リベラル勢力総結集で政権交代!(59)
《Ken Sway Kenと管理者の【緊急事態条項等、憲法改悪阻止】》
《【奴隷的労働法制】「働き方改革」とどう向き合うか:中島光孝弁護士講演会報告》
9月15日「コミュニティ・ユニオン関西ネットワーク」と「無期雇用をめざせ!更新ストレスさよならキャンペーン」の共催で「働き方改革」と、どう向き合うかと題する講演会が開催された。講師は、ハマキョウレックス弁護団の中心として先日、最高裁判決を勝ち取った中島光孝弁護士。講演の内容を以下簡単に紹介する。
1 「働き方改革」とは何か
安倍政権の進めている「働き方改革」の本質は、個人の尊重(仕事と生活の調和)が蔑ろにされている状況を放置したまま、ただただ生産性を上げるということにだけウエイトを置いているのではないか。そして大きな背景としては、支配層の側が労働力人口の減少に危機感を持ち、労働生産性を上げることで対応しようとしているのではないか。
2 「働き方改革関連法」の成立と問題点
(1)労働時間規制の問題点
・100時間未満の残業を法律で容認したこと。その結果、長時間による過労死認定の基準がこれまで以上に厳しくなり、残業が100時間未満であれば過労死として認定されなくなるという傾向が出てくる可能性もあるので、その点は監視していく必要がある。
・労働時間上限規制猶予の業種が設けられたこと。これまで長時間労働が問題となってきた建設、運転、医師については、労働条件規制が猶予されたこと。
・勤務インターバルが義務化されなかったこと。労働側の強い要求にも関わらず、法律的に強制するというところまでは至らなかったこと。
・産業医・産業保険機能を強化する事にはなったが、肝心の長時間労働規制を中途半端にし、その結果、心身を害する労働者が今後も増え続ける事を見越した対処方法であり、本末転倒であること。
・高度プロフェッショナル制度については、対象業務が法律に明記されておらず、無制限に広がる可能性がある。また年収要件についても法律には明記されず「厚労大臣が決める」とされているが、この点については憲法27条2項(労働条件は法律で定める)にも反するとの指摘もある。更に適用には労働者の同意が必要とされているが、実際には労働者が拒否することは困難であり、どうやって労働者の自由意志を担保するのかという問題がある。
(2)「同一労働同一賃金」の枠組み
・労働契約法20条は削除し、その内容を「短時間労働者・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下、「改定パート有期労働法」)に取り込む。
・この結果、法律の性格が「契約に関する法律」から「事業主に対する法律」に転換することとなる。労基署は「契約」には原則不介入だが、法律の性格が「事業主の義務」に転換したことから、今後は全面的に関与してくることになる。
・そのために今後「同一労働同一賃金」を巡る紛争についても労働局斡旋の対象となるが、それを機能させるためにも法律やガイドライン、最高裁判決の内容を労使双方が知っている事が必要である。
3 「同一労働同一賃金」について
(1)最高裁判決の意義あるいは確認したこと
・労働契約法20条の立法事実と立法趣旨を明らかにしたこと。
《立法事実》契約社員等については往々にして正社員と比べて低い待遇の契約をせざるを得ない状況にある。《立法趣旨》契約社員等に対する不合理な待遇を是正する。
・労働契約法20条が私法的効力を有することを確認したこと。
労働契約法20条違反の契約は無効となる。(但し、補充的効力は持たない。)
・労働契約法20条は、職務内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であるとしたこと。
・正社員の就業規則を契約社員等に適用されるとの解釈の可能性を否定しなかったこと。
・労働条件ごとに不合理性を判断することを原則としたこと。
・労働契約法20条は定年後再雇用の有期雇用労働者にも適用されるとしたこと。
(2)最高裁判決が示した不合理性の判断の順序
最高裁判決は不合理性判断にあたって、以下のような順序で判断していくこととした。
①労働条件ごとに、その目的、趣旨を確定。
②その目的、趣旨は、職務の内容によって正社員と契約社員等にとって異なるものとなるか、どうかを判断。
③その目的、趣旨は、登用や異動の有無等変更の範囲によって正社員と契約社員等にとって異なるものとなるか、どうかを判断。
④以上の②または③で異なるとされた場合には、次に「その他の事情」によって不合理といえるかどうかを判断。
⑤以上の②および③で異ならないとされた場合には、一応不合理と判断されるが、その判断を妨げる「その他の事情」があるかどうかを判断。
(3)ハマキョウレックス事件最高裁判決の具体的判断過程
《住宅手当》
①目的・趣旨 住宅手当は従業員の住宅に要する費用を補助する趣旨で支給される。
