「イスラム国人質事件」二人の人質日本人の惨殺抗議と死を悼む
「イスラム国人質事件」
二人の人質日本人の惨殺抗議と死を悼む
「イスラム国人質事件」で先月25日、湯川秀樹さんが、2月1日には後藤健二さんの惨殺が判明した。このような「イスラム国」の卑怯で人間性の欠片も無い惨殺に、私も断固、抗議すると共に、「イスラム国」の宗教理念が、「悪魔の理念」であると指弾しておく。同時に口惜しい思いで惨殺された二人の死を悼み、この無念を晴らす取組みに私も病床の身を粉にして、残された人生を、少しでも「世界平和」に尽くす決意である。
{「イスラム国」て、どんな国?}
「敵と戦う前に敵を知れ」ではないが「イスラム国」について、調べてみた。しかし「イスラム国」樹立宣言をした2014年6月29日までの変遷にも、相当な経過があるし、そもそも日本人には馴染みの少ない「イスラム教」の全般的知識がなければ到底、理解しがたい。その意味で「リベラル広場」では不向きで、私の主張範囲での必要知識での提供に留めたい。
そもそも「イスラム国 」と言っても国際的に「国家」と認めている国はない。2014年6月29日「イスラム国 」(以下「ISIS」)としてアブー・バクル・アル=バグダーディーを指導者として、シリア・イラク両国のISIS制圧地域に樹立すると宣言し た。
この指導者アブー・バクル・アル=バグダーディーが、どのような宗教的教義を唱えているかは、まだ自分としては定かではないが、今日的なISISの言動・行動から、ある程度、推察できる。
ISISは「国家として認めている国は無い」と言っても次世代を見据えて「国家モデル」(国家の仕組み)を構築しており、ISISに批判的な活動家までが、わずか1年足らずで近代国家のような構造を作り上げて来たことに評価せざるを得ないという。アメリカのヘーゲル国防長官も、「テロリスト集団の域を超え、イデオロギーと、戦略や戦術に長けた高度な軍事力、そして資金力がある。これまで目にしてきたどの組織とも違い、『アメリカの 敵対国リストのNO1』に急浮上した」と語った。そのISISの幹部には、かつてのイラク-フセイン大統領の側近達が担っていると言われており、当時のブッシュ大統領の「大量破壊兵器いちゃもん冤罪攻撃」の負の遺産が、こんな所にも現れていることに、本当は米国も反省しなければならない。
ISISの理想とする宗教的理念は「ムハンマドの没後3世代(あるいは300年間)に見られた世の状態が理想的であった」とする復古主義的な思想である。=「サラフィー主義」
サラフィー主義の特徴として「アッラーのみを信じなければならない」と厳格に考え、イスラーム的な「勧善懲悪」を重視し、宗教警察を置き「1日5回のお祈りをしなければならない」として「守らない人を逮捕し て暴力で強要してでもお祈りをさせる」とか、クルアーン(コーラン)やハディースにわざわざ明確に刑罰の内容が書かれている刑罰、「ハッド刑」(書物に書かれてはいるにしても、他の多くの現代のイスラム諸国では、さすがに導入することはためらわれている刑罰の規定)を実際に導入していて「窃盗をしたら左手首を切り落とす」とか「姦通をすれば石打ち刑に処す」等といったことを行っているのである。こうした「人権侵害を良し」とする宗教理念が、「日本人人質事件」の惨殺行為にも現れていると推察される。
しかし同じスンニ派(反シーア派)からも「ISISの宗教理念はイスラム教とは無縁」との批判も多く、私個人としても「歴史は変化し発展する」という一般原則からしても、「イスラム教を開祖したムハマンド没後300年間が理想」と言っても歴史は遡れないし、それどころかイスラム教も、どんどん変化し多様化しているのである。まあ宗教で観念論だから、理解し難いかもしれないが、その「変化・多様化・発展」を受入れなければ他のキリスト教や仏教等々と肩を並べる世界宗教者平和会議に参画できないばかりか、ISISの残虐行為の源が「サラフィー主義」だというなら、人類の基本理念「民主主義・基本的人権の尊重・平和主義」と相容れない。やはり心ならずも「殲滅」の対象とならざるを得ない。判り易く言うと「ヒットラーに人権を!」と言うほど人権リベラル派は、お人良しではないのだ。
唯一、ISISの主張で問題意識としては納得できるものがある。それは、西欧列強が中東の古い秩序を根こそぎひっくり返し、西欧列強が秘密協定(サイクス・ピコ協定)によって、勝手に引いた国境線によって作られた国々の枠組みについて「サイクス・ピコ体制の打破」「押しつけられた国境」を消し去ろうとしている。問題意識としては理解できるのだが、実際、それを今更に「国境引き直し」となると「武力による領土拡大」という手段にならざるを得ず、現にISISは歴代のイスラム王朝の領土拡張を主張して部分的に武力侵攻を行っている。「問題意識は正しくとも手段が間違っている」と全てが間違っていることを強調しておく。
