これが実態!「経営者のモラルハザード」(続1)
これが実態!「経営者のモラルハザード」(続1)
{「残業代不払い法案」どころじゃない!経営者の実態}
前回の「まだあきらめぬか!『残業代不払い法案』」で現状でも「残業代不払い」が横行しているだけでなく、他の労働規制等にも守らない経営者実態があることを述べた。今回は、その「続編」で、公務員現役時代に永く労働相談を経験して、実際にあった実例を守秘義務ギリギリまで紹介することで、ハッキリ言って経団連をはじめとした経営側主張が、いかに欺瞞に満ちたものかを暴露したい。
{「労働相談」の統計}
大阪府総合労働事務所の 「平成25年度労働相談報告・事例集」によると、最も多い相談内容が「解雇・退職勧奨」(12.5%、1,549件)で、統計開始以来、常にトップ。次に「労働契約」(9.8%、1,218件)、「職場のいじめ」(9.8%、1,216件)、「退職」(6.4%、791件)、「労働条件-その他」(5.7%、700件)、「賃金未払い」(5.5%、685件)、「賃金-その他」(4.8%、596件)、「休業-その他」(4.5%、555件)、「職場の人間関係」(3.5%、435件)、「雇用保険」(3.4%、419件)の順であった。
*平成25年度総労働相談件数12367件。
なお「セクシュアルハラスメント」に関する相談は、1.6%、202件であった。
それでは概ね、上記「労働相談内容」の多い順に実例紹介しよう。
{「労働相談」実例紹介}
<「解雇・退職勧奨」>
【実例1】
フルタイムアルバイトで働いて約10年(女性)。経営者と一緒に自転車で帰って「サヨナラ」。そこから一人で帰っていると、突然の携帯電話。先程の経営者だ。その用件は「明日から、来なくてもいいから」。突然の解雇だ。
その後、経営者と話し合ったが、その内、労働者の方が「こんなバカな経営者と付き合っていられない」と、解雇予告手当+αで離職した。
経営者の方は、「解雇予告手当の支払義務も知らなかった」と釈明したが、それも愚かだが、「電話一本で解雇」も人間としてどうかと思う実例だった。
【実例2】
相談者は、中堅介護福祉施設で働くヘルパー職員。ある日、X管理マネージャーから「解雇通告書」を手渡されてビックリ。理由を聞いても「貴方が、思い通りに仕事をしないから」とか何とか言うも釈然とせず、残り賃金支払等の手続のみを捲くし立てる。
相談者は、この中堅介護福祉施設採用の際に「口聞き」してくれたYに「解雇通知書」(原本)を持って相談。Yは「その『解雇通知書』を俺に渡せ。それをもって、俺が理事長と話をつけてやる」と言われたので、そのとおりに依頼する。なお「解雇通知書」(原本)の複写は、していなかった。
暫く経ってもYから返答が無いので、相談者から問い合わせると、Yは「ああ、あれは理事長が頭、固くてアカンかったわ~」と軽く言う。それならば「解雇通告書」(原本)の返却を求めると、Yは「失くした」という。後で状況証拠的に判ったことだが、Yと理事長は元々、グルで、Yは「不当解雇に相当すると判断して、『後で解雇はしていない』と言い逃れできるよう、動かぬ文書証拠『解雇通知書』(原本)を取上げた」と言うのが真相のようだ。相談者が、労働相談に訪れたのは、その後の事。先ずは「内容証明郵便」で「解雇か、どうか?もし解雇なら、その理由を?」と期限を切って質問書を送付し、改めて「解雇通知書」(原本)の内容を明確にする事にした。しかし期限を切っても返答が無く、もう上司と共に当該施設理事長にアポを取って直接に会い、事実確認等を行うこととした。
(このように具体的に労使間に入り、解決に向けた取組みを行うことを「調整」という。)
