「戦争法案-反対」から「安倍政権‐打倒へ」(2)

「戦争法案-反対」から「安倍政権‐打倒へ」(2)


《「戦争法案」衆議院平和・安全保障特別委員会で「強行採決」警戒警報!》
<「反‐戦争関連法案」から「反‐安倍政権・打倒!」キャンペーン>
《「戦争関連法案‐反対!」の声・抗議行動が、まだ押し寄せる!》
【前回からの続き】
<「集団的自衛権丸ごと違憲」長谷部早大教授にインタビュー>
〔解釈変更の拡大懸念〕
 国会で審議中の「戦争関連法案」について、6月4日の衆議院憲法審査会で「集団的自衛権の行使は違憲だ」と発言した自民党参考人の長谷部早稲田大学教授がインタビューに応じ「憲法9条があるのに集団的自衛権の行使を認めることはあり得ない」と述べた。行使には憲法改悪が必要と強調し、解釈変更によって進める安倍政権の動きを「末期的だ」と厳しく批判した。長谷部教授は集団的自衛権の行使に従前から反対している。
 インタビューの中で長谷部教は「戦争関連法案」の成立を目指す自民党の推薦ながら国会で「違憲」と述べた理由について「聞かれたから自分が思う通りに話した。集団的自衛権に関しては丸ごと違憲だ」と語った。現行憲法では集団的自衛権が行使できないのは「歴代政府が言ってきたこと。(「戦争法制」は)次元が全く違う。真っ当な手段じゃない」と反対の立場を強調し「安全保障環境が以前より危険だというなら、日本の限られた防衛力を地球全体に拡大するのは愚の骨頂だ」と指摘した。解釈変更で事実上の憲法改悪を進める現政権の動きを「異常だ。変な国になる」と強く反発。仮に集団的自衛権が行使可能になったとしても「イスラム国の掃討作戦には参加しない」とした首相発言に対し「今の首相がそう言っただけ」となり、時の権力者によって解釈変更が拡大する懸念を示した。
 ホルムズ海峡にイランが機雷を敷設するという想定も「考えられない。全くのファンタジーだ」と述べた。長谷部教授は更に「憲法が再び根本的に変われば大戦争が起きる可能性は常にある」「憲法の事を日々考えずに済む国民は大変ハッピーだが、今回は根幹を変える話。いずれ日々、考えるようになるだろう」と述べた。また審査会後に与党から「人選ミス」との声が出た事については「99%の憲法学者が違憲との立場。(人選ミスと言うなら)合憲だという学者を探してください。立憲主義について語る素養があって、かつ合憲だと言える人が、どこにいるのか」と強く反論した。
*管理者‐菅官房長官が改めて名を出した「解釈拡大合憲」を主張する「長尾中央大名誉教授、百地日本大教授、西駒沢大名誉教授」は、安陪内閣が依拠する日本会議の重鎮ではあるが、憲法学会としては「全く」と言っていいほど憲法学界からは相手にされない学者である。 その証拠に小林教授が「公開討論」を呼びかけても、返事もせず逃げ回っている。
〔異常な解釈改憲〕
 「集団的自衛権の行使は違憲です」憲法学者-長谷部早稲田大学教授はインタビューの中で、4日の衆議院憲法審査会と同様、集団的自衛権行使を可能にする「戦争関連法案」を「違憲」と断じた。一内閣の解釈変更によって憲法を事実上変えていく動きを「異常」とも言う。衆議院審査会での発言の真意や「戦争関連法案」の問題点、立憲主義とは何か等について、じっくり語ってもらった。 
〔長谷部教授インタビュー「集団的自衛権9条で認められず」〕
Q;4日の衆議院憲法審査会に自民党の参考人として出席し「戦争関連法案」については「集団的自衛権の行使が許されるとした点は憲法違反だ」と述べました。自民党側から(発言内容に関して)何か事前に要請はありましたか。
A;「あまり知られていませんが、参考人が何党の推薦を受けているのかは、実はハッキリと分からない事が多いのです。事務サイドから連絡が来るので。特定秘密保護法のときも参考人として(国会審議に)出席しましたが、自民党の推薦だと言われたのはその場です。
今回も『自民党かもしれない』ぐらいのことは、ぼんやりとうかがっていましたが」
Q;長谷部教授は以前から、著書等で集団的自衛権の行使に反対していましたが。
A;「その点は変わっていません。今回の『戦争法制』も集団的自衛権に関しては丸ごと違憲です。条文の形になっているのは法案の一部ですが、核心的部分ですからね」
Q;具体的には。
A;「自衛隊法改悪案がそうです。『存立危機事態』でも『防衛出動を命じることができる』というのは、明らかに集団的自衛権の行使を想定しています」
Q;「後方支援」についても「戦闘地域と非戦闘地域の線引きがなくなる」と言われている。
A;「従来の政府見解として、いわゆる『大森4要素』があります。現場指揮官が、その場その場で判断するのは困難なので『戦闘地域』と『非戦闘地域』に明確な線を引き、後者の範囲内で活動する。そうすれば武力行使との一体化の恐れはないとされてきました」
 「今は国会で『弾薬も提供する』とか、『発進中の航空機の給油もする』とか言われるが、常識的に考えれば一体化しています。『戦闘現場でのみ自衛隊は後方支援活動をしない』と言うだけでは、一体化を避けるのは無理です。戦争とは生き物。どんどん動きますから」
Q;これまでも憲法解釈を通じて自衛隊活動は広がってきました。過去の問題と今回の「戦争関連法案」は、どう違うのでしょうか?
