コラムーひとりごと32 「NHK世論調査」から見る「安陪政権」

コラムーひとりごと32
「NHK世論調査」から見る「安倍政権」



 私は、政権与党が、よく言うように、あまり「世論調査」なるものを信用しない。
 その理由は①「世論調査には、質問の仕方によって恣意的、誘導的になることが多い」②「調査客体である有権者の意識は、実にいい加減・感覚的なもので、真剣に考えたものは少なく、また移り気しやすい」と思っているからである。(特に正直「大阪人の政治意識レベルは低い」と思っている)
 しかし一応の世論の目安、傾向の参考程度にはなる訳で、その観点から[安倍政権の分析と今後の動向予想]等について述べたい。

<「内閣支持率」は下落>
 先ず「安倍内閣支持率」は46%(前月比8ポイント減)で「不支持率」37%(前月比8ポイント増)で、安倍内閣としては初めて50%を割った。「安倍内閣支持率、下落」には様々な要因が考えられるだろうが、私なりに思うことは、主に以下の事柄である。
 一つはアベノミックス効果が、安倍総理が自画自賛するほど、一般社会では殆ど、評価されていない事。確かに株価は上がっているが、これも「日本銀行の量的緩和(要はお金の増札)」によるもので、いわゆる「実体経済の伴わないバブル経済的なもの」だ。
 ピケティや米国の経済評論家は「投機を煽り、株価を吊り上げるには、最も安易で危険な方法」と批評している。実際問題、「日銀の量的緩和を担保する国債問題」は、どうするのだろうか。それに株価高の恩恵を受けるのは、実体経済が伴っていない以上、株投機に余裕のある者に限られ、私も含め多くの人々には関係のない話である。
 また安倍総理は「成長戦略」の中で「賃金が上昇していること」「財界(経団連)に賃上げを要請し、経団連も善処を表明している事」「労働法制の規制緩和(残業代ゼロ法案、労働者派遣法改悪法案等)」により、より国内経済の活性化が見込まれる事」等を「今後の期待されるアベノミックス効果」として挙げているが、先ず賃金については「むしろ実質賃金は下がっており、次の消費税アップ予定のタイミング」も考えると「実質的な賃上げは見込みウス」と見るのが妥当であろう。また「財界(経団連)の賃上げ協力」も、どこまで答えるのか未知数だが、いずれにしても主に経団連傘下の大企業に限られた話で、既に日本商工会議所等の中小企業団体が「うち(中小企業)では、そんなに賃上げに答えられない」と表明している。つまり90%は中小企業である日本経済構造の中で「経団連加盟企業」程度の賃上げでは、大した波及効果は期待できない。元々、労働組合側であろうと、財界側であろうと「賃金の相場形成能力は喪失している」と言うのが昨今の常識だ。更に「労働法制の規制緩和(残業代ゼロ法案、労働者派遣法改悪法案等)」が、「国内経済の活性化に繋がる」というのは、相当な詭弁で、実は経団連のかねてからの強い要請で「残業代ゼロ法案」は更に対象労働者が拡大が求められており、「労働者派遣法改悪法案」では、今(2013年)でさえ非正規雇用率36.7%が更に増加して、トータルとして「日本の貧しい労働者の実態」が鮮明化し、「格差拡大」「個人消費の落込み→長期不況の悪循環」が目に見えている。
 要はアベノミックスは、もう破綻しているのだ。
 もう一つの「安倍内閣支持率、下落」の理由は、報道番組「NEWS23」や「NEWS  ZERO」で番組側の上記アベノミックスの矛盾点を質問したことに対し「番組編成が、おかしい」と文句を言い、後は番組司会者を無視(イアホーンを外す)し、苛立ちながら一方的に自論展開。
 それと「日教組!」野次発言。後で野次った安倍総理の方が事実無根の「虚偽野次」と分かって、民主党;前原議員に詰められ、子供のように渋々、謝罪の弁。こうした安倍総理の振舞いが、国民の目には「安倍スマイルの割には、意外と感情的で大人気ない」というイメージダウンを起こしたのもあるのではないか。

