継いでいる。故に一度「戦争のできる国」になると政府が命令するまでもなく、人々自らが打って一丸となる。だからこそ高畑監督は“歯止め”としての憲法9条の必要性を強く訴えかけるのだ。「要するに政府が戦争のできる国にしようというときに“ズルズル体質”があったら、ズルズルといっちゃう。戦争のできる国になった途端に戦争をしないでいいのに、つい、しちゃったりするんです」「賢そうな顔していますよね、安倍っていう人は。でも、いくら賢そうでも、小賢しいといいますかね。あの人もある時点で引退するのでしょうが、その後も日本には臨機応変に対処する能力はないと思う。そうした場合にどうするか。日本がずっとやってきた“ズルズル体質”や責任を取らせない、責任が明確にならないまま行っていくような体質が、そのまま続いていくに決まっている。そうしたら歯止めがかからないのです。だから絶対的な歯止めが必要。それが、9 条です」「『普通の国』にならないで『9条によって縛られる』と言っていいのです。9条によって縛られているからこそ我々は知恵を出さない訳にはいかない。原発だってそう。原発を止めると決めたら、もう知恵を出さざるをえないじゃないですか」日本の戦後70年は直接的に戦争をせず、人一人殺す事も、また殺される事もなかった。それは憲法9条の“不戦の縛り”が、我々に平和の道を模索する事を止めさせなかったからだ。もちろん、それは決して簡単な道ではなかった。様々な外交努力が重ねられてきたし、沖縄の基地問題のように犠牲も大きい。しかし、それでも9条が戦争という最後の手段に打って出ることを食い止めた。“戦争ができない”からこそ、日本は知恵を振り絞りながら生きて行くしかない。そしてその知恵は必ず、我々に備わっている。高畑監督は、そう言うのである。だから彼は行動し続けるのだろう。先日は学生が主催した渋谷でのデモに夫婦で参加したという。一般参加者に混じってだ。自分が現地へ行けないときには、せめてメッセージを送る。決して派手な事ではない。過激でもない。だが高畑監督は続ける。それは自らの頭で考えることを止めないための「憲法9条の縛り」の実践、そのものだ。毎日新聞が今月4、5日に実施した世論調査では、ついに安倍政権への不支持(43%)が支持(42%)を上回ったが高畑監督が釘をさすように、この国は半歩でも戦争に足を踏み込んでしまったら、ズルズルと雪崩れ込んでしまうだろう。流され易い我々の心の防波堤となりえるのは憲法9条だけだ。一説では来夏の参院選後、与党は憲法改悪の国民投票に踏み切ると言われている。もし9条が骨抜きにされてしまったら。そのときは国民自らが思考停止状態に陥り一直線に戦争へ向かっていく事になる。そして、その日は着々と近づいてきている。高畑監督の言葉を胸に刻むべきだ。
「今9条は背水の陣です。戦力の不保持と交戦権の否定。戦後、間もなくに前者は無くなってしまった。はっきりさせておいた方がいい。『9条を守れ』と言っている我々自身だって、あっという間に変わってしまったのですから」
               
(民守 正義)


【戦争法案は廃案に!おおさか1万人大集会】

7月18日(土)PM5時扇町公園
集会後、パレードをおこないます。
カンパにご協力ください。
郵便振替00910-4-331584
「平和憲法パレードの会」