コラムーひとりごと51 「女性週刊誌に見る『女性政治意識』の変化」

コラムーひとりごと51
「女性週刊誌に見る『女性政治意識』の変化」




{露骨に「安倍批判」する女性週刊誌}
4月22日付け「毎日-特集ワイド」によると、最近の女性週刊誌には“異変”が起きているという。明確に安倍政権をストレートに批判する硬派な記事が目立っているというのだ。具体的には「安全保障法制の見直し」や「憲法改悪」「原発再稼働」「アベノミクス評価」そして「偽善的な女性活躍推進」といった「安倍政権目玉施策」に対する「怒り」の記事・声。例えば[安倍さんは世界で“女性蔑視”だと思われている!][安倍政権は女の涙ぐましい努力をわかっちゃいな い]等と驚くほどの率直表現。
これでは「官邸のメディア圧力」も手が付けにくいだろう。

<何故「政治ネタ-安倍政権批判」がウケルのか>
政治ネタ記事に関心が高まり増えてきたキッカケと思われるのが東日本大震災と福島第1原発事故だ。ある「女性週刊誌」副編集長は,「原発事故を経験して『最悪の場合どうなるのか知りたい』というニーズが高まった。特に子供や家族を守る立場の女性には、その思いが強い」と話す。「集団的自衛権」や「アベノミクス」等を取り上げる際にも「要するに、どうなるの?」という疑問に答えることを大事にしているという。
  また別の「女性週刊誌」編集長は、「震災以降、特に主婦層は子供達に明るい未来、安全な社会を残してあげられるのかを考えるようになった。そこに訴える記事を出そうというのが編集方針。特に『原発-福島』は徹底して追いかけている」と明かす。
確かに「政治に対する感性」の一般的傾向であるが、私の永い社会運動上の経験でも、男性が「イデオロギー先行型」に対し女性は「日常生活感覚重視」の思考の方が強いように思われる。(あまり強調しすぎると、それはそれで「偏見」にも通じるのだが-)
現に原水禁運動の発祥は1954年3月1日、アメリカのビキニ環礁水爆実験による『第五福竜丸』の被爆が契機に、東京杉並区の主婦がアピール等により立ち上がり運動は広がった。
また現在の「安倍政権の支持率」が55,4%と、まだ高支持率をキープしているが(「共同通信」3/28・29電話世論調査)、こと「安保法制-戦争法案」では、ほぼ半数の49・8%が「反対」、「賛成」の38・4%を10ポイント以上、上回っている。
そして「集団自衛権の行使」の「賛成」「反対」の男女比率は「集団自衛権の行使-賛成〔男性〕」が46.6%「同-反対〔男性〕」30.6%に対し、女性は「集団自衛権の行使-賛成〔女性〕」が24.0%「同-反対〔女性〕」44.2%と明らかに女性の方が「集団自衛権の行使」に反対している。更に「安倍政権が安保法制;戦争一連法案を今国会で一気成立を目指していることに、どう思うか」についても「男性ー賛成」41.6%「男性ー反対」30,4%に対し女性は「女性-賛成」21.7%「女性-反対」44.2%と、これもまた女性の方が「現実的(子供の将来等)な平和志向」が強い。(ニコニコアンケート「月例ネット世論調査(4/16実施)」)
余談になるかもしれないが、労働組合でもよく似た傾向が見られて、一人の非組合員の女性を組合加入勧奨するには、相当のエネルギー・執拗さがいる。でも仕事に役立つ情報を系統的・継続的に提供したり、子供様の保育要件等で人事当局に依頼する等、異動便宜等を図ると組合加入を承諾してくれることがある。感心するのは、そこからで、その後「対立的組合(府職労-共産党系)」の多い職場や「非組合員が圧倒的に多い職場」に転勤しても「俄然・堂々」として組合を脱退しないのだ。完全に腰が座っている。
そしてある時、私を訪ねてきて「組合を辞めやなアカンようになったの~」という。
その理由を聞くと「管理職昇格」されたという。めでたい話だ。それに対して男性は〔職場の状況によって態度が変る〕で、本人は処世術のつもりかもしれないが、あまり昇格効果もないようだ。とにかく統一地方選挙〔前半〕の共産党の前進や「いざ、女性の腹の座った信条」を見ると「ブレナイ事」の大切さが改めて身に染みてわかる。

