「憲法審査会-違憲」後の動向(1)
「憲法審査会-違憲」後の動向(1)
《「憲法審査会-違憲」後の国会審議の変更》
衆議院憲法審査会で6月5日「戦争関連11法案」の法的前提となる「「集団自衛権」について、3人の参考人全員(憲法学者)が「違憲」との見解を示して以降、安倍政権は国会審議日程を8月10日または24日まで延長するという2つの案を検討したということだ。
同時に安倍政権としては、「憲法審査会-違憲」判断を無視して審議強行することも法的には可能だが、そんなことをすれば自民党内にも「反『安倍』グループ(古賀グループ)の形成と勢い追いつかせるだけでなく、国民の猛反発も招きかねない。第一、何のための「憲法審査会」かということにもなる。
<用語解説‐憲法審査会>
憲法審査会は、憲法及び憲法に密接に関連する基本法制について、広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査する機関。 従って本審査会は立法府(衆議院)に設置されながらも、自立的に司法的(得に憲法)チェック機能を有する」と考えられ、行政府(内閣)と立法府(国会)は憲法審査会の意見を尊重することが「三権分立」の趣旨に沿った真摯な対応と言える。
一方で国会では「集団的自衛権-憲法違反」の問題点を追及しているが、同時に学者・研究者や弁護士等々で、日増しに安倍政権への「『集団的自衛権』-違憲」審議の強行を許さない声が広まっている。
《防衛相、「憲法を法案に適応」発言を撤回》
中谷防衛大臣は6月6日、憲法審査会での対応に大分、ウロを来たのか、何と「憲法を法律に適応させる」と憲政史上最悪の発言をした。憲法が我国の最高法規である事は中学生でも知っていることで「失言」では済まされない「防衛大臣アウト!」の罷免に相当する。
結果的に10日、一転して「趣旨を正確に伝えられなかった」と発言を撤回した。
《菅官房長官が「違憲ではないという著名な憲法学者もたくさんいる」》
菅官房長官が「違憲ではないという著名な憲法学者もたくさんいる」と記者会見で堂々と「適当なウソ」を言った。私も憲法学会は周知しているが、「解釈改憲も含めて今がギリギリ」学説が精一杯で、「集団的自衛権」も含め「解釈合憲」とする学者は皆無に等しい。私の知っている限り憲法学者を多く見て約300人程度の内、「集団的自衛権も含め『解釈合憲』可能」とする学者は5~6人程度で、それも「政府側参考人」とするには、お恥ずかしい「落ちこぼれ学者」だ。
結果的に10日、辻元議員(民主)に「たくさん、いるなら知っているだけ名前を挙げよ!」と言われて上がったのは、たったの3人。(内、一人は私も知っている学者だったが、自民党側参考人にするのにも、お恥ずかしい学者)菅官房長官は、最後は「数の問題でない」と逃げた。いつも「問題な~い」とクールに応える「スガ」だが、実は「もの知らず」のいい加減な官房長官であることを露呈した。
《自民推薦の憲法学者、高村副総裁に反論》
先の質疑で自民党推薦の参考人として「戦争関連法案」を「違憲」と指摘した早稲田大学;長谷部教授は、9日夜の某ラジオの番組で自民党の高村副総裁が「憲法学者はどうしても憲法9条の字面に拘泥する」などと発言したことに反論し「憲法に拘泥しないで政治権力を使いたいと、高村さんはおっしゃっているのでしょうかね。大変怖い話だと思いますが」と述べた。
そもそも「高村」の方が、一般的に言って学者の専門的領域に畏敬の念がなく、政治家としての自惚れが高い。そういえば「集団的自衛権‐解釈合憲」を導き出すのに「砂川判決」を持ち出し、日弁連等の法曹界からボコボコに批判の的になったのは、まだ、そう前の話ではない。いかにも賢そうに振舞っても知的レベルは高くないのだろうから大人しくしておいたらと思うのだが‐。
《与党推薦教授「危険なやり方」 学者199人「違憲」》
国会で3人の憲法学者が相次いで「戦争法案は憲法違反」との見解を示したことが波紋を広げているが、実は3人だけではない。199人の憲法学者も「憲法違反」との見解を表明している。
