劣化する安倍ファシズム政権と「リベラル野党共闘」の行程(28)
劣化する安倍ファシズム政権と「リベラル野党共闘」の行程(28)
《【報道の自由と「沖縄差別」シリーズ》
<安倍政権の沖縄での報道弾圧に「国境なき記者団」が批判声明!>
機動隊員が市民に対し「土人」「シナ人」等と発した暴言問題に加え、松井一郎大阪府知事が差別発言を肯定した問題は、批判や責任追及の声がネット上で上がる一方で、暴言の当事者である警官2名の戒告処分で幕引きとなりそうだったのが、鶴保沖縄担当相の「『土人』は差別発言でない」等に沖縄県民が再び怒りが沸き上がり、むしろ本土でも鶴保担当相の退陣を迫る署名運動が本土各地で起きる等、むしろ政治問題化が強まる気配だ。そんな中、フランスに本部を置く国際的なジャーナリストのNGO「国境なき記者団」が、沖縄における報道の自由が侵害されていると指摘する声明を22日に公表した。
「国境なき記者団」の声明では先ず、イギリス人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が沖縄の在日米軍の活動について報道してきた事を理由に米軍から監視を受けている事を示し、アジア太平洋事務所所長のコメントとして「日本政府もこれらの活動に関与したかどうかを明確にする必要がある」と批判。そして沖縄の報道に関し、標的にされているジャーナリストはミッチェル氏だけではないとし、沖縄2紙の問題についてこのように言及している。〈8月、県北部での米軍ヘリパッド建設に対する抗議行動を取材していた沖縄タイムスと琉球新報の記者を、機動隊員が拘束した。記者である事を警察に証明したにも関らず、現場から連れ去られた〉(沖縄タイムス掲載「声明全文」より)
これは今年8月20日、ヘリパッド建設工事のために砂利を積んだ車両の搬入を止めようと約50人の反対派市民が座り込みで抵抗。
それを機動隊が力づくで市民を強制排除したのだが、その中には取材中の沖縄タイムスと琉球新報の記者2名がおり、腕章を見せて記者である事を伝えたにも関らず、強制的に排除、警察に拘束されたのだ。
市民の抗議活動を取材する事は、報道機関として当然の職務であり、国民の知る権利を守るものだ。それを警察が記者を拘束し取材活動を妨害するというのは、明らかに報道の自由を侵害するものである。
当然、沖縄2紙のみならず日本新聞労連も抗議声明を発表したが、政府は10月11日に「県警においては警察の職務を達成するための業務を適切に行っており、報道の自由は十分に尊重されている」等との虚偽答弁を閣議決定。記者の拘束を正当化した。
この政府の態度に対し「国境なき記者団」は今回の声明でこう強く非難している。〈安倍晋三首相が率いる政府は警察のこうした行動を容認し将来、抗議行動を取材するジャーナリストにとって危険な先例を作った〉(同前)この声明は世界的に見ても高江がいかに異常な状態に晒されているかを証明するものであり、同時に日本全体への国際的警告と言える。高江では今、市民への不当な弾圧だけでなく報道の自由さえ奪われている。そして、これは安倍政権による“将来の日本”の姿でもあるのだ。実際、管理者自身が高江に行き、そうした出来事は、節々に感じた。いや、“将来”等ではなく、もう現実になっているのかもしれない。例えば政府は、2015年12月に「表現の自由」の状況を調査するために来日予定だった国連特別報告者であるデイビッド・ケイ氏(米カリフォルニア大学教授)に対し、直前になって「受け入れ態勢が整わない」等として調査を一方的拒否!今年4月にようやく来日したが、そのときも、何度も高市(経歴詐称)総務相に面会を申し入れたものの断られたことをケイ氏が明かしている。しかもケイ氏の来日調査に際して、首相官邸は驚くような動きをしていたと「FACTA」6月号が報じている。〈「自民党のゲッペルス」と揶揄される世耕弘成内閣官房副長官が、ケイ氏の来日を前に、通訳など仲介役を担う女性弁護士らに関心を寄せ、内閣情報調査室などインテリジェンス・コミュニティ部員に彼女らの動向を監視するよう指示したと囁かれる〉記事によれば、〈この情報機関関係者が作成したとみられるメモの一部が永田町に流出〉したというが、そこには「弁護士はヒューマンライツ・ナウ事務局長であり、過激派関係者等と交流」「弁護士は昨年12月の訪日をデービッド(・ケイ)氏に働きかけた。今回の訪日においては同氏の通訳を担当予定」「市民団体A会は弁護士を介して、デービッド氏に対し、特定秘密保護法が国民の知る権利を侵害している事を訴えるレポートを提出しようとしている」等と書かれていたという。つまり、ケイ氏の調査に過敏になった官邸は、ヒューマンライツ・ナウ事務局長である伊藤和子弁護士をマークするために監視していたというのだ。しかも、この報道に対し伊藤弁護士はブログで「政府による監視等、プライバシー侵害の人権侵害です」と批判した上で「国連調査団の通訳は、国連がプロの通訳を有料で雇うのが常識です。私が通訳等、有り得ませんし、国連システムを知っている人なら笑ってしまいます」「私は、今回はコーディネートもしていません」と、ケイ氏の調査への関わりを否定している。如何に内調の情報が出鱈目なのかがよく解るというものだが、しかし笑い話等で済ませられるはずがない。