<「女性週刊誌」への読者の思い>
 この「女性週刊誌」の政治ネタには当然、読者に好評で小渕前経済産業相と松島前法相の「政治とカネ」の問題で特集した「政治とカネ問題Q&A」では『まだまだパンチが足りない』『もっと伝えて』という声ばかりだったという。また、ある「女性週刊誌」は人気連載「シリーズ人間」で「これからも『国民を踏み潰す国』でいいのですか」と題した沖縄・辺野古のルポを掲載。米軍普天間飛行場の移設反対を訴え座り込みを続ける戦争体験者の思い、子育て世代の家族の率直な声を取り上げた。写真グラフも含め計7ページの大型記事だが「涙が止まらなかった」「美容院で記事を見て、もう一度読みたくて買い直した」といった熱い反響が寄せられた。
 更に2人の男の子を持つ北陸地方の母親は「日本が将来、戦争する国になるのではないか、徴兵制が復活するのではないかと本気で心配しています。でも、ママ友と政治的な話はしづらい。週刊誌に疑問に答えてくれる記事があると美容院でも食い入るように読んでしまいます」と語る。
 女性の心理に詳しい原宿カウンセリングセンター所長;信田さよ子さんは言う。「原発事故を経験して政治は生活の安全と直結していることに気付いた。アベノミクスも成功していると言いながら、大多数の国民の生活は苦しい。それらは男性より女性の方が肌で感じている。蓄積した不満や不安が女性週刊誌に反映されるのは当然です」そう分析するのは「ただ女性週刊誌には昔から地道に取材した反骨的なルポや、大手芸能事務所にもおもねらないスクープ があった。 私を含めて長年の読者は、そんな姿勢にも信頼感を抱いているんです」
 またノンフィクション作家の高橋秀実さんは「女性からすると、安倍政権の言葉は『存在が脅かされる』という警戒心を呼ぶのではないか」と指摘する。「例えば『女性の力を活用する』という言い方。女性はあくまで 活用される立場で、活用する男性が優位なのは一目瞭然。また『女性の力を強く信じます』等と一括りに肯定する論理は、一人のミスでも『だから女性は ダメなんだ』と全否定に転じる恐れもある。その辺りのからくりを見抜いているのでしょう」安倍総理をはじめとした男性の「まだまだ解っていない『男女平等意識』」への的に一刺し批判だ。
 そして現場からの率直な取材。「私達が大切にしているのは現場で聞いた生の言葉。それが結果的に厳しい政権批判になっている」
 昨年5月、歴史教科書の採択で揺れる沖縄県竹富町を取材したルポ記事のタイトル「中国より安倍さんが恐いです」は町民が語った言葉から取った。
 「女性週刊誌」を巡っては昨年、月刊ファッション誌「VERY」(光文社)が「お母さんこそ、改憲の前に知憲!」と題し、憲法改正や特定秘密保護法を取り上げた記事を掲載した。発売前に内閣広報室が「秘密保護法を取り上げるなら我々にも取材を」と編集部に電話していた事実が明らかになり「言論への過剰な口出しではないか」と問題になった。今月にもNHKのやらせ疑惑やテレビ朝日の「報道ステーション」でのコメンテーターの発言について、自民党が両局幹部を呼び事情を聴くなどメディアへの介入や圧力ともとれる動きは強まるばかりだ。
そういえば「報道ステーション」で官邸や会社幹部からの圧力にも屈せず、放送現場を守り更迭されたM総括チーフディレクターも女性だ。これからの真に「言論・報道の自由」を守るのは「女性の感性」かもしれない。その「女性の感性」とは何か?
その一つは元々、女性は差別される傾向にあるだけに「左遷・降格」も然程、気にせず筋を通し易い。もっとも「左遷・降格」を気にして権力(官邸等)に気遣いする男性中途半端な幹部(候補者)も大した実力も無いくせに「権力志向」だけはご立派なのだが。もう一つは日本外国特派員協会の外国人記者(フランス・ドイツ等)が言っていたことだが、例えば「VERY」発売前に内閣広報室が「秘密保護法を取り上げるなら、我々にも取材を」と編集部に電話してきたということらしいが、そういった事(横槍)も全部「女性週刊誌」が大々的かつ一斉に報じる。そうして権力(官邸等)に「うかつに圧力がかけられない雰囲気」を作り出すことだ。そうした開き直った戦法は「女性週刊誌」ならできる。権力も差別意識の裏返しか、女性国民の「ワーワー」には弱い。
また権力の悪さは中学生の不良グループと一緒で「陰でコソコソと」したがるものだ。
だから逆に何でも公然と明らかにしてばらしちゃおう! 
(民守 正義)