A;「全く次元が違いますね。憲法9条によって(日本の)武力行使は原則ゼロになっています。しかし『国民の生命、財産も守れない』という訳にはいかない。それは、どこの政府も最低限、行う活動だろうという事で『9条の範囲でどこまで許されるのか』で個別に法律を作ってきました。その際も9条があるから、認められるのは個別的自衛権。我が国が外国から攻撃されて、他に手段がないときは最低限の実力行使は認められるという話でした。これは憲法の原則が広がった事を意味しません」
 「しかし集団的自衛権は早い話、他国の防衛のために武力行使をすること。9条があるのに、これを認めることはあり得ない。いや、これは私だけが言ってるのじゃなくて、歴代政府がずっとそう言ってきたのです。『集団的自衛権を行使するなら憲法を改正しないと駄目だ』と繰り返し確認されてきた話です。解釈を変えるのは、真っ当な手段とは言えません」
Q;長谷部教授は「現行憲法に改正すべき点は見当たらない」と著書で述べています。
A;「今のところはそう。与党の皆さんは『安保法制が通れば日本はより安全になる』と言うけど、そんな保証は全くない。仮に安全保障環境が以前より危険だと言うなら、日本の限られた防衛力を地球全体に拡大するのは愚の骨頂。サッカーで自陣のゴールが危ないのに選手を敵サイドに分散させるチームありますか?」「米国に軍事協力をすれば、日本の安全保障にも参加してくれると希望的観測を抱く人もいるようだけど、それは甘い。米国は自分の国のためにしか軍隊を動かしません。どこの国もそうです。さらに米国は本格的な軍事行動に連邦議会の承認が必要で、大統領制下では議会が政府の言うことを聞くとは限らない。日本の国会承認とは全く違うものです」
Q;「戦争関連法案」が成立すれば、軍拡競争につながるという懸念の声もあります。
A;「与党の方々は『抑止力を高める』と言うが、こちらが高めると、向こうはさらに軍備を増強するかもしれない。第1次世界大戦も第2次世界大戦も抑止力競争の結果として始まりました。『抑止力を高めれば平和になる』というのも希望的観測です」
Q;歴史を振り返っても抑止力競争の行き着く先は、戦争ということでしょうか。
A;「『抑止力を高めても安全になる可能性はない』とは申しません。より危険になる可能性も少なくとも同じ程度あるという事です。日本周辺の安全保障環境は、そんなに変わっていないはずですがね」
【用語解説‐大森4要素】自衛隊の海外派遣に際しては「他国軍の武力行使と一体化するのではないか」との懸念がある。その一体化に関する政府の判断基準を示したもので、1997年に大森内閣法制局長官が国会で答弁した。「大森4要件」とも呼び①自衛隊と他国軍の地理的関係②自衛隊の活動の具体的内容③他国の武力行使に当たる者との密接性④協力相手の活動の現況―の四つを総合勘案し、個別に判断するとの内容。憲法9条の下で「海外 へ自衛隊を派遣する場合に用いる」とした。
〔平和主義‐憲法の根幹変わる〕
Q;憲法改悪を巡っては「いかに適正な手続きを踏んでも改正できないものがある」との考えがあります。例えば人類が積み上げてきた基本的人権の尊重等です。
A;「それはそうだと思います。平和主義の原則は入るべきでしょうね」
Q;集団的自衛権の行使を可能にする憲法改悪は?
A;「それはできます。集団的自衛権はアメリカもイギリスもフランスも行使しています。『極めて限定的なものなら集団的自衛権も平和主義の大原則と両立する』と言う人もいるかもしれません。国民投票で承認を得ようとするなら、過去の戦争の歴史も含めて一生懸命説明し、それで集団的自衛権を行使しようとなれば、憲法学者がどうこう言う話ではありません」
Q;現状は、その過程を飛ばし、解釈で事実上の改悪をしようとしています。
A;「憲法とは、そのとき、たまたま首相になった人の考えで、やたら動かしてはいけない。そのための憲法です。だから、なかなか変えにくくしているのです。安倍首相は今のサミット(先進7カ国首脳会議)で『人権、民主主義、法の支配を守る』と言ったけど、法の支配を守るなら今の憲法を守るべきです。自分で破っておいて『守る』とは。言っている事と、やっている事が違います」
Q;長谷部教授は「戦争とは憲法と憲法の戦い」だと述べています。
A;「憲法が違うと、最悪の場合、戦争が起きる。どの国と仲良くするかを決めているのは憲法なのです。かつて憲法の違いから(日本は)アメリカと戦争をして、ポツダム宣言で『戦争を終結したいなら憲法を根本的に変えろ』と言われた訳です。憲法が再び根本的に変われば、大戦争が起きる可能性は常にあります」
Q;一方、私達は日常生活で、そこまで憲法を深く意識していません。
A;「日々の生活との関係は薄いし、もっと大事な事だってあるでしょう。『夕飯の献立の方が大事だ』と。私もそう思います。実は憲法の事を日々、考えなくて済むのは大変ハッピーな国民なのですよ。ただ「戦争法制」は憲法の根幹を変えるという話。いずれ憲法の事を日々、考える事になるかもしれない。『今は夕食の献立が大事だけど、5年後はそんな事、考えていられない』となるかもしれません」
Q;選挙で政治家を選ぶ際の基準も、憲法は上位ではありません。
A;「まず経済。どこの国もそうです」
Q;経済に引っ張られて最終的に憲法が変わり、国が変わったという例はありますか?
