コラムーひとりごと40 「消費税10%超え」も

コラムーひとりごと40
「消費税10%超え」も


{財界から「消費税10%超え」の提言}
経済同友会は本月3日、財政再建のために消費税率を2015年10月(予定)以降も、更に段階的に17%まで引き上げること等を求める提言を麻生財務相に手渡した。その上で「医療や介護など社会保障分野で大胆な改革を行い、毎年5千億円の歳出削減を行うべきだ」と提言している。そのため医療費の自己負担を70歳以上でも3割にすることや、介護サービスの自己負担を2割にすること等も求めている。
 更に提言では、こうした取り組みを確実に実施するため、歳出削減についてのルールを定める「財政健全化法」を制定するべきとも提言している。
 また経団連も3月19日の記者会見で、消費税を基礎年金や医療、介護等の財源に充てる社会保障目的税化した場合「例えば2020年とか25年になれば10%で収まるとは思っていない」と述べ、将来は税率が10%を大きく上回るとの見通しを示した。
 経団連会長が10%を超える水準に言及したのは初めて。
 更に経団連は、基礎年金を全額税方式とし、財源に消費税を充てるとともに、医療、介護保険制度への公費投入の拡大を盛り込んだ社会保障制度「改革」も提言している。そして社会保障費が毎年1兆円拡大している現状も踏まえ、医療、介護制度も消費税を財源にすれば「10%ではやがて済まなくなる」と強調した。
 なお財界が、社会保障財源確保に消費税増税を充てることを提言する理由には、社会保障保険料の企業負担を軽くする狙いがある。

{財界の「消費税10%超え」に政府・自民党も呼応}
<自民党>
自民党;谷垣幹事長は、財政赤字の削減のために将来的には更に引き上げるべきだという考えを示した。具体的には2020年に予定通り国の収入と支出のバランスが取れれば、残る借金を返済するため、さらに消費税をアップすることが必要だという認識だ。
<政府>
麻生財務相は、仮に消費税を10%に増税しても基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字が解消されない厳しい財政状況を説明。「黒字化を達成するための新たな計画(消費税10%超え)を準備する必要がある」と述べた。

{財政赤字は誰のせい?}
◎現在の国債残高は1千兆円。それだけを見ると「日本は大変な赤字大国」と言うことになるのだが、「財務省が言うほど(デマ・流言)財政危機ではない」と論じる経済学者も少なくない。その根拠とするのは、国債の買受先の殆どが日本銀行と国内投資機関。外国依存度が少なく、国内的には「国債発行⇔買受トントン」という事だからだ。
因みに米国の国債をはじめとする「公債の国外依存度」は30%後半を推移している。
◎ただ一方、米国債の発行残高が米国の法律で決められた上限に達していて、米国債のデフォルトが懸念されている。その米国債を大量保有しているのが中国と日本。今後、米国債の信用動向によって、日本も悪影響を受けることが懸念されている。
◎ただ国内の「財政の健全化」も、喫急の課題であることには変わりなく、国債の利払いだけでも税収の2割以上、社会保障費の財源確保等の見直しが急務となっている。

{財政再建は誰が責任を取る?}
◎政府(財務省)が「財政非常事態」を宣しても国債を発行し続けた主な理由は、上記理由が従的にあるのに加え、結局「無駄な公共事業」から抜け出せなかった事にある。
◎安倍政権は昨年11月「消費税率の10%への引き上げ時期を1年半延期し、社会保障関連の支出や連動する税制の見直し」を進めている。
◎経済学者トマ・ピケティは「労働所得に対し減税し、資本に対して増税するのが自然な解決策である」と指摘している。またピケティは「消費税率を上げても良い結果を生んでいない。日本の財政再建は、高所得層に重い税を課す。若者・中低所得層の所得税を減税したりする取り組みを優先するべきである」と指摘している。
他にも様々な経済学者が、様々な「財政再建策」を提言している(竹中平蔵は「消費税が財政再建に適している」と言っている)が、元々「バブルも、赤字国債発行→公共事業の恩恵」も然程、受けていない労働者(給与所得者)よりも、永年に自民党政権を支持・献金し、むしろ無責任に国債発行を続け、莫大な利益政策を求めた金融資本・ゼネコン等の財界に「財政再建」の基本的責任を取るべきと思うのは、当然の事である。

{財界の「消費税10%超え」の本音と批判}
しかるに財界が「消費税10%超え」を今から提言するのは何故だのだろうか。
それは「消費税の社会保障目的税化→税と社会保障の一体改革」との関係で、例え消費税で社会保障費全てを賄うことは、およそ不可能なことが、今からでも予見されるからである。
<「消費税の社会保障目的税化→税と社会保障の一体改革」のペテン>
「消費税の社会保障目的税化→税と社会保障の一体改革」と言うと、何だか良いことのように聞こえるが、実は、これほど詭弁で財界サービスしたものはない。つまり「消費税の社会保障目的税化」ということは、逆に言えば「社会保険料の企業負担」等の社会保障関係の企業責任(負担)から逃れる(全て消費税財源に転嫁)ことを意味するからである。そのズルメリットを将来的にも確たるものにするために、今からでも予見される「消費税で社会保障費全てを賄うことは、およそ不可能」なために、先回りした危惧として「『消費税10%超え』も検討」と提言しているのだ。
そして付言すれば「社会保障費を全て消費税財源に転嫁する」ことで浮いた余剰金で「法人税の減税」等の実施メリットを目算しているのだ。
本来、「社会保障費の財源確保」を図るためには「消えた保険料12兆円(殆どが法人からの取りはぐれ保険料)」を、歳入庁をつくり、インボイスできっちり徴収すれば済むこと。そもそも「消費税で社会保障費を賄う」という発想自体がおかしい。社会保障は基本的に保険料方式で行うものであって「財政の健全化→社会保障費の確保→消費税アップ」は、どこかで企業責任を免罪し、国民全体に責任転嫁するもので、要は政策混乱を招いている。

{今、財界は言いたい放題}
上記までの経済団体の要望・意見を聞いていると、実に社会的責任の自覚の欠片もなく、自分勝手な言い分に驚く。かつて亀井静香衆議院議員が経団連御手洗元会長に「家族殺人が増えたのは大企業のせい」と経団連批判をしたことがあるが、そこまではともかくも、最近の経済団体の要望・意見には「残業代ゼロ法案」にしても「労働者派遣法改悪」にしても「わがまま言いたい放題」である。その背景理由には「一人勝ち安倍政権」の中で「今の内に言いたいことを言い、やれることはやる」という気分を反映しているからだと思う。
それを阻止するには、度々、言っている事だが「国会内闘争」に頼らず「集会・デモ・署名」等の大衆行動を伴わなければダメだ。その意味で何度も言う。連合をはじめとする労働団体は、もっとしっかりしろ!
(民守 正義)