「大阪都構想」どう考える
「大阪都構想」どう考える
橋下大阪市長(大阪維新の会)が進める「大阪都構想」について、大阪市議会では3月13日本会議で、市を廃止し特別区に分割する「大阪都構想」協定書(制度案)が大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決、承認した。また3月17日にも大阪府議会で承認され、1956年の制度創設後初めて、政令指定都市の存廃を問う市民対象の住民投票が5月17日にも実施される見通しとなった。
でも{大阪都構想}について、その具体内容について、よく解らず市民の関心も、世論調査結果ほど、実際には高いとは思えない。しかし市民生活に直結する重要な問題でもあるようだ。そこで「大阪都構想」のポイントと争点を整理し
「大阪都構想」について、どう考えるべきか、その判断の資としたい。
{「大阪都構想(協定書)」とは}
<その要旨>
◎この構想の目的は、政令指定都市の大阪市を廃止して中核市程度の権限と財源を持ち、公選制の区長を置く特別区を設置する。
◎広域行政に関わる部分を「大阪都」に、地域行政に関わる部分を「特別区」に各々、移譲・統合する。
<そのメリットとは>
◎「大阪府と大阪市の二重行政」の解消
◎大阪都市圏というより広範な地域を対象とした行政ニーズへの対応
◎「特別区」による、地域の実情に応じた小回りの利く地域サービスの実現
〔各「政党会派」の主張(批判)〕
<自民党大阪>
◎既存の自治体を複数の特別区に分割することは、基礎自治体の財政力・行政能力向上を目的とした平成の大合併に逆行する。府内の基礎自治体数が43から50程度に増加することで、府内全体で行政効率が悪くなり、施策の整合性も取りにくくなる。
【再編コスト】
◎特別区設置には大きな再編コスト(イニシャルコストとランニングコスト)が伴う。具体的には
○財政に深刻なダメージを受け、行政サービスの質の低下を招く。
○住所変更等、住民や企業に余分な負担が生じ、経済に打撃を与える。
*財政試算には含まれないコスト。
【基礎行政のサービス】
◎大阪市が行ってきたユニバーサルな住民サービスが失われ、内容や規模が変ってしまう。
◎大阪都の財源は、固定資産税・都市計画税・事業所税等を収入とする(2010年度案)。そのため大阪都による財源の再配分のあり方によっては特別区の財源が不足し、地域によっては住民生活に密接した行政サービスが低下する可能性がある。
<民主党大阪>
◎大阪市が行ってきた基礎行政を規模の小さな特別区が担うことになる。
○専門職が不足し、児童虐待など専門性の高いケースへの対応力が低下する。
○スケールメリットが失われ、ワン・ストップ・サービス等の高度な行政サービスが機能しなくなり、幾つかの役所や窓口を、たらい回しにされてしまうリスクが生じる。
○多種多様な事務を担う一部事務組合の設置には前例がなく、大阪市の本庁機能を残すことにも繋がるため、ニア・イズ・ベターに反する事もある。
<日本共産党>
◎「大阪都構想」が大がかり過ぎ、理解を得られない可能性がある。
*なお橋下市長が市職員に対して「公務員という肩書で職場内での個人的な見解の表明」や「権限を有さない立場での無責任な発言」を慎むよう発言し、この橋下発言に留意を促す文書が、各職場の管理職に宛てて配布されており、
「橋下市長の『箝口令』」と批判している。
【「大阪都構想」批判】
◎「大阪都構想」三つの狙い。
1つは、大阪市も24区も無くす。
2つに、その権限・財源を「大阪都」に吸い上げ、巨額を大型開発に注ぐ。
3つは、「一人の指揮官」(大阪都知事)でやりたい放題できる体制をつくる。
◎「大阪都構想」と言うが「住民投票」で決まるのは「大阪市廃止」だけだ。
◎衛星都市の市長、住民から「『大阪府』を変えるのに意見も聞いていない」と批判が上がっている。
◎「大阪都構想」は、市民サービス大幅削減、公共施設の売却等を行い、その削減余剰金で1兆5千億円以上の大規模開発(「淀川左岸線延伸(高速道路)」「なにわ筋線(鉄道)」更に「カジノ」や「リニア」)を進めようとするもの。
*「大阪都構想;協定書」には、これまで議会で否決された「市民サービス削減計画」や「地下鉄民営化」が前提となっている。
◎「カジノ頼みの大阪都構想」だ。
◎「二重行政解消」はペテン。
○純粋に「二重行政」と言えるものはせいぜい1億円。
○逆に「特別区」の初期コスト(3つの庁舎建設等)680億円が増え「5年間で赤字が1071億円」との疑問・批判がある。
○暮らしと福祉、医療を守る仕事は、府・市・国も二重三重に進めるべき。
