菅官房長官の嘘に後藤さんの妻が反論

菅官房長官の嘘に後藤さんの妻が反論
-「イスラム国」事件報告書を巡り―

《「イスラム国」事件報告書では》

「イスラム国」による人質殺害事件で、政府対応を検証する「邦人殺害テロ事件の対応に関する検証委員会」報告書が5月21日に公表された。その内容は予想通り「(政府の対応には)誤りがあったとはいえない」と政府を全面擁護する報告書で、一部で批判が噴出している。しかし実はこの報告書に絡み、もう一つの重大疑惑が発覚した。
それは人質の後藤健二さんの妻に対する“対応”について、菅義偉官房長官が大ウソをついたという事実だ。
 報告書では後藤さんの妻への支援について、こう記されている。
 「人命を第一に考え、人質を解放するために何が最も効果的な方法かとの観点に立ち、過去の類似の人質事件の経験等も踏まえて、必要な説明・助言を行う等、後藤夫人の支援を行った」
 抽象的な表現でごまかしているが実際はこの間、政府は後藤さんの妻に任せきりで、「イスラム国」側とは一切、具体的交渉をしていなかったことが明らかになっている。
*それどころか外務省は11月末頃、「イスラム国」と後藤さんの妻と「身代金交渉」をしている事を他に洩らさぬよう口止めしている。(因みに後藤さんの妻はJAICA職員)
*この事実経過はWEBニュースにも一時、報じられたが2~3日で消去されている。私は、そのワードコピーを持っている。また、この事実経過は安倍総理も知っていたはずで、後藤さんが「イスラム国」人質になっているのを知りながら「昨年末-衆議院解散・総選挙」を行った事になる。
そのため、報告書公表に際して行われた官房長官の会見では、記者から「相手側(イスラム国)と直接交渉するという判断はなかったのか?」との質問に対し、菅官房長官は以下の断言をした。
「そこについてはですね、ご本人の判断もありますし、そういう中で警察、外務省、そうしたものは連携して行っていたということです」
これでは「イスラム国」と直接交渉しなかったのは「後藤さんの妻の意向」で「政府はその意思を尊重しただけ」と言う事になり。菅官房長官の「断言」は、まるで後藤さんの妻に、その責任(要因)があったように言っているが、こんな国家的一大事に「後藤さんの妻が~」なんて有り得るだろうか?
実際、この菅官房長官の発言は大ウソだった。
 報告書が公表された当日『報道ステーション』(テレビ朝日系)では報告書の検証を行っているのだが、その中で「妻側とイスラム国との交渉過程をよく知る人物」の証言としてこんなコメントを紹介している。
「妻と危機管理コンサルタントは政府側に対し再三、直接交渉を行うよう頼んでいた。しかし政府は『テロリストと直接交渉しない』と断った」
 後藤さんの妻は、夫が人質となった直後から「イスラム国」からのメールを受け取っており、救出交渉を行っていたのは既に明らかであるが、その過程で政府へ直接交渉、いわばSOSを発していたにも関わらず、政府はこれを拒否した。
この『報ステ』のコメントは「交渉過程をよく知る人物」としているものの、実際は妻本人からの“反論”と考えられる。というのも『報ステ』は 翌日にも「後藤さんへのメッセージ」という特集を組んだが、その際、後藤さんの事務所で撮影を行っている。
事務所での撮影ができたということは 『報ステ』が後藤さんの妻から許可を貰っているということで、だとしたら反論コメントについても『報ステ』は、後藤さんの妻にも事実関係を確認している と考えるのが妥当だろう。

《実際は「政府検証」の報告書》

 実は今回、検証委員会は、報告書作成のために後藤さんの妻から直接、話を聞くこともしなかったことも明らかになっている。それにも関らず菅官房長官は、その事実さえ隠蔽し、会見でデマを垂れ流したのである。
 まさに、圧力とデマで情報を操作する安倍政権らしいやり方だが、さらに問題なのは、こうした菅官房長官、政府の卑劣な行為を、殆どのメディアが報じないことだろう。
 それは、後藤さんの妻への非協力姿勢や責任転換という事実だけではない。
 今回の報告書には、他にも「イスラム国」へのメッセージが日本語だけであったことや、常岡浩介さんや中田考さんらが救出に動こうとしたにも関らず途中で妨害したことなど、書かれていない日本政府の失態がたくさんある。また、そもそも今回の報告書は「有識者会議の報告書」という体裁をとっているが、 実際に検証しているのは政府という根本的な欠陥もある。
 だが、こうした事実を指摘したテレビ番組は、先の『報ステ』以外では『NEWS23』『報道特集』『サンデーモーニング』というTBSの3つの番組くらいだった。
 安倍政権はもはや、どんな失政を犯しても頬被りして逃げ切れる体制を築き上げた、といっていいかもしれない。
そして安倍総理は「後藤さん救出」の意思など全く無く(本当は恐かった?)、中東歴訪し、米国を中心とした「有志連合」には「イスラム国と戦うために25億ドルを支援する」とアピール。その事が「イスラム国 」を刺激して「後藤さん殺害」に至ったとも言われている。
 いずれにしても今、国会では「戦争関連法案」で「議論白熱」だが、この安倍政権の「イスラム国人質事件」の対応を見ると「米国一辺倒-集団的自衛権の行使」はあっても真に自国民を守る国家意思には不信感を抱く。
(民守 正義)