与党側は問題の火消しに躍起だが、国会で与党推薦の立場ながら「憲法違反」の意見を述べた教授が「NEWS23」の取材に応じ「安保法案の進め方は極めて危険なやり方だ」と批判した。
街頭演説に立った自民党・谷垣幹事長は「戦争関連法案も、まさに最高裁判所が判断する憲法論の枠内で作られている」とウソをついた。最高裁判所が一々、法案が成立する度に「憲法論の枠内かどうか」判断すること等なく、個別の係争を通じて「違憲判決」が出る可能性だって十分ある。
これを聞いていた聴取者達が、抗議のプラカードを立て 「帰れ、帰れ、帰れ」のシュプレヒコール。
同じ日、高村副総裁も「国民の命と暮しに責任を持つのは憲法学者ではない。政治家が国民の命と暮しに責任を持たなければならない。ぜひ、ご理解をいただきたい」とまだワカッチャイナイ自惚れ発言。国会で3人の憲法学の重鎮達がそろって戦争法制を「憲法違反」と答えた問題。中でも与党推薦の立場だった早稲田大学;長谷部教授が違憲との認識を示したことの余波が続いている。その長谷部教授が8日「NEWS23」の取材に応じた。先週の発言以降、見知らぬ人からメールや手紙が相次いでいるという。「(普段届くのは) お前の意見はけしからんという手紙だが、今回は見知らぬ方から『よくぞ言ってくれた』という手紙が多く驚いている」とのこと。
長谷部教授が憲法違反だと指摘した集団的自衛権の問題を改めて整理する。日本では憲法9条で戦争の放棄が謳われているが、外国の攻撃を受けたときには、自衛のための武力行使、いわゆる個別的自衛権が認められるとされてきた。これを安倍政権は去年7月、あくまでも日本を守ることが目的であれば、密接な関係にある他国を守るために武力行使ができるとの趣旨で解釈を変更。集団的自衛権が限定的に認められるとした。
「国民の命と幸せな暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置が、従来の憲法解釈の基本的考え方を変えるものではないことから、憲法の規範性を何ら変更するものではなく、立憲主義に反するものではない」。この安倍総理の論理主張に対して長谷部教授は 「およそ、自国に対する外国からの攻撃があった時に、それに対して反撃をするというのと、他国を防衛するために自国の武力を行使する、これは全く事柄の性質が違うもの。これは論理的な整合性は損なわれている」と反論する。
長谷部教授はその上で、今回の「戦争法制」の進め方は危険なやり方だと指摘する。
「もし、仮に集団的自衛権の行使を容認すべきだというのであれば、それは正々堂々と憲法改正の手続きに訴えるべき。国民の理解がどうも行き届かないうちに、日本の防衛のあり方、国のあり方を根本的に変えてしまおうというのは、極めて危険なやり方だ」と強調する。
実は、長谷部教授は以前から去年7月の閣議決定の問題点を指摘している。そのため、ことさら今回の違憲発言が注目されるとは思っていなかったようだ。
「こういう発言をする人間を呼んできたことに間違いがあったのだ」と言う方がいるように聞いているが、だとすると、一体、誰を呼べば良かったのか。圧倒的多数の憲法学者は、これは憲法上、許されないと考えているはず」と私と同様の証言をする。
既に『憲法違反』署名は合計で193人になっている。
聖学院大学で憲法を研究する石川教授ら5人は、全国の憲法学者およそ300人に「戦争関連法案」に反対する声明への賛同を呼びかけた。
「憲法に対する政権の認識が相当、軽視されている。この法案が通ってしまうと、法規範として憲法が持っている意味がどうなるんだろう」
活動を始めてからおよそ2週間で続々と返信が届き、8日午後10時時点で署名は199人分に上っている。
「(学者からの反応は)多いですし、かなり早く集まった感じがする。政府の動きが極めて早いというか、悠長に構えていると、法案がどんどん成立していってしまう」
憲法の専門家達の意見を政府はどう受けとめるのか。国会での議論は10日に再開される。
*なお今後、本稿「『憲法審査会-違憲』後の動向」は随時、継続的に掲載します。
