シリーズ2 「橋下市長」「大阪都構想」批判

シリーズ2
「橋下市長」「大阪都構想」批判



【①「大阪都構想」住民投票が告示日4月27日(月)告示5月17日(日)投票で決定した。特にこの住民投票は「賛成」または「反対」/投票総数(投票率は関係ない)で過半数を得た方に決定するため《「関心がない」とか「よく解らない」「反対だから」といって棄権すると、実質的に「賛成」と同様の効果をもたらす。ぜひ投票所に行って「反対」の記入をして欲しい。(投票は「反対」「賛成」を自分で記入する「自書方式」である。「○・×」方式ではない)
②なお今後、投票日まで随時、ブログ「リベラル広場」に「標題名」を「シリーズ掲載」していく。ぜひ趣旨に賛同の方は、大阪市内在住の方を中心に本ブログ「リベラル広場」を宣伝・拡散して欲しい。(市選挙管理委に「公選法違反」にならない事を確認済み)】

《険悪な大阪市「労使関係」;解決責任は橋下市長》
<「『大阪都構想』批判の前に」労働問題に疎い橋下市長>
「シリーズ1」でも述べたように、問題ある「大阪都構想批判」も重要だが、それ以前の基本の問題として、市長と職員団体(労働組合)と円満な労使関係の形成があってこそ正常な市政運営が図られるのだ。しかし橋下市長は就任直後から職員労働組合に敵愾心を燃やし、様々な「不当」と言われる問題を惹起している。橋下市長の「組合嫌い」は判っているが、それを抑えて「円満な労使関係の形成」という大人の判断と行動ができないのなら、ハッキリ言って市長として失格だ。併せて市民等の中には、橋下市長の「公務員嫌い」に同調・賛美を送る者もいるが、それは品格のない「天にツバを吐く行為」と指摘しておく。今「公務員バッシング」しても、貴方に良い事・得する事はない。むしろ同じ働く者同士で足をひっぱているだけだ。
それにしても橋下市長は「労働法・労働問題」が全く判っていない。おそらく「弁護士」としても専門外なのだろうが、それにしても労働行政30年の私でもわかる明々白々の「不当労働行為」を恥じも外聞もなく労働組合に攻撃する。当然、「不当労働行為」の基本問題みたいな攻撃だから裁判等で、ことごとく負ける。そこで「労働法」を勉強し直すか、「労働法」に詳しい使用者側弁護士をブレーンにする等、作戦を見直せば良いのだが、そのまま「上告する」と息巻いているだけだ。事、労使関係問題については「単細胞」と評せざるを得ない。ここで個別の「労使関係問題」について問題解説したい。
<入墨調査問題>
 2011年4月頃「ある児童福祉施設の職員が『自分の腕の入れ墨を子供達に見せている』」。また「あほ、ぼけ、殺すぞといった暴言と恫喝を児童に繰り返している」といった告発が複数、寄せられた事が発端で、市教委教職員を除く全ての職員(約3万5千人)に対し、一律に職務命令を出して入墨調査を実施した。そして橋下徹市長は回答しなかった職員のリストアップを市幹部にメールで指示し、これらの職員について「私が市長在任中は昇進を認めない」と付記していた。
そうした中で二人の職員(交通局職員A・看護師B)が、上司に入れ墨が無い事を確認してもらった上で、入れ墨調査自体は拒否した。大阪市当局は、報復的に調査拒否した二人の職員を本来業務と関係ない部署に「懲戒処分-配転命令」を下した。そこで二人の職員は「処分取消し・賠償請求」を求めて大阪地方裁判所へ提訴した。訴訟結果は同調査の違法(プライバシー権の侵害等)を認め、「交通局職員Aには『処分取消し・賠償110万円の支払』」「看護師Bには『処分取消し・慰謝料請求却下』と、共に実質、職員側の勝訴となった。しかし橋下市長は判決を不服として控訴している。
なお当初の発端である児童福祉施設職員への「恫喝」事実は判明しなかった。
 また大阪市交通局長は交通局職員Aに対し「提訴を取り下げて」「訴えるのは腹くくりあるやろ」と圧力をかけていた事が明らかになっている。
【寸評;何が問題か】
1.そもそも職員(市教委-教職員除く)全員への同調査の実施の動機・発端の「児童福祉施設職員の『恫喝』」自体、無かった訳で同調査の実施の必要性・合理性が根底から、ひっくり返っている。
2.「入れ墨」自体は違法ではなく、「恫喝」自体を処分対象とすべきこと。百歩譲って同調査を行う必要があったとしても職務上、やむなく必要な合理的理由の成り立つ場合等、限定的に行うべきで、全職員調査の必要性は全くない。
