コラムーひとりごと54 「最近の『労働情勢』」(2)
コラムーひとりごと54
「最近の『労働情勢』」(2)
今回も前回コラム53「最近の『労働情勢』」続編で紹介する。
{メーデーを節目に「最近の『労働情勢』の紹介」2}
<賃上げ「大手高水準」の中でも抱える課題>
今回のメーデーは「大手企業の高水準の賃上げ結果」の中でのメーデーであった。
しかし一方、連合-古賀会長が「全く理解できない」と厳しく批判したのは「残業代ゼロ(ボッタクリ)法案(労働基準法改悪法案)」だった。
この「残業代ゼロ(ボッタクリ)法案」の問題点は前回コラムに詳しく掲載しているので再読して欲しいが、要は本当に「残業代ボッタクリ法案」なのだ。一部大手企業の「高水準の賃上げ結果」に浮かれている場合ではない。既にもう「恐ろしい毒饅頭」が待っている。それは「残業代ボッタクリ」と「過労死」も認定されがたい「長時間労働(残業時間は「自己管理」が前提となる)」だ。
あるメーデー集会に参加した組合員は早速、不安の念を洩らした。「『残業代ゼロ対象年収1千万円以上』も、いずれ引き下げられるのではないか」と。おっしゃるとおりだ。そもそも「1千万円以上」は法案に盛り込むのではなく、より厚生労働大臣の裁量が効く「省令」で定めることになっている。現に経団連会長は「全労働者の10%程度を対象にして欲しい」と記者会見で広言している。それに経団連会長が厚生労働大臣に「もっと対象年収範囲を引き下げられないのか?」と聞いて、厚生労働大臣が「とりあえず先ずは導入をして-」とコソコソ話をしたのがリーク(「朝日」WEBニュース)されている。また2005年に出した経団連の提言では元々、対象者を「400万円以上」にするように要望して いた経緯さえある。
政府・経団連の「大企業-高水準賃上げ結果」も「赤子の手をひねる」程度の「騙し-策略」であることだけは認識しておかなければならない。
更に連合-古賀会長が厳しく問題指摘したのが「いつまで経っても派遣労働者法案(労働者派遣法改悪案)」だ。連合-古賀会長は「働き手を代えれば企業が派遣労働者を受け入れられるようになる。加えて均等待遇の原則が欠落していて生涯派遣で低賃金を招く。断固反対だ!」と反対意思を露わにした。
この両法案は、これから国会審議が本格化する。連合は私が期待していた「大衆行動-街宣・国会前座込み行動」等も予定していると言う。私も無職・車椅子ながら参加したい。
連合の組合員は682万人と言われ、これでも【非正規雇用の労働者の組織拡大】で前年より8万人増加した。それでも全労働者からの割合から見ると、まだまだ20%を割る組織率。安倍政権や財界との関係では力不足は否めないが、私個人としては、もちろん労働側の主体的努力が前提だが然程、悲観的でもない。というのは好むと好まざるに関らず、これからは「非正規雇用」中心の時代だ。この「非正規雇用」の方々は私の労働相談の経験上からも言える事だが元々、雇用が不安定なだけに「特に会社への執着・雇用へのしがみつき」が使用者が思い上がるほど無く「もう雇用継続は無理だ」と判断したら俄然と裁判でも合同労組に加入してでも執拗に闘うケースが多いのだ。それに「非正規雇用」同士の情報交換も結構あって、いわゆる「ブラック企業」の公表も国の労働行政を信用していないのか、ツイッターで流しちゃう等の「ゲリラ戦法」も行っちゃう。だから連合も専従態勢を、よりしっかりさせて「非正規雇用組織化センター」として相当の力量を割ければ「大幅な組織拡大」も十分、有り得る。「今日的雇用動向に合わした組織化」これこそが「連合の『力と政策』組織挽回」の有効打開策の一つだと提案する。
<「格差拡大・固定化」を実感>
「朝日-『格差』世論調査」によると「格差が固定化しつつある」は51%「そうは思わない」は44%だった。また「家庭による教育格差が広がってきている」は63%「そうは思わない」は32%で共に「格差拡大・固定化」の実感が増大していることが解った。
また所得格差についても「広がってきている」が76%で「そうは思わない」の20%と大きく「格差拡大」の結果となった。その所得格差については「許容できる範囲だ」46%と「行き過ぎている」の44%が、ほぼ同数値だが「所得格差が広がってきている」と答えた人では「行き過ぎている」が54%もあった。更に失業給付や生活保護等のセーフティネットについても「十分、整っている」は28%で「十分、整っていない」が61%で「十分、整っていない」が大きく上回った。
<労働組合法上の「労働者」と労働基準法上の「労働者」>
東京都労働委員会は4月16日、コンビニ大手ファミリーマートに、フランチャイズ店主らの労働組合(ファミリーマート加盟店ユニオン)が団体交渉を求めていたにも関らず、ファミリーマートが、これに応じなかったことが「不当労働行為」と認め、団体交渉に応じるよう命じた。コンビニ店主を「事業者」ではなく「労働者」と看做す判断は、昨春の岡山県労働委員会によるセブン-イレブン・ジャパンへの命令(中央労働委員会;再審査中)に続く二例目だ。組合側は「店舗運営では僅かな裁量しかなく、自分達は労働組合法上の労働者にあたる」と主張していた。この組合側の主張に対し東京都労働委員会も「店主は労働力として組み込まれ、顕著な事業者性を備えているとは言えない」として「組合法上の労働者」と判断した。一方、使用者側は「中央労働委員会;再審査申立」の意向。
コンビニ店主は「長時間労働を強いられ易い」との指摘があるものの、今回の東京都労働委員会命令は「労働基準法上の労働者」と認めたものではない。
【労働組合法上の労働者】
{基本的判断要素}
①労務供給者が相手方の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか。②契約の締結の態様から労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか。③労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか。
{補充的判断要素}
④労務供給者が、相手方からの個々の業務の依頼に対して基本的に応ずべき関係にあるか。⑤労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務提供を行っていると広い意味で解することができるか、労務の提供にあたり、日時や場所について一定の拘束をうけているか。
{消極的判断要素}
⑥労務供給者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者とみられるか。
【労働基準法上の労働者】
労働基準法上の「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
(民守 正義)
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