劣化する安倍ファシズム政権と「リベラル野党共闘」の行程(85)

劣化する安倍ファシズム政権と「リベラル野党共闘」の行程(85)





《【労働者虐待】シリーズ》

    <三菱電機も違法残業、背景要因より認識の問題>

 再び大企業に「長時間労働」違反でメスが入った。厚生労働省神奈川労働局は11日、労使協定の上限を超える残業を社員にさせたとして、労働基準法違反の疑いで法人としての三菱電機と、同社の幹部を書類送検した。昨年末にも電通が労基法違反容疑で書類送検されたばかり。ここまでは大手メディアも報じる骨格事実だが、大手メディアは、こうした「長時間労働がなくならない背景には、深刻化する人手不足がある」と「少子化・労働力不足が悪い」と企業のコンプライアン違反に免罪符を与えているのが重大問題。

 そこで本ブログは、大手メディアの「企業擁護」に敢えて反論調に解説したい。

■「一日8時間労働」が労基法上の大原則

 そもそも「一日8時間労働」は労基法32条が定める大原則である。

 従って「一日8時間労働以上、働かしてはならない」が先ずあって、そして例外的に「『36協定締結範囲』で8時間を超えてもよい」というのが、建前と言われようが、何と言われようが、労基法上の過去からの普遍的考え方である。

 この8時間労働自体、1886年の5月1日(メーデーの起原)、アメリカのシカゴで、1日12~14時間勤務が当たり前だった労働環境の改善を求めて労働者がゼネラルストライキ(全国的な規模で行われる労働争議)を起こし、8時間労働の実現を要求し勝ち取った労働者の血の滲む闘いの成果であった。その意味で随分、以前から「労働者も収入増のため、残業を望み、使用者も安易に『労働組合』もないくせに、『過半数を超える従業員代表』という虚偽で、総務課長が勝手に『従業員代表』になって、書類上の印で36協定をでっち上げ、「一日8時間労働」逸脱しているのが世間常識的に逸脱しているのが実態だが、「一日8時間労働は労働者の基本的権利・労基法の基本精神」に立ち戻る事が、労使とも求められる。

■労基法遵守の経営責任と行政等の毅然とした対応

 そして「一日8時間労働」が先ずは労基法の普遍的原則である以上、「人手不足」であろうが「過重業務受注」であろうが、そうした経営上の「状況変化」は日常的に注意を払い、痩せても「労基法違反-回避」に努めるのが、経営責任だ。現に三菱電機も電通も、そうだが、基本給からのベア昇給や福利厚生制度の充実等の「人手不足-回避の努力」が然程、行っているとは到底、評価できない。それどころか電通でも明らかなように「実態残業」より少なくタイムカード等で証拠改竄させ、その上で「残業代ボッタクリ」を図る。元々「少子化⇒労働力不足」は随分、前から解りきった事で、その長期的対策よりも「目先の人件費コストカットに目を奪われたツケが回ってきた」と真摯に反省した方が良い。

 現に「労働相談10年以上」のキャリアを持つ管理者が、ここまで厳しく言うと、大概に経営者の反論が「人手不足の上に人件費アップを図ると会社が潰れるじゃないか!会社が潰れたら従業員(労働者)も路頭に迷うじゃないか!」と猿芝居ならぬ猿脅かしを言う。

 実際、大概の労働相談担当職員や労働監督官等は怯むのだが、かつて民間経営にも携わった管理者は、そんな脅かしは効かない。

 そこで管理者はハッキリ言う。「どうぞ♪未払い賃金が発生しない間に自主倒産してください。人件費アップに人手不足ぐらいの経営難局で会社が潰れるようなら、従業員も心許ない。沈みかけの船に逃げ出すネズミのように、従業員は労働市場全体が人手不足なら、さっさと辞めて次の就職先を探させてやった方が良い。そうそう、求職活動には残有給休暇の消化で対応してやってくださいね」位の言い返しをしてやる。

 そうすると殆どの場合、具の根も出ないか、なお暴力的に暴言を吐くかだが、正直言って、こうした経営者交渉には予め、ボイスレコーダーで録音。いつでも恐喝罪で刑事告訴できるようにしておく。

 補足だが、話し合い・協議の記録保持のための「録音-隠し取り」は単なる記録保持(メモと同様)で、相手の了解も通告も必要ない。但し「記録保持」以外の「目的外使用」は、場合によっては「損害賠償請求」の対象となるので「目的外使用」は止めた方が良い。

 また10年以上の労働相談経験から「会社が潰れたら、どうするのか!」と啖呵を切った企業で、実際に倒産した企業は先ず、ない。

 それどころか、多くの場合、労基署行政指導に従い、「未払い残業代+α」を払い、円満退職する場合が殆どだ。つまり普段からケチっている分「内部留保」を持ち合わせており「本当は支払い能力有り、退職されただけ一層、人手不足」が実際の経営者の「労基法違反コスト」なのだ。なお本稿では省略するが、ある企業の経営状態について、株主総会資料や新聞発表資料等のバランスシートが二年以上あると概ね、当該企業の本当の経営状態が推測される。