理事長は、解雇については、あっさり認めたものの、その理由は「老人入所者に殴ったり蹴ったりと暴力を振るったから」という。そこで私は「それは大事。暴行事件でもあるし、入所者への人権問題でもある。警察に届けましたか?」と問うと、理事長は少し困った顔をして「いや、殴ったり、蹴ったりのマネをした。それを見た職員の証言なら、何人でも出せる」とトーンダウンと反論をした。そこで私も反論。「そもそも『内容証明郵便』での質問書に何故、答えなかったのか?それに貴施設職員の『殴ったり、蹴ったりのマネ』証言は、信憑性に欠ける」。理事長は、X管理マネージャーを呼んで「『内容証明郵便』での質問書は送付されていたのか?『殴ったり、蹴ったりのマネ』を見たことがあるか?」を問う。
X管理マネージャーは『内容証明郵便』での質問書は届いてない。『殴ったり、蹴ったりのマネ』を、私は見た」と答える。でも「内容証明郵便」が郵便局から何の連絡も無しに「届かなかった」ということは有り得ないし、そもそも理事長が、X管理マネージャーを呼んだのは助っ人を欲しかっただけの事。この解雇事案は「理事長とX管理マネージャーとのデキレース」ぐらいは、二人の様子で十分、窺える。私も上司も止めるほどの反論をして結局、もの別れ。最後に理事長は「相談者はウソツキ。解雇は撤回しない。あんたら(労働事務所)は、労働者の味方か?」と問われたので、「私共は、法に基いて公正・中立です」と皮肉混じりに答えた。後日、相談者を呼んで経過を説明し、今後の対応を協議したが、相談者は「パニック障害」で合同労組加入・団体交渉も法的手段も精神的余裕が無く、私共を指して「理解してくれている人もいる」と言って諦める事とした。その後も相談者とは、「パニック障害」等の精神的疲労が重なる度に、カウンセリングを行う関係が続いた。
なお付言すると本件事案後も、別の同施設職員から類似の解雇相談が二人続けて寄せられ、いずれも相談者が同施設使用者に見切りを付けて、早々に解雇を受入れている。また別に次期就職先として同施設に関する問合せがあったが、「労務管理が悪い」ことは伝えておいた。
【実例3】
相談者は某有名大手生命保険会社内勤事務職員(女性;正社員)。相談者と同社支店総務部長Xとは、日頃から粗利が合わず、仕事上を巡って諍いが絶えなかったようだ。
ある日、相談者が出勤すると、机内の物品が全て無くなっており、総務部長Xが「今日から仕事をしなくていい。『仕事と私』というテーマで作文を書くように」という命令をした。
相談者は、これに従い、仕上がった作文を終業前に提出すると「何だ!これは?中学生の作文以下だ!明日、もう一度、書き直すように!」と命令した。そして翌日も作文を提出して、また書き直し。これが一週間ほど続いた頃に相談者が労働相談に訪れた。
私は、これは「悪質な退職強要」と見て、相談者と協議の結果、相談者は「もう少し、耐えてみる」と言う事なので二つの助言を行った。一つは、総務部長X等との会話は、相手の了承を得ずとも可能な限り、録音しておくこと。(*確立した判例で、記録保持のための録音は、相手の了承は必要無し。但し、それ以外の目的外使用は認められない)二つ目は、明らかに「退職」を求める言動があった場合は、直ちに当方に連絡すること。その段階で間髪を入れずに、総務部長Xに「調整」依頼を行う。相談者も、この助言を了承して数日後、総務部長X等が相談者を別室に呼び出し、「退職届」用紙に記入提出を求めた。相談者は(トイレに駆け込み)私共に連絡。私は、即に総務部長Xに電話連絡。「相談者からは以前から労働相談に応じていたこと」「事情聴取から始まる『調整』に応じて頂きたい」旨を告げたところ、総務部長Xは一応、了承。「退職依頼(強要)」も中断された。
「調整」は、何故か本社常務取締役Yが対応することになり、「調整」の結果、Yは{①4月定期異動で解決を図る。②それまでの間、仕事は倉庫内「空き段ボールの整理」を行う}ことを提案。後日、相談者に意向確認したところ了承した。4月定期異動では、相談者は本社庶務課付けに転勤。総務部長Xは、更なる出先機関に引責異動となって、一応に本事案は終了した。なお余談であるが、相当に後日、Yから一方的に「相談者は本人事情により退職した」旨を捲くし立てて連絡をして電話が切れた。
*続編は次回更新で掲載。(多分、明日)
