「叛-共謀罪」とリベラル勢力の統一へ(82)
《Ken Sway Kenと管理者:民守の【叛-共謀罪】キャンペーン》
<共謀罪で言論弾圧再び!治安維持法時代の凄惨な「横浜事件」を振り返る>
〔激しい拷問のうえに獄中死。戦時下最大の言論弾圧事件〕
東京・日比谷公園にあるオープンカフェにリュックを背負い、両手にも手提げ袋を持った小柄な女性が現れた。女性の名は木村まきさん(68)。「この店は、一昨年の12月10日に、横浜事件国家賠償訴訟・第17回口頭弁論の閉廷後、弁護団の皆さんとビールを頂いた場所なんですよ」そう言ってまきさんは、リュックや手提げから何冊もの分厚い本や資料を取り出した。本には“横浜事件”の文字が躍っている。戦時下最大の言論弾圧といわれる横浜事件。
まきさんは元被告人・故木村亨さんの妻として今尚、横浜事件の裁判を闘っている。
「私は戦後生まれですから、当時の空気を吸った事はありません。でも木村と出会って間もなく裁判の事で活動してきて、70年以上前に終わった事件ではないと身に沁みました」
横浜事件とは、1942年から’45年頃にかけて、改造社や中央公論社等の言論・出版関係者ら60人以上が神奈川県の特高警察に治安維持法違反容疑で摘発・拘束された事件である。
激しい拷問の末に虚偽の自白をし、約30名が起訴され有罪判決を受けた。
拷問は凄惨を極め、獄中死者、出獄直後の死者は合わせて5名を数える。横浜の代用監獄でその日の内に拷問が始まった。「(拷問で死亡した作家の)小林多喜二の二の舞いを覚悟しろ!」と特高達は口々に叫びながら、半裸の亨さんに竹刀や木刀等で暴行を続けた。
’45年5月の横浜大空襲のときには、囚人をいつ殺してもよいという任命を受けていた看守は「トンカツにしてやる。逃げる奴にはライフル銃だ」と独房の鍵を開けなかった。
〔治安維持法による逮捕者は国内だけで約7万人〕
2年以上、拘留された者もいる。木村亨さんら殆どの被告人は、敗戦の年に主に懲役2年、執行猶予3年の判決で釈放された。元被告人達は、拷問した元特高警察官を告訴したが、有罪となったのは3名だけ。しかも裁判から30年も後になって、その3名が特赦によって投獄されていなかった事を元被告人達は知った。1986年7月、亨さんをはじめとする元被告人達が横浜事件の再審請求を開始する。この第一次請求は最高裁で棄却され、ここから長い闘いが始まる。問題は、戦後のどさくさに紛れて、司法が訴訟記録等の重要書類を焼却してしまっていたことだ。それが再審請求の大きな壁になっていた。
治安維持法のあった時代とは、どんなものだったのだろうか。横浜事件国家賠償の証人尋問にも立った、近代日本の治安体制を研究する小樽商科大学の荻野富士夫特任教授が解説してくれた。「治安維持法は、1925年に国体(皇室)や私有財産制を否定する運動を取り締まるためにできた法律です。1930年代の運用を通じて拡張解釈を進め、本来の共産主義革命運動の激化防止のみならず、やがて宗教団体や自由主義、戦争反対など全て弾圧・粛清の対象になっていったのです。組織や集団を狙い、メディアに関わる記者や編集者、官僚のグループなども標的にされました」学生の読書会、社会科学の文献を読む会、プロレタリア文学愛好会、俳句や川柳の会までもがその対象となった。治安維持法による逮捕者は国内のみでも約7万人に上り、更に植民地でも猛威を振るった。「中心的なリーダー達は起訴されて有罪になりました。でも、そんなに重い刑ではないのもミソなのです。殆どの場合、懲役2年、執行猶予3年。それでも十分、運動を潰す効果はあるし、喧伝にもなる。だから目立っていたグループは狙い撃ちされやすいのです。私は“えぐり出す”と言うのですが、芽吹いて大きな葉っぱになる前の根っこの部分を摘み取ってしまう。それは、国家にとって不健全、戦争はいけないという事実に気がつかせることはけしからん、ということなですね」
〔遺志を継いだ闘い「生きている事件」〕
出版社の編集者だった、まきさんが木村亨さんと出会ったのは、’89年冬のこと。
「知り合いの市民グループの集まりに参加したのです。ビデオ『横浜事件を生きて』(木村さんらの活動を描いたドキュメンタリー)の試写会も兼ねていて、上映が終わると木村が立ち上がって挨拶をしました。顔が父親に似ているな、ひょろひょろとしていて、風が吹いたら飛んでしまいそうな感じだなぁというのが第一印象。後日、退院直後だったことを知ったのですが」名刺交換した2人は、電話で連絡を取るようになり、まきさんは、横浜事件の再審請求活動を行いながらも偉ぶることなく自然体の亨さんに惹かれていく。
また彼の妻が6年前に病死したことも知った。「木村は60歳の頃から喘息を患い、時々、発作を起こしていました。私は、母親の作った手料理を木村のアパートに届けたりするようになりました」そして’92年、2人は入籍。まきさん43歳、亨さんは76歳だった。
