リベラル勢力総結集で政権交代!(56)

《Ken Sway Kenと管理者の【緊急事態条項等、憲法改悪阻止】》
《【天災こそ真の危機】現代に甦る科学者・寺田寅彦の指摘》

 戦前の地震、地球物理学、気象、海洋学の研究者で、文芸家として知られる寺田寅彦は、多くの随筆を残している。その中で昭和9(1934)年、「天災と国防」と題して雑誌『経済往来』(11月号)に発表した作品は、当時「非常時」への対応を騒がしく喧伝し、国際的な脅威を理由に「国防」を叫ぶ一方で、現実に国土を襲い、国民に苦難を強いている天災への対応、対策には不熱心な為政者に対して、科学者の視点から批判し、対応を迫るものであった。その内容は今日、新しい響きをもって甦るものがある。
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 この年は、幾つもの天変地異が立て続けに起こり、おびただしい人命と財産を奪った。
 寺田寅彦は「国際的のいわゆる“非常時”は、少なくも現在においては、無形な実証のないものであるが、これらの天変地異の“非常時”は最も具象的な眼前の事実としてその惨状を暴露している」と書いている。三月には函館を、市街地の3分の1を消失させ、死者・行方不明者2716人、消失家屋2万4186戸を出す大火が襲った。7月には前年の台風に続いて北陸の河川の洪水による水害で数千戸の家屋が全壊した。東北地方は明治38年以来の冷害による大凶作に見舞われ、岩手では2万4000人の欠食児童が生み出された。
 寺田寅彦にとって、その記憶が生々しい9月21日、「近畿地方大風水害が突発した」事が随筆執筆の契機となったようである。後に「室戸台風」と名付けられた、この台風は911.9ヘクトパスカルという気象観測史上最低気圧を記録し、四国から阪神にかけて上陸した。
 瞬間最大風速60キロメートルと猛威を振るい、死者・行方不明者3246人、家屋4万戸が全壊した。大阪港では2000隻を超える船が沈没し、東海道本線で大津付近を走っていた急行列車が横転する等、交通機関で多数の死者を出した。特に大阪市内の小学校では44校が倒壊し、校内で死者257人(うち児童251人)重軽傷者1571人を出した。

 寺田寅彦は大正12(1923)年の関東大震災を直接体験していた。大震災後、横浜から鎌倉へかけて被害の状況を見学に行ったとき、丘陵の麓を縫う古い村家が、そのまま残っているのに、田んぼの中に発展した新開地や、鉄道を延ばした停車場周辺の新式家屋が無残に破壊されているのを確かめた。寅彦はそこに「昔の人間は過去の経験を大切に保存し蓄積して、その教えにたよる事が甚だ忠実であった。過去の地震や風害に堪えたような場所にのみ集落を保存し、時の試練に堪えたような建築様式のみを墨守して来た。それだから、そうした経験に従って造られたものは関東震災でも多くは助かっている」ことを見た。
 更に「今度の関西の風害(室戸台風)でも、古い神社仏閣等は存外、傷まないのに、時の試練を経ない新様式の学校や工場が無残に倒壊してしまった」ことを重ねている。
 この随筆では、小学校の倒壊数の異様さについて「普通家屋の全壊135に対し学校の全壊1の割合である。実に驚くべき比例である。これには色々の理由があるであろうが、要するに時の試練を経ない造営物が今度の試験で見事に落第したと見ることはできる」として、次のように記している。「小学校建築には政党政治の宿弊に根を引いた不正な施工がつきまとっているというゴシップもあって、小学生を殺したものは○○議員だと皮肉を言うものさえある。あるいは吹き抜き廊下のせいだという甚だ、手取り早で少し疑わしい学説もある。
 あるいは、また大概の学校は周囲が広い明き地に囲まれているために風当たりが強く、その上に二階建てであるために一層いけないという解釈もある。いずれも本当かもしれない。
 しかしいずれにしても、今度のような烈風の可能性を知らなかった、或いは忘れていた事が全ての災厄の根本原因である事には疑いない。そうしてまた、工事に関係する技術者が我が国特有の気象に関する深い知識を欠き、通り一篇の西洋直伝の風圧計算のみを頼りにしたためもあるのではないかと想像される」「天然を相手にする工事では西洋の工学のみに頼る事はできない」と。寺田寅彦は「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害が、その劇烈の度を増す」という事実を幾度も強調している。
 また「文明の進歩のために生じた対自然関係の著しい変化」として、「人間の団体、なかんずく、いわゆる国家あるいは国民と称するものの有機的結合が進化し、その内部機構の分化が著しく進展して来たために、その有機系のある一部の損害が系全体に対して甚だしく有害な影響を及ぼす可能性が多くなり、時には一小部分の傷害が全系統に致命的と成り得る恐れがあるようになった」事に、目を向けるように促している。