《「憲法審査会-違憲」後の国会審議の変更》
衆議院憲法審査会で6月5日「戦争関連11法案」の法的前提となる「「集団自衛権」について、3人の参考人全員(憲法学者)が「違憲」との見解を示して以降、安倍政権は国会審議日程を8月10日または24日まで延長するという2つの案を検討したということだ。
同時に安倍政権としては、「憲法審査会-違憲」判断を無視して審議強行することも法的には可能だが、そんなことをすれば自民党内にも「反『安倍』グループ(古賀グループ)の形成と勢い追いつかせるだけでなく、国民の猛反発も招きかねない。第一、何のための「憲法審査会」かということにもなる。
<用語解説‐憲法審査会>
憲法審査会は、憲法及び憲法に密接に関連する基本法制について、広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査する機関。 従って本審査会は立法府(衆議院)に設置されながらも、自立的に司法的(得に憲法)チェック機能を有する」と考えられ、行政府(内閣)と立法府(国会)は憲法審査会の意見を尊重することが「三権分立」の趣旨に沿った真摯な対応と言える。
一方で国会では「集団的自衛権-憲法違反」の問題点を追及しているが、同時に学者・研究者や弁護士等々で、日増しに安倍政権への「『集団的自衛権』-違憲」審議の強行を許さない声が広まっている。
《防衛相、「憲法を法案に適応」発言を撤回》
中谷防衛大臣は6月6日、憲法審査会での対応に大分、ウロを来たのか、何と「憲法を法律に適応させる」と憲政史上最悪の発言をした。憲法が我国の最高法規である事は中学生でも知っていることで「失言」では済まされない「防衛大臣アウト!」の罷免に相当する。
結果的に10日、一転して「趣旨を正確に伝えられなかった」と発言を撤回した。
《菅官房長官が「違憲ではないという著名な憲法学者もたくさんいる」》
菅官房長官が「違憲ではないという著名な憲法学者もたくさんいる」と記者会見で堂々と「適当なウソ」を言った。私も憲法学会は周知しているが、「解釈改憲も含めて今がギリギリ」学説が精一杯で、「集団的自衛権」も含め「解釈合憲」とする学者は皆無に等しい。私の知っている限り憲法学者を多く見て約300人程度の内、「集団的自衛権も含め『解釈合憲』可能」とする学者は5~6人程度で、それも「政府側参考人」とするには、お恥ずかしい「落ちこぼれ学者」だ。
結果的に10日、辻元議員(民主)に「たくさん、いるなら知っているだけ名前を挙げよ!」と言われて上がったのは、たったの3人。(内、一人は私も知っている学者だったが、自民党側参考人にするのにも、お恥ずかしい学者)菅官房長官は、最後は「数の問題でない」と逃げた。いつも「問題な~い」とクールに応える「スガ」だが、実は「もの知らず」のいい加減な官房長官であることを露呈した。
《自民推薦の憲法学者、高村副総裁に反論》
先の質疑で自民党推薦の参考人として「戦争関連法案」を「違憲」と指摘した早稲田大学;長谷部教授は、9日夜の某ラジオの番組で自民党の高村副総裁が「憲法学者はどうしても憲法9条の字面に拘泥する」などと発言したことに反論し「憲法に拘泥しないで政治権力を使いたいと、高村さんはおっしゃっているのでしょうかね。大変怖い話だと思いますが」と述べた。
そもそも「高村」の方が、一般的に言って学者の専門的領域に畏敬の念がなく、政治家としての自惚れが高い。そういえば「集団的自衛権‐解釈合憲」を導き出すのに「砂川判決」を持ち出し、日弁連等の法曹界からボコボコに批判の的になったのは、まだ、そう前の話ではない。いかにも賢そうに振舞っても知的レベルは高くないのだろうから大人しくしておいたらと思うのだが‐。
《与党推薦教授「危険なやり方」 学者199人「違憲」》
国会で3人の憲法学者が相次いで「戦争法案は憲法違反」との見解を示したことが波紋を広げているが、実は3人だけではない。199人の憲法学者も「憲法違反」との見解を表明している。
