コラムーひとりごと23 「安陪政権」本当の実力は…
コラムーひとりごと23
「安陪政権」本当の実力は…
{三県知事選挙を振り返って}
<滋賀県知事選挙(昨年7月)>
「原発再稼働等」問題、「県内の経済活性化」を主な争点に、「卒原発」を掲げ嘉田前知事の後継指名を受けた元民主党衆議院議員三日月大造が自民・公明推薦の小鑓隆史等を破って初当選を果たした。選挙前には、2012年衆院選では県内全小選挙区で自民党候補が勝利し、安倍政権の支持率が好調だったことから、アベノミクスの政策立案にも携わった与党推薦候補の小鑓の優勢が伝えられた。選挙戦でも小鑓を推薦する与党自民党は菅義偉内閣官房長官、石破茂幹事長ら政府・与党首脳を連日送り込むなど総力戦を展開した。しかし、衆議院議員を3期務め知名度の高い三日月は現職の嘉田から後継指名を受け、二人三脚で選挙戦を進めたことから、三日月が徐々に支持を広げ、加えて公明党幹部の弁によると、「集団的自衛権行使容認の閣議決定について、支持者に対して十分に説明する時間がなかったため、票固めできなかった」事もあって民主党衆議院議員三日月大造が競り勝った。
<沖縄県知事選挙(昨年11月)>
普天間基地の辺野古移設や県内のオスプレイ配備などを巡る仲井眞県政の姿勢に対する評価を争点に事実上、県議会野党の社会民主党沖縄県連、日本共産党県中央委員会、沖縄社会大衆党、生活の党県連、県議会会派の「県民ネット」の5団体でつくる知事選候補者選考委員会が一本化した那覇市長の翁長雄志と自民党等推薦の現職知事 仲井眞弘多との一騎打ちで、選挙結果は思わぬ10万票の大差を付けて翁長雄志の大勝となった。
翁長候補が勝利した背景には、県議会野党に加え、一部保守系那覇市議、経済界有志等による 「オール沖縄」の支援があったこと、そして、ここでも滋賀県と類似して、公明党が辺野古埋め立て承認に反発して今回は自主投票に回った事が指摘されている。
なお翁長雄志知事誕生後の状況変化だが、政府・自民党の冷遇ぶりが目立っている。具体的には翁長新知事は6~8日、新年度予算の要請などで上京したが、関係閣僚は「居留守」を使い、面会や党の会合への出席は実現しなかった。こうした政府の冷遇対応に沖縄県民は「ビビル」どころか、返って火に油を注ぐほどの反発の声が広がっている。
こうした県民の審判に耳を傾け「辺野古移設も再考する」位の謙虚さが、「安陪政権」には全くない。余程、昨年12月の総選挙結果に自信を持ったのかも知れないが、自民党支持率は過半数に至っていないことを、もっと自戒的に認識すべきだ。なお、こうした政府・自民党の「居留守」作戦は、かつて大阪府横山知事誕生の際にも連合大阪が「就任挨拶スッポカシ」を行ったが、結果的に見返り損を負うことになったことを参考に呈し、「あまり子供じみたことは、しなさんな」と申上げたい。
更に仲井真弘多沖縄県知事は、国に対し辺野古の新基地建設に向けた埋め立て工事の変更申請を任期が残り4日のときに承認した。仲井真知事は退任記者会見で、「残り4日を残してという意味が私には理解不能。私が知事で、あらゆる責任は負っている。残り1日であろうと変わりない」と開き直った。しかし知事選挙の最大争点は、「辺野古の新基地建設の是非」だ。そこで10万票も差をあけられ、もう実質的に審判は下っている。それを知事として残務日数4日で真逆の事を行うということは、民主主義への挑戦の何ものでもない。民主主義とは「民意を反映した政治」で、それを大前提に多数決等のルール・手続があるのだ。「ルール・手続さえ守れば何でも有り」は横暴政治だ。
仲井真前知事は、人間として75歳にして人生に最大汚点を残し、政府・自民党は最後まで人を悪どく利用するものだ。今後、政府・自民党は、県民反発がどうであろうが、ブルドーザーのように「辺野古の新基地建設」に突っ走るだろう。でも事態は、そう簡単に行かない。安陪政権は、ご自身が思うほど支持されていないし、沖縄県民の反発感情を軽く見てはいけない事だけは強調しておく。
