「働く者の労働ニュース2」
「働く者の労働ニュース2」
<エピソード1-「名ばかり管理職」で過労死>
疲労が溜まった夫は「やることがいっぱい、ある」と言い残し職場に向かった。
2006年12月、妻は出勤する夫の様子に異変を感じていた。夫(47歳)は、この日、急性心臓死で亡くなった。夫は倒れる直前まで取引先と話していた履歴が残っていた。
夫は「新規開店」の準備のため、早朝出勤-日帰り出張を繰り返した。
夫がなくなる二年半前に課長に昇進「頑張って会社を大きくすれば、俺達の暮らしも安定する」が口癖だった。死亡前二か月間の早出・残業は月平均140時間にも上り、労働基準監督署は2009年、労災認定した。「過労死」するほど夫は働いていたのに、夫には残業代が支払われていなかった。いわゆる「管理監督者」にされていたからだ。
だが実態は、会社の経営に関与せず、働く時間を自由に決める権限も与えられていない「名ばかり管理職」だった。年収は約600万円、月5万5千円の管理職手当が支給されていたが、実際の残業量には全く見合わない。妻は語る。「責任感が強い人でした。サービス残業(タダ働き)続きでも『課長』という肩書きを与えられ、仕事を投げ出せなかったのでしょう」
現在「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案=労働基準法改悪」が、今国会で本格審議されようとしている。だが実態は、既に不払い残業が横行しており、労働基準法の原則(「1日8時間労働」等)が崩壊してきている。
NPO法人POSSE事務局長は「新制度をつくる前に、広がっている酷い働き方の改善こそ政府に求められる」と指摘する。
<エピソード2-若者をむさぼる「不動産会社」>
20代男性Aは昨春、新規大卒、昨年5月から不動産会社に就職した。「基本給30万円」が決めてだった。
Aは「開店(10時)の1~2時間前」には出勤。退社は、ほぼ毎日、夜11時を過ぎた。入社翌月の休日は2日だけ。不眠に悩み、日中も頭がボーとした。昨年7月に退職した。退職後に弁護士と給与明細を見ると「基本給15万円、固定割増手当15万円」とあった。会社説明会資料にあった「基本給30万円」は残業代を含む金額になっていた。実際の労働時間と関係なく、15万円が定額残業代として支払われていた。弁護士との計算によれば結局、未払い割増賃金は100万円に上った。
会社と交渉し約70万円が振り込まれた。だがAは本年2月、残りの不払い残業代等を求め、東京地裁に訴えた。Aは言う。「働いた分のお金が貰える真っ当な会社を増やしたい。社会に問題提起したかった」
「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案=労働基準法改悪」について経済同友会等と連合が本月10日、懇談会を開催し論戦となった。その論戦模様を紹介し、財界のエゴを暴露する。
連合(古賀会長);「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」は雇用や将来の不安を助長する。
経済同友会;「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」の対象業務も基本的に制限を設けず、ネガティブリストに生えていくべきだ。最終的に制度を本当に実効性のあるものにするには、年収要件の緩和や対象触手を広げる方向で考えるべきだ。
報酬を時間ではなく成果で決め、ワーク・ライフ・バランスにつながる。(*筆者;「報酬を時間ではなく成果で支払う」旨は、同法案のどこにも記載されず、経営側の一方的言い分に過ぎない)
連合;むしろ「残業代ボッタクリ法案」で過労死が増える。経営側の「女性の活用にもつながる」も論点の摩り替え。
経団連;女性にとっては大きな福音。家でも土日でも仕事ができ、時間に縛られない方向になる。
また育児・介護等を行っている労働者について、早めに退社して保育園から子供を迎えて家で食事をした後、残りの仕事をする事が可能。〈筆者;厚生労働省は「そもそも法案審議会の中でワーク・ライフ・バランスにつながるかどうかの意見等は一切、なかった」とのこと。〉
【研究者の声】「残業代ボッタクリ法案」は女性の負担が、もっと増える。
子育てをしたことのない人の発想だ。「同法案」のイメージを良いものにしようと論点を摩り替えようとしている。
<「全国過労死を考える家族の会」反対声明>
家族を過労死で亡くした遺族会でもある「標記会」は、「働いた時間に応じた賃金が支払われなければ、無制限に働かされ過労死を招く」と訴える。
<「労働団体」も一斉に反対声明>
連合や全労連、全労協等も、一斉に「労働者を保護する制度の根幹を崩す」等の反対声明を上げた。
<「過労死防止学会」が発足>
