コラムーひとりごと27 野次は「議会のドロ」

コラムーひとりごと28
野次は「議会のドロ」


《最近の議会において問題化した「ドロ野次」》
最近の国会、地方議会を問わず、議会における野次が、その品位・品格、知的レベル、信憑性等で不適切な言辞が問題化することが多いように思える。
「野次は議会の華」とも言うが、喧騒状態の野次の応酬は「×」として、一定の許容範囲での野次の是非は、各々の議会風土で決めればいいことだと思っている。でも、どうせ野次るなら的確でウイットの効いた野次であって欲しいとも思う。その意味で、逆に「これは問題!」と思う最近の野次問題について、私の重大問題意識順に「解説・批判付き」で紹介しよう。

<安陪総理の「日教組!」野次>
先ず概ねの安陪総理の野次は以下のとおりである。
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■2月19日;衆議院予算委員会。
■民主党玉木議員が「西川農水大臣献金問題」について質問中。
[民主党 玉木議員];「こんなことができるんだったら、みんな各業界やりますよ。こういうことをやはり防いで」
[安倍総理];「日教組!」
[民主党 玉木議員];「総理、野次を飛ばさないでください。今、私話していますから、総理。野次を飛ばさないでください、総理。これ真面目な話ですよ。政治に対する信頼をどう確保するかの話をしてるんですよ」
[安倍総理];「日教組どうするんだ!」
[大島予算委員長];「いや、いや、総理、ちょっと静かに」
[安倍総理];「日教組どうするんだ!」
◎このように安倍首相は、大島予算委員長に咎められても、玉木議員に対し質問内容とは直接関係のない野次を首相席に座ったまま飛ばし続けた。
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■翌日(20日)、民主党前原議員が安倍総理に対し、前日の「日教組!」野次の意図と反省を求める。
〔民主党 前原議員〕;「玉木議員の農林水産大臣の質疑の時に、何で日教組が出てくるんですか?」
〔安倍総理〕;「なぜ、あの時、『日教組』と言ったかと言えば、日教組が補助金を貰っていて…(日本)教育会館から献金を貰っている議員が民主党にはおられて」「(日本)教育会館から献金を貰っている議員が民主党にはおられて…」「『これは別の団体だから関係ない』というのが当時の民主党の、政府として大臣が答弁した見解であったものですから。それをどう考えるかという指摘をしたところでございます」
〔民主党 前原議員〕;「昨日は西川さんのいわゆる“献金疑惑”について玉木委員が質問をして、それに対してあなたは、そこから野次を飛ばしたんですよ。
『反省をしなさい』と言ってるんですよ。反省をすべきだ」
〔安倍総理〕;「議論が伯仲する中において、しかしそれについても静かな議論を心がけていかなければいけないと思っている」
[大島予算委員長];「答弁席で答える事はしっかりし、野次と言われるものについては、しっかりと自己を抑制して頂きたい」
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〔安陪総理の「日教組!」野次の解説と批判〕
①そもそも安倍総理は「単純右翼」によく見られる「日教組嫌い」で、うわ言の様にでたのだろう。しかし20日に公式答弁した「日教組が補助金を貰っていて…日本教育会館から献金を貰っている議員が民主党にはおられて」「日本教育会館から献金を貰っている議員が民主党にはおられて…」は早速、日教組も日本教育会館も徹底調査したが、その事実はなく「根拠のない明確なデマ」である事が判明した。
本月23日に行われた衆院予算委員会では民主党;山井、後藤両議員が安倍総理の「虚偽答弁」について厳しく追及した。結果的に安倍総理が20日に公式答弁した「①日教組が国から補助金を受けたこと。②一般財団法人日本教育会館が民主党の議員に献金をしたこと」は、事実根拠のない虚偽答弁である事を認めた。更に後藤委員は、明確な「謝罪」を求めたが、安陪総理は相当に往生際悪く、ようやくに渋々「謝罪」に近い答弁をした。「保守・右翼」のわりには、いさぎ悪い「大和魂」である。
ただ私としては「公式のデマ答弁」は「謝罪」でも済まされるものではなく「辞任」にも相当する重大問題である事を民主党にも言いたい。
②一般的に総理大臣の野次は控えめであるべきで、労働組合でも執行部席からの野次は、あまり出ない。しかし安倍総理は、自らの答弁中に野党側の野次に苛立って「野次応酬する」こともあるらしく、もう少し「節操のある総理大臣」であって貰いたい。

