コラムーひとりごと49 「マタハラ」
コラムーひとりごと49
「マタハラ」
{「マタハラ」とは}
《「マタハラ」という「英語略語(カタカナ)」で適切か》
最近「マタハラ」という言葉をよく聞く。
「マタハラ」=マタニティハラスメント(Maternity Harassment)
⇒「職場において妊娠や出産者に対して行われる嫌がらせを指す言葉」をいう。
少し脱線するが、私自身は、あまり、こうした「英語略語(カタカナ)」で、こと人権問題を「単純表現化」する事自体が、真に当該人権問題を正しく正確に理解する上で望ましいのか。いや、むしろ当該人権問題を「軽薄な理解水準」に留めてしまうのではないか。マスコミが「一般受けする流行語」のように多用するので、なお更に危惧する。
他にも「セクハラ」「パワハラ」「アカハラ」等々とネーミングされた「人権課題」があるが、例えば「セクハラ」の場合、かつては「女性労働者への性的嫌がらせ」だったのが、今(男女雇用機会均等法;2007年4月改正)では「性別に関りなく性的な嫌がらせ」に変わっており「男性が男性に対して『あいつは女好きだ』と噂を立てること」自体も「セクハラ」概念に入るのだ。そうした事が「英語略語(カタカナ)」のレッテル貼りでは理解が深まらない。こと人権課題だけに「わかりやすさ」や「キャッチコピーのような馴染み易さ」等よりも少々、面倒でも「きっちりと正確に、意識変革も含めて向い合う姿勢・態度」が重要だと思う。話は「マタハラ」本旨と違っている事は解っているが、また新たな「人権-英語略語(カタカナ)」が出たかと思うと問題指摘せざるを得ない。
《「マタハラ」の今日的背景には?》
とはいえ、これ以降の主張には便宜上「マタハラ」を基本使用して主張する。
「マタハラ」は「セクハラ」等、他の差別問題と同様、昔から女性が男性と共に働く職場では、その差別実態は当然の如く日常的にあった。(「『女工哀史』:1925年-細井和喜蔵著」には当時の働く女性の過酷な差別実態が如実に記されている) ただ、まだまだ女性に対する人権意識が低い中で「差別実態があれども差別事件は起らず」というのが実際のところだったのだろう。それが女性が働く領域が拡大し同時に社会的にも「働く女性」に対する人権意識も高まる中で「差別事件化」されて、ようやく「女性差別問題」としてクローズアップされてきたのだろう。
特に「マタハラ」の場合「育児・介護休業法」で育児休業が事業主の努力義務から措置義務に充実化等が図られ、かつては「妊娠・出産すれば一旦、退職する」が最近は再就職が厳しい事もあって、徐々に「妊娠・出産して育児休業を取得し復職する」という志向に変わりつつあるのではないか。その「変わりつつある」ときが「男性管理職または会社側の意識改革」にとって相当に大変なときで「マタハラ差別事件」も起り易いときでもある。
《「マタハラ」の差別実態は?》
「マタハラ」の差別実態が最も少ないのが公務員職場だと思うが、それでも自分の部下(女性)から「産休から育児休業を取得したい」と言われて難儀そうにする管理者は少なくない。ましてや民間(中小)企業であれば「育児休業に対する企業責任」の自覚等、ないのは当然のこと、現実的に「代替要員の確保から儘ならない」と不満を愚痴りたいのが本音だろう。
「『毎日』-特集ワイド」によると、ある会社の内定式で「女性の皆さん、入社してすぐ出産しないでください」と挨拶したとか。最近は労働局行政指導も企業寄りで甘い事は巷の常識になっているから「どうせ企業名の公表まで行政指導してくれないなら、ツイッターで流しちゃえ!」とゲリラ戦法も有りで対抗する女性労働者も増えている。確かに法的にも良いか悪いかはあるけれど、労働局も企業も、もう少し真摯かつ果敢に「マタハラ問題」が起きる根本問題に取組まないと「綺麗事ばかり言ってモラルハザード」の世相を招くおそれがあることは御忠告申し上げる。
また連合の「マタハラ」に関する意識調査(2014年5月)によると「マタハラ」という言葉を知っている人は62・3%。前回(13年)の20・5%から3倍に増えた。しかし「何が『マタハラ言動か』ということまでは現場の管理職レベルに浸透していない」ようだ。まさに冒頭、申し上げた「軽薄な理解水準」による「英語略語(カタカナ)」の一人歩きしている典型事例だ。また妊娠や出産を理由にした退職強要や契約打ち切り、降格・職場配転等は当然、違法行為だが実際には中小・零細企業では、まかり通っている。私は公務員現役時代「労働相談業務」を永く行っていたので綺麗事で無く本当の実態は、よく知っている。当然、労働相談過程で実際に行政指導権限を持っているのは「男女雇用機会均等法」により、大阪労働局雇用均等室を案内誘導するのだが「もう先に雇用均等室には行ってきた。そうしたら『大阪府労働事務所に相談して円満に解決してもらったら?』と回された」と言うことが、時々であるがあった。正直言って大阪労働局雇用均等室はプライドが高い割には「指導権限を振るって大企業も中小企業も徹底指導」の覇気は感じられない。「マタハラ」を考えたとき、先ず行政は「やるべきことはやる」というスタンスが最優先だと思うのだが-。
(民守 正義)
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