「憲法審査会-違憲」後の動向(17)

「憲法審査会-違憲」後の動向(17)

《6/29衆議院平和安全法制特別委員会;主な審議内容》
<「報道規制」発言問題、民主党が追及>

自民党勉強会で「マスコミを懲らしめる」等、報道規制する発言が出た問題について国会審議でも取り上げられた。民主党;長妻代表代行は勉強会に参加していた加藤官房副長官に対し「責任を感じないのか」と繰り返し質した。「非常に言語道断だと思うのは、自民党会合で報道に対する暴言があった。加藤官房副長官自身が、その発言をいさめなかった等々、責任を感じていないのか」(民主党;長妻代表代行)「百田の講演部分と質疑の部分があったけれども、私が出席したのは、その前半の講演部分。少なくともマスコミに関する、あるいは沖縄に関する話があったとは認識をしていない」(加藤勝信官房副長官)加藤官房副長官は「問題とされる点の質疑部分では退席していた」と述べ、自らの責任については言及しなかった。更に民主党;長島議員は、自民党が会を主催していた木原青年局長を更迭したことについて「トカゲの尻尾切りで、非常に後味が悪い」と批判した他、枝野幹事長は「安倍総理が、どういう対応をされるのか厳しく見守りたい」と強調するなど、民主党は、この問題での追及を強めている。

<先の大戦「国策の誤り」防衛相も明言せず>
日中戦争や太平洋戦争等の一連の戦争を巡って「国策を誤った」と認めるかどうか、29日の国会同特別委員会で質された中谷防衛大臣は「歴代内閣の立場を全体として引き継いでいる」等と繰り返し「国策の誤り」については明言しなかった。「70年前の戦争~間違った戦争であった、戦争政策として誤った事を言葉として明確に言えないのか?」(民主党;長妻代表代行)これに対し中谷防衛相は「この内閣として村山談話を含めて歴史認識に関する歴代内閣の立場は全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく。そして基本的には歴史の問題等については、歴史家に任せるべきであるということだ」と答えた。
民主党:長妻代表代行は、今回の「戦争関連法案」成立した場合、間違った戦争を始めないためには、運用を担当する防衛大臣が過去の戦争の教訓を正しく認識することの重要性を指摘した。その上で柳条湖事件から満州事変、太平洋戦争へとつながる一連の戦争に踏み込んだ当時の政府の政策判断について「国策を誤った」と考えるかどうかを質した。これに対し中谷大臣は「政治が軍をコントロールできなかったことは問題」だとする一方で「国策の誤り」については明確に答えず「安倍内閣として、過去の内閣の立場を全体で引き継いでいる」等と繰り返した。
 長妻委員は、一連の戦争に対する「国策の誤り」を巡っては、同じように安倍総理も明言していない事を指摘した上で「安倍内閣の体質なのかと疑う。“間違った戦争だと思いたくない”というふうに受け取られても仕方のない答弁だ」と批判した。

<個別的自衛権でも対応可-公海上の米艦防護>
横畠内閣法制局長官は29日の衆議院平和安全法制特別委員会で、朝鮮半島有事に公海上で警戒する米艦に対する攻撃への対応に関して「日本への武力攻撃と認定できるのであれば、個別的自衛権で対処できる」と述べた。米艦防護は安倍首相が集団的自衛権行使の典型例と説明している。民主党;長島委員は個別的自衛権で対応が可能であるなら、集団的自衛権行使は不要になると追及した。中谷防衛相は「日本への武力攻撃か、密接な関係の他国に対する武力攻撃かは非常にあいまいだ。状況による」と述べ、集団的自衛権で対処する場合もあるとの考えを示した。

