コラムーひとりごと36 ご存知ですか?警察の「DNA型検査」独占化
コラムーひとりごと36
ご存知ですか?警察の「DNA型検査」独占化
皆さん、ご存知でしたか?警察庁は各大学法医学教室等に委託している「司法解剖検査項目」の中から、「DNA型検査」を除外しようとしているのですよ。
それって、どういうこと?その狙いは?
{「警察の『DNA型鑑定』独占化」とは?}
警察庁は、本年4月から各大学法医学教室等に委託している「司法解剖検査項目」の中から、「DNA型鑑定」を除外し、警察組織内である科学捜査研究所で集約実施する事を決めた。しかし日本法医学会の猛反対に合い、また「九州再審弁護団連絡会」も緊急に「反対声明」を採択「科捜研は警察の内部組織にすぎず、中立的な第三者機関ではない」「捜査機関がDNA型鑑定を事実上独占することになる」「鑑定の誤りを正し、無罪を立証する機会を奪う」と訴えた。更に、刑事事件での誤判を防ぐためには捜査資料の事後検証が不可欠だとして「冤罪が隠蔽される結果となりかねない」と主張した。こうした関係団体の反発の声に一旦、結果的に撤回した。だが警察庁は諦めた訳ではなく、再来年から、どうするかは不透明だ。
因みに「各大学法医学教室等に委託している『司法解剖検査項目』の中から、『DNA型鑑定』を除外する」と言う事は、DNA型検査」は全国の警察本部に所属する科学捜査研究所のみが独占する事を意味する。
{何故、警察庁は「DNA型鑑定」を独占化しようとするのか}
1.表向きは「経費削減」実は「冤罪隠し(?)」
日本法医学会が反対している理由の一つは「委託がなくなれば、大学の法医学教室等は、機器や試薬を使いこなして検査技術を磨くことが出来なくなる」ということ。その事によって、裁判所から再鑑定を頼まれても「対応困難」となる事が十分、予想される。
もう一つの理由は「裁判でDNA資料が捜査側独占になり裁判自体が公正でなくなる恐れがある」と問題指摘している。現に日本法医学会理事長は「冤罪 があっても証明できない事態になることは否定できない」と警告している。
2.「経費削減」はウソ。
実際の「DNA検査機材単価」は数千万円もする。それが全国の47都道府県科学捜査研究所に配備され、何年かおきに設備が更新される。つまり年間数億円かけて機材を購入している計算になる。そこに加え人件費や材料費を入れると、トータルの警察庁がDNA検査にかけている費用は年間100億円位と言われている。それに対して昨年度の日本法医学関係(8大学を含む13機関)への委託費用は321体、総額は約3200万円だった。明らかに警察庁自前の科学捜査研究所で独占する方が高い訳で、「経費削減」はウソで真の理由は、他(冤罪隠し?)にあると推察せざるを得ない。
{警察庁の「DNA型鑑定」冤罪実例と、その基本姿勢}
警察庁あるいは被告側の「DNA型(再)鑑定」が関係する冤罪事件に「足利事件」「袴田事件」「東電女性社員殺人事件」等がある。(事件の詳細は省略)
このように近年「DNA型鑑定」の再鑑定等により「冤罪の発覚」が明らかになってきたのは「DNA検査」の技術進歩もあるからで、本来は実に喜ばしい事だと思う。
しかし警察は、それを快く思ってないようだ。2010年10月ある茨城県警幹部がDNA型鑑定では有名な筑波大学;本田教授に以下の発言をしている。「司法解剖は、犯罪性の有無を検査すればいいだけのことで、『DNA型検査』は司法解剖に入れる必要がない。筑波大学を皮切りに、これから各大学や法医学会にも検査の中止を広げていく」おまけに「従わなければ制裁のために速やかに解剖経費予算執行を停止させる」という強引な恫喝までかけている。結局、同大学法医学教室は非公式に「司法解剖時DNA型検査」を中止に追い込まれた。警察庁によると「司法解剖時DNA型検査」を行っていた大学、民間機関は、どんどん減らされ、現在は、わずか8大学。それも今後「ゼロ」になりかねないという。そうなると警察組織内の科学捜査研究所による「司法解剖時DNA型検査」だけになり実質、「警察の『DNA型鑑定』独占化」が完成することになる。という事は弁護側の「再鑑定」する依頼先を失い、誤った(または捏造された)科学捜査研究所による「司法解剖時DNA型検査結果」及び、それによる冤罪を暴露することができなくなる。
それは同時に益々「裁判が公正でなくなる恐れ」が増す事にもなる。
{「警察の『DNA型鑑定』独占化」抜本的解決は何か?}
そもそも「DNA型鑑定」という非常に「客観性」が求められる検査に、関係当事者である捜査機関=警察庁が大学法医学教室等に予算を付け、とやかく介入してくる事自体に歪んだ構図がある。本来は捜査機関=警察庁とは全く切り離した行政・中立機関(例;文部科学省・総務省等)が自前で予算化し「司法解剖内容には口は出さない」というルール確立が早急かつ絶対必要だ。それにしても「冤罪事件」が発覚しても、それを反省するのでなく「冤罪」をバレない方策の方を考える。西堺警察署「自白強要」事件も有耶無耶にしようとする。「捜査の可視化」も「冤罪」がし易くできるよう「自由裁量有りの一部可視化」にしようとする。
今の警察の組織体質を見てると、真の「司法制度改革」は、ほど遠い。
(民守 正義)
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