◎「特別区」になるデメリット
①「特別区」に直接入る税収は今の大阪市税収の4分の1に減り、交付金を府から受ける従属的団体になる。
② 逆に新しい三つの「特別区」の庁舎建設費用に555億円のコストがかかる。
③財源について「『大阪都』と『特別区』で調整する」と言われているが、国からの地方交付税に頼る大阪では限られた財源の奪い合いになるだけ。
④「国民健康保険」「介護保険」「水道」「ごみ」等は「特別区」では担えず「一部事務組合」が担うことになる。
*「特別区」では保険料減額、減免制度をつくる事もできなくなる。
◎上から目線の「区割り」と町名変更。
〔私の「大阪都構想」の感想〕
私は大阪市民であり「大阪都構想」について、 もう少し関心を持つべきだったと反省している、そして住民投票が確実視して、慌ててサラッと勉強した次第である。
ただ勉強すればするほど「何で、こんな大層な事をするのか」という疑問が沸き立つ。
例えば目的の一つである「二重行政の解消」が言われているが、日常生活上において「これが二重行政の弊害だ!」と怒ったことがない。むしろ私は共産党の主張に賛成で「暮らしと福祉、医療を守る仕事は、府・市・国も二重三重に進めるべき」で何が悪いと思っている。確かに全く「無駄な二重行政」がないとは言わないが、それは伝統的にある「大阪府と大阪市との心合わせ」ができていない事にあり、それこそ「知事と市長の協議・調整」等と、その監視機関の設置等、現状制度からの更なる工夫・改革での余地は、まだ十分にあると思っている。
もう一つの目的である「大阪都(スケールメリット)による広域行政の効率化」も堺市が離脱した段階で破綻しており「道州制」の一里塚にもならない。
更に三つ目の目的である「特別区による基礎行政の効率化」も近所・巷の世間話では、むしろ、その逆で「現行区より広域化する『特別区』では何かと不便」という声が圧倒的である。
このように「日常感覚」で「大阪都構想」を考えてみると、殆どの政党会派が反対する中で「そこまで無理するほど特効薬的効果があるのか」と言いたい。知事時代からの橋下君の悪い癖「自信過剰で、思い付きが思い上がりになり、思い込みになる」。正直言って「大阪都構想」をさっさと否決して早く、この話を終わらせたい。
橋下大阪市長(大阪維新の会)が進める「大阪都構想」について、大阪市議会では3月13日本会議で、市を廃止し特別区に分割する「大阪都構想」協定書(制度案)が大阪維新の会と公明党の賛成多数で可決、承認した。また3月17日にも大阪府議会で承認され、1956年の制度創設後初めて、政令指定都市の存廃を問う市民対象の住民投票が5月17日にも実施される見通しとなった。
でも{大阪都構想}について、その具体内容について、よく解らず市民の関心も、世論調査結果ほど、実際には高いとは思えない。しかし市民生活に直結する重要な問題でもあるようだ。そこで「大阪都構想」のポイントと争点を整理し
「大阪都構想」について、どう考えるべきか、その判断の資としたい。
{「大阪都構想(協定書)」とは}
<その要旨>
◎この構想の目的は、政令指定都市の大阪市を廃止して中核市程度の権限と財源を持ち、公選制の区長を置く特別区を設置する。
◎広域行政に関わる部分を「大阪都」に、地域行政に関わる部分を「特別区」に各々、移譲・統合する。
<そのメリットとは>
◎「大阪府と大阪市の二重行政」の解消
◎大阪都市圏というより広範な地域を対象とした行政ニーズへの対応
◎「特別区」による、地域の実情に応じた小回りの利く地域サービスの実現
〔各「政党会派」の主張(批判)〕
<自民党大阪>
◎既存の自治体を複数の特別区に分割することは、基礎自治体の財政力・行政能力向上を目的とした平成の大合併に逆行する。府内の基礎自治体数が43から50程度に増加することで、府内全体で行政効率が悪くなり、施策の整合性も取りにくくなる。
【再編コスト】
◎特別区設置には大きな再編コスト(イニシャルコストとランニングコスト)が伴う。具体的には
○財政に深刻なダメージを受け、行政サービスの質の低下を招く。
○住所変更等、住民や企業に余分な負担が生じ、経済に打撃を与える。
*財政試算には含まれないコスト。
【基礎行政のサービス】
◎大阪市が行ってきたユニバーサルな住民サービスが失われ、内容や規模が変ってしまう。
◎大阪都の財源は、固定資産税・都市計画税・事業所税等を収入とする(2010年度案)。そのため大阪都による財源の再配分のあり方によっては特別区の財源が不足し、地域によっては住民生活に密接した行政サービスが低下する可能性がある。