《「憲法審査会-違憲(6月5日)」以降のあれこれ⑪》
<小林節教授が堂々提案 安保“合憲”学者に「徹底ディベートを」>
堂々と“宣戦布告”だ。小林慶大名誉教授が「戦争法制」を「合憲」とする憲法学者たちに公開討論を呼びかけた。小林教授の大胆提言は24日、憲法学や政治学等を専門とする有識者からなる「立憲デモクラシーの会」の記者会見で飛び出したもの。
 代表を務める山口法政大教授をはじめ、小林教授や長谷部早大教授ら9人が出席。「『戦争』法案は民主政治を根底から覆しかねず、撤回すべき」等とする声明を発表後、各氏が「戦争法案」に「違憲」の評価を下す中、小林教授は22日の衆議院特別委員会の参考人質疑で相対した自民党推薦の西駒大名誉教授の名前を挙げ、こう訴えかけた。「西教授達との公開討論をメディアに主催していただきたい。討論の際は、私達と西先生サイドの人数は同数で結構。お互いにまくし立てるのではなく、司会者が仕切り、論点を限って意見を投げ合うような討論をするべきです。実現すれば学術的には決着がつき「戦争法案」の論点がよりクリアになるのではないか。百地日大教授にもぜひ、ご参加いただきたい」発言に会場がどよめく中、西教授らの主張の問題点を記者から問われると「底の抜けた桶のよう」と断じた小林教授。憤りながら、こう続けた。「彼らは、私達が時間をかけ学び論じ積み上げてきたものをないがしろにしている。「集団的自衛権とは関係ない砂川判決を持ち出し、必要最小限の自衛は可能と捉え、国際情勢の変化により行使を拡大する」こんな雑な論理なのです。西教授とは国会で参考人として一方向的にしゃべり合っただけ。徹底的にディ ベートさせていただきたい」200人以上の憲法学者が「戦争法案」を「違憲」と批判していることに対し、菅官房長官が「数の問題ではない」と誤魔化して紹介したのは、西、百地、長尾の各教授の3人だった。小林教授は「人数は同数でいい」と言っているが、果たして西教授達はどう出るのか。おそらく逃亡するだろう。

<「集団的自衛権を合憲とする」憲法学者は全員、日本会議関係者>
【「たくさんいる」が、たったの3人】
 菅官房長官が民主党;辻元議員に対し「集団的自衛権を合憲とする憲法学者が、たくさんいる」と言ったことから後日、辻元議員が「勝負時だ!『こーんなにいる』と示してください。もし示せなければ、法案は撤回した方がいい」と内心、ウソを見破り追及した。案の定、菅官房長官が実際に出した名前は「長尾一紘・中央大名誉教授、百地章・日本大教授、西修・駒沢大名誉教授」のたったの3人。実際、憲法学会で「集団的自衛権を合憲とするオチコボレ憲法学者」は、この3人だけだ。さすがの菅官房長官も『たくさんいる』と豪語しただけに「人数の問題ではない」とバツ悪そうに開き直るしかなかった。
【3人とも見事に日本会議の関係者】
 私は「日本会議」について相当、調べた。ただ「日本会議」自体を論説する事は本論と脱線するので原則、省略する。「日本会議」は「日本を守る会」と「日本を守る国民会議」が1997年に統合して発足、構成人員は3万5千人とも言われているが、様々な宗教団体とも入り混じっているようで細部実態は分からない。ただ日本最大の保守・右翼団体である事は間違いないようで、安倍総理も含め殆どの閣僚メンバーが「日本会議のお仲間内閣」=「日本会議」メンバーで安倍政権に相当に強い影響力を持っている。
かつては「男女共同社会の実現」にも否定的で行政が行う同テーマのセミナーには「質問攻め」でセミナーを混乱させる等、「意見・質問乱発テロ集団」として行政内部では特別対策を講じたくらいだ。しかし今現在は、最も力を入れるのが憲法改正(改悪)運動だ。
 そして驚くべきことに、菅官房長官が挙げた三名の憲法学者「長尾中央大名誉教授、百地日本大教授、西駒沢大名誉教授」は皆、この2団体の役員なのだ。結局「集団的自衛権を合憲とする憲法学者」を無理に探し出したら「学者」としてはオチコボレでも「日本会議」としては重鎮の3人に頼むしかなかったのが実態だ。

<公明党;浜地議員、民主党:辻元議員に「バカか」とヤジ>
公明党;浜地衆議院議員(45)が6月19日「戦争関連法案」を審議中の衆議院平和安全法制特別委員会で質問に立った民主党;辻元衆議院議員(55)に「バカか」とヤジを飛ばしていた事が分かった。浜地議員は事実を認め、委員会後に辻元議員事務所を訪問。「申し訳なかった」と謝罪した。ヤジは複数の民主党議員が耳にした。公明党席から聞こえたとの証言があり、その後、遠山理事が事実関係を確認。遠山理事も民主党;長妻理事に謝罪した。
一方で辻元議員はそのまま質問を続けた。辻元議員は記者団に対し「公明党議員からのヤジはショックだった。徴兵制や自衛隊のリスクの増大に関する質問になるとヤジが多いから、与党はそこが一番嫌なのだと思う」と語った。辻元議員に対しては安倍首相も同特別委で「早く質問しろよ」とやじり、その後、陳謝している。