「再審への道を開いてくれた森川金寿弁護士が結婚の後押しをしてくれたんです。木村は、私に苦労をかけるからと結婚に踏み切るまで時間がかかったのですが、後を継いでくれる人ができたと喜んでくれました」再審請求は第2次も棄却。そして’98年、第3次再審請求の1か月前、亨さんは喘息発作による呼吸不全で急逝。享年82歳だった。
まきさんは亨さんの遺志を継ぎ、再審請求人の一人となる。2003年、横浜地裁で再審開始が決定、’05年には東京高裁で再審開始確定となった。「ポツダム宣言を受諾した瞬間に治安維持法は失効した、拷問はあったと認められた。司法にも良心はあったのだ、60年もかかったが、やっと報われたと思っていたら、’06年、地裁で再審公判が開かれたが免訴判決。’08年、最高裁で免訴が確定しました。免訴とは、誰の罪も問わずうやむやにすること。理不尽極まりない事でした」’10年の刑事補償決定で請求は認められたが、まきさんは納得できなかった。「どのメディアも“実質無罪”の見出しで、それが私にはショックでした。但し書きつきの“無罪”をお情けでもらいたいんじゃない。名誉が回復されたとは到底、思えませんでした。司法は、訴訟記録を自ら燃やしておきながら“記録がない”と再審を突っぱね続け、元被告人達は“有罪”のままこの世を去ったのです。国の責任をうやむやにする事は、次の言論弾圧に繋がるのではないか。そう思えてなりませんでした」まきさんは’12年12月、もう一人の遺族と共に計1億3800万円の国家賠償を求めて東京地裁に提訴した。昨年棄却されたが控訴。
5月には第3回口頭弁論が控えている。
〔日中戦争前夜と同じ軍靴の響き〕
荻野教授は、共謀罪には、第一次安倍内閣から練られた計画性を感じるという。
「第一次安倍内閣は、先ず教育基本法を改正しました。そこから始まっています」
教育基本法は、日本国憲法を国民に根づかせるための重要な法律。しかし、それを愛国心や郷土愛を養うように改悪したのだ。「これは異分子を炙り出して排除していくためのものと言えます。巧妙にメディアを操作し、また保守勢力をけしかけて、自分達にとって不純なもの、健全でないものを潰していく。『美しい国』とは、見たくないものは消していく、という意味にも聞こえます」最近の流れは日中戦争に突入する時期と似ていると、荻野教授は危惧する。「1937年、日中戦争前夜、軍機保護法という軍事機密を保護する明治時代の法律が復活、対象範囲が拡大され、刑罰が強化されました。これは流言飛語(デマ)を流したり、軍機を話したりすると検挙される法律です。そして治安維持法の2度目の“改正”、続いて国防保安法が公布・施行され、政治的な機密が保護された。全国一斉に防諜週間が始まり、“国民防諜”が叫ばれました。日本が本格的に戦争に突入しようとする時代に、戦争を遂行するのに障害となる報道や思想の持ち主の口を封じたのです。これらの法律は、戦後GHQの人権指令によって廃止されました。しかし、なんだか私には、あの時代の軍靴が再び聞こえるような気がするんです。特定秘密保護法は、かつての軍機保護法と国防保安法を合体させたような法律といっても過言ではない」
まきさんも、2006年の第一次安倍内閣発足時、その「第一声」に違和感を覚えた一人だ。
当時のメールマガジンに、次のように書き記している。《美しい国日本をつくっていくために全身全霊で打ち込んでまいりたい…。そのために教育基本法も「改正」し、入管法も「改正」、共謀罪もないといけない、何より「憲法改正が必要だ」と言っているように聞こえてきます。共謀罪があるような国が、はたして『美しい国』なんでしょうか?》まきさんは今、改めて問いかける。「犯罪を計画しただけで逮捕されるような共謀罪が成立したら、どんな恐ろしい事が起こるのか?言論や思想の弾圧が始まるのです。横浜事件は大昔に起こった過去の事件ではなく、今日的な“生きている事件”。若い人達にも、それを理解してほしいのです」(「週刊女性」小泉カツミ:ノンフィクションライター)
<女性や家族をターゲットにする共謀罪が日本を再び「戦争ができる国」へ>
〔「保育園を増やして」母親たちの声が共謀罪となる社会に〕
「戦前に、日本がどうして戦争へ行ったかというと、おそらくいまと同じだろうと思うんです。関東大震災があって未曽有の不景気になった。生活は苦しくなり、失業者はあふれ、労働組合運動をはじめ様々な権利運動が活発になる。それを国は抑えにかかり、刑罰を強化して戦争へ向かっていくという構造です」そう話すのは九州大学の内田博文名誉教授だ。
「戦争ができる国」へ続く流れは、首相の悲願である憲法改正をゴールに見据えながら、着実にステップアップしているという。「第2次安倍政権になってから2013年に特定秘密保護法が制定され、2015年に安保関連法も作られた。安保法は海外で暮らす日本人の保護を名目にしていましたが、これも戦前と同じ。資源獲得と邦人保護のためと称して、海外に軍隊を派遣していった経緯があります」そんな中で戦争反対の声をあげるのは、母親を中心とした女性達。「これを押さえつけるための法律が治安維持法、そして今回の共謀罪です。戦前に、まず国は女性をターゲットにして戦争反対の声を押さえつけた。