これが事実なら官邸はケイ氏も監視対象にしていたことは間違いないからだ。よりにもよって「表現の自由」の実態を調査しに来日した国連の報告者を監視対象にするという「北朝鮮」以上の監視国家である。 ケイ氏は調査後の会見で「報道の独立性は重大な脅威に直面している」と警告したが、その元凶は無論、安倍政権だ。
このような権力による報道への介入が、高江での記者拘束という言語道断の行為を引き起こし、更にはメディアの政権への忖度によって、市民の人権を遵守する立場にある松井一郎府知事の明白な差別容認発言が退任問題に発展しないという状態もつくり出しているのだ。この会見で、ケイ氏は以下のようにも語っている。「政府から批判されたり、圧力をかけられたりした場合、メディアは、それを押し返さなければなりません。しかし日本では押し返す力が見えません」「当たり前ですが、ジャーナリストの役割は権力の監視です。政府の発表をそのまま新聞に掲載したり、テレビで流したりする事ではありません。メディアがすべきことは『政府の言動はこれで本当にいいのだろうか』といった議論を含めて記事にすることです。日本では、それが非常に難しくなっているように見えます」状況の異常さは、その内部にいると麻痺して解りづらくなっていく。
だからこそケイ氏の指摘や、今回の「国境なき記者団」の声明のように、外部の警鐘に耳を傾ける国民の傾聴能力が求められる。 (基本文献-リテラ/管理者:部分編集)
<沖縄「土人」発言:鶴保担当相「差別とは断定できない」>
鶴保庸介沖縄・北方担当相は8日の参院内閣委員会で、沖縄県の米軍北部訓練場の工事反対派に大阪府警の機動隊員が「土人」と発言した問題について、「『土人である』と言うことが差別であると断じることは到底できない」と述べ「差別(人権)感覚」のない発言に、沖縄側の更なる反発を招いている。鶴保担当相は「人権問題であるかどうかの問題で、一方的に決めつけるのは非常に危険だ。言論の自由はどなたにもある」と発言。自民党憲法草案の殆どの条項に見られる「公序良俗の範囲において~」は、どこに行ったのかと思わす開き直り詭弁に終始した。共産党の田村智子氏は「差別的な侮蔑用語以外に使われた例を聞いたことがない」と追及したが、鶴保担当相は「差別用語とされるものでも過去には流布していたものもたくさんある」等と反論した。管理者は人権問題に関する相談業務も行っているが、こうした「中途半端なエリート主義者」に、よく見られるタイプで「差別者」呼ばわりするのを酷く嫌うあまり、「偏差値的知識」をフルに活用して「自らの差別発言」を生半可な知識を総動員して正当化を図ろうとするのだ。
それが証拠に「沖縄担当相なのだから『怒る沖縄県民と直接対話をして『誤解(?)』を解こう』」とは一切しない。霞が関から「言論の自由はどなたにもある」と泣きそうに吠えるだけだ。
民進党の福山哲郎幹事長代理は8日、鶴保担当相の発言について記者団に「沖縄の歴史を理解しない不穏当な発言」と指摘。機動隊員の発言を巡っては、金田勝年法相が10月25日の参院法務委員会で「事実の詳細が明らかではない」としながらも、差別用語に当たるとの認識を示し、事実上の「閣内不一致」となっている。(文責:民守 正義)
<産経が日テレの「南京虐殺」検証番組を「裏付けなしの謀略宣伝」と攻撃!>
先月16日、産経新聞にこんな見出しの記事が大きく掲載された。産経が歴史修正主義を主張するために展開している例の「歴史戦」というシリーズ企画だが、内容は見出し通り、戦時中の日本軍による南京虐殺を検証した日本テレビの番組が、裏付けのない偏向番組だったと批判するものだ。この日本テレビの番組というのは、昨年10月5日に放送された『南京事件-兵士たちの遺言』で、放送当時から高い評価を得ていたドキュメンタリーだ。評価の最大の理由は、この十数年、虐殺はなかったという否定論が高まり、イデオロギー論争の的になってきた南京事件に、これまでにないアプローチを試みていたことだった。
番組を手がけたチーフディレクターの日本テレビ報道局Sさんは、桶川ストーカー事件や北関東連続幼女誘拐殺人事件等を警察発表に頼らない独自の調査報道によって、その真相を追及してきた事件記者。