「過労死防止学会」が本月23日、発足した。具体的には研究者・医師・弁護士・遺族らが参加し今後、実態調査や効果的な対策の研究に取組む。講演した甲南大学;熊沢名誉教授は、過労死が相次ぐ要因を「労働組合の力が弱まっている」と指摘。昨年成立した「過労死等防止対策推進法」について「同防止法を活かすも形骸化させるも結局は労働者」と話し、労組も含めた働き手の自立した取り組みを促した。更に大阪市立大;西谷名誉教授は「同防止法には、過労死防止で最も大切な労働時間規制への言及がない。法律の不十分さを如何に埋めるかが重要だ」と力説した。
<厚生労働省が「過労死防止大綱」骨子案-発表>
厚生労働省は5月6日、過労死防止のための対策をまとめた「過労死防止大綱」骨子案を発表した。「将来的に過労死をゼロにする」ことを目標に掲げたが、早速、実効性を疑われる「働き過ぎを防ぐ新たな数値目標」は盛り込まれなかった。骨子案による国の防止策としては、これまでに労災が認められたケースについて「使用者が適切に労働時間を把握していたか」や「裁量労働制等が適用されていたか」などを調べる。更に「健康状態に仕事が、どう影響するか」も長期的に調べる。
加えて長時間労働やメンタルヘルス相談窓口も設置する。
ただ労働側委員から「より効果的な防止策を盛り込む必要がある」等と対策の不十分さが指摘された。更に「過労死遺族」から「終業と始業の間に一定の間隔を取るよう義務付けるインターバル規制」や,「一日の労働時間に上限を設ける制度」について、導入の検討を訴えた。
厚生労働省は、昨年成立した「過労死等防止対策推進法」を受けて、6月末までに大綱をまとめる予定。
{「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」の廃案に向けて}
間もなく「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」の本格審議が始まるが、今でさえ「残業代不払い」が横行している実態や「過労死・過重労働」の実態を見せ付けて迫り、「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」が如何に財界勝手な提案かを暴露し「天下の悪法=残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」として社会的な合言葉に放逐される闘いを強化しようではないか!
〔「名ばかり管理職」の実態}
<エピソード1-「名ばかり管理職」で過労死>
疲労が溜まった夫は「やることがいっぱい、ある」と言い残し職場に向かった。
2006年12月、妻は出勤する夫の様子に異変を感じていた。夫(47歳)は、この日、急性心臓死で亡くなった。夫は倒れる直前まで取引先と話していた履歴が残っていた。
夫は「新規開店」の準備のため、早朝出勤-日帰り出張を繰り返した。
夫がなくなる二年半前に課長に昇進「頑張って会社を大きくすれば、俺達の暮らしも安定する」が口癖だった。死亡前二か月間の早出・残業は月平均140時間にも上り、労働基準監督署は2009年、労災認定した。「過労死」するほど夫は働いていたのに、夫には残業代が支払われていなかった。いわゆる「管理監督者」にされていたからだ。
だが実態は、会社の経営に関与せず、働く時間を自由に決める権限も与えられていない「名ばかり管理職」だった。年収は約600万円、月5万5千円の管理職手当が支給されていたが、実際の残業量には全く見合わない。妻は語る。「責任感が強い人でした。サービス残業(タダ働き)続きでも『課長』という肩書きを与えられ、仕事を投げ出せなかったのでしょう」
{先行する「残業代ボッタクリ法案」}
現在「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案=労働基準法改悪」が、今国会で本格審議されようとしている。だが実態は、既に不払い残業が横行しており、労働基準法の原則(「1日8時間労働」等)が崩壊してきている。
NPO法人POSSE事務局長は「新制度をつくる前に、広がっている酷い働き方の改善こそ政府に求められる」と指摘する。
<エピソード2-若者をむさぼる「不動産会社」>
20代男性Aは昨春、新規大卒、昨年5月から不動産会社に就職した。「基本給30万円」が決めてだった。
Aは「開店(10時)の1~2時間前」には出勤。退社は、ほぼ毎日、夜11時を過ぎた。入社翌月の休日は2日だけ。不眠に悩み、日中も頭がボーとした。昨年7月に退職した。退職後に弁護士と給与明細を見ると「基本給15万円、固定割増手当15万円」とあった。会社説明会資料にあった「基本給30万円」は残業代を含む金額になっていた。実際の労働時間と関係なく、15万円が定額残業代として支払われていた。弁護士との計算によれば結局、未払い割増賃金は100万円に上った。