3.橋下市長は同調査を「業務命令」として実施したが、市長といえども為せる「業務命令の範囲」は私法上の「労働契約の範囲」に限られ、業務上「必要と言える合理的理由」の無い、増してや「違法」な業務命令は「業務命令権の濫用」に該当し無効である。
<組合・政治活動アンケート調査>
 2012年2月、橋下市長側市当局は「組合・政治活動アンケート調査」を全職員(市教委-教職員を除く:約3万4千人)に実施した。同調査の動機は、元々「組合嫌い」の上に選挙期間中に大阪市組合関係(大阪市労連)が対立候補-平松前市長を全面支援しているのを真の中りにして相当、憎々しく思ったからではないかと言われている。
 同調査は、橋下市長が「回答しない場合は処分対象になり得る」と通知する等、事実上、強制するもので、記名方式で22の設問項目で成り立っていた。その設問項目は「組合活動に参加した事があるか?」「~誘われた事があるか?」「『組合に加入しないと不利益を被る』と言われたか?」等々、相当に踏み込んだ内容になっていた。しかしあまりにも露骨な組合内不当介入の内容に、組合内外からの批判を集中的に受けて、結果的に中止され、回収された同調査票も破棄された。
 一方、組合側は現業関係労働組合(地公労法適用組合)は大阪府労働委員会へ、一般職員(地方公務員法適用組合)は大阪地方裁判所に「不当労働組合の認定・損害賠償請求」を行った。その命令・判決結果は、共に「不当労働行為が認定」される等、組合側の勝利となっている。その後(2013年3月25日)、橋下市長側は、中央労働委員会に再審査申立等を行ったが、これも棄却。地裁判決には控訴している。
【寸評;何が問題か】
 本件「アンケート調査」問題も、非常に判り易い憲法に定められた「団結の自由」の侵害、労働組合法「不当労働行為」に該当するもので、法的には争う余地はない。
後は橋下市長が「いかに早く労使関係を正常化」するか、その腹づもり一つである。
<組合事務所退去問題>
 2011年12月末頃、橋下市長は「組合事務所退去要求、便宜供与の全面禁止」を公言した。そして早速、2012年1月4日「大阪市労働組合連合会」(市労連、約 2万8千人)」に退去を求めた。なお退去を求められたのは大阪市役所労組(自治労連系)も含めて、組合事務所貸与を受けている8職員組合全てである。
組合側は大阪府労働委員会「不当労働行為救済申立」と大阪地方裁判所には「使用不許可処分取消等」を求めて提訴した。
 橋下市長が「組合事務所退去」を求める本音・感情は「組合・政治活動アンケート調査」と同様、組合に対する敵愾心と「組合潰し」にあることは確かだが、一応、労使の法的主張は以下のとおりである。
〔原告(組合側)の主張〕
◎長年、認められた組合事務所の貸与を唐突に認めず、退去させたことは不当。
〔被告(橋下市長)の主張〕
◎違法な政治活動を行う労働組合(職員団体)に組合事務所を貸与できない。
◎組合事務所を貸与するスペースが不足している。
<主な命令・判決内容等>
 [府労働委員会]
◎昨年2月、不当労働行為救済命令(「団交拒否」「支配介入(退去要求)」を発している。
◎市庁舎のスペースについては、スペー ス不足の数値自体疑問であり、労働組合への説明や協議経過も無く、直接的に結びつく関係にあるとはいい難い。
[大阪地方裁判所]
◎組合事務所の「使用不許可処分取消等」判決。(橋下市長側は高等裁判所に上告)
【寸評;何が問題か】
本件「組合事務所退去問題」も橋下市長の主張する「違法な政治活動」とは関係なく「違法な政治活動」を問題にしたいのら、具体的な物的証拠を提示して、当該職員を懲戒処分すればよい事である。
従って、このお門違いの論理で上告に上告を重ねても勝訴の見込みは全くない。

《対立・連敗の「労使関係」の中で問われる「大阪都構想」》
このように大阪市の労使関係は対立し橋下市長の連敗続きにある。
 それでなくても問題多い「大阪都構想」なのに百歩譲って「それを良し」としても、この「労使関係」の対立状況は、その云々以前の問題である。
かつて橋下府知事時代、橋下知事の感情的振る舞いに、全体として本当に職員のモチベーションは下がった。(もっともゴマスリ・ノンポリ管理職も増えたが-)
 現在の橋下市長も「負けても、上告する」ではなくて、もう少し現実の「労使関係」を直視して対応できないものかと思う。(民守 正義)