Sさんは番組の放映後に出版した著書『「南京事件」を調査せよ』で、「南京事件」を「左か右か」でなく「事実か否か」、事件取材のように調査報道という手法で迫ろうとしたと記しているが、放映された内容は、その言葉どおりのものだ。番組は、1937年12月16日と17日の2日間に亙って、南京城外の揚子江沿岸で大量の捕虜を銃殺、刺殺したという元日本軍兵士の証言や当時の日記を取りあげ、そこに矛盾や不自然な点がないか、番組取材班が徹底的に裏取りを試みる。そして中国人捕虜虐殺が事実である事を証明していくのだ。その内容は専門家のあいだでも高い評価を集め、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、「放送人グランプリ」2016準グランプリ、石橋甚山記念早稲田ジャーナリズム大賞など、数々の賞を受賞している。また日本軍が「根性試し」として中国人若者を、次から次へと銃剣で首を指していった事は、先般、亡くなられた三笠宮も証言している。ところが放映から1年経って、産経新聞が前述のように、このドキュメンタリーが「裏付けのない虐殺写真」を掲載し、中国側の宣伝にのって一方的な偏向報道を垂れ流したと噛み付いたのだ。
これにネトウヨは大喜びで「まーた反日マスゴミお得意の想像報道か」「日テレにも居るコミンテルンのスパイ」「中共の意向で捏造の片棒を担いでいます。放送免許を取り消すべき」等と、どっちが「口汚いデマ宣伝か!」とのネット暴力を仕掛けている。
一方、日本テレビは先月26日、同局ホームページで“記事内容は、番組が放送した事実と大きく異なり、客観性を著しく欠く恣意的なもの”という趣旨の文書を掲載し、産経記事の指摘や主張に対して詳細に反論。
産経新聞社に厳重に抗議した。すると11月6日、今度は産経が再反論する記事を掲載。「産経と日本テレビの間の激しい応酬」という描画に見せて、産経は「せめて、どっちもどっち論」で逃げ切りを図っている。
しかし今回、改めて『南京事件-兵士たちの遺言』を見直し、産経の記事を検証してみて、口があんぐりとなった。産経の記事があまりにデタラメだったからだ。枝葉末節の間違いを針小棒大に騒ぎ立てて全体を否定してかかるのは歴史修正主義者の得意技だが、今回の産経の記事はそれですらない、嘘とデマゴギーだらけの言いがかりとしか思えないシロモノだった。
■他社記事の問題とスリ替え“捏造番組”とする卑劣手口
その典型が、産経新聞が見出しで「裏付けなし」と断じた「虐殺写真」だ。実は最初、見出しだけを読んだときは、この「虐殺写真」が何の事か解らなかった。番組のメインは元兵士の日記と証言の検証で、虐殺の証拠写真があるというような件は全くなかったからだ。記事を読んで、ようやく番組のプロローグとエンディングで流された写真である事が解ったのだが、頭の中の「?」は更に増すばかりだ。写真は確かに大勢の人間が防寒着姿で倒れている様子を写したものだが、番組はこれを「虐殺の証拠写真」として出した訳ではなく、検証の材料の一つとして紹介しただけ。
しかも番組は、この写真が日記の記述とは違う場所である事を明示している。つまり信用性について判断を留保しているのだ。
ところが産経は、この写真が「昭和63年12月12日、毎日新聞(夕刊、大阪版)が既に掲載していた」と鬼の首をとったようにあげつらい、毎日新聞の記事が「被写体が中国側の記録に残されているような同士打ちや溺死、戦死した中国兵である可能性には一切触れず、『大虐殺』の写真と報道した」と糾弾するのだ。いったい産経は何を言っているのだろう。
番組の写真は、毎日新聞に掲載されたものとは別ルートで入手したもののようだが、仮に毎日の写真と同じだったとして何の問題があるのか。
「大虐殺の写真」と報道したのは毎日新聞であって、日本テレビの『南京事件-兵士たちの遺言』ではない。実際、同番組はこの写真について、一言も「虐殺写真」等と紹介していない。それどころか、写っているのが「中国人」とも言っていないし「死体」とすら断定していない。
「防寒着姿で倒れた多くの人々」と、一切の主観や解釈、評価は排除し、見えるままをナレーションしているだけだ。しかも毎日新聞に掲載された写真もそれ自体は捏造でもなんでもなく、歴史修正主義者が「同士討ち」の記述のある中国の記録を持ち出して、この写真の死体も「同士討ちの結果の可能性だってある」と反論しているに過ぎない。むしろ、この規模や状況から考えて「虐殺写真」の可能性が極めて高いものだ。
