「戦争法案-反対」の蠢き(4)

「戦争法案-反対」の蠢き(4)

《「憲法違反」で議論もメチャクチャ!「戦争法案」廃案へ!》
 「時代性のおかしさみたいなものに、僕達は危機感を持っています。見ていて耐えられないくらい、おかしいのですよ」特定秘密保護法に反対し、デモや集会を続けてきた学生有志からなる「SASPL」を前身とする「SEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)」は6月上旬から国会前で「戦争立法」に反対する金曜行動をスタートした。SEALDsのメンバー9人が6月24 日、参議院議員会館で行なった記者会見で、メンバーの一人が、立憲主義を否定する安倍政権の横暴なやり方を「むちゃくちゃ」だと批判し憤った。
 これまで3度の国会前集会を行なったSEALDsだが、参加者の数は既に2500人を超える。他団体と共催した6月14日の東京・渋谷デモには3500人が集結し、27日に予定している渋谷ハチ公前での街宣アピールにも既に高い注目が集まっている。東京だけではない。SASPLの動きは地方にも波及し、150人のメンバーがいるという関東圏だけではなく、SEALDs関西も始動した。21日 には、京都で2000人を集めるデモが行なわれた他、前日20日には沖縄で、また26日には北海道で19歳の女性が同テーマでデモを企画する等、若者が声をあげる動きが自然発生的な広がりを見せている。

<SEALDsは勉強をしながらバイトをこなす普通の学生の集まり>
 SEALDsとは何なのか。記者会見ではSEALDsが掲げる理念や「戦争法制」に反対する理由、また今後の行動予定についてメンバーが各々、説明した。10代後半から20代前半を中心に構成されているというSEALDsだが、学業とバイトの合間を縫って、集会やデモの準備や運営にあたっている。(SEALDsのメンバーは)国会を見てないんじゃないか、安全保障について考えてないんじゃないか』と批判されますが、(国会中継は)見ています。その上でおかしいと思って来ています」

<「護憲」か「改憲」かという問題ではなくなっている>
 金曜日の国会前行動は19時30分から約2時間続けられる。学校を終えた学生や仕事を終えたサラリーマン等、平日や日中に足を運べない層の受け皿になればと金曜日を選んだ。集会ではSEALDsのメンバーがスピーチする他、毎回、専門家・署名人をゲストに招いているが、初回は改憲派で知られる憲法学者の小林教授が雨の中訪れ、学生達を激励した。2回目は元経産官僚;古賀茂明さんやジャーナリストの津田大介さん、3回目の19日には憲法学者の権威である樋口陽一さんも 姿を見せ、安倍総理について「人間としてあまりに不真面目だ」と批判した場面もあった。
 「『憲法を守れ』という意味が単純に『護憲』という意味ではなくなってきている。だから改憲派の小林さんが、わざわざ雨の中、来て挨拶をするわけですね」「戦争法案」の中身も問題だが、立憲主義を蔑ろにする安倍政権に強い危機感を感じる。「今はもう『護憲』か『改憲』かという問題ではなくて、この国の根幹、法治国家として、これが許されていいのかということです。安倍総理は去年『最高責任者は私である』という発言をしている。自民党の改憲草案にも繋がる話だが、この国の総理・政府は、立憲主義を理解されていないのでないのでないか。中学-公民教科書にも書いてあるが、憲法というものが権力を縛り、それに基づいて政治を行なう。教科書に書いてあることが守られていない。それに対し危機感を持たないといけない。渋谷に数千人集まったと言ってもたかだか数千人。『オール沖縄』『オール大阪』のように保守や革新を超え、動きが出てきた時に政治の動きは変わるので、そういう動きにならなければいけないと思います」
 国会前には今後、野党議員も訪れる予定だといい「全野党の議員にオファーを出して、次世代の党を除く(「維新」も除け!;管理者)ほぼ全ての野党議員が集まってくれるのではないか」と期待を寄せる。
 SEALDsは法案の問題点を3つにまとめ、一冊のブックレットにまとめた。
1. 集団的自衛権を行使できるように、戦争に参加する可能性が高まる。
2.「後方支援」という名目の参戦により、自衛隊員と国民のリスクが高まる。
3. そもそも「憲法違反」で議論の仕方さえもメチャクチャ。
 政府は集団的自衛権を含む武力行使のための「3要件」を示したが、その一つである「存立危機事態」が具体的にどういう事態なのか、政府は明確にしていないとSEALDsは批判する。日本共産党の志位委員長も国会質疑の中で「密接な関係にある他国への武力攻撃が発生したことにより、存立危機事態に陥った国が世界に一つでもあるのか」と問い質すと、岸田外務大臣が答弁し「実例を挙げるのは困難です」と回答している。更に政府は、石油の入手が困難になった場合や電力不足を存立危機事態の具体例の一つに挙げているが「エネルギー」を理由に戦争に参加することは、国際的にも非常識だという専門家の指摘もある。更にブックレットでは、国連が非難決議を出した違法な戦争に反対してこなかった日本が、米国の支援要請を断れるのかと問題提起。米国に無批判な政府が「巻き込まれることは絶対にない」といくら言っても、その発言に根拠はないとも指摘した。(そのとおり!アベのホラ吹き!;管理者)
 他にも「後方支援」という言葉は、戦争に参加する印象を薄めようとしていると批判。これまで禁じられていた「弾薬の提供」等、限りなく戦闘行為に近づく活動を認めている上、自衛隊の活動範囲が、これまでの「非戦闘地域」から「戦闘地域」へと大きく近づくことで自衛隊員のみならず海外の日本人がテロにあうリスクを著しく高めると「後方支援」の危険性を訴えている。