「20世紀の現代では日本全体が一つの高等な有機体である。各種の動力を運ぶ電線やパイプが縦横に交差し、いろいろな交通網が隙間もなく張り渡されている有様は高等動物の神経や血管と同様である。その神経や血管の一カ所に故障が起これば、その影響は、たちまち全体に波及するであろう。今度の暴風で畿内地方の電信が不通になったために、どれだけの不都合が全国に波及したかを考えてみればこの事は了解されるであろう」と。
 また「市民の栄養を供給する水道は、ちょっとした地震で断絶するのである。尤も送電線にしても工学者の計算によって相当な風圧を考慮し若干の安全係数をかけて設計してある筈であるが、変化の激しい風圧を静力学的に考え、しかもロビンソン風速計で測った平均風速だけを目安にして勘定したりするようなアカデミックな方法によって作ったものでは、弛張の激しい風の息の偽週期的衝撃に堪えないのは、むしろ当然の事であろう」と述べている。
 そして「安政元年の大震」(東南海地震)のような巨大地震が襲来すれば、「東京から福岡に至るまでの、あらゆる大小都市の重要な文化設備が一時に脅かされ、西半日本の神経系統と循環系統に相当、酷い故障が起こって有機体としての一国の生活機能に著しい麻痺症状を惹起する恐れがある」「安政年間には電信も鉄道も電力網も水道もなかったから幸いであったが、次に起こる“安政地震”には事情が全然、違うという事を忘れてはならない」と、警鐘を鳴らした。寺田寅彦は、最後に「戦争は、ぜひとも避けようと思えば人間の力で避けられなくはないであろうが、天災ばかりは科学の力でも、その襲来を中止させるわけには行かない。その上に、何時いかなる程度の地震暴風津波洪水が来るか今のところ容易に予知することができない。最後、通牒も何もなしに突然襲来するのである。それだから国家を脅かす敵として、これほど恐ろしい敵はないはずである」と強調している。寺田寅彦がこの随筆を書いたのと同じ頃、陸軍省新聞班による『国防の本義と其強化の提唱』が刊行され、憲法学者・美濃部達吉らが批判。それが翌年の天皇機関説事件に発展した。こうした時代背景とあわせると、この随筆が持つ今日的意義がより浮き彫りになるだろう。 (長周新聞)


《【「公文書」非公開】総務省-開示拒否の発言録を一転開示》

 総務省が情報公開請求に対し、職員の「備忘メモ」なので公文書ではないと開示を拒んでいた議事の記録について、同省は当初の判断の誤りを認め一転、開示した。
 但し多くの部分が黒塗りの「部分開示」で、議論の詳細を読むことはできない。この文書は総務省の「町村議会のあり方に関する研究会」の発言録。人口減に悩む高知県大川村が、議員でなく有権者が直接参加する「町村総会」の検討を表明したことをきっかけに設置され、2017年7月~今年3月、8人の有識者がメンバーとなって計7回の会合が開かれた。

<当初は「職員の『備忘メモ』」として開示を拒否>

 この研究会では匿名の発言内容が短くまとめられた「議事概要」しか公表されなかったが、実際には事務局の総務省自治行政局行政課が公費で業者に委託して録音を起こし、発言者名と発言を明記した議事の記録を作っていた。しかし3月28日に「議事録全て(議事要旨ではなく、発言者名と発言が書き起こされているもの)」との文言で情報公開請求したところ、総務省からは5月1日に「作成・取得しておらず、保有していない」との通知があった。毎日新聞は7月22日付朝刊で、この矛盾について報道。
 その際に同省は「保有していない」と答えた理由について「職員がパソコンの個人フォルダーで保存していた『備忘メモ』で行政文書(公文書)ではない」(吉川浩民行政課長=現・官房審議官)と説明していた。

