コラムーひとりごと6 「障害者」「『障害者』」「障がい者」「障碍者」
コラムーひとりごと6
「障害者」「『障害者』」「障がい者」「障碍者」
{私の中途障害}
私は、プロフィールにも紹介しているように現在、サルコイド-シスという難病に罹患して、歩行困難で車椅子生活、手等の強烈なシビレと足の水ぶくれ等の中途障害に悩まされている。
障害と言っても、個々の状況は千差万別であろうし、中途障害と先天性障害とも、その苦しみや人生的価値観等も異なるだろう。自分は60歳からの中途障害なので、まだ早くからの障害者の方から見れば、苦労が少ないとは思うが、それでもトイレもままならない歩行困難―車椅子生活等を日常生活の中で受入れていくには、それなりの葛藤と「生きること」を考え直すことを余儀なくされた。
{私の障害者問題との出会い}
私自身、障害者問題を学生時代から認識はしていたが、当時、障害者団体の中には告発主義的・やや過激な団体もあって、敢えて遠ざかっていたのを覚えている。
それが障害者問題に関ったのは、1999年の大阪府職労分裂-自治労府職結成時に本部役員になった際に、障害のある組合員の中から「障害のある組合員を組織して欲しい」という意見要望が上がって早速、組織化(障害労働者懇談会)に取組むに私が、その担当役員になったことがきっかけである。その活動には、手話講習会等の開催、また障害職員だからこそある独自の要求交渉を行い、人事当局も好意的に対応して頂いた。
{“障害者”の表記について}
障害労働者懇談会の活動を通じても、時折、“障害者”の言葉の妥当性が議論になったことがある。各々の表記の問題指摘等は、以下のとおりである。
①障害者→元々、一般的に使われている表記。近年になって「差障りがあって害のある者」を意味するとの問題指摘がされている。
②「障害者」→“障害”は、そもそも個々人の個性であって、その個性を当然に受入れるべきなのに、それを受入れない“障害”が社会の方にあるという意味を込めて、「 」を付けて表記している。自分自身、この表記を長く使用していた。
③障がい者→前記①の問題指摘を払拭するために「害」をひらがな「がい」にしたもの。以前の府議会で自民党府議会議員から問題指摘・提案を受けて、橋下知事があっさりと受入れた経緯がある。現在、大阪府は、この表記で統一することになっている。
④障碍者→基本的には上記①の問題意識と同様で、「害」を「碍」に用いた表記を使用している。元来、「碍」には「石に進路を遮られている」という意味がある。しかし「障碍者」を使用しているのは、私の知る限り、民間の一部で、行政では皆無である。
{“障害者”の表記と差別意識}
大阪府が「障がい者」で早々と統一することになった時、多少の反発もあって、私なりにも、できるだけ多くの関係団体(者)と会って意見等を調べてみた。その概括的傾向を見ると、大阪府が統一した「障がい者」を肯定的に評価したのは、主に当事者(“障害者”)の親の会や支援団体である。そして概して “障害者”・運動団体自身は、意外と「どうでもよい」との声が多かった。ある大阪府と毎年、オールランド交渉している障害者団体のリーダー的な方は、「『どれが適切な表記か』なんて議論をしていること自体が偽善的で意味がない。当事者が望んでいるのは、表記のことよりも、具体的にどのような措置(障害者雇用の促進等)を取ってくれるかだ」と言い放った。また、ある障害労働者懇談会の役員は、「『害』の文字をあまり問題化することで、障害者全般に取り巻く諸問題への本質や関心が薄まるのではないか。歴史的に『障害者』と呼称してきたのであれば、それはそのままでもいいのではないか」とまで言い切った。
因みに新米中途障害者の私も、“障害者”の表記の事よりも、具体的に段差の解消等や、障害による違いを乗り越えて、共に生きる仲間・人間関係作りに心を寄り添って欲しい。
逆に今後の問題として心配なのは、大阪府は安易にも「障がい者」で早々と便宜的に統一しただけのことで、自民党府議会議員と橋下元知事には申し訳ないが、実際には、まだまだ淘汰されていない議論が残されており、「これが正しい認識に基く正しい表記」と結論付けられた訳でもない。別稿「コラムーひとりごと3 大阪府『ゆるキャラ』の隠れたリストラ背景」でも述べたように、自分の力で考える努力もなく、即にマニュアル型回答で理解したように思い込む府職員の傾向があるだけに申し添えたい。
{自分の力で考える人権考と職場人権研修の実態}
自分の力で考える人権考を身に付けるには、それだけ内容ある人権研修が必要不可欠だ。しかし職場人権研修の実態は、部落解放同盟大阪府連要求には、「職員全員に対して人権研修を行うこと」に対して、「職員全員を対象に~」と回答して、まやかしている。 私自身、職場人権研修講師を行ったことがあるが、100人足らずの職場規模で10人前後の出席者。それも昨年度も参加したような若手職員中心でグループ長以上の者は、殆どいない。他部局では、まだ更に内容に乏しく、人権局で実施している職場指導者養成研修を受講した講師(多くは総務課職員)がカードを使った人権ゲームを行って「ハイ!終わり」。まるで人数が少なく、やる気のない教師が適当に行うホームルームのようだ。
いずれ「人権教育のための国連10年大阪府後期行動計画」の建前と職場人権研修の実態との乖離を抜本的に見直すべき時期が来るだろうが-。
まあ「個人情報保護法違反の疑い」を持たれている人事当局が何らの自覚もなく、放置している現状・体質を見ると、なかなか先の事と思うが-。(民守 正義)
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