<佐賀県知事選挙(本年1月)>
今月11日に行われた佐賀県知事選挙は、「安倍政権が農協改革 に対し、地元の農協が反発した」と言うのが表上の理由として、安陪政権からの自民党=中央保守と地元保守との「保守分裂選挙」が、他の二つの県知事選挙と様相の異なったところである。対立の具体的構図は、官邸の意のままに動く“操り知事候補”として前武雄市長の樋渡啓祐氏をゴリ押しし、これに対して地元農業関係者を中心とした地元保守勢力が元総務官僚の山口祥義氏を擁立したことによる。
選挙結果は、告示前は自民党が全面支援した樋渡啓祐氏が「圧勝」と見られていたが、フタを開ければ、地元保守の山口祥義氏(49)が4万票もの大差で勝利した。
自民党は選挙戦で、滋賀県、沖縄県に続く「3連敗は避けたい」と大物閣僚を投入しての「万全の態勢」を敷いたはずの苦杯だ。
もう少し、「保守分裂」知事選挙の具体経過を説明すると、官邸サイドが「九州電力玄海原発の再稼働」と「佐賀空港のオスプレイの配備」をスンナリと進め、古川康前佐賀県 知事に任期途中の国政転身を促し、古川前知事は衆院選(佐賀2区)で当選。そして官邸は、次の知事候補に前武雄市長の樋渡啓祐氏に一方的に決めたことが、地元保守にしてみれば、安陪政権の地方民意を無視し、身勝手な政策を押し付ける中央集権的な姿勢に怒りを爆発させたのである。
{特別補足;安倍首相の肉声「スパム電話」}
スパム電話とは、迷惑電話の一種で、無差別に自働で電話をかけて、予め録音した音声を流す行為のこと。どうやら自民党本部が片端から安倍首相の応援テープを流したらしい。
この安倍首相の録音テープによる『スパム電話』も県民の怒りを買った。まさに地方の有権者のデリカシーを理解できない安陪政権・自民党のやりそうな事だ。
{三県知事選挙で共通する事柄}
上記三県知事選挙は、県も違うだけに当然の事ながら各々、経過も事情も異なるが、押並べて共通する事柄の一つに中央政界(安陪政権)⇔地方主権の対立の構図である。 「地方の事は地方が決める」国策が思い通りに行かなくなったことは事実のようである。
もう一つは、安倍政権の真なる実力(支持率)は、この三県知事選挙結果程度ではないかと言うことである。昨年12月の総選挙では「小選挙区制」というマジックがかかる。しかし知事(首長)選挙となると「ガチンコ勝負」で「小選挙区制マジック」はかからない。だから「安陪政権の真なる実力が露呈しただけ」と言えるのではないか。
その認識誤りで「集団自衛権」や「憲法改正」等々の反動化政策を「陰(閣議決定だけで)に、陽(正式手続・法案提出)に」推進めても土台、身の丈に合わず、危険であることだけは御忠告申上げたい。
{4月統一地方選挙の展望}
上記三県知事選挙で敗北した「安陪政権」自民党は、本年4月の統一地方選挙対策として、1月末日に衆議院可決した本年度補正予算で、バラマキの最たる「地域住民生活等緊急支援のための交付金」を盛り込んでいる。巷では、地域内の消費を促すことを目的とした「プレミアム商品券」の発行のためのものとの話もある。
これは安倍総理が目論む「憲法改正」に向け、統一地方選挙勝利が、その布石としての狙いがあるからである。しかし、このような緊急経済対策でバラマキを行ったところで、この短期間で地域にとって直ちに良い効果が期待できるとは考えられない。加えて「既に失敗」と言われているアベノミックス効果(特に地方)も上向くことが期待できないとなれば、全体として自民党は、期待する議席数獲得することは難しいだろう。
と同時に「有権者は無関心、低投票率で現状とあまりかわらず」ということも考えられるが、統一地方選挙は我々の最も身近な選挙でもある。目先の事で考えずに、自分の長期人生ビジョンとスライドさせながら、有効かつ高い有権者意識で投票しよう。
(民守 正義)
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