<世代を超えて繋がるのは当たり前>

 政府が95日間の国会延長を決めたことで、SEALDsも9月までの長期的な行動を続ける予定だというが、今後の展開について記者からの質問に答えた。「いわゆる『若者が政治に無関心』だと思われるのは、人との出会いや接触が少ないからであって、こういうパンフレットやPVを作ることを増やしていけば、政治に興味を持つ層というのは、実は多いのではないか。今後は、そういう層にアクセスする事を心がけていきたい」
 またSEALDsに対する反響の大きさとデモや集会に集まる人数について答えた。「反響が大きいことに驚いている面もありますが、これぐらい集まって当たり前だなとも思います。それから世代を超えていることを強調したい。集会では、60~80代の人が来てスピーチをします。ちょっと時間に余裕がある20代と、 学者を引退したくらいの60代後半が手を組めば、大きな動きになるんじゃないかと、大学の先生に言われたことが印象に残っています。世代間闘争にならず20代や60代が世代を超えて繋がるのも当たり前だし政治に無関心だと言われる30代や40代にも来て欲しい」

《「経団連を使って言論統制」は、あの安倍チルドレンの発言!》
 呆れてものが言えなくなるとはこのことか。無論、自民党若手議員が集まり開かれた「文化芸術懇話会」での発言についてである。この日、出席した議員からは「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」、「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」という声が上がったというのだ。この“言論統制”発言を行ったのは大西議員。大西議員は昨年4月の衆議院総務委員会で“浪速のエリカ様”こと上西小百合議員に「まず自分が子供を産まないとダメだぞ」とヤジを飛ばした議員としても有名だが13年にも元外務省国際情報局長の孫崎享氏の発言を問題視し国会で“どうしてNHKで「孫崎」を出させるのか”と、今回の言論統制発言ともつながる質問を行っている。また大西議員は安倍首相と同じ派閥・清和会に所属する典型的な“安倍チル ドレン”。大西議員のみならず、井上貴博議員と長尾敬議員の2名も同様にマスコミ批判を率先して行ったというが、長尾議員も同じく派閥は清和会だ。「マスコミを懲らしめる」「悪影響を与える番組はスポンサーに訴えかけよう」。
 「政権への批判的な報道は徹底的に潰すべきだ」という言葉には、自分達の思惑を隠そうとする気配さえない。彼らは権力の監視こそがメディアの役割であるという当然の前提さえも知らないようだ。
 しかも「首相の再選を拒む“邪魔者”の排除が懇話会の役割。いわば首相の応援団」「安倍政権と考え方が近い文化人を通し、発信力の強化を目指そう」という、この懇話会がゲストとして招致したのは、なんとあの「ゴロツキ右翼=百田尚樹」だった。
 乱心・乱キチな政治的発言を繰り返してきただけでなく『殉愛』騒動も巻き起こし、今では保守からも鼻つまみ者になっているのに、よりにもよってセンス悪く、この人選。
 そして案の定「沖縄の2紙は潰さないといけない」「沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」等と、いつもの「脳内右翼麻薬」の症状を爆裂させたのである。これを聞いて「ニタニタ」していた自民党若手議員も「脳内右翼麻薬」に犯されている。
 他方、同日には自民党のハト派と無派閥の議員からなる「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」が勉強会を開く予定だったものの、こちらは中止されていた。その理由は〈党幹部の一人が「分厚い保守政治の会」のメンバーに対し「安全保障関連法案への審議に影響がある」として法案成立まで会合を開かないよう求めた〉というが、これは自民党内においても“安倍シンパ以外は認めない”という空気が流れていることの証明だ。実際この勉強会で講演を要請されていた小林よしのり氏はブログで、今回の問題についてこのように言及している。〈小選挙区制になって、首相とは違う考えの議員は抵抗勢力と見られ、パージされてしまう恐れがある。自民党内には、もう多様な意見は許されない全体主義の空気が蔓延しているのだ。安倍派でなければ議員でなし、という同調圧力が強まっているのだろう〉確かに自民党は結党以来「憲法の自主的改正」を使命に掲げてきた保守政党だ。それでも党内で影響力をもった派閥は、それなりに現実路線を取ってきた。
