リベラル国民の拡大・結集で憲法改悪阻止!(78)

《Ken Sway Kenと管理者の【緊急事態条項等、憲法改悪阻止】》
《阪神大震災で疑われた性暴力被害/林 美子(ジャーナリスト)》

 1995年1月17日、兵庫県南部を大地震が襲った。日本中が総がかりで被災地救援と復興に取り組む陰で、性暴力事件がいくつも起きていた。だがその報告は信憑性を疑われ、当時、性暴力をめぐる議論と対策が深まることはなかった。その後も大災害は相次いでいる。
 今、必要なのは、災害などで社会が混乱すればそれを利用した性暴力が起きうると知ること、そして、それを「なかったこと」にはしないということだ。
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 ここに1997年4月に出版された一冊の本がある。『物語の海、揺れる島』。
 ノンフィクション作家である与那原恵さんの一作目の著書にあたる。
 与那原さんは、2014年の河合隼雄学芸賞などの受賞者である。本には当時発表した記事が収録されており、その一つが「作られた伝説〈神戸レイプ多発報道の背景〉」という題の記事だ。初出は雑誌「諸君!」(文芸春秋、現在は休刊)の1996年8月号である。
 「作られた伝説」は、概ね次のような内容だ。神戸で震災前に花嫁スクールを開いていた女性(『諸君!』では実名、著書では「Hさん」)が、震災の翌月から個人で電話相談を始めた。
 4カ月間で1000件以上の電話を受け、中にはレイプやレイプ未遂に関する相談も少なからずあった。『神戸新聞』や『朝日新聞』等が、彼女の活動を紙面で紹介した他、地元の女性団体「ウィメンズネット・こうべ」が開いた性暴力に関する集会でも、女性が性被害の実情を報告した。与那原さんは、取材を始めた当初の目的は「レイプ事件の被害者・加害者を探すことだった」とする。ところが各報道を調べた結果、「レイプ事件の具体的事実の情報源はたった一人の人物だ」と気づいたという。それが「Hさん」だ。
 与那原さんは女性を長時間インタビューし「(一本の電話で)4カ月間で1635件もの相談を受けるのは物理的に無理」等と「遠慮のない質問」を重ねた。ついに女性は、与那原さんの「この相談件数もレイプ相談の内容も全く根拠のないものだと、そういうことですね」との質問に「貴方が、そう思うなら自由に書いてもらっていいですよ」と回答。
 これを元に与那原さんは『諸君!』の記事で女性の人物像を詳細に描き「レイプ多発」は女性が作り出した「物語」だったと印象づけた。被災地で性暴力問題に取り組んでいた人達は、記事に衝撃を受け、「『強姦多発』を信じたくない人々からの反撃」と題した抗議文を96年10月に発表した。同文は「実際いくつもの電話相談では『一日数十本の相談』を受けている」と反論し、レイプ事件で被害者に「問題がある」ように印象付けられるのと同じ手口だと批判した。しかし、この記事は97年の「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞。「災害時の性暴力」を訴える人達は「デマだ」というバッシングに晒され、暫く沈黙を余儀なくされた。

<レイプ多発は「物語」なのか>

 では「レイプ多発」は本当に「作られた伝説」だったのだろうか。実際は「情報源はたった一人の人物」と断定された女性以外にも、何人もが阪神・淡路大震災後の性暴力について報告している。その一人が、性教育の普及活動等を手がける東京の団体「性を語る会」代表の北沢杏子さんだ。震災の年の3月、被災地にいる同会会員の保健師らから「女性や子どもを狙った性犯罪が多発している」との情報が入るようになった。北沢さんは4月、同会のメンバーと現地を訪れ、3週間にわたり避難所を訪問。被災した女性達からの聞き取りと支援活動をした。
 以下は、その報告の一部である。「避難所となった学校の校庭の隅で遊んでいた女児が、外から侵入した見知らぬ男(露出症)に性器を口の中に押し込まれた。女児が食べ物を食べず吐くようになったので、少しずつ聞き出して、ようやく何が起きたかが分かった」「避難所から半壊した自宅に毎日犬の餌やりにいっていたところ、その時間を見計らって潜んでいた男にレイプされた」「別居中のDV夫と避難所で再会してしまい、世帯ごとに仕切られた段ボールの中で、ハサミで突かれセックスを強制された」北沢さんは「被害者は、警察に通報すると『落ち度があったのでは』と言われ、行政に訴えると、『復興の槌音高く』と報道されている街のイメージダウンにつながるとの反応だった。日本社会は人権意識がなさすぎる」と話す。他にもある。震災の翌年の96年1月に発行された『女たちが語る阪神大震災』(ウィメンズネット・こうべ編)には、神戸の産婦人科医の林千恵子さんによる証言が載っている。
「夏は大体レイプがらみの相談が増えるのですが、今年(筆者注・95年)は特に多かったようです。夜、避難所で人気のない所へ引きずりこまれたり、(中略)死角になる所で性的な悪戯をされたり、嫌な思いをしたという話を割と聞きました」「具体的には、高校生や大学生の女の子達が人の住んでいない家に引きずり込まれてレイプされた、人通りが減った空き室やビルに引きずり込まれかけた、街灯の暗い町で通りかかった車に引っ張りこまれてレイプされたという話がありました(後略)」林さんは当時を「避難所となった学校の養護の先生が、様子のおかしい人がいるといって相談してくることが多かった」と振り返る。
 また「ウィメンズネット・こうべ」代表の正井礼子さんも、被害者の話を聞いたという。
 住んでいる仮設住宅が商店街から遠いため、買い物を頼んでいた男性から襲われたと、震災翌年の女性だけの小さな集会で、乳児を連れたシングルマザーが訴えた。 参加者から「警察に訴えたの」と質問が飛ぶと女性は「そこでしか生きていかれない時に、誰にそれを語れというのですか」と、涙を流した。精神科医の斉藤学さんは「東京にいる私のところにさえ複数の相談がよせられた」と、99年4月6日付の『毎日新聞』のコラムで書いている。