その写真を「虐殺」という言葉を慎重に避けながら検証の対象として使っただけのテレビ番組に「裏付けなし」等と絡むというのは、まともな神経とは思えない。しかも、この件について日本テレビから「虐殺写真と断定して放送はしておりません。にも関らず産経新聞の記事は『写真がそれを裏付けている-そんな印象を与えて終わった』と結論づけ、大見出しに掲げました」と抗議を受けると、産経は11月6日の紙面でとんでもない反論を繰り出した。ギャラクシー賞の選考理由に「虐殺の一枚写真も、その背景から揚子江岸辺の現場が特定できる」との一文があるのを持ち出し、「ギャラクシー賞を辞退せず受賞した訳だから日テレ側も視聴者が『虐殺写真』と認識するのに異論はなかったはずだ」と因縁をつけ始めたのである。断定報道と解釈の余地のある報道を一緒くたにしてしまうこの記事は、本当に新聞記者の書いたものなのか、と疑いたくなる。
要するに産経新聞は実証的に南京虐殺を証明した、この番組にケチをつけたくてしようがなかったのだが、攻撃箇所が見つけられなかったため、無理やり毎日新聞の話を持ち出し、その報道とわざと混同させて、番組を貶めようとしたのだろう。ところが、その手口を抗議されると、今度は慌ててギャラクシー賞の話をもってきて言い訳を始めたのだ。全くそのオツムは幼稚で小学生並み。「産経記者は、こんなに低知的レベルしかいないのか?」と、どうでもいい新聞社ながら「他社より安い新聞」だけに「安かろう・悪かろう」と思わざるを得ない。
■事実を捏造したのは産経新聞の方だった
産経のインチキは他にもある。それは揚子江岸での捕虜処刑が「暴れる捕虜にやむなく発砲」したものなのに、番組がその点に触れていないと主張していることだ。産経は東中野修道亜細亜大教授の著書『再現-南京戦』を引用してする形で「16日の揚子江岸での処刑対象は宿舎への計画的な放火に関与した捕虜だった。17日は第65連隊長、両角業作の指示で、揚子江南岸から対岸に舟で渡して解放しようとしたところ、北岸の中国兵が発砲。これを日本軍が自分達を殺害するための銃声だと勘違いして混乱した約2千人の捕虜が暴れ始めたため、日本側もやむなく銃を用いた」と、まるで見てきたかのような客観事実のように記述。その上で「番組は、こうした具体的状況や、その下での国際法の解釈には踏み込まなかった」と断じている。しかし産経が唱えている説は以前から南京虐殺否定論者が主張してきた「自衛発砲説」と呼ばれるもので、事実として証明されている訳でもなんでもない。根拠は戦後にまとめられた連隊長の両角業作の弁明の手記で、多くの矛盾が指摘されているものだ。
実際、保守派の歴史学者の中でも「自衛発砲説」には否定的な見方が強く、秦郁彦氏等は「もし釈放するのなら何故、昼間につれ出さなかったのか、後手に縛った捕虜が反乱を起こせるのか、について納得の行く説明はまだない」(『南京事件-増補版』2007年)と切って捨てている。こんな怪しげな説を平等に紹介しろ、と要求するだけでも噴飯物だが、更にもっと唖然とさせられるのは、産経が番組攻撃のために真っ赤な嘘をついていたことだ。実をいうと日テレのドキュメンタリーは、この自衛発砲説に、きちんと踏み込んで検証していた。
日本兵達の日記の記述を検証し、なぜ揚子江岸で捕虜の銃殺がなされたのかを考察する件で、番組は「戦後になって『捕虜を解放するために揚子江岸に連行したが暴動を起こされやむなく銃撃した』という証言がなされた」と具体的に紹介した上、31冊もある日本兵達の日記(1937年当時の一次資料)に「捕虜を解放しようとした」という記述は一つもなかったという事実を明らかにしている。ところが産経は自分達の主張する自衛発砲説が根拠薄弱である事を暴かれ、この放送部分を一切無視して「番組が自衛発砲説に触れなかった」と言い張った。これこそ捏造以外の何物でもないだろう。
■客観的な証言をネグり「中国の謀略宣伝と同じ」と陰謀論展開
しかも産経は、こうした卑劣な攻撃を繰り返す一方で、南京虐殺否定派の学者である北村稔・立命館大学名誉教授を登場させて、こう書いている。「北村は(番組が)客観的根拠を明示せずに『仄めかし』を駆使している事について『中国の謀略宣伝のやり方と酷似している』と批判する」
ここまでくると、もはや笑うしかない。何故なら番組は、仄めかしとは真逆の、虐殺の客観的な証拠を幾つも明示しているからだ。
例えば、その一つが「支那事変日記帳」というタイトルがつけられた日誌だ。この日誌は陸軍歩兵第65聯隊と行動を共にした、山砲兵第19聯隊所属の上等兵の遺品で、昭和12年9月から南京が陥落するまでの3ヶ月間、ほぼ毎日書かれている。そこには、ごく普通の農民だった男性が中国で民間人から物資を奪い、銃口を向ける様等が詳述されていた。〈11月16日、食料の補給は全然なく、支那人家屋より南京米、その他の者を徴発して一命を繋ぎ、前進す〉〈11月17日、「ニャー」(注:中国人女性)を一人連れてきたところ、我らの目を盗んで逃げたので、直ちに小銃を発射し、射殺してしまう〉〈11月25日、実に戦争なんて面白い。