コラムーひとりごと10 「在日特権」と「ヘイトスピーチ」

コラムーひとりごと10
「在日特権」と「ヘイトスピーチ」

{「在日特権」とは?}
「在日特権を許さない市民の会(以下「在日特会」)」を知って、「どうせ、右翼暴力集団だろう」と思っていたが、それなりに主張・背景もあることがわかった。まだ詳しい主張・背景も多少に知りかけたところで、感覚的な意見であることは、お許し願いたい。
そもそも在日特会が言う「在日特権」とは何か?「在日特権」とは、不適当、不必要、不平等とされる、在日外国人だけが有する権利や資格、彼らに対する企業や行政機関からの特別な優遇措置などを総称したものである。ここで言う「在日外国人」は、主に特別永住者(1991年11月1日施行『日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法』)により定められた在留の資格のこと、または当該資格を有する者を指す。
歴史は遡り、敗戦直後のことであるが、あまり詳細には書けないので、かなり要約して述べると、敗戦当時、日本が植民地化していた朝鮮・台湾等が各々、独立していった過程で、日本に留まった「かつて日本国籍を有していた外国人」を協定永住許可者として在留資格を認めた経緯がある。そして特定永住許可者に対する社会諸制度と国内諸制度との整合性や例外規定等を定めていく過程で、所謂、彼等が言う「在日特権」なるものも存在したかもしれない。ただ、その指摘される「在日特権」だという検証は「在日韓国・朝鮮人民族団体を通じた税減免」や「通名の公的使用」「社会保障関係」等々、多岐にわたっている上、個別の「不当」と指摘される事件の検証も入れると、相当に長期かつ冷静な労力を要するだろう。なおかつ「特権」というが、具体制度(措置)によっては「便宜的」あるいは、むしろ「底上げ」と評価すべきものもあって、議論も別れるところだろう。それでも時間をかけて、じっくり検証するなら、それはそれで一考だ。

{実際の活動は?-ヘイトスピーチ}
しかし、じっぅりした検証議論ならよいが、暴力的・挑発的・差別的な街宣活動となると、話は全く違う。現に朝鮮人学校前で、拡声器を使って相当にひどい差別発言-授業妨害を行った。(損害賠償-約12百万円;学校周辺の街宣活動の禁止→最高裁判決)
また街宣活動で、整然としたデモならいいが、敢えて在日韓国・朝鮮人等が多く住む通りで、通行人に露骨な差別発言を浴びせて挑発する。こうした行動は、折角の彼等の「在日特権」の問題指摘も吹っ飛び、露骨な差別肯定宣伝になるだけである。
なお少々、強弁かもしれないが、「差別」を「差別でない」と言い訳している間は、まだ啓発と意識改革の可能性があると思うが、「そうだ!差別して何が悪い!」と、堂々と「差別」を肯定するならば、それは弾圧の対象でしかないというのが、私の考え方だ。
問題視点は変わり、一・二年前の事であるが、大阪-梅田で「アジアの女性基金募金活動」と「在日特会」の街宣活動が衝突し、警察も出動し、相当に喧騒状態になったことがあった。当然にマスコミ取材も入っていたが、翌日の報道は、何もなかった。どうもマスコミは、事「人権」問題となると、知識的に疎い上に、および腰になるように思うのだが-。報道デスクは、もっとしっかりしていただきたい。

{私が思う「在日韓国・朝鮮人問題」}
「在日特権」の有無は、ともかく歴史上、明らかに在日韓国・朝鮮人に対する偏見・差別が、今も含めてあることは事実。例えば関東大震災の時に、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」等の縷言飛語が飛び交い、何千人もの朝鮮人が日本人により虐殺されている。
また最近の就職面接でも、「本名-在日韓国人」であることを明らかにした途端に面接が終わったというのは、よく聞く話である。更に民族意識が、しっかりあるAさんが、営業で本名の記載がある名刺を出したところ、「こんな名刺を出しやがって!お前は北朝鮮のスパイか?!」等と罵られ、裁判になった実例もある。こうした差別事案は、他にも具体的に知っており、共に関係団体とも連携して取組んでいるが、なかなか「差別意識からの脱却」にはいかないのが現実だ。
その一方で、最近では日本で生まれ育った在日三世・四世の世代で、民族意識も薄まり「帰化」する人も多く、2007年末には始めて在日中国人数が在日韓国・朝鮮人数を上回る等、「在日韓国・朝鮮人問題」も、やや風化が始まっている。
いずれにしても在日外国人問題を考えるとき、元々、人類学的に「大和民族」なるものはなく、日本人は大陸系・北方系、南方系の雑種であり、そこに在日中国人や在日韓国・朝鮮人等の様々な外国人が暮らす日本である。言わば半他民族国家のような大局観をもって「共生社会の創造」を念頭にした方が、適切な思考ができるのではないかと思う。(民守 正義)