<「メールの添付ファイルにあった」として開示>

 一方、この議事の記録は会合が終わるたびに行政課から研究会のメンバーにメールで送信されていたとの情報があったため、同課と研究会メンバーの間で送受信されたメールと添付ファイルの全ての開示を求める情報公開請求も6月11日に行った。
 すると8月13日にメールの写しが開示され、その中に「速記録」として全7回分の発言録が添付ファイルとして含まれていた。更に同省は最初の3月28日の請求についても不開示決定を取り消し、同じ速記録を改めて開示する決定を9月28日に出した。
 判断を覆した事について吉川審議官は「検討した結果、メールは添付ファイルも含めて行政文書であるという結論に至った。最初の請求についても、メールに添付されていたという状況があったので開示することにした。探索不足だった」と惑ころしい言い訳をした。
 情報公開法と公文書管理法は公文書を「組織的に用いるもの」と定義しており、メールで研究会メンバーと共用していたことから公文書に該当するという解釈だ。

<主要な発言は黒塗り>

 但し開示された速記録では、有識者メンバーの発言は殆ど黒塗りにされており、読めるのは事実上、山崎重孝自治行政局長(現政府皇位継承式典事務局長)ら総務省側出席者と小田切徳美座長(明治大教授)の発言に限られる。その山崎氏や小田切氏の発言も黒塗りにされている部分があり、具体的にどのような議論があったのかを読み取るのは事実上不可能だ。
 毎日新聞が入手している黒塗りなしの速記録によれば、山崎氏は主要テーマの一つだった町村総会について、初会合(2017年7月27日)から「私は非常にリラクタント(気が進まない)」等と否定的な発言をしていたが、この部分は黒塗りとなっている。

<「正常な状態に一歩近づいた」>

 今回の総務省の決定について、片山善博・早稲田大公共経営大学院教授(元総務相)は「速記録は税金を使って文字に起こしたのだから、れっきとした公文書だ。総務省は当初、解釈を誤ったか、わざと誤った解釈をしたかのどちらかということだ。(毎日新聞の情報公開請求で)ちゃんとした対応をしなければならないと判断したのだろう。正常な状態に一歩近づいたという点は評価していいのではないか。後は黒塗りにされた部分が,本当に法の定める不開示情報に当たるのかという疑惑が残る」と指摘している。
 なお記者は、当初の不開示決定を不服として7月23日、総務省に対し、その取り消しを求める審査請求をしていたが、今回の開示で意味がなくなったため却下された。

<解説>

 総務省が速記録を開示したのは「職員個人のメモ」という当初の説明に、そもそも無理があったことを示している。ただメールで関係者に共用されていたので公文書、という論理には疑問も残る。組織として作成したのだから、仮に職員1人で保存していたとしても公文書とみるべきだ。大阪市は内部の指針に「会議録等の作成のために会議内容等を記録した速記録、録音テープ」を公文書として「確実に保存管理しなければならない」と明記している。
 とはいえ今回の総務省の判断には幾つか注目すべき点がある。
 一つはメールを明確に行政文書と認めた点だ。政府機関で送受信される電子メールの多くは公文書としての位置付けが曖昧で、官僚の裁量で廃棄されるケースも相次いでいた。
 総務省の吉川審議官は「メールが何のために送られたかを考えれば、行政文書(公文書)ということになる」と話した。もう一つは、3月の「議事録」という請求に対しても速記録を開示したことだ。当初総務省は、速記録は「テープ起こし」なので「議事録は保有していない」と主張していた。しかし一般的には議事を記録したものを議事録と呼ぶ。
 詭弁のような言葉の使い分けではなく、常識的な解釈がなされたのは当然の事だ。
しかし、それでも議論の主要な部分は殆どが黒塗りだ。その理由として総務省は「率直な意見の交換もしくは意思決定の中立性が不当に損なわれる」等と開示決定通知書で説明している。情報公開法が定めている開示しなくていい理由の一つだ。しかし会議の意見・氏名を公表できないという事は、その会議自体、国民に対し「自己責任を取っていない」に等しい。
 この研究会は、悪質にも議事を非公開とすることを事前に要綱で決めていた。
 片山氏は次のように指摘している。「議事録が全て公開されると思い切った発言ができないという参加者の気持ちは分からないではないが、税金で運営される会議で政策を議論するのだから、国民にはできるだけ公開しなければならない。正論を言えば誰かを傷つけてしまうものだ。それが嫌なら最初からそんな場に出なければいい」(参考文献-毎日新聞/文責:民守 正義)
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(民守 正義)