<東京都議会セクハラ野次>
 同じく「東京都議会セクハラ野次」の概要は以下のとおりである。
■昨年6月18日「東京都議会本会議」
■みんなの党会派;塩村文夏議員(女性)が、妊娠や出産に悩む女性への支援策について都知事側に質問していた際に「自分が早く結婚したらいいじゃないか」「産めないのか」といったセクシャルハラスメントでもある野次が出た。
■上記野次の内、主な発言者「自民党会派;鈴木章浩議員」は当初、発言を否定、
■自民党も発言者の特定に動かなかったものの、国際的な批判世論の高まり・党内批判を受け、23日に発言者の名前を明かし、鈴木議員も発言を認め、塩村議員に謝罪した。
■しかし鈴木議員は「子供を産めないのか」といった他の野次については否定。
■結局、自民党議員席の方から同調する野次や嘲笑いがあったことは認められるものの「発言者の特定は困難」として、有耶無耶になった。

〔「東京都議会セクハラ野次」の解説と批判〕
○そもそも塩村議員は「女性(男性も)が働き続けながら、『出産・育児』も両立する『制度・政策・条件づくり(男性意識も含め)等』」について語り質問しているのであって、議員 塩村さんをはじめとする「私は、(女性)こう生きる」という個人の生き方を語っている訳ではない。つまり「男女共同参画社会のための政策論議」と「個人の生き方(出産するか、どうか等)」とは全く異質の問題で、それを混同した自民党野次は、自ら「男女共同参画社会のための政策」について確立した理論構築と自己ポリシーがないことを自ら暴露したようなものだ。
もし万が一でも、私が野次るとするなら、自民党議員席や知事等理事者側に向かって、むしろ「君らは家庭で『男女共同の家庭づくり』をしているのか?!」と皮肉るぐらいだろう。(ウイットが効いているかどうかは自信がないが…)

<衆議院本会議「共産党テロ」野次>
上記件名の概要は、以下のとおり。
■本月17日、衆議院本会議で日本共産党;志位和夫委員長が代表質問。
■質問内容は、武装組織「イスラム国」による邦人人質事件に関連して「首相が『テロに屈する』の一言で冷静な検証を拒否する態度をとっている」等と指摘し質問。
■その直後に「さすがテロ政党」との野次が飛んだ。共産党は事実究明を要求。
■二日後(19日)突然、自民党;山田賢司衆院議員が、国会内の共産党控室を訪れ、「自分が野次を飛ばしました。撤回してお詫びします」と謝罪した。

〔衆議院本会議「共産党テロ」野次の解説と批判〕
○近時、自民党超保守派(特に安倍総理・麻生副総理)は、共産党議員に対する国会での態度が悪く、同党を異端視したり、見下した答弁をする等、「反共態度」が顕著である。本件野次は、こうした安倍政権以降の超保守ムードを背景要因にして出たものであろう。
○また本月19日、京都府議会一般質問で維新の党;豊田府議会議員が共産党を「テロ政党とも評される」と表現し、国会「共産党テロ」野次を追随した発言を行っている。
○保守・右翼派が「財界大好き、共産党嫌い」は解らないでもないが、昭和30年代や40年代ならともかく、少なくとも今日「共産党テロ」や「非国民」「暴力政党」等々と古典的反共宣伝しても、共産党の穏健・議会主義的イメージは定着しており、むしろ保守・右翼派の方が「まだ刀とチョンマゲして共産党の悪口を言っている」と評されるのがオチだ。
○共産党を批判すること自体は別に結構な事だが、その批判のあり方は感情的に忌み嫌うのではなく、しっかりした理論的批判でなければならない。その点で相手-共産党は手強く「ウソツキ・イラチ総理」と「マンガ副総理」では勝てるかなと思う。

《「議会野次」の最低限のルール》
冒頭に述べたように「議会野次」の是非は、各議会の許容範囲で決めればいい事だと思うが、どうせ「議会野次」を認めるなら、以下の最低限のルールは守って欲しい。
①「野次」は正確でなければならない。安陪総理のように事実無根の「野次」は、単なるデマ・誹謗・中傷の類である。
②「野次」は、適格でなければならない。「野次」は言わば、相手に対する「不規則批判」でもある。それだけに「都議会セクハラ野次」のように的外れの「野次」は、「野次発言」した者が、その資質において恥をかく事を知っておくべきだ。
③「野次」といえども「人権尊重」の精神は必要だ。「人権を侵害・無視」した「野次」は、実は「差別・侮蔑発言」で糾弾の対象である。
 最後に安倍総理の「日教組嫌い」でも思うことだが、相手を批判的に思うなら、相手の主張・意見もしっかり勉強するべきだ。私は学生運動時代、労働組合運動時代も、いわゆる「反日共系活動家」だった。それだけに「共産党批判」のために「赤旗」も「前衛」も購読し読み込んだ。「敵方を知らずして勝負に勝てず」である。
安倍総理も「日教組新聞」や「教育研究集会報告集」ぐらい、読んだらどうかと思う。
(民守 正義)