{「残業代不払い法案」どころじゃない!経営者の実態}
前回の「まだあきらめぬか!『残業代不払い法案』」で現状でも「残業代不払い」が横行しているだけでなく、他の労働規制等にも守らない経営者実態があることを述べた。今回は、その「続編」で、公務員現役時代に永く労働相談を経験して、実際にあった実例を守秘義務ギリギリまで紹介することで、ハッキリ言って経団連をはじめとした経営側主張が、いかに欺瞞に満ちたものかを暴露したい。
{「労働相談」の統計}
大阪府総合労働事務所の 「平成25年度労働相談報告・事例集」によると、最も多い相談内容が「解雇・退職勧奨」(12.5%、1,549件)で、統計開始以来、常にトップ。次に「労働契約」(9.8%、1,218件)、「職場のいじめ」(9.8%、1,216件)、「退職」(6.4%、791件)、「労働条件-その他」(5.7%、700件)、「賃金未払い」(5.5%、685件)、「賃金-その他」(4.8%、596件)、「休業-その他」(4.5%、555件)、「職場の人間関係」(3.5%、435件)、「雇用保険」(3.4%、419件)の順であった。
*平成25年度総労働相談件数12367件。
なお「セクシュアルハラスメント」に関する相談は、1.6%、202件であった。
それでは概ね、上記「労働相談内容」の多い順に実例紹介しよう。
{「労働相談」実例紹介}
<「解雇・退職勧奨」>
【実例1】
フルタイムアルバイトで働いて約10年(女性)。経営者と一緒に自転車で帰って「サヨナラ」。そこから一人で帰っていると、突然の携帯電話。先程の経営者だ。その用件は「明日から、来なくてもいいから」。突然の解雇だ。
その後、経営者と話し合ったが、その内、労働者の方が「こんなバカな経営者と付き合っていられない」と、解雇予告手当+αで離職した。
経営者の方は、「解雇予告手当の支払義務も知らなかった」と釈明したが、それも愚かだが、「電話一本で解雇」も人間としてどうかと思う実例だった。
【実例2】
相談者は、中堅介護福祉施設で働くヘルパー職員。ある日、X管理マネージャーから「解雇通告書」を手渡されてビックリ。理由を聞いても「貴方が、思い通りに仕事をしないから」とか何とか言うも釈然とせず、残り賃金支払等の手続のみを捲くし立てる。
相談者は、この中堅介護福祉施設採用の際に「口聞き」してくれたYに「解雇通知書」(原本)を持って相談。Yは「その『解雇通知書』を俺に渡せ。それをもって、俺が理事長と話をつけてやる」と言われたので、そのとおりに依頼する。なお「解雇通知書」(原本)の複写は、していなかった。
暫く経ってもYから返答が無いので、相談者から問い合わせると、Yは「ああ、あれは理事長が頭、固くてアカンかったわ~」と軽く言う。それならば「解雇通告書」(原本)の返却を求めると、Yは「失くした」という。後で状況証拠的に判ったことだが、Yと理事長は元々、グルで、Yは「不当解雇に相当すると判断して、『後で解雇はしていない』と言い逃れできるよう、動かぬ文書証拠『解雇通知書』(原本)を取上げた」と言うのが真相のようだ。相談者が、労働相談に訪れたのは、その後の事。先ずは「内容証明郵便」で「解雇か、どうか?もし解雇なら、その理由を?」と期限を切って質問書を送付し、改めて「解雇通知書」(原本)の内容を明確にする事にした。しかし期限を切っても返答が無く、もう上司と共に当該施設理事長にアポを取って直接に会い、事実確認等を行うこととした。
(このように具体的に労使間に入り、解決に向けた取組みを行うことを「調整」という。)
理事長は、解雇については、あっさり認めたものの、その理由は「老人入所者に殴ったり蹴ったりと暴力を振るったから」という。そこで私は「それは大事。暴行事件でもあるし、入所者への人権問題でもある。警察に届けましたか?」と問うと、理事長は少し困った顔をして「いや、殴ったり、蹴ったりのマネをした。それを見た職員の証言なら、何人でも出せる」とトーンダウンと反論をした。そこで私も反論。「そもそも『内容証明郵便』での質問書に何故、答えなかったのか?それに貴施設職員の『殴ったり、蹴ったりのマネ』証言は、信憑性に欠ける」。理事長は、X管理マネージャーを呼んで「『内容証明郵便』での質問書は送付されていたのか?『殴ったり、蹴ったりのマネ』を見たことがあるか?」を問う。
