「憲法審査会-違憲」後の動向(13)

「憲法審査会-違憲」後の動向(13)

《6月19日「国会審議」状況等》
<衆議院平和安全委員会>

【徴兵制も可能か】
19日の国会審議では将来、安全保障の環境が変化した場合には「徴兵制も可能になるのか」が質疑の焦点になった。菅官房長官が先日「限定的な集団的自衛権は憲法に違反しない」という政府の立場を支持する3人の憲法学者の名前を挙げたことについて、民主党の辻元議員は「3人とも徴兵制も憲法に違反しない」という考えを示していると指摘した。
 菅官房長官は「その事は知りませんでした。それは、あくまでも憲法学者の一つの意見だろう」
安倍政権は、歴代政権が憲法に違反すると解釈してきた集団的自衛権について、安全保障環境が変わったため限定的な行使は認められると主張している。
 辻元議員は「こうした憲法解釈の変更が成り立つなら、現時点で安倍政権が、憲法上許されないとしている徴兵制についても同じように安保環境の変化を理由にして解釈を変えれば将来、可能になるのではないか」と質した。
 こうした憲法解釈の変更を巡る政府の矛盾を炙り出そうとする民主党に対し、政府側は法制局長官が答弁に立って専門的理論を展開して、敢えて一般には分かりにくい説明で明確な答弁を避けている。
【中谷防衛相-またコロコロ!「砂川事件判決は合憲根拠になりえる」】
 中谷防衛相は、衆議院特別委員会で「憲法9条の下でも自衛権は認められる」とした砂川事件の最高裁判所の判決は「戦争関連法案」に盛り込んでいる集団的自衛権の行使が合憲である根拠に成り得るという認識を示した。この中で中谷大臣は憲法9条の下でも自衛権は認められるとした昭和34年の砂川事件の最高裁判決について「憲法上認められる自衛の措置に関して、個別的と集団的を区別して論じている訳ではない。『戦争関連法案』で認められる限定的な集団的自衛権の行使は日本の自衛の措置に限られ、砂川判決の範囲内のものだ。この意味で砂川判決は限定して容認する集団的自衛権の行使が、合憲であることの根拠たりえる」と述べた。また岸田外務大臣は「集団的自衛権の行使が可能になる『存立危機事態』に当たるような事例は、過去にあったのか」という質問に対し「我が国が国民の命や暮らしを守るために必要とする限定的な集団的自衛権には、厳格基準を設けている。こうした基準に基づいて行使されたと説明されている事例は存在しない」と述べた。
 一方、石破地方創生担当大臣は、徴兵制について「内閣の一員として『憲法13条と18条の規定の趣旨からみて許容されるものではない』という政府の見解は堅持するし私もその立場だ。『徴兵制が合憲だ』と言ったことは一度もない」と述べました。その上で石破大臣は「『憲法に反する根拠を述べよ』と言われたときに、奴隷的と苦役は分かれているが、それを根拠とすることに違和感を感じるということは、言ったことがある」と述べた。
 また横畠長官は「国際環境が変化すれば憲法解釈が変わり、徴兵制が容認されるのではないか」という指摘に対し「武力行使の新3要件で我が国を守るための必要最小限度を明確に限定した集団的自衛権の議論とはまったく別だ。徴兵制そのものは、単なる環境によって法的評価が変わるはずもなく、今後とも違憲であるという判断に変更はありえない」と述べた。

<「維新」の「戦争関連法案」対案のポイント>

「維新」の「戦争関連法案」対案ポイントが小出しに明らかになってきたが、そのポイントの一つは「経済危機」だけで「存立危機事態(自衛隊派遣)」と看なさない。
二つ目のポイントは、最大の争点である「集団的自衛権行使容認が憲法違反であるか、どうか」については一切、触れず、集団的自衛権行使容認⇒「戦争関連法案」等の具体運用について「対案」なるものを述べるに留まっている。いずれにしても今頃になって「対案」を出す事の政治的効果は「与党の単独採決」を避ける(「アベ」の願望でもある)根回し・地ならしである事は明らかだ。何度も言うが民主党「枝野」さんをはじめとするマジメなリベラル派は「新右翼‐『維新』」との「騙され共闘」等、一切、無視して「院内・院外のリベラル派の総結集」に全力を挙げてもらいたいと思う。
逆に言えば、それしか廃案に追い込む展望はない。

《「憲法審査会-違憲(6月5日)」以降のあれこれ⑦》
<寂聴さん「戦争近づいてる」>

僧侶で作家の瀬戸内寂聴さん(93)が18日、国会前で「戦争関連法案」に反対する集会に参加した。約2千人(主催者発表)の参加者を前に「最近の状況は戦争にどんどん近づいている。『本当に怖いことが起きているぞ』と申し上げたい」と語りかけ、廃案を訴えた。
 寂聴さんは昨年、背骨の圧迫骨折や胆囊癌に相次ぎ見舞われ、寂庵で療養してきたが、今年4月に約11カ月ぶりに法話を再開。今回の集会を主催する市民団体の一つの呼びかけ人でもあり「最後の力を出して戦争に反対する行動を起こしたい。国会前で抗議の座り込みをしてもいい」と申し出て、療養後初めての遠出が決まった。衆議院第2議員会館前で「とめよう!戦争法案」「9条壊すな」と書かれた横断幕やプラカードが掲げられる中、黒い法衣姿の寂聴さんは車椅子から降りて、歩道上でマイクを握って約5分間演説。自身の戦争体験に触れながら「戦争に良い戦争は絶対にない。戦争は全て人殺しです。人間の一番悪いところ。二度と起こしてはならない」「若い人達が幸せになるような方向にいってほしい」と語ると、大きな拍手が起きた。