酒の好きなもの、思う存分呑む事ができる〉そして12月13日、南京陥落。上等兵達の部隊は、武器を捨てて降伏してきた多くの中国兵を捕虜にする。捕虜は、その後1万人を超えたという。そして上等兵の日記には、国際法で禁じられていたはずの“捕虜殺害”の模様が、克明に記されていた。〈12月14日、途中、敗残兵を千八百名以上捕虜にし、その他たくさんの正規兵で、合計五千名の敗残兵を捕虜にした〉〈12月16日、捕虜せし支那兵の一部五千名を揚子江の沿岸に連れ出し、機関銃をもって射殺す〉〈その後、銃剣にて思う存分に突刺す〉〈自分もこのときばかりと支那兵を三十人も突き刺した事であろう〉〈山となっている死人の上を上がって突刺す気持ちは鬼をもひがん勇気が出て力いっぱいに突刺したり〉〈うーんうーんと呻く支那兵の声。一人残らず殺す。刀を借りて首をも切ってみた〉更に番組はこの上等兵が1994年にインタビューされたときの映像も放送している。彼はハッキリとした口調で、こう語っていた。「機関銃を持ってきてバババーッと捕虜に向かって撃っちゃったんだ。捕虜は皆、死んだけれども『中に弾に当たんねえみたいなのがいるかもしれないから着剣して死骸の上を突いて歩け』と。ザッカザッカ突いて歩いた。おそらく30人くらい突いたと思うが。何万という捕虜を殺したのは間違いねえ」番組は他にも1937年12月16日と17日に南京城外の揚子江沿岸で大量の捕虜を銃殺、刺殺した兵士達の日記や証言を紹介している。「この方(捕虜)を“お客さん”て言うんだよね。『今晩はお客さんが来て、お客さんを処理するんだ』と。そして“ピー”という呼び子の、将校の呼び子の合図で、一斉射撃。ダダダダダダダと始まる」(当時、機関銃の引き金をひいたという歩兵第65聯隊元第三機関銃隊兵)「とにかく1万人も(捕虜を)集めるっちゅんだから。相当広い砂原だったね」「有刺鉄線か何かを周囲に貼ったでなかったかな」(歩兵隊65聯隊元第一大隊本部行李系二等兵)「機関銃を載せて高くしてね。砂で、砂を積んで盛って」「サブロクジュウハチ……200発ぐらい撃ったのかな」「ダダダダダダダ、一斉に死ぬんだから」(歩兵第65聯隊元第一機関銃隊二等兵)しかも番組はこうした信用性のある第一次資料を紹介するだけでなく、それらの記述や証言について矛盾がないか、防衛省に残っている軍の公式記録等と矛盾がないか、記述を裏づける日本、中国両方で他に目撃者はいないか、と徹底的に裏を取り、信頼性のある証拠とそうでない証拠を番組内でもはっきりと腑分けしている。ところが産経は番組が示した、こうした客観的な虐殺の証拠には一切反論していない。
いや、反論しようと思ってもできなかったのだろう。だから前述の北村、東中野修道ら、まともな歴史学者からはトンデモ扱いされているような虐殺否定派の学者を登場させて、番組内容を一切無視して「偏向」のレッテル貼りをさせたのだ。いったい「謀略宣伝」をやっているのはどっちなのか、と言いたくなるではないか。
■産経の“いちゃもん”の背景にある安倍政権の“お墨付き”
改めて今回の産経の記事を振り返ってみると、そこで繰り広げられていたのは、こういうやり口だ。
・本題ですらない一枚の写真を大々的に取り上げ、番組全体が間違いだったかのような論点スリカエ。
・何ら番組と関係ない毎日新聞の記述と番組をわざと混同し、毎日新聞の記事の問題をあたかも番組の問題であるかのように語る印象操作。
・番組でも具体的に紹介された「自衛発砲説」を“触れていない”等という、見ればすぐに解る完全な嘘。
・なんら客観的証拠も示さず、番組があたかも「中国側のプロパガンダ」に乗せられて作られたかのように批判する、陰謀論。
これが、仮にも全国紙のする事か、まるでネトウヨまとめサイトの手口ではないか、と呆れざるをえないが、しかし今回の産経による日テレへの言いがかりを「こいつらアホか?」と笑ってすませてはいられない。
こうした“南京事件はなかった”論はかねてよりずっと存在してきたが、安倍政権になってから、そのトンデモ歴史修正主義が政府の動きと完全に一体化しているからだ。実際、『南京事件-兵士たちの遺言』が初回放送された当時といえば、ちょうど中国による「南京大虐殺」のユネスコ世界記憶遺産申請(10月10日に登録)が行われた直後だった。当然のように、この「南京大虐殺」登録に極右陣営は猛反発。当時自民党の元文部科学副大臣だった原田義昭衆院議員からは「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、我が国は今や否定しようとしている時にも関らず(中国が)申請しようとするのは承服できない」等という発言が飛び出し、外務省も「極めて遺憾」「ユネスコの事業が政治利用されることがないよう、制度改革を求めていく」との報道官談話を発表した。そして実際に今年10月13日、外務省は自民党の会合で、日本政府がユネスコに対する今年の分担金約44億円を拠出していないことを明らかにした。あまりにも露骨な圧力としか言いようがない。もちろんこうした安倍政権の動きは、国民の世論にも多大なる影響を与えている。