<繰り返される「疑いの目」>

 今回、昨年12月下旬に与那原さんに取材を申し込み、「レイプ多発」は「作られた伝説」だという判断の根拠等を尋ねたところ、メールで次のような回答があった。「あの記事は被災地における性被害を否定したものではありません。複数のメディアが根拠としたHさんの電話相談の内容が疑わしいものであったことを指摘したものです。その根拠は、Hさん御自身が認められたこと、また警察等の客観的データでも『震災後に性被害が多発した』という裏付けはなかったことです」この回答に対し、更に詳しい質問状を年明けに送ったが1月23日現在、返事は来ていない。書籍の出版元の小学館にも取材を申し込んだが「現在は絶版になっている」という理由で応じなかった。さて「性被害はあった」ということを、何故ここまでシツコク書き連ねなければならないのだろうか。何故なら与那原さんの記事以外にも、日常的に性被害は「なかったこと」あるいは「それは被害ではない」とされがちだからだ。性暴力の被害者は、殆どの場合、名乗り出る事によって一層深く傷つく事を恐れている。内閣府の2014年度の調査によると、性被害に遭った事のある人の内、警察に相談したのは4.3%にすぎない。
 被害を告発しても「売名行為」「落ち度があった」等と激しいバッシングに晒される。
 これは昨年、ジャーナリストによる性暴力を告発した伊藤詩織さんの件でも記憶に新しい。阪神大震災後に警察へのレイプの被害届が増えたという統計はない。だから被害が増えなかったのかというと、そうとは言えないのが性被害の特徴だ。
 ところが支援活動をする人達が被害者の声を社会に伝えようとすると「本当にあったのか、信用できない」と言われる。その繰り返しである。だが阪神大震災の経験は、女性達に受け継がれていった。「ウィメンズネット・こうべ」の正井さんは、阪神大震災後はDV被害者の支援を中心に活動していた。2004年のインドネシア・スマトラ島沖地震の後、インド洋の津波被害を受けたスリランカの女性達が、性被害の調査をして政府に対処を求めたことを知る。
 日本でもきちんと伝えなければと、05年に「災害と女性」をテーマに防災フォーラムを開き、全国から参加者が集まった。11年に東日本大震災が起きると、その人達の中から被災女性支援の動きが立ち上がっていくことになる。東日本大震災の後、正井さんは「東日本大震災女性支援ネットワーク」が設けた女性への暴力に関する調査チームに加わった。
 調査では、被災地で活動する女性支援団体の協力を得て、女性や子どもへの暴力が82件あったことを明らかにした。その内DVが45件、DV以外のレイプや猥褻行為等が37件だ。
 13年に発表された報告書の「はじめに」で、正井さんは、報告書について「今後各地で予測される災害時の暴力防止に向けての取り組みに活かしていける貴重なもの」と述べている。

