中原教育長「ようやく辞任」

中原教育長「ようやく辞任」

3月11日、大阪府教育委員会「教育長-中原徹」が、ようやく最も望ましい自らの「辞任表明」に至った。私は本件「中原教育長-パワハラ発言」については重要視してきており、私なりに各々2回の「リベラル広場」と「府民の声」での「罷免要求」掲載・投稿と関係団体との連携を図ってきた。今回の「辞任表明」が、私なりの取組みも資していると思えば、一抹の感慨を覚える。
しかし何故、こんな者が教育長に君臨したのか、「パワハラ発言」以外の諸問題も含め、我々なりの総括整理し、今後の教育行政の参考に資したい。

《教育長-中原「辞任」に至る問題点の再整理》
<そもそも「中原」は何故「和泉高校長」に登用されたのか>
「中原徹」は、大阪府民間公募により登用された校長である。
また「中原徹」は、当時の大阪府知事 橋下 徹と盟友の関係にある。
 その事もあってか、民間公募の段階から「縁故採用」とも噂される「疑惑」があった。その疑惑の主な内容は、以下のとおり。
 ◎「中原」と橋下元知事は、2008年夏に知事の特別秘書を交えて会合し「(校長の)公募があるかもしれない」と知らせていた。また2009年6月の公募前にも、秘書が「中原」に連絡していたという。微妙かも知れないが、報道提供前に、そういった情報を流す事自体、地方公務員法上の「守秘義務」違反に抵触する恐れがある。
◎年齢制限「大幅暖和」の便宜
 大阪府では「校長の民間公募」前までは「48歳以上」が校長の年齢制限だった。
 それが2009年2月に行った「中学校長の民間公募」では「40歳以上」だった。
しかし同年6月の「府立高校長の公募」では、大幅に「35歳以上」にまで引き下げられた。私の友人である府教委関係者は「これがなければ、当時39歳の『中原』は応募もできなかった」と言っている。
  ◎上記のように「中原」民間登用には、当時から橋下元知事の「口利き疑惑」があったが、当の橋下元知事は「口利きと取られかねなかった」と弁明しただけで済ました。

<「中原;和泉高校長」登用の私見>
◎上記「口利き疑惑」が一定、事実とした場合、橋下元知事の「府政の私物化」は甚だしく、それだけで辞職責任に該当するものだ。(今更、遅いが・・・)
同時に「中原」なる人物が、そこまで危険な無理をして登用すべき人物だったのか、後の和泉校長としての振る舞い(口パクチェック等)を見ていると、少なくとも「教育」に関しては、「ポン知恵」以上の能力はなく、とても「専門職-校長」の器ではない。
◎「教育長-中原」辞任で一応の収束をみたが、当初に「中原」を和泉校長に任命した橋下元知事の道義的責任はなお残る。どうせ「厚顔無恥」の橋下元知事のこと、言ってもさいないが残務問題として指摘しておく。
◎そもそも私は教育行政(校長)における民間登用には反対である。何故なら、余りにも専門的知識と実践的な経験が必要な「教育-校長」と弁護士や経営者程度の「一般の民間人」ではギャップが大き過ぎて、現実は対応不能ではないかと思うからである。
特に通常の教員は、大学で教員免許(専門的知識)を取得し、教壇に立ち、日々、生徒・児童と立ち向かい合っている。その中で民間登用校長(元弁護士であろうが、元会社社長であろうが)が「君達の教育実践は?」とか「もっと、こうあるべきでは?」と言っても、実際には人望も信頼もなく、内心「何言うてんねん」と思われるのがオチだろう。私は改めて「教育行政(校長)における民間登用」廃止を要望する。

<「中原教育長-パワハラ等発言」問題の再整理>
第三者委員会は、立川教育委員、及び職員に対する「教育長-中原のパワハラ発言」を認定したが、私にしてみれば、いわゆる「パワハラ発言」以外にも重大な人権侵害事案等が含まれていると思う。そこで改めて「中原教育長-パワハラ等発言」問題の再整理をしてみたい。
①立川教育委員に対するパワハラ発言(抜粋)
○目立ちたいだけでしょ。単なる自己満足でしょ。(省略)
○立川さんなんか何か言っても何も変わりませんよ。(省略)
○誰のおかげで、教育委員でいられるのか、(省略)他でもない知事でしょ。
○その知事をいきなり刺すんですか。
○損害賠償請求、告訴します。(省略)
○もう、何言ってもダメ?罷免要求出しますよ。(省略)
②「事務局職員に対するパワハラ発言」(項目要旨)
◎2013年5月~14年2月、施策の進め方に異論や慎重意見を示す4人の事務局職員に対し「配置転換」や「解職を仄めかしたり」「大勢の前で叱責」したと認定。
【具体的には】
〇人を刺しに来るときには刺され返されることを考えてからやらないと。
〇プロレスで言えば、見えないところで凶器を持って攻撃しますよ。
あらゆる手段を使ってね。
〇もう不必要です。聴聞委員会を開きます。
 *なお「事務局職員に対するパワハラ発言」の中には、退職に追い込まれた者もいる。
③ある職員に「精神構造の鑑定を受けないといけませんよ」と、精神障害者への偏見を助長する発言をした。
(元教育長-中原は、未だに「精神障害者への差別助長」の自覚がない)
④日本共産党に対する「反共発言」(立川教育委員との「パワハラ会話」の中で)
○何を言ってるんですか。(省略)共産党に利用されるだけ。
○共産党と一緒に、後ろから知事を刺しに行くようなもの。
*なお教育委員会(教育長)は「公平・中立」の立場から全て「府民の代表」との認識の下、一党一派に偏してはならず、また特定政党を誹謗・排除するような言動は慎まなければならない。私は直接、日本共産党大阪府委員会に問題提起した。