②職務の内容 正社員と契約社員で職務の内容は異ならないから、住宅費補助の必要性は異ならない。
③変更の範囲 契約社員は転勤なし。正社員は転居を伴う転勤あり。契約社員と比較して、正社員は住宅に要する費用が多額となり得る。住宅費補助の必要性が異なる。
④「その他の事情」を検討するまでもなく、住宅手当を正社員に支給し、契約社員に支給しないことは不合理とは言えない。
《皆勤手当》
①目的・趣旨 実際に出勤するトラック運転手を一定数確保する必要があることから、皆勤を奨励する趣旨。
②職務の内容 契約社員と正社員の職務の内容は異ならないから、皆勤奨励の必要性は正社員と契約社員で異ならない。
③変更の範囲 契約社員と正社員で変更の範囲は異なるが、それによって皆勤奨励の必要性は異ならない。
④不合理との判断を妨げる「その他の事情」もないので、皆勤手当を正社員に支給し、契約社員に支給しないのは、不合理。
《無事故手当》
①目的・趣旨 優良ドライバーの育成や安全な輸送による顧客の信頼の獲得を目的として支給。
②職務の内容 正社員と契約社員で職務の内容は異ならないから、安全運転及び事故防止の必要性も異ならない。
③変更の範囲 契約社員と正社員で変更の範囲は異なるが、それによって安全運転及び事故防止の必要性は異ならない。
④不合理との判断を妨げる「その他の事情」もないので、無事故手当を正社員に支給し、契約社員に支給しないのは、不合理。
※基本給についてどう判断するか
基本給の目的・趣旨は必ずしも明確でない。年齢給・勤続給・資格給・職務給等が混ざり合っていることが多い。また正社員の基本給体系と契約社員の基本給体系が、そもそも異なっているため、比較が困難。しかし基本給部分こそ、きちんと同一労働同一賃金に対応する形にしなければ、労働契約法20条も「改訂パート有期労働法」もあまり意味がない。
これについては、後で述べる。
(4)改訂パート有期労働法(新法)
①9条 差別的取り扱いの禁止
新法9条では「職務内容」と「変更の範囲」が同一である場合「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」と定義し「基本給、賞与その他の待遇の各々について、差別的取り扱いをしてはならない」としている。つまり均等待遇を規定している。この条項に照らすと、長澤運輸事件についても「職務の内容」と「変更の範囲」が同一なので、均等待遇すべしとの結論になるとも思われるが、ストレートには適用されない可能性もある。
②8条 不合理な待遇の禁止
新法8条では「職務の内容」「変更の範囲」「その他の事情」を考慮して、「不合理と認められる相違を設けてはならない」としている。今後、組合が団体交渉を行っていく場合、会社側が9条は均等規定、8条は均衡規定と主張してくる可能性が高い。そして組合が8条違反を主張しても、会社が「いや、バランスがとれているから良いのですよ」等と言ってくることが想定される。これに対抗する理屈、論理を作っておく必要がある。
③10条 均衡考慮
新法10条では、短時間労働者の賃金について、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、「職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験その他の就業の実態に関する事項を勘案」して、「決定するよう努めるものとする」としている。会社は先の8条と併せて、均衡であればよいと主張してくる可能性がある。なお新法10条が挙げる考慮要素について「職務の内容」や「職務の成果」はある程度客観的に判断できるかもしれないが「意欲」は主観的な判断が大きく入り込むと思われるので、注意を要する。
また「能力又は経験」については、ガイドラインに記載されている通り「現に従事している仕事にとっての経験または能力」の事である事を指している事を確認しておくべき。
④14条 説明義務
新法14条では、事業主は「短時間・有期雇用労働者の雇入れたとき」と、「短時間・有期雇用労働者からも求めがあったとき」に、差別的取り扱いの禁止や不合理な待遇の禁止等の措置について「考慮した事項について、説明しなければならない」としている。
これが労働組合側の最大の武器になる。例えば基本給の問題にしても、団体交渉でどういう性質のものか説明しろと要求し、会社が説明できなければ、労働組合の考え方を明示して会社も異議がない事を確認しておく。そうすれば、裁判においても有利に闘える。
(5)参議院付帯決議
参議院は「働き方改革法」について次のような付帯決議を行った。
・各社の労使による合意なき通常の労働者の待遇の引下げは、法改正の趣旨に反すると共に、労働条件の不利益変更法理にも抵触する可能性がある。
・低処遇の通常の労働者に関する雇用管理区分を新設したり、職務分離等を行った場合でも、不合理な待遇の禁止規定や差別的取り扱いの禁止規定は回避できない。
