リベラル国民の拡大・結集で憲法改悪阻止!(2)

《Ken Sway Kenと管理者の【緊急事態条項等、憲法改悪阻止】》

《市民のための政治を築き直す!政治と憲法と市民 ─これからの「壊憲」阻止の闘い/植野妙実子(中央大学教授)×中野晃一(上智大学教授)》

 突然の解散による今回の総選挙は、再び自民党の圧勝を許した。だが今後の安倍政権に反撃する上で評価できる点もあった。特に立憲民主党の結党とそれに連携した市民の動きは、今後の闘いにとって大きな意義を残した。
 2人の気鋭の学者が、新たな対抗軸の形成を語り合う。
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Q:今回の総選挙を語る前に、やはり忘れてはならないのは、それに至るまでの安倍信三首相の傲慢さ、酷さだと思います。なぜかメディアは殆ど追求しませんでしたが。
中野:仰る通りです。野党の正当な国会の召集要求を3ヵ月以上も無視し、やっと開いたと思ったら2014年と同じく「首相の専権事項だ」とか称して、すぐ解散してしまった。
 しかも加計学園を巡る疑惑については以前、記者会見で「丁寧に説明する」とか言っておきながら、何も論議せず解散です。これは明らかに疑惑隠しですよ。かつて、これほどまでにやりたい放題、勝手に権力を私物化する首相がいたでしょうか。解散のみならず、集団的自衛権を巡る解釈改憲も、そうでしたし。無論「身内贔屓」の加計学園疑惑もそう。

植野:臨時国会開催を散々、引き延ばしにした挙げ句、やっと開いたと思ったら「100秒足らずで解散」の宣言ですからね。そもそも憲法第53条には衆参「いずれかの議員の総議員の四分の一以上の要求があれば」、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと内閣の義務として定めてあります。それに憲法学者として言わせてもらえば憲法上、解散権が「首相の専権事項」等という事は決してありません。しかし結局のところ、今回の解散・総選挙は安倍首相と自民党による策略であって、それが、うまく進んでしまった。

 選挙の下準備もできておらず、互いに選挙協力の足並みも揃わない内に、野党を狙い撃ちにしたのですね。野党間で話し合う時間が足りず、候補者を一本化できなかった選挙区もありました。それによって自民党は多少、議席を減らしたものの、結果的に大勝となりました。それでも野党が、よくあれだけ持ち応えたと思います。
 特に立憲民主党が。「よく、ここまで頑張った」という印象です。

<暗黒から切り開かれた展望>

中野:この党が立ち上がるのを多少なりとも傍で見ていた者として、全く同感です。
「よくできたものだな」と。しかも民進党の事実上の解党と「希望の党」との合流を打ち出した同党の前原誠司代表が、組織とカネを「持ち逃げ」してしまった。
 更に連合が一時「希望の党支持」を打ち出しましたから。それでもともかく、次に繋がるような態勢の萌芽が見えてくるまでの成果は出せたと言えるのではないでしょうか。
Q:立憲民主党は告示の時点で、15議席で出発したにも関わらず、最終的に55議席まで獲得しました。
中野:しかも結党から選挙突入まで、たった8日間しかありませんでしたし。
立ち上がるまで、一時は目の前が真っ暗になるような惨憺たる状況が続いていましたね。
 当時、米国の『ニューヨーク・タイムズ』に記事を書いたのですが、題名は「日本のリベラリズムの死」でしたから(笑)。それが最終的に絶対的な議席数は少ないですが、立憲民主党が「希望の党」を抜いて野党第一党となったという成果はとても大きい。

植野:そうですね。「希望の党」は、「既得権益、しがらみのない政治」をめざすとしていました。それなら野党側に立っているはずですが、外見は野党のようなふりをしても安全保障や憲法「改正」に関しては自民党寄りです。「外国人の選挙権は認めない」というようなことを公約に盛り込もうとしたりして「寛容」ではないところが見えてきた。

 最後は小池百合子代表の例の「排除」発言で馬脚を現し、市民から見放されて立憲民主党に抜かれてしまいました。ある意味では当然の結果です。今後、安倍政権に対する抵抗勢力として一定の歯止めの役割を果たすのか、あるいは自民党と結局は足並みを揃えるのか、政党として真に意味が問われるでしょう。