極右界隈の歴史修正主義に政府の“お墨付き”を与えるに留まらず、昨今ネットを中心に跋扈している「南京大虐殺なんてなかった」「慰安婦は存在しなかった」という日本の戦争犯罪を否定する「デマ世論の常識化」を進めようとしている。この流れを食い止めるにも、それこそ『南京事件-兵士たちの遺言』が貫き通したように、調査報道によって、客観的な事実を突きつけなければならないし、産経の記事のようなあからさまな言いがかりについては「完全論証・論破」で、きっちり対処していく必要がある。(基本文献-リテラ/管理者:部分編集)
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《読者:佐藤眞一さんがライブ更新!東海第二原発再稼動反対》
〔取手駅前金曜行動〕ぜひ、ご覧ください。
*下記アドレスをコピーして、通常検索エンジンに貼り付けて検索ください。システム上、クリック呼び出しができません。ごめんなさい。
https://www.facebook.com/100000203255545/videos/1540862949263799/
《ブログ「リベラル広場」では次の事業も行っています。》
①職場(仕事)における労働・人権相談
(ハラスメント・メンタルヘルス等、含む)
*大阪府労働相談経験10年以上。*産業カウンセラー資格、有り。
*但しメンタルヘルスの場合、もし心療内科等に受診されている場合、または、その受診の方が望ましい場合は、当該医師の指導を優先し、カウンセリングを断る事もありますので予めご了承ください。
②採用コンサルタント。
*著作[「公正採用」と「能力発見!」採用選考のコツ]
【本ブログ:http://blog.zaq.ne.jp/yutan0619/article/27/】
*著作「採用面接」労働条件確認
【本ブログ: http://blog.zaq.ne.jp/sp/yutan0619/article/29/】
◎なお寄せていただく相談等は、とりあえず全てEメールで送信してください。
<送信先Eメールアドレス>yutan0571@yahoo.co.jp
●費用:交通費等、実費+α(若干-協議)
《とめよう改憲!おおさかネットワーク」主催「秋の憲法集会」開催》
「武力で平和はつくれない!憲法改悪をとめよう!」
■11月26日(土)午後1時半開場―2時開始
■場所:国労大阪会館(JR環状線・天満/地下鉄・扇町下車すぐ)
■資料代:1000円(学生以下半額・介護者無料)
※同額チケットも用意しています。
■主催:とめよう改憲!大阪ネットワーク
■内容①講演「安倍改憲と日本会議の正体」
講師:青木理(あおき・おさむ)
②[闘い報告]
◆【道徳の教科化が意味するもの
-戦争をする国の愛国兵士の育成を許すな!】
子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会
◆【安倍政権の『壊憲暴走』を支えるメディア】
新聞うずみ火 矢野宏さん
◆【「ピースおおさか」リニューアル裁判について】
「ピーおおさか」の危機を考える連絡会 井上淳さん、他3名
ぜひ多くの皆さんのご参加をお願いいたします。
《11・27(日)川内原発は2度と動かさない:御堂筋デモ》
◆名 称:11・27(日)川内原発は2度と動かさない 御堂筋デモ
◆と き:14:00※デモ出発14:45
◆ところ:新阿波座公園(地下鉄本町駅23番出口 西南へ徒歩2分)
◎日時:12月3日(土)午後1時10分開館/午後1時30分開始
◎場所:エルおおさか南館5Fホール
◎参加協力券:1000円
◎主催:南京の記憶を今につなぐ集会(映画とトーク)実行委員会
◎連絡先:090-8125-1757(銘心会南京-松岡)
《【報道の自由と「沖縄差別」シリーズ》
<安倍政権の沖縄での報道弾圧に「国境なき記者団」が批判声明!>
機動隊員が市民に対し「土人」「シナ人」等と発した暴言問題に加え、松井一郎大阪府知事が差別発言を肯定した問題は、批判や責任追及の声がネット上で上がる一方で、暴言の当事者である警官2名の戒告処分で幕引きとなりそうだったのが、鶴保沖縄担当相の「『土人』は差別発言でない」等に沖縄県民が再び怒りが沸き上がり、むしろ本土でも鶴保担当相の退陣を迫る署名運動が本土各地で起きる等、むしろ政治問題化が強まる気配だ。そんな中、フランスに本部を置く国際的なジャーナリストのNGO「国境なき記者団」が、沖縄における報道の自由が侵害されていると指摘する声明を22日に公表した。