<「戦争立法」に反対する学生グループ‐緊急行動に3500人>
6月14日、渋谷でSEALDs(自由と民主主義のための学生による緊急行動)という学生グループが「戦争立法に反対する渋谷デモ」を行い、約3500人が参加し 現在、国会で審議中の「戦争法制」が民主主義や立憲主義に反するとして抗議した。同日、国会周辺にも同じイシューのデモに約2万5千人が集まった。平成生まれの学生達はサウンドカーで音楽を流し、スピーチやコールをしながら渋谷の街を進んだ。以下は学生たちが行ったスピーチの一部。 「私達は、これから先、半世紀以上生きていくことになると思いますが、人生を戦争によってメチャクチャにされたくないし、これから生まれてくる新たな命にも責任があります。自分達の世代が国の意思決定に影響を及ぼさなければいけないと思います。だから戦争できるようにする法案には断固反対します。昨年6月にも20代と30代が中心となって集団的自衛権に反対するデモをしまいした。翌日には国会議員にも内閣府にも要請しました。しかし閣議決定によって集団的自衛権の行使が容認されてしまいました。私達国民は『政治家の偉い人達が決めたんだからしょうがない』といつまでも言っていられません。上の人達が決めた事に従うことしかできないなら、国民は主権者ではなく臣民に成り下がったということです。しかも勝手に決めておいて丁寧に説明するって何なんでしょうか?もう既に安倍政権は、私達は君主に従う臣民だと思っているのでしょうか?主権者は国民であるということを安倍政権に解らせないといけないと思います。『憲法を守らない政治家はいらない』ていうことを聞こえるまで何度でも言ってやりましょう」「僕は最近ですね、SEALDsのメンバーに『お前は憲法を守れbotか』って言われてですね、基本的に『憲法を守れ』しか言ってません。もう護憲とか 改憲とかそういう問題じゃなくて、この国の俺達の普通の自由や権利が守られた生活の基礎である憲法とか民主主義を根こそぎ踏みにじるようなクソみたいな政権は今すぐ叩き潰さなければいけません。『憲法を守れ、戦争をするな、民主主義ってなんだ!強行採決するな』そういうことを訴え続けるだけだと思います。もう議論の余地ないです。はい。だからもう叩き潰しましょう」「憲法を無視して勝手に戦争を始めようとする安倍政権は絶対に許せません。僕らはみんな平和に生きたいという願いをもっています。平和に生きるということは、誰も殺さず、誰にも殺されないということです。イラクやパレスチナの人達を僕は殺したくありません。僕だけではなく、日本の自衛隊が殺しにいくことも許せません。70年前の戦争の後、日本は二度と戦争をしないと誓いました。その誓いが僕は世界の中での日本の誇りだと思います。もし、この法案が通ってしまっても、僕らの生活が一変するというほど変わらないかもしれないけれど、日本が確実に今までとは違う国になってしまうと思います。何故なら日本の自衛隊が海外で殺し合うことになるからです」「今年で戦後70年を迎えますが、70年間続いた戦争をしない国が壊されかけています。もし『戦争法制』が可決されたら、日本は戦争ができる国になります。私達が今まで映像でしか見てこなかった残酷な世界に、私達自身が行かなければならなくなります。安部総理は自衛隊のリスクも増えないし、国の平和を総合的に考えて武力行使をすると言っています。自衛隊のリスクは必ず増えます。アメリカの戦争に手を出したら、日本は必ず敵国と見なされます。『戦争法制』は国民の安全、平和、暮らしを守るものではなく、私たちの生活を脅かす法案です。安部総理はきちんとした説明もなく、「平和」だとか「国際協力」だとか、 綺麗な言葉を並べ、国民を騙し無関心にさせ、戦争法案を可決しようとしています。今までおじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、お父さんが守り続けてきた憲法を、今度は私達若者が守り続けなきゃいけない。立憲主義を理解していない、戦争したがる総理大臣なんかに壊されてはいけない。このままいくと来年の夏の参議院選挙までには選挙権が18歳までに下げられます。そんな中、同世代の子からこんな言葉を聞きました。『私の一票は軽いし、選挙に行っても変わらないし、無駄だと思う』その言葉は選挙の度にテレビ越しに映る無責任な大人達から聞く言葉でした。こんな言葉、無責任な大人達から私達同世代にまで伝わって欲しくなかった。また、そんな無責任な大人から『若者は選挙に行くほどの判断力があるのか』など、冷たい言葉を浴びせられます。そんな大人とふんぞり返っている政府に言ってやりたいです。私達ってそんなに希望ないですか!?あなたは、このまま政府の言うこと聞いているだけで、戦争できる国になってもいいんですか?私達はただ、大切な家族や友達を戦争で失いたくないんです。戦争の加害者にも被害者にもなりたくないんです。戦争なんて大袈裟だと思っているあなた、このままでは日本国民全員、戦後ではなく戦前の道を歩むことになります」
今の若者も「戦争法案」には「徴兵制」も真ともな議論になり始めているだけに「切実」だ。

*なお今後とも、本稿「『憲法審査会-違憲』後の動向」は随時、継続的に掲載します。
(民守 正義)