<民主党大阪>
◎大阪市が行ってきた基礎行政を規模の小さな特別区が担うことになる。
○専門職が不足し、児童虐待など専門性の高いケースへの対応力が低下する。
○スケールメリットが失われ、ワン・ストップ・サービス等の高度な行政サービスが機能しなくなり、幾つかの役所や窓口を、たらい回しにされてしまうリスクが生じる。
○多種多様な事務を担う一部事務組合の設置には前例がなく、大阪市の本庁機能を残すことにも繋がるため、ニア・イズ・ベターに反する事もある。
<日本共産党>
◎「大阪都構想」が大がかり過ぎ、理解を得られない可能性がある。
*なお橋下市長が市職員に対して「公務員という肩書で職場内での個人的な見解の表明」や「権限を有さない立場での無責任な発言」を慎むよう発言し、この橋下発言に留意を促す文書が、各職場の管理職に宛てて配布されており、
「橋下市長の『箝口令』」と批判している。
【「大阪都構想」批判】
◎「大阪都構想」三つの狙い。
1つは、大阪市も24区も無くす。
2つに、その権限・財源を「大阪都」に吸い上げ、巨額を大型開発に注ぐ。
3つは、「一人の指揮官」(大阪都知事)でやりたい放題できる体制をつくる。
◎「大阪都構想」と言うが「住民投票」で決まるのは「大阪市廃止」だけだ。
◎衛星都市の市長、住民から「『大阪府』を変えるのに意見も聞いていない」と批判が上がっている。
◎「大阪都構想」は、市民サービス大幅削減、公共施設の売却等を行い、その削減余剰金で1兆5千億円以上の大規模開発(「淀川左岸線延伸(高速道路)」「なにわ筋線(鉄道)」更に「カジノ」や「リニア」)を進めようとするもの。
*「大阪都構想;協定書」には、これまで議会で否決された「市民サービス削減計画」や「地下鉄民営化」が前提となっている。
◎「カジノ頼みの大阪都構想」だ。
◎「二重行政解消」はペテン。
○純粋に「二重行政」と言えるものはせいぜい1億円。
○逆に「特別区」の初期コスト(3つの庁舎建設等)680億円が増え「5年間で赤字が1071億円」との疑問・批判がある。
○暮らしと福祉、医療を守る仕事は、府・市・国も二重三重に進めるべき。
◎「特別区」になるデメリット
①「特別区」に直接入る税収は今の大阪市税収の4分の1に減り、交付金を府から受ける従属的団体になる。
② 逆に新しい三つの「特別区」の庁舎建設費用に555億円のコストがかかる。
③財源について「『大阪都』と『特別区』で調整する」と言われているが、国からの地方交付税に頼る大阪では限られた財源の奪い合いになるだけ。
④「国民健康保険」「介護保険」「水道」「ごみ」等は「特別区」では担えず「一部事務組合」が担うことになる。
*「特別区」では保険料減額、減免制度をつくる事もできなくなる。
◎上から目線の「区割り」と町名変更。
(例;「湾岸区-大正三軒家町」)
〔私の「大阪都構想」の感想〕
私は大阪市民であり「大阪都構想」について、 もう少し関心を持つべきだったと反省している、そして住民投票が確実視して、慌ててサラッと勉強した次第である。
ただ勉強すればするほど「何で、こんな大層な事をするのか」という疑問が沸き立つ。
例えば目的の一つである「二重行政の解消」が言われているが、日常生活上において「これが二重行政の弊害だ!」と怒ったことがない。むしろ私は共産党の主張に賛成で「暮らしと福祉、医療を守る仕事は、府・市・国も二重三重に進めるべき」で何が悪いと思っている。確かに全く「無駄な二重行政」がないとは言わないが、それは伝統的にある「大阪府と大阪市との心合わせ」ができていない事にあり、それこそ「知事と市長の協議・調整」等と、その監視機関の設置等、現状制度からの更なる工夫・改革での余地は、まだ十分にあると思っている。
もう一つの目的である「大阪都(スケールメリット)による広域行政の効率化」も堺市が離脱した段階で破綻しており「道州制」の一里塚にもならない。
更に三つ目の目的である「特別区による基礎行政の効率化」も近所・巷の世間話では、むしろ、その逆で「現行区より広域化する『特別区』では何かと不便」という声が圧倒的である。
このように「日常感覚」で「大阪都構想」を考えてみると、殆どの政党会派が反対する中で「そこまで無理するほど特効薬的効果があるのか」と言いたい。知事時代からの橋下君の悪い癖「自信過剰で、思い付きが思い上がりになり、思い込みになる」。正直言って「大阪都構想」をさっさと否決して早く、この話を終わらせたい。
民守 正義
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