「国境なき記者団」の声明では先ず、イギリス人ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が沖縄の在日米軍の活動について報道してきた事を理由に米軍から監視を受けている事を示し、アジア太平洋事務所所長のコメントとして「日本政府もこれらの活動に関与したかどうかを明確にする必要がある」と批判。そして沖縄の報道に関し、標的にされているジャーナリストはミッチェル氏だけではないとし、沖縄2紙の問題についてこのように言及している。〈8月、県北部での米軍ヘリパッド建設に対する抗議行動を取材していた沖縄タイムスと琉球新報の記者を、機動隊員が拘束した。記者である事を警察に証明したにも関らず、現場から連れ去られた〉(沖縄タイムス掲載「声明全文」より)
これは今年8月20日、ヘリパッド建設工事のために砂利を積んだ車両の搬入を止めようと約50人の反対派市民が座り込みで抵抗。
それを機動隊が力づくで市民を強制排除したのだが、その中には取材中の沖縄タイムスと琉球新報の記者2名がおり、腕章を見せて記者である事を伝えたにも関らず、強制的に排除、警察に拘束されたのだ。
市民の抗議活動を取材する事は、報道機関として当然の職務であり、国民の知る権利を守るものだ。それを警察が記者を拘束し取材活動を妨害するというのは、明らかに報道の自由を侵害するものである。
当然、沖縄2紙のみならず日本新聞労連も抗議声明を発表したが、政府は10月11日に「県警においては警察の職務を達成するための業務を適切に行っており、報道の自由は十分に尊重されている」等との虚偽答弁を閣議決定。記者の拘束を正当化した。
この政府の態度に対し「国境なき記者団」は今回の声明でこう強く非難している。〈安倍晋三首相が率いる政府は警察のこうした行動を容認し将来、抗議行動を取材するジャーナリストにとって危険な先例を作った〉(同前)この声明は世界的に見ても高江がいかに異常な状態に晒されているかを証明するものであり、同時に日本全体への国際的警告と言える。高江では今、市民への不当な弾圧だけでなく報道の自由さえ奪われている。そして、これは安倍政権による“将来の日本”の姿でもあるのだ。実際、管理者自身が高江に行き、そうした出来事は、節々に感じた。いや、“将来”等ではなく、もう現実になっているのかもしれない。例えば政府は、2015年12月に「表現の自由」の状況を調査するために来日予定だった国連特別報告者であるデイビッド・ケイ氏(米カリフォルニア大学教授)に対し、直前になって「受け入れ態勢が整わない」等として調査を一方的拒否!今年4月にようやく来日したが、そのときも、何度も高市(経歴詐称)総務相に面会を申し入れたものの断られたことをケイ氏が明かしている。しかもケイ氏の来日調査に際して、首相官邸は驚くような動きをしていたと「FACTA」6月号が報じている。〈「自民党のゲッペルス」と揶揄される世耕弘成内閣官房副長官が、ケイ氏の来日を前に、通訳など仲介役を担う女性弁護士らに関心を寄せ、内閣情報調査室などインテリジェンス・コミュニティ部員に彼女らの動向を監視するよう指示したと囁かれる〉記事によれば、〈この情報機関関係者が作成したとみられるメモの一部が永田町に流出〉したというが、そこには「弁護士はヒューマンライツ・ナウ事務局長であり、過激派関係者等と交流」「弁護士は昨年12月の訪日をデービッド(・ケイ)氏に働きかけた。今回の訪日においては同氏の通訳を担当予定」「市民団体A会は弁護士を介して、デービッド氏に対し、特定秘密保護法が国民の知る権利を侵害している事を訴えるレポートを提出しようとしている」等と書かれていたという。つまり、ケイ氏の調査に過敏になった官邸は、ヒューマンライツ・ナウ事務局長である伊藤和子弁護士をマークするために監視していたというのだ。しかも、この報道に対し伊藤弁護士はブログで「政府による監視等、プライバシー侵害の人権侵害です」と批判した上で「国連調査団の通訳は、国連がプロの通訳を有料で雇うのが常識です。私が通訳等、有り得ませんし、国連システムを知っている人なら笑ってしまいます」「私は、今回はコーディネートもしていません」と、ケイ氏の調査への関わりを否定している。如何に内調の情報が出鱈目なのかがよく解るというものだが、しかし笑い話等で済ませられるはずがない。
これが事実なら官邸はケイ氏も監視対象にしていたことは間違いないからだ。よりにもよって「表現の自由」の実態を調査しに来日した国連の報告者を監視対象にするという「北朝鮮」以上の監視国家である。 ケイ氏は調査後の会見で「報道の独立性は重大な脅威に直面している」と警告したが、その元凶は無論、安倍政権だ。