子どもを兵隊に送って戦死させることがお母さんたちの仕事だよという形で徹底的に管理し、家族すべてを戦争に協力させるために、家長に対し強大な権限を与えて統制させました。家族の誰かが捕まった場合は連帯責任。そうして夫婦や親子の関係は、国のための夫婦、国のための親子という関係に切り替わっていったのです」(内田名誉教授)
共謀罪が作られようとしているいま、その片鱗がすでに垣間見えるという。
「例えば、自民党の憲法改正草案。国が福祉を担うのではなく、家族が助け合って自分たちのことをやるように自助・共助を強調しています。いまの憲法が重視するような個人を大事にする家族制度ではなく、戦前の家制度的な家族観です」かつては“妻や嫁の仕事”とされてきた介護や子育て。そんなのおかしい、老人ホームも保育園も増やすように変えてほしいと主張すれば、「場合によっては共謀罪の対象になりかねない」と内田名誉教授。
「組織的威力業務妨害罪の共謀罪になってしまいます。おそらくそうした形で、共謀罪も女性や家族をターゲットにしてくるでしょう」
〔市民を”敵”と”味方”に分断する刑罰国家〕
共謀罪を考える上で、“戦争”とともに考えなければならないキーワードがある。
「世界で最も中間層の多い国だった日本は、小泉政権以降、規制緩和と自由競争を重んじる新自由主義の導入によって、徹底的に福祉が切り下げられていきました。中流が分解され下層のほうへ流れ、非正規雇用も増えていく。明日が見えず不安な状況のなかで登場したのが“刑罰国家”という考え。安全で安心な社会を作るため、刑罰を強化しましょうというわけです」ここで注意したいのは、日本が世界トップレベルの治安を誇るということだ。昨年1年間に警察が認知した犯罪発生件数は過去最少を更新、戦後初めて100万件を下回った。
「人々が不安なのは、別に治安が悪いからではありません。格差が広がる厳しい状況のなかで、将来や生活の見通しが立たないからです。問題をすり替えて、取り締まりを強化する方向にもっていこうとしている」刑罰国家の考え方の基礎にあるのは、敵・味方という発想だという。「人々を敵と味方に分けて、敵とみなせば、徹底的に押さえ込む。そうやって味方の安全を守りましょうという、分断を生じさせる考え方です。それを引き起こす治安強化の流れが、権利運動を抑制する流れと融合し始めてきているのではないでしょうか」
〔市民を”敵”と”味方”に分断する刑罰国家〕
共謀罪を考えるうえで、“戦争”とともに考えなければならないキーワードがある。
「世界で最も中間層の多い国だった日本は、小泉政権以降、規制緩和と自由競争を重んじる新自由主義の導入によって、徹底的に福祉が切り下げられていきました。中流が分解され下層のほうへ流れ、非正規雇用も増えていく。明日が見えず不安な状況のなかで登場したのが“刑罰国家”という考え。安全で安心な社会を作るため、刑罰を強化しましょうというわけです」ここで注意したいのは、日本が世界トップレベルの治安を誇るということだ。
昨年1年間に警察が認知した犯罪発生件数は過去最少を更新、戦後初めて100万件を下回った。「人々が不安なのは、別に治安が悪いからではありません。格差が広がる厳しい状況のなかで、将来や生活の見通しが立たないからです。問題をすり替えて、取り締まりを強化する方向にもっていこうとしている」 刑罰国家の考え方の基礎にあるのは、敵・味方という発想だという。「人々を敵と味方に分けて、敵とみなせば、徹底的に押さえ込む。そうやって味方の安全を守りましょうという、分断を生じさせる考え方です。それを引き起こす治安強化の流れが、権利運動を抑制する流れと融合し始めてきているのではないでしょうか」(基本文献-週刊女性/管理者:部分編集)
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①職場(仕事)における労働・人権相談
(ハラスメント・メンタルヘルス等、含む)
*大阪府労働相談経験10年以上。*産業カウンセラー資格、有り。
*但しメンタルヘルスの場合、もし心療内科等に受診されている場合、または、その受診の方が望ましい場合は、当該医師の指導を優先し、カウンセリングを断る事もありますので予めご了承ください。
②採用コンサルタント。
*著作[「公正採用」と「能力発見!」採用選考のコツ]
【本ブログ:http://blog.zaq.ne.jp/yutan0619/article/27/】
*著作「採用面接」労働条件確認
【本ブログ: http://blog.zaq.ne.jp/sp/yutan0619/article/29/】
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(民守 正義)
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