<「教育長-中原」辞任⇒「教育長-中原」「松井知事」「橋下大阪市長」コメント批判>
①「教育長-中原」は「辞任」を表明したものの、第三者委員会の調査報告書の内容については「不可解なところもあり、真実が反映されていない報告書と認識している」と不満も表明している。不満があるなら第三者委委員会に異議を申立てればいいが、私も現役時代に「パワハラ・セクハラ事件」で、何度か労使の「和解調整」を行った経験があるが、往々にして加害者側は、多少の事実関係の違いや手続の不備等を取り立てて、自らの「パワハラ・セクハラ発言」を過小評価する傾向にあることを申し上げておく。
加えて「教育長-中原」は、辞任表明前のテレビ番組「ちちんぷいぷい」で、司会者から「米国で永く仕事をしていたこと、それが習慣的に米国流の仕事の仕方、言い方が身に付き、、協調・調和を大切にする日本のビジネス風土には合わず『パワハラ発言』と誤解された」とも伝言紹介的に言っていたが、これに対してコメンテーター小宮 一慶(経営コンサルタント)は「私も米国で仕事をしたが、あのモノの言い方では人はついて来ない」と言っていた。つまり米国でも日本でも「嫌われ者」ということか。とにかく年長の者として言うが、もっと自己批判的に見る癖を付けた方がいい。
②松井知事は「(本人の生活もあり)本人の判断を尊重したい」と述べながらも「期待が大きかっただけにやり過ぎてしまったのかも~」と「教育長-中原」に同情的なコメントも述べた。しかし、そんな他人事・のん気な事を言っている場合ではなく「中原教育長-パワハラ等発言」の事の重大性に加え、府内41市町村教委からも府教委に対し「毅然とした対応」を求める要望書が提出され、更に約6000名にも及ぶ「罷免要求」府民の声、府議会では公明、自民、民主3会派による辞職勧告決議案が提出(17日にも可決見込み)される等、相当に「罷免要求」の声は大きく、その現場混乱責任と任命責任は「あなた-松井知事」にある。今後とも松井知事の任命責任追及は続くと覚悟して欲しい。
③橋下大阪市長は、最も「教育長-中原」に擁護的で「非常に残念。(省略)辞める必要はない」。第三者委員会報告書についても「中原氏の言い分を一切採用しておらず、(調査は)でたらめだ」「証言を拾う検察官と、判定する裁判官の役割を同じ弁護士がするなんて有り得ない。法律家失格。誰の証言を基に事実認定をしたか、全部明らかにすべきだ」と厳しく非難した。しかし、ここで弁護士らしく(?)「第三者委員会報告書はデタラメ」と批判して「教育長-中原」を擁護できるほど、事態も世間世論も甘くない事が、まだ分かっていない。つまり橋下市長も「中原教育長-パワハラ等発言」自体は「不適切」と認めている訳で、問題は、その「事の重大性」の温度が世間認識より相当に低い。
橋下市長は「これからの本人の頑張りで挽回可能」と言っていたが、ハッキリ言って全く無理。私は前稿で「警察幹部が泥棒をしたようなもの」と言ったが、決して大げさに言っているのではない。実際「警察幹部が泥棒をして『挽回』の機会等、あるはずがなく最低、辞任または懲戒免職」だ。「中原教育長-パワハラ等発言」は、それほど罪が重く、それが分からない橋下市長は余程、人権感覚が麻痺しており、冒頭に述べた「お友達(口利き)採用疑惑」を深めるだけだと忠告しておく。
それどころか「中原元和泉高校長の道義的任命責任」と、既に完敗している「大阪市不当労働行為諸事件」に、いつまでも無駄な争い(上告等)は止めて、大阪市の労使関係の正常化等に集中して職責を果たした方がいい。加えて「教育長-中原」と同様、年長者として「アンタも、もっと自己批判的に見る癖を付けた方がいい」と言っておく。

《本件「中原教育長-パワハラ等発言」を振り返って》
 本件「中原教育長-パワハラ等発言」は、あまりにも解りやすい「パワハラ等発言」であるが、問題は橋下大阪市長の「盟友」だけに、周囲の者、部下が問題指摘しづらず、また「教育長-中原」自身も「パワハラ等発言」注意しても「パワハラ等発言」で言い返すという「人権感覚;受信機能無し」が、問題を長期化・混乱した根本原因だと思う。
 でも、それはパワハラ事件一般に言えることで、加害者が「力(権力)ある者」である事が多いだけに宿命的な特徴と言える。最後に本件の場合、辞任表明前には「教育長-中原」包囲網が出来上がり、守っているのは「橋下市長と松井知事だけ」という状況になった。その状況把握ができない二人のボスが、今後とも大阪の行政運営を掌ると思うと心許ないが、とりあえず府教委職員の皆さんには「ご苦労様。邪気は払われた。心を取り戻して自由・闊達な職場づくりに励んでください」とエールを送る。
(民守 正義)