会社と交渉し約70万円が振り込まれた。だがAは本年2月、残りの不払い残業代等を求め、東京地裁に訴えた。Aは言う。「働いた分のお金が貰える真っ当な会社を増やしたい。社会に問題提起したかった」
{「残業代ボッタクリ法案」労使の攻防}
「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案=労働基準法改悪」について経済同友会等と連合が本月10日、懇談会を開催し論戦となった。その論戦模様を紹介し、財界のエゴを暴露する。
連合(古賀会長);「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」は雇用や将来の不安を助長する。
経済同友会;「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」の対象業務も基本的に制限を設けず、ネガティブリストに生えていくべきだ。最終的に制度を本当に実効性のあるものにするには、年収要件の緩和や対象触手を広げる方向で考えるべきだ。
報酬を時間ではなく成果で決め、ワーク・ライフ・バランスにつながる。(*筆者;「報酬を時間ではなく成果で支払う」旨は、同法案のどこにも記載されず、経営側の一方的言い分に過ぎない)
連合;むしろ「残業代ボッタクリ法案」で過労死が増える。経営側の「女性の活用にもつながる」も論点の摩り替え。
経団連;女性にとっては大きな福音。家でも土日でも仕事ができ、時間に縛られない方向になる。
また育児・介護等を行っている労働者について、早めに退社して保育園から子供を迎えて家で食事をした後、残りの仕事をする事が可能。〈筆者;厚生労働省は「そもそも法案審議会の中でワーク・ライフ・バランスにつながるかどうかの意見等は一切、なかった」とのこと。〉
【研究者の声】「残業代ボッタクリ法案」は女性の負担が、もっと増える。
子育てをしたことのない人の発想だ。「同法案」のイメージを良いものにしようと論点を摩り替えようとしている。
<「全国過労死を考える家族の会」反対声明>
家族を過労死で亡くした遺族会でもある「標記会」は、「働いた時間に応じた賃金が支払われなければ、無制限に働かされ過労死を招く」と訴える。
<「労働団体」も一斉に反対声明>
連合や全労連、全労協等も、一斉に「労働者を保護する制度の根幹を崩す」等の反対声明を上げた。
<「過労死防止学会」が発足>
「過労死防止学会」が本月23日、発足した。具体的には研究者・医師・弁護士・遺族らが参加し今後、実態調査や効果的な対策の研究に取組む。講演した甲南大学;熊沢名誉教授は、過労死が相次ぐ要因を「労働組合の力が弱まっている」と指摘。昨年成立した「過労死等防止対策推進法」について「同防止法を活かすも形骸化させるも結局は労働者」と話し、労組も含めた働き手の自立した取り組みを促した。更に大阪市立大;西谷名誉教授は「同防止法には、過労死防止で最も大切な労働時間規制への言及がない。法律の不十分さを如何に埋めるかが重要だ」と力説した。
<厚生労働省が「過労死防止大綱」骨子案-発表>
厚生労働省は5月6日、過労死防止のための対策をまとめた「過労死防止大綱」骨子案を発表した。「将来的に過労死をゼロにする」ことを目標に掲げたが、早速、実効性を疑われる「働き過ぎを防ぐ新たな数値目標」は盛り込まれなかった。骨子案による国の防止策としては、これまでに労災が認められたケースについて「使用者が適切に労働時間を把握していたか」や「裁量労働制等が適用されていたか」などを調べる。更に「健康状態に仕事が、どう影響するか」も長期的に調べる。
加えて長時間労働やメンタルヘルス相談窓口も設置する。
ただ労働側委員から「より効果的な防止策を盛り込む必要がある」等と対策の不十分さが指摘された。更に「過労死遺族」から「終業と始業の間に一定の間隔を取るよう義務付けるインターバル規制」や,「一日の労働時間に上限を設ける制度」について、導入の検討を訴えた。
厚生労働省は、昨年成立した「過労死等防止対策推進法」を受けて、6月末までに大綱をまとめる予定。
{「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」の廃案に向けて}
間もなく「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」の本格審議が始まるが、今でさえ「残業代不払い」が横行している実態や「過労死・過重労働」の実態を見せ付けて迫り、「残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」が如何に財界勝手な提案かを暴露し「天下の悪法=残業代ボッタクリ(ゼロ)法案」として社会的な合言葉に放逐される闘いを強化しようではないか!
(民守 正義)
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