<山口二郎さん「安倍が自由を滅ぼすか、我々が安倍を倒すかの闘いだ」国会前抗議で2500人が反対の声>
「これから3カ月、まだ闘いは続きます。私達は安倍が自由を滅ぼすか、我々が安倍を倒すか、という闘いをしなければなりません」。政治学者の山口法政大学教授が国会前でマイクを握り怒りを込めた。6月26日、学生を中心とした有志からなる 「SEALDs(シールズ)」主催による「戦争立法」反対抗議は4回目を迎えた。雨は前回よりも強く降っていたが、前回と同じ2500人の市民が集まった。ここへきて安倍政権による言論への圧力が勢いを増している。25日には自民党若手議員ら主催勉強会で議員から「マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番。経団連に働きかけて欲しい」「悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいい」等の意見が噴出。講師に招かれたゴロツキ右翼;作家‐百田尚樹も「沖縄の2つの新聞は潰さないといけない」等と言論弾圧を呼びかけた。
 スーツを濡らしながらスピーチに立った山口二郎さんは、この勉強会での発言に触れ「自由も民主主義も憲法も、何も分かっていない奴らがこの国会議事堂の中に大勢いる」と痛烈に批判。「国会の中の議会政治が崩壊した今、外側で私達が民主主義を守るしかない」「今、国会の中は確かに数において劣勢です。しかし多数を握っている彼らは論理なし、心なし、言葉なし、ただ頭数がいるだけです。歴史を振り返れば劣勢な側が、人々を説得し価値観を示し、そして多数になって新しいルールを作ったという事例が、たくさんあります」米国の公民権運動を例に出し、少数派がやがて世論の支持を得た歴史を振り返った山口さんは「私達には言葉があります。そして人間の生命と、人間の尊厳を、大事にしようという心があります。あんな頭からっぽの政治家なんかに負けるはずはありません」と、強い口調で訴えた。

<中野晃一さん「平時でも権力暴走させる人達が、
戦争の時に国民の安全を守れるわけがない」>

他にも抗議には多くの学者・専門家が駆けつけた。上智大学国際教養学部教授の中野晃一さんは、「平和な時でも、ここまで国家権力を暴走させてしまっている人達が、戦争のときに国民の安全を守れるわけがない」と断じ「彼らの関心は、権力を強めることであって、国家権力の威光を輝かせるということを考えているだけ。国民のことは考えていない」と批判した。その上で「憲法を守って、初めて国民の安全が守れる。長丁場になるが我々は負けない。なぜなら我々一人ひとりが自分達や他の人達の幸せ、平和、繁栄を考えているからであって、彼ら(安倍政権)に説教される覚えはない」と喝破した。
また前;日本学術会議会長で法学者の広渡清吾さんは、安倍政権による96日間の国会会期延長は、国民の世論がそうさせたと語った。「今や、どの新聞の世論調査でも、戦争法案に反対する国民の声は多数になった。もし今9条改悪の国民投票が行われれば、完全に否定されるだろう。9条を守る国民の声は、大きく国会と自民党を取り巻いている」

<安全保障関連法案に反対する学者の会が発足>
今国会で審議中の「戦争関連法案」に反対する学者らが6月15日、記者会見を開き「国際平和支援法」や「平和安全法制整備法」等の「戦争法案」に反対する声明を発表した。
 会の名称は「安全保障関連法案に反対する学者の会」。賛同者数は6月15日(月)12時の時点で学者・研究者2413人にのぼる。会見で司会役を務めた学習院大学;佐藤学教授によれば賛同者数は日を重ねるごとに、うなぎ登りで増えているという。会の特徴としては、憲法学や政治学等に留まらず様々な分野の学者が名を連ねており、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英さんも発起人となっている。会見に出席した海部宣男;国立天文台名誉教授は「基礎科学の天文学であるからといって、黙って引っ込んでいるわけにはいかない」と、安倍政権が成立を急ぐ「戦争法案」に反対する姿勢を表明した。
*なお今後とも、本稿「『憲法審査会-違憲』後の動向」は随時、継続的に掲載します。
(民守 正義)