与党側は問題の火消しに躍起だが、国会で与党推薦の立場ながら「憲法違反」の意見を述べた教授が「NEWS23」の取材に応じ「安保法案の進め方は極めて危険なやり方だ」と批判した。
街頭演説に立った自民党・谷垣幹事長は「戦争関連法案も、まさに最高裁判所が判断する憲法論の枠内で作られている」とウソをついた。最高裁判所が一々、法案が成立する度に「憲法論の枠内かどうか」判断すること等なく、個別の係争を通じて「違憲判決」が出る可能性だって十分ある。
これを聞いていた聴取者達が、抗議のプラカードを立て 「帰れ、帰れ、帰れ」のシュプレヒコール。
同じ日、高村副総裁も「国民の命と暮しに責任を持つのは憲法学者ではない。政治家が国民の命と暮しに責任を持たなければならない。ぜひ、ご理解をいただきたい」とまだワカッチャイナイ自惚れ発言。国会で3人の憲法学の重鎮達がそろって戦争法制を「憲法違反」と答えた問題。中でも与党推薦の立場だった早稲田大学;長谷部教授が違憲との認識を示したことの余波が続いている。その長谷部教授が8日「NEWS23」の取材に応じた。先週の発言以降、見知らぬ人からメールや手紙が相次いでいるという。「(普段届くのは) お前の意見はけしからんという手紙だが、今回は見知らぬ方から『よくぞ言ってくれた』という手紙が多く驚いている」とのこと。
長谷部教授が憲法違反だと指摘した集団的自衛権の問題を改めて整理する。日本では憲法9条で戦争の放棄が謳われているが、外国の攻撃を受けたときには、自衛のための武力行使、いわゆる個別的自衛権が認められるとされてきた。これを安倍政権は去年7月、あくまでも日本を守ることが目的であれば、密接な関係にある他国を守るために武力行使ができるとの趣旨で解釈を変更。集団的自衛権が限定的に認められるとした。
「国民の命と幸せな暮らしを守るため、必要最小限度の自衛の措置が、従来の憲法解釈の基本的考え方を変えるものではないことから、憲法の規範性を何ら変更するものではなく、立憲主義に反するものではない」。この安倍総理の論理主張に対して長谷部教授は 「およそ、自国に対する外国からの攻撃があった時に、それに対して反撃をするというのと、他国を防衛するために自国の武力を行使する、これは全く事柄の性質が違うもの。これは論理的な整合性は損なわれている」と反論する。
長谷部教授はその上で、今回の「戦争法制」の進め方は危険なやり方だと指摘する。
「もし、仮に集団的自衛権の行使を容認すべきだというのであれば、それは正々堂々と憲法改正の手続きに訴えるべき。国民の理解がどうも行き届かないうちに、日本の防衛のあり方、国のあり方を根本的に変えてしまおうというのは、極めて危険なやり方だ」と強調する。
実は、長谷部教授は以前から去年7月の閣議決定の問題点を指摘している。そのため、ことさら今回の違憲発言が注目されるとは思っていなかったようだ。
「こういう発言をする人間を呼んできたことに間違いがあったのだ」と言う方がいるように聞いているが、だとすると、一体、誰を呼べば良かったのか。圧倒的多数の憲法学者は、これは憲法上、許されないと考えているはず」と私と同様の証言をする。
既に『憲法違反』署名は合計で193人になっている。
聖学院大学で憲法を研究する石川教授ら5人は、全国の憲法学者およそ300人に「戦争関連法案」に反対する声明への賛同を呼びかけた。
「憲法に対する政権の認識が相当、軽視されている。この法案が通ってしまうと、法規範として憲法が持っている意味がどうなるんだろう」
活動を始めてからおよそ2週間で続々と返信が届き、8日午後10時時点で署名は199人分に上っている。
「(学者からの反応は)多いですし、かなり早く集まった感じがする。政府の動きが極めて早いというか、悠長に構えていると、法案がどんどん成立していってしまう」
憲法の専門家達の意見を政府はどう受けとめるのか。国会での議論は10日に再開される。
*なお今後、本稿「『憲法審査会-違憲』後の動向」は随時、継続的に掲載します。
(民守 正義)
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