X管理マネージャーは『内容証明郵便』での質問書は届いてない。『殴ったり、蹴ったりのマネ』を、私は見た」と答える。でも「内容証明郵便」が郵便局から何の連絡も無しに「届かなかった」ということは有り得ないし、そもそも理事長が、X管理マネージャーを呼んだのは助っ人を欲しかっただけの事。この解雇事案は「理事長とX管理マネージャーとのデキレース」ぐらいは、二人の様子で十分、窺える。私も上司も止めるほどの反論をして結局、もの別れ。最後に理事長は「相談者はウソツキ。解雇は撤回しない。あんたら(労働事務所)は、労働者の味方か?」と問われたので、「私共は、法に基いて公正・中立です」と皮肉混じりに答えた。後日、相談者を呼んで経過を説明し、今後の対応を協議したが、相談者は「パニック障害」で合同労組加入・団体交渉も法的手段も精神的余裕が無く、私共を指して「理解してくれている人もいる」と言って諦める事とした。その後も相談者とは、「パニック障害」等の精神的疲労が重なる度に、カウンセリングを行う関係が続いた。
なお付言すると本件事案後も、別の同施設職員から類似の解雇相談が二人続けて寄せられ、いずれも相談者が同施設使用者に見切りを付けて、早々に解雇を受入れている。また別に次期就職先として同施設に関する問合せがあったが、「労務管理が悪い」ことは伝えておいた。
【実例3】
相談者は某有名大手生命保険会社内勤事務職員(女性;正社員)。相談者と同社支店総務部長Xとは、日頃から粗利が合わず、仕事上を巡って諍いが絶えなかったようだ。
ある日、相談者が出勤すると、机内の物品が全て無くなっており、総務部長Xが「今日から仕事をしなくていい。『仕事と私』というテーマで作文を書くように」という命令をした。
相談者は、これに従い、仕上がった作文を終業前に提出すると「何だ!これは?中学生の作文以下だ!明日、もう一度、書き直すように!」と命令した。そして翌日も作文を提出して、また書き直し。これが一週間ほど続いた頃に相談者が労働相談に訪れた。
私は、これは「悪質な退職強要」と見て、相談者と協議の結果、相談者は「もう少し、耐えてみる」と言う事なので二つの助言を行った。一つは、総務部長X等との会話は、相手の了承を得ずとも可能な限り、録音しておくこと。(*確立した判例で、記録保持のための録音は、相手の了承は必要無し。但し、それ以外の目的外使用は認められない)二つ目は、明らかに「退職」を求める言動があった場合は、直ちに当方に連絡すること。その段階で間髪を入れずに、総務部長Xに「調整」依頼を行う。相談者も、この助言を了承して数日後、総務部長X等が相談者を別室に呼び出し、「退職届」用紙に記入提出を求めた。相談者は(トイレに駆け込み)私共に連絡。私は、即に総務部長Xに電話連絡。「相談者からは以前から労働相談に応じていたこと」「事情聴取から始まる『調整』に応じて頂きたい」旨を告げたところ、総務部長Xは一応、了承。「退職依頼(強要)」も中断された。
「調整」は、何故か本社常務取締役Yが対応することになり、「調整」の結果、Yは{①4月定期異動で解決を図る。②それまでの間、仕事は倉庫内「空き段ボールの整理」を行う}ことを提案。後日、相談者に意向確認したところ了承した。4月定期異動では、相談者は本社庶務課付けに転勤。総務部長Xは、更なる出先機関に引責異動となって、一応に本事案は終了した。なお余談であるが、相当に後日、Yから一方的に「相談者は本人事情により退職した」旨を捲くし立てて連絡をして電話が切れた。
*続編は次回更新で掲載。(多分、明日)
(民守 正義)
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