 だが「安倍」が政権トップとなってからは改憲をはじめ軍備の強化、自主独立等を露骨に押し出し始めた。また「日本会議」が更に浸食し「伝統」や「愛国心教育」等といった国家主義思想は強まる一方だ。それと同調するように今回、言論統制発言が飛び出した「文化芸術懇話会」のメンバーにしても、代表を務める木原党青年局長は「チャンネル桜」の常連組であり、萩生田総裁特別補佐にいたっては昨年の衆議院選挙前に“自民党に批判的な報道をするな”という脅しともとれる通達を在京テレビキー局へ送付した張本人。そして二人とも「日本会議国会議員懇談会」のメンバーであるだけでなく、神道系極右団体・神社本庁直轄の「神道政治連盟国会議員懇談会」のメンバーでもある。(ああ!極右の恐ろしさ!)小選挙区制によって党の拘束力が高まったことで安倍首相の主張に異議を唱えられない状況が生まれ、安倍首相自身も自分好みの議員を重用する。こうして極右思想を振りかざす若手議員が増殖し今、自民党は恐ろしい“戦前体制の回帰”を堂々と標榜するようになっているのだ。そうして、ついに今回、いよいよ彼らが言論統制まで公然と口にし始めた訳だが、ここで考えなくてはいけないのは当のメディアの問題である。というのも、もし万が一、経団連がこうした自民党の動きに相乗りすれば、マスコミがこの言論弾圧にひれ伏してしまう可能性があるからだ。(そうだ!テレビマスコミ幹部は、ほぼ毎日、「アベ」と夜食を共にしている!)
 例えば、ここで思い起こされるのは現在も内山田竹志会長が経団連で理事を務め、豊田章一郎氏が名誉会長として名を連ねる大企業・トヨタ自動車による“スポンサー引き下げ”発言だ。それは2008年、当時トヨタの相談役だった奥田碩氏は政府の「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」で座長を務めていたのだが、この懇談会の席上で奥田氏が、年金問題のテレビ報道について、こんな発言を行ったのである。「厚生省叩きは異常。マスコミに報復してやろうか。スポンサーを降りてやろうか」
 巨額の広告費にものを言わせ、トヨタはこれまでもメディアによるトヨタ批判を封じ込めてきたが、自社とは関係のない政権批判まで広告引き下げをちらつかせて黙らせようとするとは。その横暴さには驚くより他ないが、この発言に対し当時の日本民間放送連盟会長・広瀬道貞テレビ朝日相談役は「テレビの影響力の大きさから言えば、ある種の節度が必要」とコメント。メディアがいかにスポンサーには逆らえないかを露呈させたのだ。新聞やテレビといったメディアは、殆どが営利企業である。収益の多くを広告収入に依存しており、そんな中にあってスポンサーは最も弱い急所。公共性を維持しようと踏ん張ってみても、大手企業に広告引き下げという印籠を突きつけられれば一溜りもない。スポンサー経由でメディアに圧力をかけ、政権批判を行わせないようにする。そして“戦争法案”を押し通し戦前の日本を復活させる。こんな目論見が許されていいはずはないが、現実には朝のニュース番組で、この言論統制発言問題を取り上げたのは、TBSの『あさチャン!』だけ。かろうじてテレビ朝日の『グッド!モーニング』は「日刊スポーツ」を引用する形で「百田」の発言を紹介したが日本テレビとフジテレビは触れもせず。そしてNHKは『おはよう日本』で「自民党総裁選“安倍首相の再選”動き始まる」と題して、問題発言は取り上げず勉強会の発足を伝えただけだ。その後、民主党の抗議と自民党の謝罪があったため各局とも取り上げるようになったが、当事者なのになぜもっと怒りをあげないのだろうか。
 こんな調子ではメディアへの言論統制は、もう来ているのだと思わざるを得ない。
(民守 正義)