A;「まさにヒトラーがそう。政権を取って景気が良くなりました。大規模な公共工事をやって、失業率はどんどん下がった。でも日本では国民1人当たりの所得は、ここまで上がっているので、再び独裁制になるとは思いません」
Q;それでも、ふと気付くと、深刻な変化に気付くことはあり得るのでしょうか。
A;「『ああ、あのときだったか』とね。今回は一つのポイントだと思います」
Q;憲法の事実上の改訂を解釈変更によって行う事が、なぜ駄目なのか。改めて聞かせてください。
A;「要するに『変な国になる』ということ。憲法は他国と交渉する際の最後の拠所です。『憲法にこうあるから無理だ』と言えてきたのを『いや、それは自己都合で変えられる』て天下に示した訳ですから。今後は『じゃあ解釈を変えればいい』と言われますよ」
Q;憲法の有様は、私達の内面と関わっているのでしょうか。
A;「人の生き方、考え方は各々だから、それを公平に認めようというのが今の日本国憲法です。しかし残念ながら、与党にはその考え方自体が気に入らないという方々がいるようです。だから憲法を変えて、人々に同じ考えをしてもらおうとするのは困ります。また戦争をしないといけなくなるので」
Q;―人の心を縛るような改悪もあり得るということですか?
A;「人の内面を縛るのは一種の革命信仰です。制度を変えれば人民の精神を革新できる、皆が『正しい人』になるという信仰は、実は、どの時代にも、どの国にもあります。マルクス主義もフランス革命時のジャコバン独裁もナチズムもファシズムもそうでした。そんなに珍しくなくて、特にエリートの中に結構いるのですよ」
Q;憲法審査会で参考人が全員「違憲だ」と主張し、自民党委員が党幹部に「人選ミスだ」と怒られたとか。
A;「かわいそうに。『だったら、あなたが探してきてくださいよ』という話でしょう?そう簡単には見つからないはずです。立憲主義について語る素養があって、かつ合憲と言える人って、どこにいるのか、という感じですから」
Q;そんな法案が国会で審議され、与党側は、なお「合憲」と主張しています。
A;「末期的ですね。何の末期かは分かりませんが」
〔審査会参考人-学者の99%「違憲」〕
Q;衆議院憲法審査会の後、政府・与党側から参考人の「人選ミス」との声が出てきました。「『戦争関連法案』を合憲という憲法学者もタクサンいる」と。実際、いるのでしょうか。
A;「圧倒的多数、99%の学者は違憲の立場ですよ。少なくとも集団的自衛権はそう。残る1%はどんな人かと?私の口からは申し上げられない。あまり付き合いもないし、学会でも会わない。かなり偏った立場です」
Q;国会議員や閣僚には憲法99条で憲法の尊重擁護義務があります。その人達が自ら、その枠をはみ出そうとしています。
A;「異常です。憲法の枠を外そうとして、それがどこまで広がるかも分からない。枠自体をなくす法案の審議は今までにない事です。例えば集団的自衛権が認められれば、自衛隊はホルムズ海峡で機雷掃海ができると言う。しかし、それ以上の事はできないかというと、その保証は全くない。安倍首相は 『イスラム国の掃討作戦には参加しない』と言ったけど『今の首相がそう言っただけ』という話になります」
Q;「ホルムズ海峡の機雷掃海は個別的自衛権で対処できる」という主張もあります。
A;「あり得ます。憲法審査会で、そう発言した小林慶応大名誉教授に対し北側公明党副代表が『国際法はそういう使い方はしない』と言ったけど、これは日本国憲法の問題です。日本憲法で個別的自衛権だと考えられているものだけが認められる。日本を防衛している米国艦船が外国から襲撃を受け、日本が反撃するのは当然ですが、それを『集団的自衛権だ』と言う人が『だから使えるように』という議論は全く説得力がありません」
Q;ホルムズ海峡の一部はイラン等の領海です。他国内に置かれた機雷を、自国の個別的自衛権によって除去する行為は無理ではないのですか?
A;「両論あり得ると思います。ただイランが機雷を敷設する可能性はない。イラクで『イスラム国』掃討の力になっているのはイランの革命防衛隊です。今後、アメリカはイランと協力する事はあってもけんかは考えられない。『日本に原油が来なくなったら?』なんて全く非現実的なファンタジーです」
(民守 正義)