郵便局では、契約社員に住宅手当を支払わないのは不合理であるとの判決が出た途端、一部の正社員に対する住宅手当を撤廃するとの方向を打ち出した。このように一部の会社は、契約社員の待遇改善を回避するために、正社員の待遇引下げ等に着手している。 付帯決議は、会社のこうした行為は許されないとしており、団体交渉で活用すべきである。
(6)ガイドラインについて
①ガイドラインの基本的な考え方
・不合理な待遇の相違および差別的取扱い等の解消を目指す。
・各事業主において、職務や能力等の内容を明確化し、公正な評価を実施する。そして待遇の体系全体について、短時間・有期雇用労働者等を含む労使で構築・確認する。
・不合理な待遇の相違等の解消に向けては、賃金のみならず、福利厚生、キャリア形成、能力の開発及び向上等を含めた取り組みが必要。
・新たな雇用管理区分の創設、職務分離、正社員の待遇引下げによって、不合理な待遇の相違を解消することは出来ない。労働組合は、ガイドラインを利用し「職務や能力等の内容の明確化」を求めるべき。また「公正な評価」については、その評価基準が客観的なものか、具体的なものかを明らかにさせて行くべき。
②ガイドラインの活用
ガイドラインは、基本給や諸手当等について、正社員と短時間・有期雇用労働者との相違が「問題となる例」と「問題とならない例」を列挙している。とりわけ基本給については①労働者の能力又は経験に応じて支給する場合、②労働者の業績又は成果に応じて支給する場合、③労働者の勤続年数に応じて支給する場合、④昇格について、労働者の勤続による能力に応じて行う場合、という4つのパターンを設定し、各々について、相違が「問題となる例」や「問題とならない例」を挙げている。
労基署の監督や行政指導は、このガイドラインをベースに行われることになる。
労働組合も、ガイドラインをベースに会社と交渉していくことになるのではないか。
尤もガイドラインは、あくまで行政の基準に過ぎない。ガイドラインが重要なツールになる事は間違いないが、ガイドラインのおかしな点については、どんどん主張すればよい。
4 労働者・労働組合は「働き方改革」にどう向き合うか
(1)主体的な取り組みの必然性
同一労働同一賃金の問題については、2020年から大企業に適用される。
大企業は、もう新しい就業規則、新しい賃金規定をどうしたらいいのか研究・調査して作りつつある。それが次第に中小企業にも波及されてくる。そうすると後2、3年も経つと、会社の方から「新たな就業規則・賃金規定はこうなります」と提案してくる。
それに対して労働組合も対応を迫られる。そこに主体的な取り組みの必然性がある。
(2)労働条件改善のチャンス
最高裁判決、新しい法律、ガイドラインは非正規の労働条件を改善させる大きなチャンスである。そして正社員の労働条件、賃金体系や労働時間関係を改善するチャンスとすることも可能。
(3)団体交渉を内容のあるものとするチャンス
最高裁判決でもって、労働条件について交渉するにあたっての労使の共通言語ができた。
最高裁判決の示した判断枠組みでもって、基本給やあれこれの手当の目的・趣旨を明確化し、相違の不合理性を判断していく道筋ができた。また改訂パート有期労働法14条の説明義務を武器にする道も開かれた。これらを梃子にして、同一労働同一賃金だけでなく、労働時間やその他の事項も、交渉の土台に載せて行くことができるのではないか。
(4)組織拡大あるいは労働組合の存在感を示すチャンス
賃金問題が一気に浮上してきている。労働者の関心も高まる。そして労働組合は具体的に団体交渉で詰めて行くことができる。こうしたことが労働組合の組織拡大に、そのまま繋がるかどうかは、ともかくとして、労働組合の存在感は高まってくるのではないか。 (基本文献-FACE(管理職ユニオン関西・関西ユニオン)/管理者:部分編集)
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《ブログ「リベラル広場」では次の事業も行っています。》
①職場(仕事)における労働・人権相談(ハラスメント・メンタルヘルス等、含む)
*大阪府労働相談経験10年以上。*産業カウンセラー資格、有り。
*但しメンタルヘルスの場合、もし心療内科等に受診されている場合、または、その受診の方が望ましい場合は、当該医師の指導を優先し、カウンセリングを断る事もありますので予めご了承ください。【費用:交通費等、実費+α(委細相談)】
②「企業内人権研修」等の講師派遣も行います。【但し有料(2万円程度-委細相談)】
③採用コンサルタント。
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(民守 正義)
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