{安陪総理に苦言を}
この間、安陪政権は、全てが適切であったかには疑問があるが、心境的に御苦労をされたことは、敬意を表したい。その上で厳しい問題指摘もしたい。
一つは、今は「政府の報道管制(?)」でネットニュースからも消え去ったが、昨年11月にISISが後藤さんの妻に10億円の身代金を要求し、水面下で米国と相談(指図)を受けながら、ISISと交渉していたことだ。そして後藤さんの妻には、外務省が「総選挙に影響が出る」と口止めまでしている。
結果的に人質交換交渉は暗礁に乗ったまま、総選挙を迎えるのだが、「人質交換交渉よりも総選挙と言う政局を優先させた」との批判も免れない。
二つ目として安陪総理は、非公式に「イスラム国人質事件対策本部」を立ち上げながら、1月16日~21日まで中東歴訪している。
これら上記の事実は、1月20日にマスコミにスクープされ早速、国会で民主党国会議員から「人質交渉難航途中に中東歴訪したのか?」と質問され、安陪総理は「何ら、たじろぐことなく、予定を堂々とこなす事がISISに対する毅然とした態度を示すことになる」と答弁している。しかし本当にそうだろうか。むしろISISにとって見れば「もう安陪は人質解放の話合いはする気はないのだ」と受け取られる可能性も大いにある。現に、この時点でISISは、身代金よりISISの脅威・恐ろしさのプロパガンダとして利用(殺害)することに傾いたとの専門家の意見は多い。少なくとも11月からの人質事件の流れから見ると、安陪総理の中東歴訪は、国会答弁以上に、相当に危険な判断が要するものであったことだけは言える。
そして三つ目は、「イスラム国と戦うために25億ドルを支援する」と表明したことである。ISISにしてみれば、欧米を中心とした有志連合に「新たに現れた敵国日本」と写り、現にISISは、人質交渉と絡めて「日本-敵国認識」をあらわにしたメッセージを送っている。さすがに人質交渉に「ヤバイ」と思ったのか、日本政府は後ほど「人道支援やインフラ整備などの非軍事分野での支援」だと釈明したのだが、私もテレビで見ていたが、明らかに「テロ対策として25億ドルの支援」と言っており、最初から「軍事部門では支援できないが、人道支援やインフラ整備などの非軍事分野で支援する」と言っていれば随分、受け取るインパクトは違う。少々、欧米「有志連合」の方にリップサービスが過ぎて、ISISにより「敵対国」の印象を与えたのだろう。
{これからの日本の立ち位置は}
本来、日本の国際的役割は、既に別稿でも述べたように、米国一辺倒機軸路線ではなく、日本独自の「平和外交路線」で、紛争当事国の調整役になるぐらいの「国際的平和外交国」として普段の信用を得る国を目指すべきと考える。その理由は、世界の回転中心軸は「米国⇔中国」にあるのであって、いくら「日米仲良し軸」になっても、それが世界の中心軸には成りっこないし、要は「日・韓」連携の米国子分になるだけである。 そして、それが「集団自衛権」も含まれるとするならば、常に米国が勝つ訳でもなく、「日米、共に敗北」も覚悟しておかなければならない。現にベトナム戦争では米国と、その同盟国(韓国・フィリピン・オーストラリア・ニュージーランド・タイ)が敗北した。ハッキリ言って安陪総理の国際情勢感覚は、義祖父(岸信介)の冷戦構造の延長線上にあって、まだ古い。その意味では「欧米有志連合にも一線を画すべき」と思うのだが、どうやら菅義偉官房長官曰く「日本はもうすでに入っている」らしい。ということは、軍事行動も将来的に有志連合の一員として参画することも有り得るという事。安陪政権になって、どんどんタカ派危険外交に進んでいくことに、リベラル派として警戒心を持たざるを得ない。そして本日、これ以上の安陪政権を詰める言動をすれば「特定秘密保護法」の適用もあり得ると言い出す始末だ。やはり安陪総理は右翼が担いだだけのことはある。
ただ別格の事として、サッカー観戦をしていた子供12人も殺して、それが宗教的正義と思い込むISISに関しては、安陪総理であろうが誰であろうが、話合いの対象にならなかったことは理解できる。なお「日本人を見つけたら殺す」と言うなら、私からどうぞ!
(民守 正義)
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