<「改革保守」は保守勢力>

中野:それに小池代表は「改革保守」を唱えています。以前、同じような政党に「みんなの党」がありましたが、この種の政党は保守の危機が生じると登場して、野党を分断する方向に動く。しかも小池代表は「ポピュリスト」等と呼ばれていますが「トップダウン」のやり方で権力を私物化する安倍首相と、似た体質がありますね。候補者を「公約に従う」という協定書にサインさせておきながら、その公約は誰がどこで決めるのか定かでない。
 これでは「私に従いなさい」と言っているようなもの。「希望の党」は、公党というよりは小池代表の「私党」に近いでしょう。「都民ファーストの会」も同じです。全体として安倍政権との差がまるで見えにくくなって、その補完勢力としてしか映らなくなっています。
Q: 一方で、立憲民主党が、ここまで善戦した理由について、どうお考えですか。
植野:やはり今回の活躍については背後に戦争法(安保法制)反対の闘い以降、自分達の運動を作ってきた市民の存在があって、その考えを反映していたからでしょう。
 共産党ではすくいきれない、もう少しリベラルな市民の思いを立憲民主党は吸収できたと言えるのではないでしょうか。
中野:仰るように、一つには市民との連携だと思います。2015年の戦争法に反対する闘いでは市民の大きな盛り上がりがあり、更に立憲野党との間で連携が生まれました。

 それによって市民側が押し上げた事もあって昨年の参議院選挙では、1人区の選挙区で候補者を一本化する事ができ、3分の1を超える議席を取る結果になりました。
 そうした市民の流れが今回の総選挙でもあったと思います。
 だからこそ立憲民主党の立ち上げ後に多くの市民の支持がドンドン生まれ、最終的に市民が選挙を作っていく構造を作ることができたのではないか。

<画期的な共産党の判断>

植野:私も、その思いを強くするのは、立憲民主党というネーミングなんですね。
 以前だったら「立憲」なんておそらく「硬い」とか、「何のことだろう」みたいな感じを持たれたのではないでしょうか。しかし戦争法との闘いで、まさに立憲主義のあり方が問われました。そして市民の間に憲法に沿った政治という立憲主義の意味が浸透した事が大きい。
 「立憲」という言葉が、市民の結集、そして高揚した運動をイメージさせるようになったと感じています。
中野:昨年の参議院選挙で生まれた野党間協力の蓄積も、忘れてはならないでしょう。
 共産党や社民党との選挙協力が見込めたからこそ、立憲民主党は結党できたのです。
 実際、立憲民主党から前職の候補者が立った選挙区では、共産党が候補者を下ろしてくれましたね。それがなかったら、もうどうにもならなかったはずですよ。
植野:確かに議席は減らしてしまいましたが、共産党の協力は今回の選挙で、とても大きな役割を果たしたのは間違いありません。小選挙区制度での一つの闘い方を示したのではないでしょうか。私の周囲では今回「今まで共産党に投票した事はなかったけれど、立憲民主党の候補者がいなかったので初めて共産党に入れた」という話も聞いています。
 こうした事から共産党に対する一種のアレルギーみたいなものも、かなり減ってくると思われます。そういう意味では、共産党にとっても利点はあったのではないでしょうか。
中野:市民が政治に参加するようになって、共産党も変わってきましたね。

 それに今回、共産党は21議席から12議席になりましたが、見方を変えれば、立憲民主党のために、あんなに候補者を下ろしたのに、この議席数を取れたのは、初めて投票した人も相当獲得したのだろうと思います。
植野:フランスでは1972年に、社会党が共産党と政策的にどこで一致し、どのような形で政権を作っていくかという内容の「共同政府綱領」を結びます。一時、両党の共闘は壊れますが、最終的に両党の協力が1981年に社会党のミッテラン大統領を誕生させる基盤となった事はよく知られています。野党が結集し、現実的なプログラムを示す事で左翼が初めて政権を獲得しました。国や情勢が違うので一概には言えませんが、日本の政治のあり方を考える上で、意味がある事例ではないでしょうか。

