コラムーひとりごと43 ついに国会上程へ!「残業代ゼロ法案」
コラムーひとりごと43
ついに国会上程へ!「残業代ゼロ法案」
{「残業代ゼロ法案」閣議決定→今国会上程へ}
安倍内閣は「残業代ゼロ法案」について、本月3日「残業代ゼロ」の対象労働者を年収1075万円以上で閣議決定。今の通常国会に関連法改正案の提出の予定とになった。(2016年4月施行予定)
*総括的な「残業代不払い法案」の問題点等は本年2月1日(日)掲載「まだあきらめぬか!「残業代不払い法案」をご一読ください。
<具体的な対象労働者は>
まだ細部が明らかになっていないが「金融商品の開発」や「市場分析」「研究開発」等の業務をする年収1075万円以上の労働者。例えばアイデアがわいた時に集中して働いたり、夜中に海外と電話したりするような労働者を想定しており「時間でなく成果で評価する」という。因みに年収1075万円超の給与所得者は約150万人で全体の約3%(管理職を含む)程度。
《財界の反応》
この「残業代ゼロ法案」に対し経団連会長は「将来的には少なくとも全労働者の10%は適用を受けるような対象職種を広げた制度にしてほしい」とのコメントを早速、出している。
そもそも今春闘で財界が賃上げに協力的だったのは、この「残業代ゼロ法案」との取引があったようで、将来的に「残業代ゼロ法」を適用拡大しやすくするために「年収1075万円以上」規定も法葎規定ではなく、安易に改訂できる「省令」で定めるという。
また「残業代ゼロ法案」の労働者側メリットとして、労働側からは誰も求めていないのに「時間・場所に囚われず自分のペースで仕事ができる」「趣味や勉強や家族と過ごす時間等を柔軟にやりくりできる」「成果を早期に達成すれば自由時間が増える」と勝手に言っている。もし、それどころか「過重労働」が蔓延したら「首を吊って」責任を取って貰う。
《今から危惧される問題点》
<何をもって「成果」か>
そもそも客観的な「残業時間」に替わって、何をもって抽象的かつ概念の全く違う「成果」で支払うというのか。「成果」に見合う賃金を支払うならば現行「成果給」「賞与査定」等で対応可能なはずだ。だから「残業代ゼロ法案」の真の狙いは、段階的にせよ「残業手当を無くしてタダ働きをさせよ」を目指すものといって過言ではない。だからこそ厚生労働省も明確な「成果」定義づけは避けて「個別に交渉で」とぼやかしているのだ。第一、本当に個別労使交渉で、何を「成果」とするか、決められるだろうか。現実的に考えてみよう。今でも残業代未払いが横行している「企業常識」の中で、会社組織⇔個人の交渉で、会社から「うちの会社の『成果指標』は、これでいきますから」と言われて果敢に「そんな事を『成果』にするのではなくて…」と実質的な交渉ができる労働者がいるだろうか。私は公務員現役時代、「不当解雇撤回」で闘い勝ち取った労働者を、少なからず見てきたが、それとて支援組織があっての事だ。結局は「会社言いなりの『成果』」に従わざるを得ない事になることは目に見えている。連合古賀会長も言っている。「経営側と対等に交渉できる人が会社にどれだけいるのか。私は見たことがない」
<実際には「長時間労働」の蔓延も>
この「残業代ゼロ法案」には「残業代ゼロ→『成果』払い」だけでなく「労働時間の規制緩和」も含まれている。
【労働時間規制緩和1】
対象労働者には「(1)年104日の休日(2)終業と始業の間に一定の休息(3)在社時間等に上限」のいずれかの措置をとる。しかし一方、働き過ぎを防いできた法定労働時間(一日8時間:週40時間)の規制が外れるため「対象労働者の労働時間の自由管理の実態は『働き過ぎを助長し過労死につながる』」と危惧されている。その上に恐ろしい事に「労働時間の自由管理」が建前だけに「過労死」しても「過労死認定」されない可能性が大である事だ。
【労働時間規制緩和2】
この「残業代ゼロ法案」には、予め決めた時間より長く働いても追加の残業代が出ない「企画業務型裁量労働制」に「課題解決型の営業」や「工場の品質管理」業務も追加対象する事になっている。厚生労働省によると「企画業務型の裁量労働制」で働く労働者は推計で約11万人いる。一般的に「法定労働時間は一日8時間まで」が原則だが、現行「企画業務型裁量労働制」を取り入れている事業場の45・2%で実労働時間が一日12時間を超えている実態がある。そこに更なる対象業務の拡大で一層、働き過ぎの労働者が増えることになる。
《労働基準監督署監督官からも「反対」声》
「残業代ゼロ法案」について各労働団体から強い反発が出ていることは当然だが、旧労働省労働組合の「全労働」が労働基準監督官にアンケートを実施したところ過半数が「反対」と答えた。(「全労働」は旧労働省や都道府県労働局、労働基準監督署、ハローワーク等で働く職員らで組織する労働組合;組合員-約1万6千人)
具体的には「残業代ゼロ法案」導入に「賛成」13・3%「反対」53・6%「どちらとも言えない」が33・1%であった。
同法案導入による影響については「長時間・過重労働が一層、深刻化する」が73・4%「長時間労働が抑制され効率的な働き方が広がる」4・2%「わからない」が22・4%で財界が言う「労働者メリット」は完全に否定されている。
更に具体意見として、東京都内監督署に勤務する監督官は「残業に対する企業の意識を変えないまま労働時間の規制から除外したら、残業させ放題になる」と的確に批判する。北関東の監督官は「労働時間の規制は労働者を守るための基本。それを除外することは、監督指導の根拠を失うことにもつながる」と労働基準監督の立場から厳しく指摘した。
アンケートの結果について「全労働」は「現場を知る監督官の声に耳を傾け、結論を急がずに同法案の是非を検討してほしい」と十分な議論を求めている。
{「残業代ゼロ法案」に大ブーイングを!}
今回の「残業代ゼロ法案」国会上程は二回目で一回目も「第一次安陪政権」のとき。しかも「アベノミックス成長戦略」重要メニューであり、さらに経団連からの強い要請と春闘の賃上げ取引にもなっていることから、前回よりも本気度は高い。
それだけに第一次安陪政権のときよりも、先ずは一層の「残業代不払い法案」とか「残業タダ働き法案」「ブラック企業・財界保護法案」と判り易い言葉で「『反対』の世論喚起-大ブーイング」を巻き起こすこと。その上で、院内闘争は元より、それ以上に院外大衆行動(署名・集会・デモ等)を連発することで「なんぼ一強他弱の安倍政権」でも撤回の可能性は必ずある。
(民守 正義)
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