■今後の労働力不足の基調

 「人手不足だから長時間労働」は、「経営者の根本的資質として問題あり」は、前述のとおりだが、一方、「人手不足」が「長時間労働の背景的要因」である事は一般論として否めない。

 特に生産年齢(15~64歳)の人口は1995年の8726万人をピークに1000万人以上減っている。10年後には7000万人を割り込むと予測されている。労働現場は、これからも人手不足に悩まされる事は、予想容易いが、だからと言って「長時間労働-ブラック企業も蔓延已む無し」の大手メディア論調(特に「日経」等)は「泥棒にもの三分の理」の誇張で許されない。管理者の自説だが、ハッキリ言って「経営者は、それこそ自己責任で、経営難で倒産・破産等しようが、知った事ではない。しかし労働者は、基本的労働条件の確保と失業後の雇用保険の拡充、退職金積立制度の強制加入(例:建設業退職金共済制度等)、高齢者のための失対事業の再開(シルバー人材センターの制度充実)等々、「勤労者のためのリベラル政策」として打ち出す事の方が重要だ。少々、経営者にはキツイ表現となったが、これまで中小企業労働者の低労働条件・環境に加え、「残業代ボッタクリ法案」まで出されると、これ位の労働者反論は許されたい。(文責:民守 正義)



<「合法的非合法」の悲惨な外国人技能実習生、問われる法務省人権感覚>

(1)岐阜アパレルで大量の〝割引賃金〟

①残業代400円で月100時間、土日も休み無し

 岐阜アパレルで働くベトナム人実習生から「残業代400円、500円」という告発が続いている。愛知県労働組合総連合(愛労連)には昨年7月から11月の間に8件の訴えがあり、労基署の調査が行われた。普通、割増違反と言えば125%払うべきところ100%しか払わない場合が殆どだが、ここでは「大幅割引」!月給6万円、残業代400円の契約書を見て驚いた。しかも彼女達の残業記録には一月に1日も休みが無かったのだ。実は、この年の1月には岐阜労働局から資料が送られてきて、最低賃金法違反が多いと言われていた。しかし「まさかここまで」とは-♭改めて資料を見直すと岐阜県の縫製業には3000人以上の実習生が働いており、労基署の調査で約5割が最賃違反・割増違反!しかも、これ以外に証拠隠滅が24%、更には(会社から脅されたりして)実習生が「問題ない」と証言したため、指導できなかったものもある。関係者は「岐阜の縫製業は殆どがこうだ」と言われている。まさに勝手な「岐阜労基法」だ!

②行政は10年間毎年、文書で改善を要請

 この資料は岐阜県、名古屋入管、岐阜労働局等でつくる「第10回技能実習生等受入適正化推進会議」(2016年1月21日)で配布されたもの。

 「推進会議」は2006年から毎年開催され、監理団体への改善要請、業界団体に「工賃の適正化」を要請してきた。

 昨年、監督署から賃金不払いを是正指導された業者は「メーカーに工賃の見直しをお願いしていた」と言っていた。「安い製品が輸入される中、業界ぐるみで縫製業者に不当な工賃が押しつけられ、これが400円の残業代となっていた」と言い訳する。要請書の文面は「発注契約においては、適正な工賃を設定して頂く事」とされ、毎回一字も変わらぬ同一文書。行政が全く同じ改善要請文を出すことは然程、珍しくはない。

 言わば「それだけ行政の問題意識は無頓着」を証明している。

③業界・監理団体・ブローカー

 2010年の法改正後も、このような大規模な不正が一切報道されず、社会問題にならなかったことには何らかの理由があると思われる。岐阜の縫製業は90年代初頭の外国人研修制度発足の地であり、歴史のある監理団体と行政との深い癒着関係がある。また、そこに巣くうブローカーの存在もある。労基署に申告した後、実習生達が連れて行かれた監理団体の事務所には、神戸の建設会社役員の名刺をもった黒服の男が来て「なんでワシに相談せんとローキに!」と怒鳴り捲くった。また他の実習生は「元警官」という人の事務所に連れて行かれ、20万円の和解金で「労基署への訴えを取り下げろ、取り下げなければ帰国だ」と恫喝された。このように受け入れ団体とそれ以外にも二重、三重の仕組みができて不正隠蔽システムが出来上がっていたのである。

