コラムーひとりごと34 与党「安保法制」論議と公明党
コラムーひとりごと34
与党「安保法制」論議と公明党
最近、与党「安全保障法制」協議の中で、どんどんと自衛隊が「いつでも、どこでも」海外派遣できるよう、結果として「歯止め」外し論議が進んでいる。
その中で公明党も「チェック・歯止め」の役割よりも、むしろ補強・裏付け保証の役割を果たしているとの疑念を抱く。そこで最近の「日本の軍事化」の動きについて、憂慮の疑問・意見を述べたい。
《「集団自衛権」→「自衛隊海外派遣恒久法」→「憲法9条完全形骸化」》
<閣議決定で「集団自衛権」容認→「憲法9条無視」>
そもそも「集団自衛権」とは「ある国家が武力攻撃を受けた場合に直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利」である。
しかし従来、政府は「我が国は集団的自衛権を国際法上保有しているが、憲法上その行使は許されない」という見解・立場をとってきた。
それが2014年5月、閣議決定で「密接な関係にある他国への攻撃であり、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合などに限って必要最小限度の範囲で集団的自衛権も行使可能とする」という政府見解の見直しが行われた。
元々、純粋に憲法学的には「自衛隊の存在」自体が「憲法9条違反」が常識的な上に「集団自衛権容認」を「閣議決定」というお粗末な手続で「解釈改憲」を強行するということは実質、閣議の堂々たる「憲法違反」と言わざるを得ない。安倍総理の姑息かつファッショ的手段を見た思いである。最低限「国会の承認」は必要であろう。併せて公明党が何ら異論・警告を発しないのは「与党に組して責任放棄」と言わざるを得ない。
<「自衛隊海外派遣恒久法」と「憲法9条完全形骸化」>
従来、自衛隊海外派遣する場合は原則的に、その都度、時限立法(例;テロ対策特措法、イラク復興支援特措法)を制定して対応してきたが、政府の言い分としては「迅速に派遣できない(*私見;実際には、その都度の反対運動の対応が面倒くさいから)」との要請が強く、政府・与党内で同恒久法が検討されていた。そして3月18日、与党合意案がまとまり「自衛隊の海外での後方支援活動について①国際法上の正当性、②国会の関与など民主的統制の確保に加え、③自衛隊員の安全確保の3つを条件に認める」としている。ただ「国会の関与」を巡っては、公明党があくまで「事前の国会承認」を求めているのに対して政府側は「原則」という言葉を入れて事前の承認がなくても自衛隊を派遣できるようにしたい考えで、文言の最終調整が行われている。一方、政府が提案しているアメリカ軍以外の他国軍の武器を守るための武器使用については、公明党に配慮して「法整備の対象」から「法整備の検討の対象とする」と表現が弱められている。自民・公明両党は20日には正式合意したい考えだ。
しかし、いかに「自衛隊海外派遣3条件」を付けても、「いつでも、どこでも自衛隊海外派遣」に向けた緩和策に変わりなく、また「自衛隊海外派遣3条件」も同恒久法にまで盛り込むかどうかは別として「どうせ、また拡大解釈等で、確実遵守しないだろう」という不信感がある。自民・公明の「与党間信頼関係」はあるかもしれないが、「国民と与党協議の信頼化関係は、然程ない」と明言しておく。
<「自衛隊海外派遣恒久法」と「周辺事態法抜本改悪」とはセットもの>
「いつでも、どこでも自衛隊海外派遣」の「どこでも」という意味では「周辺事態法抜本改悪」は必要不可欠・セットものだ。
政府は、現行の周辺事態法を抜本改悪し「周辺事態」という事実上の地理的制約を撤廃し、法律名も変更する方針を示した。これでは米軍など他国軍への自衛隊の後方支援が際限なく拡大し、地球規模で米国の戦争を手助けすることになりかねない。
更に「抜本的改悪」の具体内容を見ると「『現に戦闘行為を行っている現場』でなければ、自衛隊による他国軍支援を可能とする」「自衛隊の海外派遣には原則として国会承認を必要とするが、派遣後の事後承認も認める」「武器弾薬の提供や、発進準備中の航空機への給油や支援活動もできるようにする」となっており、どうやら「地理的要件撤廃」だけでなく「間接的戦闘行為の参加」まで踏み込んでいるようだ。
《「憲法9条完全形骸化」と公明党》
私は、これまで「リベラル広場」では「安保法制-与党協議」で、公明党の対応に不満・異論があっても、その批判は避けてきた。その理由は55年体制を永く経験してきた私にとって、公明党が中道右派・護憲政党としての役割を高く評価してきたからである。
しかし政権与党に組してからの公明党は、どんどん「安倍政権-自民党補完勢力」となって「そんなに政権内に留まりたいのか!」と言いたくなるぐらい、「公明党ポリシー(護憲・生活と福祉等)をかなぐり捨てている様にしか見えない。
特に支持母体である「創価学会」前身の「創価教育学会」では、 戦時中は弾圧を受け、幹部が治安維持法並びに不敬罪で逮捕されるなど、輝かしい「反戦」の歴史がある。
それが今では「護憲」どころか「安倍政権の『戦争準備法整備=憲法9条完全形骸化』の裏付け保証」を行っている。もう「護憲-公明党」は期待できないのだろうか?
〔緊急追伸:なお「大阪都構想『住民投票』」について、公明党大阪が一転して「賛成」に転換し、それにより「実施」となった。その方針転換の理由は、橋下市長が公明党中央に「衆議院総選挙で公明党選出選挙区には全て、維新の対抗馬を出すぞ!」と恫喝し、公明党中央が公明党大阪に「住民投票には賛成してやれ」と圧力をかけたのが真相のようだ。(3/18「ちちんぷいぷい」)
恫喝した橋本市長もどうかと思うが、この程度の恫喝に屈する「天下の公党-公明党」は、実に情けない。もう仕方ないから「投票しなければ『賛成』と同じ効果を持つ」と、棄権防止キャンペーンぐらい、してもらいたい。〕
《詰め込みすぎ、急ぎすぎの「戦争準備法制整備」》
上記「自衛隊海外派遣恒久法」「周辺整備法」以外にも「自衛隊法改正」「防衛装備移転三原則の閣議決定(武器輸出の原則禁止から“輸出できる国”に方向転換)」等々「戦争準備法制関連」が目白押しだ。でも、その一つ一つが「真に平和国;日本」を守るためには大変、重要な問題だが、国民には「課題の詰め込みすぎ、急ぎすぎ」で十分に理解する暇もない。それは安倍総理の姑息な政治手法もあるかもしれないが、安陪総理なりの「対米追随型日米同盟機軸」路線の政治目標があるからではないかとも思う。
具体的に二つの安倍総理のコメントを紹介しよう。一つは昨年5月の記者会見で、明確に「アメリカによる平和が日本人の常識」と言っている。もう一つは、ごく最近のコメントで「米国を中心とした有志連合と肩を並べる事で、国連常任理事国を目指す」と言ったことだ。なるほど、それで「詰め込みすぎ、急ぎすぎの戦争準備法整備」も「イスラム国人質見殺し事件」も説明できる。しかし安倍総理の極右戦争体制願望によって「平和立国=日本」の放棄によるリスクを負うのは、我々日本国民だ。いつか知らぬ間に「反戦・平和・護憲・民主主義」等と言うこと自体、はばかるような世にならぬよう「国民は国民なりの自覚と責任」を果たして行くべきではないか。
(民守 正義)
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