<性暴力の連載に「待った」>

 阪神大震災の時に性被害が「あった」ことを細かく述べたのには、筆者の個人的な理由もある。筆者は、16年11月に朝日新聞社を退職する直前、震災をテーマとする企画「てんでんこ」に、同僚2人と「女たち」という22回シリーズを連載した。震災時の女性特有の困難さと、それを乗り越えようとする人々を描いたものだ。連載を思い立ったきっかけは、関西出身の同僚から「阪神大震災の時に性被害が沢山あったのに、あまり報道されなかった」と聞いたことだった。そこで連載の冒頭部分は、性暴力をテーマとし、被害者を直接取材するのは難しかったため、阪神大震災から東日本大震災までの動きを「東日本大震災女性支援ネットワーク」の報告書を軸に描く予定だった。ところが10月下旬の連載開始直前になって社から掲載に「待った」がかかった。理由は被害者本人への直接取材がなく、報告書や支援者経由の情報では確度が不十分だというものだった。やむなく連載開始を1日遅らせて掲載順を組み替え、被害者取材の時間を確保するために、性暴力に関する部分を連載の最後に回した。
 結局、同僚の一人がストーカー被害を受けた被災者の話を取材し、記事に載せることができた。しかし阪神大震災時に何が起きたか、そこから女性達の経験が、どのように受け継がれたかを十分に記事にすることはできなかった。ぎりぎりまで真実性を追い求めるのは報道機関として当然だが、性暴力は「慰安婦」問題で攻撃に晒される『朝日新聞』にとって、とりわけセンシティブなテーマであり、神経を尖らせたのだろうと思う。ただ性暴力を「なかったこと」にしようとする社会的圧力が報道の現場まで影響していることを実感せざるをえなかった。だが昨年5月に伊藤詩織さんが性暴力を告発し、昨年10月、米国で大物映画プロデューサーが性暴力の告発を受けたのを機に「#MeToo(私も)」をキーワードにした告発の動きが広まる等、性暴力を巡る状況は最近になって大きく変化している。災害はいつ起きるかわからない。だから予め何が起きるか想像を巡らせ、性暴力の可能性も織り込み、予防や事後の対策を想定しておく。重要なのは、日頃から性教育や性暴力を巡る啓発活動にしっかり取り組んでおくことだ。被害者や支援者をバッシングして、この社会のエネルギーを浪費する余裕は、ないのである。(週刊金曜日)


《【腐蝕の安倍政権】安倍が珍答弁:エンゲル係数上昇は「食生活の変化」》

 大新聞やテレビはあまり報じていないが、31日の参院予算委員会で「エンゲル係数」を巡って、珍妙なやりとりがあった。民進党の小川敏夫議員がアベノミクスによって国民生活が苦しくなっていることを表すデータを挙げる中で、「生活の豊かさを示すエンゲル係数が顕著に上がっている」と指摘。これに安倍(経済音痴)首相は、「(エンゲル係数の上昇には)物価変動、食生活や生活スタイルの変化が含まれている」と反論、「景気回復の波は全国津々浦々に」と、いつものフレーズを繰り出したのだ。えっ! 生活スタイルの変化?
 エンゲル係数は消費支出に占める食費の割合のことで、一般に「その係数が高いほど生活水準が低い」というのは経済学の常識じゃないのか。「食費は生活の基礎的な部分。支出に占める割合が大きければ大きいほど、生活に余裕がないという指標です。安倍首相の答弁はテストなら0点ですよ。『生活スタイルの変化』と言いますが、一頃は『外食にシフト』というデータもありましたが、今や外食の単価が下がり、ワンコインでおつりがくることもある。外食費は多くありません。安倍さんや麻生さんは1万円を超えるステーキを食べに行く金持ちだから、自分と国民の違いが分からないのでしょう」(経済評論家・斎藤満氏)
 安倍(経済音痴)首相の経済指標の“恣意的な解釈”は毎度のことだが、予算委でアピールした「有効求人倍率が全都道府県で1倍を超えた」「パートの時給が統計開始以来最高」というのも眉唾だ。「有効求人倍率の求職者というのはハローワークに行った人だけ。失業保険が出る期間を過ぎてハローワークに行かなくなった失業者は含まれません。賃金が上がっていると言いますが、財務省の『法人企業統計』によれば、企業の人件費は2012年10~12月期の44兆円に対し、直近の17年7~9月期でも44兆円のままです。パートの時給が上がっても、勤務時間を減らしているので、賃金は増えていません」(斎藤満氏)
 目を背けたくなる数字をもう一つ。安倍(経済音痴)首相が渇望する「デフレ脱却」宣言を阻むのは個人消費の弱さだが、第2次安倍政権発足から5年(17年7~9月期まで)の軌跡を見ると、名目GDPは11.4%拡大したが、個人消費は4.3%しか増えていない。
 つまり消費低迷は長期化しているのである。アベノミクス自体の失策。さすがに、もうそろそろ認めたらどうか。(基本文献-日刊ゲンダイ/管理者:部分編集)
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(民守 正義)