④経産省が実態調査へ

 岐阜の縫製業だけで全国の最賃違反の約2割を占めており、一地方の問題では済まされない。

 当初「問題があるとは聞いていない」と言っていた経産省も最後には世耕大臣が昨年11月の臨時国会で「岐阜県における実態を調査してまいります」と答弁せざるを得なくなった。12月14日の経産省告示「下請中小企業振興法・振興基準」にも「最低賃金の引き上げに伴う労務費上昇については、その影響を十分に加味して協議する」と書かれている。

 年末には中部経産局から「調査担当者が決まった」と連絡があった。

(2)「実習生新法」で不正は無くなるか

 先の臨時国会で「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(「実習生新法」)が成立した。併せて在留資格取り消し条件の強化を含む改正入管法も成立した。

① 新法の前進面

 「新法」は「外国人技能実習機構」を新設し、監理団体を「許可制」とした。昨年、広島県の櫻花協同組合の役員が2000万円の着服で起訴された。愛労連は「非営利のはずなのに利益を上げているではないか」と指摘したが、法務省は「(届出が)事業協同組合なので営利団体ではない」と詭弁答弁した。

 ただ許可制になれば「新機構」が実態調査を行う事になると思われる。また新法では、実習生が不正を訴えることができるよう「申告権」を新設した。今後は労基法違反以外の不正についても訴える権利が保障されたことは大きな前進面だ。

② 急増する実習生、事後規制には限度

 しかし実際の監督体制は全く足りない。「新機構」の全国13カ所の地方事務所は大半が労基署や入管からの出向者。調査に入ることができる職員の総数はそれほど増える訳ではない。

 一方で実習期間を3年から5年に延長、「介護」等の職種も増やす。

 新規受け入れではベトナム人が中国人を上回る勢いですが、全国47労働局にはベトナム人通訳が一人も配置されていない。

 一昨年からはネパール、ミャンマー、カンボジアからの実習生も急増しており、今後、益々、多国籍化が予想されるが、これらの通訳もいない。しかし、この貧弱な受け入れ態勢にも関らず、国は「国際貢献が目的なので制限はできない」との理由で受け入れ国数も受け入れ人数も規制をしようとはしない。

③ 受け入れる側の規制を

 法務省は失踪者の急増を理由に入管法の罰則を強化した。失踪の理由は「より高い賃金を得るため」のようだ。愛労連への相談では12件のうち8件が建設業だったので、「失踪の原因は建設業ではないか」と質したが「職種別統計はない」と冷たい答弁。しかし新法成立後の9月と10月の調査では失踪者の3割が建設関係。建設業は実習生全体の15%程度であり、業界に問題がある事は明白だ。逆に酷い低賃金の縫製関係の失踪者は1割もない。この結果を国会で指摘された国交大臣は「外国人技能実習生の受け入れに関わる制度の所管は法務省及び厚生労働省。国土交通省として見解を申し上げる立場にない」と答弁。法務省及び厚生労働省関係者は「勝手に受け入れを拡大して「不正が横行し失踪したら監督しろ」と言われても、そんな体制はない」と怒っていた。

(3)本質的な問題は外国人労働者に対する人権感覚

 失踪者の増加と合わせて「ベトナム人の犯罪が増えている」と報道があった。産経WEST11/27は「『マフィア化』警戒」とまで書き捲くった。しかし逃げてくる建設業実習生は会社で暴力を受け、手取り5万円の低賃金。殴られた実習生が警察に相談しても受け付けてくれない。中には帰れなくなり不法就労し、働けず万引きで捕まる者も増えている。万引きの背景には、その何十倍もある賃金不払い犯罪があるからではないのか。母国で100万円も取られ、残業代500円で1日も休まず働いて過労で倒れた実習生が救急車を呼んだ。これが「近所で騒ぎになった」とお詫びの菓子折り代5000円を給料から引かれた。社長は実習生に「あんたらベトナム人でしょ。ベトナム人は悪い事をする。新聞にそう書いてある」と偏見・差別発言。また騙されて鳥取県から宮城県気仙沼市につれて行かれ逃げてきた実習生の事件で、ブローカーの不正を告発したところ、法務省は「逃げたのは金が目的」と決めつけ、ブローカーの不正を調査せず、「その内、どこかで働くだろう」とばかりに延々と審査期間を引き延ばした。在留資格を回復できたのは、国会で不正を追及された後、訴えてから11カ月以上経ってからだ。先の社長の発言は、日本人の中にアジア人に対する無理解と差別意識が残っていることの表れだ。

 しかし、これは実習生が権利を守られ、日本人と同等に働くなかで解消されていくべきもの。一方、法務省の姿勢は「逃げた実習生は強制帰国ありき」という定番の差別措置!そもそも実習制度自体、「外国人労働者低賃金供給システム=合法的非合法」であるが、それ以上に法の執行管理する政府-法務省に人権感覚がない事が、最大の問題だ。(参考文献-ウェブ ロンザ/文責:民守 正義)

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(民守 正義)