<「戦争準備政策」には、不支持>
 最も力を入れて取り組むべき政策は「社会保障制度の見直し」23%、「景気対策」19%、「原発への対応」「東日本大震災からの復興」、それに「財政再建」が、いずれも12%、「外交・安全保障」が10%だった。特に安倍政権が、内心では最も熱心な「外交・安全保障」の内、「集団的自衛権の行使を可能にするための法律の整備を進める」という方針については「賛成」22%、「反対」38%、「どちらともいえない」34%だった。
 さらに政府・与党が進めている、安全保障に関する法案を今国会に提出するための議論の内容を、どの程度知っているかについては「よく知っている」4%、「ある程度知っている」39%、「あまり知らない」が42%、「全く知らない」10%だった。
 また「安倍談話」に、歴代内閣の談話で表明された「過去の植民地支配と侵略に対する痛切な反省」を盛り込 む方が良いかについて「盛り込んだ方が良い」35%、「盛り込まない方が良い」17%、「どちらともいえない」39%だった。
 このように見ると安倍政権の「積極的戦争(平和)主義」に基く「戦争準備政策」が、国民にはシラケ、いやむしろ「不支持」の傾向にあり、国民の平和一般意識の方がリベラルで、安倍政権の方が「右翼・タカ派」であることが、よくわかる。

<各政党の支持率は?「リベラル派が、やや前進>
 各政党の支持率を見ると「自民」36.7%(前月比4.5P減)、「民主」10.9%(同0.6P増)、「公明」3.8%(同1.1P減)、「維新」2%(同0.2P減)、「共産党」4.6%(同0.4P増)、「社民党」1.6%(同0.9P増)、「生活」0.3%(同0.3P増)、「元気」0.1%(同0.15P増)、「支持政党なし」31.8%(同2.1P増)だった。
 これらを見ると「自民」が依然として支持率が高いものの、減少傾向にあること、「民主」「共産」「社民」のリベラル派が、多少ながらも支持率が漸増していることが解る。

<「安倍政権」の今後の動向予想>
 冒頭、述べたように移り気な有権者の「世論調査」結果で、今後の「安倍政権」の動向を予想する事は、あまり意味のない事だと思っている。それでも、ある程度は言える事、危惧する念等を述べ、まとめとしたい。
 先ず「景気対策」も期待する政策の一つだが、アベノミックスは既に破綻しており、今夏には、より社会的にあからさまになるだろう。それに「労働法制の規制緩和(残業代ゼロ法案、労働者派遣法改悪法案等)」や「戦争準備政策」の議論も混在すれば、一つの政局混乱を招くだろう。しかし安倍政権の手法を見ていると「マスコミに圧力をかけて真実報道の規制」「本来、国会審議事項を閣議で決定」特定秘密保護法のように「実質審議なしの強行採決」等々で強行突破する等、そのファッショ振りを発揮する可能性は大である。そうなると少なくとも、今より「物言えぬ社会」になる訳で、それは何としても防がなければならない。
 そのためには最低、二つの事を、今すぐにも着手しなければならない。
 一つは自民党がダメなら、少なくてもいいから、それに代わるリベラル派の結集(例;「社民」「共産」+「民主」リベラル派)して受け皿となる中核づくりをしなければならない。
 もう一つは、国会での「民主」の「政治と金の問題」もいいけれど「労働法制の規制緩和(残業代ゼロ法案、労働者派遣法改悪法案等)」や「戦争準備政策-関連法案等」の反対行動(集会・デモ・署名等)を、ぜひとも提起してほしい。
 そのためにはリベラル政党の院内・院外の取組みも当然の事ながら、連合をはじめとした労働団体の役割も大きい。特に連合は、政府・各種専門会議に意見を述べるだけで「力と政策」と思い上がらずに、「ストライキの方法も忘れたどころか、集会もできないのか」と言われぬように、「組合員を動かしてこそ、労働組合」の原点に立ち返って奮闘して欲しい。
 少々、過言したかもしれないが、「安倍政権の危険性」が現実性を帯びてきただけに御理解頂きたい。
(民守 正義)