<改憲はすぐには困難か>

中野:実は僕も、フランス型の政権交代は意識していて。その後も保守のシラク大統領の元で1997年に組閣した社会党のジョスパン首相の政権には、共産党のみならずエコロジスト政党等からも入閣し「複数左翼政権」とも呼ばれてしまいました。
 政権交代といっても単一の党から単一の党に代わるだけではなく、複数の政党で構成される政権があってもいい。
植野:二大政党制というと、米国のような保守二大政党制を思い浮かべ、日本でも「保守vs.保守」の二大政党制での政権交代を一部の政党は狙っていますが、フランスでは保守連合と革新連合で政権交代をしています。そういうことも可能性としてはあるのです。
中野:立憲民主党や共産党、社会民主党は違いがあると同時に、各自の持ち味、強みがある。それが連携する事で、対抗軸に成り得ると思います。自民党が安倍首相一色、「希望の党」が小池代表一色に染まっていますが、そうした対抗軸は多様性を帯びていく。
 一方で今回「希望の党」が民進党を乗っ取り、あわよくば保守二大政党にするという小池代表や前原氏の試みは失敗したと思います。
Q:選挙後は、否応なく改憲阻止が喫緊の課題となさざるをえません。
これについてはいかがでしょう。
植野:少なくとも野党第一党の立憲民主党は「安倍政権の下では、改憲は反対」と言っていますし、共産党も改憲には絶対に反対です。

 両党がしっかりと一致できれば、改憲に対し抵抗するのは可能でしょう。
中野:それに「護憲ではない」という意味であれば、衆参両院は以前から、枝野さんなんかも含めて「改憲派」が3分の2以上いたわけですから、それでも実際に改憲ができないのは、憲法「改正」の発議ができないからでしょう。同時に指摘されるように立憲民主党が第一野党として、よりスタンスが明確になった点は大きい。民進党のときも同じことを言っていましたが、明らかに本気でなさそうな人達がいて、曖昧で歯切れが悪かった。

 そういう「不純」な要素が抜けて、憲法について立憲民主党はより信頼性を増しましたね。
植野:安倍首相は衆参両院で3分の2を取って改憲を発議する前に、憲法審査会で各党の合意を得ることが必要となりますが、現実にはそうなっていません。
 議論は全く深まっていないし、深めようとすれば時間もかかる。
 幾ら今回の総選挙で自民党が圧勝したといっても、改憲は簡単な話ではないでしょう。

<さらなる連携で「壊憲」阻止>

Q:ただ立憲民主党の一部には「首相の解散権乱用を防ぐための改憲が必要だ」という議論があります。
植野:先ほども言いましたが憲法上、解散権が総理大臣の専権事項でないことは明らかです。だからそれを阻止するために、敢えて改憲する必要はなく、それを明らかにしたいならば国会法で対応すればよいでしょう。
中野:確かに唐突感はありますね。これまで、そうした議論はやってこなかった訳ですし。
Q:改憲では9条の問題より、緊急事態条項の新設が最も現実的な脅威となっていると思いますが、この点については、ですね。
中野:少なくとも2012年の自民党憲法改正草案のようなものにはならないと思います。
 最終的に内容が絞られる中で、ナチスの全権委任法に限りなく近くなっていく危険性はあるかもしれない。
植野:いざ緊急事態発動となれば、全権が総理大臣に行き、そして総理大臣から次々に命令が出てくる。しかし日本では行政裁判所が十分に確立していないので、行政命令を審査し、検証する仕組みもない。それなのに一方的に全権が発揮され、緊急事態の終わりの時期も分からないまま、国民の権利が侵害され続ける。そのような事態になったら大変です。

中野:そんなものに、より性格がはっきりした立憲民主党が乗る事はできないでしょう。
 それに、もし何らかの形で改憲を発議できたとしても、国民投票で過半数をとれるかどうか。安倍政権が、ここで支持率を更にアップしない限り、国民投票に持ち込んでも改憲は難しいはずで、もう5年近く続いている政権が再び支持率をアップさせるというのも簡単ではない。選挙後も野党と市民が引き続きしっかり連携すれば、わりと早い段階で勝負が決まるかもしれない。
植野:改憲攻撃に対してはっきり「ノー」を言う野党が共闘し、それと市民が連携する事が大事です。憲法学者も憲法の学習会に講師を派遣したりして市民と繋がる「憲法ネット103」を発足させました。これだけ憲法が政治課題として上がってきた以上、市民が憲法の内容をしっかり理解しないと議論もできません。憲法学者も市民から遠い憲法ではなく、身近な憲法にするため、頑張らなければなりません。
中野:先ず憲法を知って貰う事から始めないといけませんからね。これまで平和運動にせよ9条の問題にせよ、いろいろやってこられた憲法学者の方々がおられます。「市民連合」等も、もっと「憲法ネット103」と連帯していければと考えています。(週刊金曜日)
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