このような権力による報道への介入が、高江での記者拘束という言語道断の行為を引き起こし、更にはメディアの政権への忖度によって、市民の人権を遵守する立場にある松井一郎府知事の明白な差別容認発言が退任問題に発展しないという状態もつくり出しているのだ。この会見で、ケイ氏は以下のようにも語っている。「政府から批判されたり、圧力をかけられたりした場合、メディアは、それを押し返さなければなりません。しかし日本では押し返す力が見えません」「当たり前ですが、ジャーナリストの役割は権力の監視です。政府の発表をそのまま新聞に掲載したり、テレビで流したりする事ではありません。メディアがすべきことは『政府の言動はこれで本当にいいのだろうか』といった議論を含めて記事にすることです。日本では、それが非常に難しくなっているように見えます」状況の異常さは、その内部にいると麻痺して解りづらくなっていく。
だからこそケイ氏の指摘や、今回の「国境なき記者団」の声明のように、外部の警鐘に耳を傾ける国民の傾聴能力が求められる。 (基本文献-リテラ/管理者:部分編集)
<沖縄「土人」発言:鶴保担当相「差別とは断定できない」>
鶴保庸介沖縄・北方担当相は8日の参院内閣委員会で、沖縄県の米軍北部訓練場の工事反対派に大阪府警の機動隊員が「土人」と発言した問題について、「『土人である』と言うことが差別であると断じることは到底できない」と述べ「差別(人権)感覚」のない発言に、沖縄側の更なる反発を招いている。鶴保担当相は「人権問題であるかどうかの問題で、一方的に決めつけるのは非常に危険だ。言論の自由はどなたにもある」と発言。自民党憲法草案の殆どの条項に見られる「公序良俗の範囲において~」は、どこに行ったのかと思わす開き直り詭弁に終始した。共産党の田村智子氏は「差別的な侮蔑用語以外に使われた例を聞いたことがない」と追及したが、鶴保担当相は「差別用語とされるものでも過去には流布していたものもたくさんある」等と反論した。管理者は人権問題に関する相談業務も行っているが、こうした「中途半端なエリート主義者」に、よく見られるタイプで「差別者」呼ばわりするのを酷く嫌うあまり、「偏差値的知識」をフルに活用して「自らの差別発言」を生半可な知識を総動員して正当化を図ろうとするのだ。
それが証拠に「沖縄担当相なのだから『怒る沖縄県民と直接対話をして『誤解(?)』を解こう』」とは一切しない。霞が関から「言論の自由はどなたにもある」と泣きそうに吠えるだけだ。
民進党の福山哲郎幹事長代理は8日、鶴保担当相の発言について記者団に「沖縄の歴史を理解しない不穏当な発言」と指摘。機動隊員の発言を巡っては、金田勝年法相が10月25日の参院法務委員会で「事実の詳細が明らかではない」としながらも、差別用語に当たるとの認識を示し、事実上の「閣内不一致」となっている。(文責:民守 正義)
<産経が日テレの「南京虐殺」検証番組を「裏付けなしの謀略宣伝」と攻撃!>
先月16日、産経新聞にこんな見出しの記事が大きく掲載された。産経が歴史修正主義を主張するために展開している例の「歴史戦」というシリーズ企画だが、内容は見出し通り、戦時中の日本軍による南京虐殺を検証した日本テレビの番組が、裏付けのない偏向番組だったと批判するものだ。この日本テレビの番組というのは、昨年10月5日に放送された『南京事件-兵士たちの遺言』で、放送当時から高い評価を得ていたドキュメンタリーだ。評価の最大の理由は、この十数年、虐殺はなかったという否定論が高まり、イデオロギー論争の的になってきた南京事件に、これまでにないアプローチを試みていたことだった。
番組を手がけたチーフディレクターの日本テレビ報道局Sさんは、桶川ストーカー事件や北関東連続幼女誘拐殺人事件等を警察発表に頼らない独自の調査報道によって、その真相を追及してきた事件記者。
Sさんは番組の放映後に出版した著書『「南京事件」を調査せよ』で、「南京事件」を「左か右か」でなく「事実か否か」、事件取材のように調査報道という手法で迫ろうとしたと記しているが、放映された内容は、その言葉どおりのものだ。番組は、1937年12月16日と17日の2日間に亙って、南京城外の揚子江沿岸で大量の捕虜を銃殺、刺殺したという元日本軍兵士の証言や当時の日記を取りあげ、そこに矛盾や不自然な点がないか、番組取材班が徹底的に裏取りを試みる。そして中国人捕虜虐殺が事実である事を証明していくのだ。その内容は専門家のあいだでも高い評価を集め、ギャラクシー賞テレビ部門優秀賞、「放送人グランプリ」2016準グランプリ、石橋甚山記念早稲田ジャーナリズム大賞など、数々の賞を受賞している。また日本軍が「根性試し」として中国人若者を、次から次へと銃剣で首を指していった事は、先般、亡くなられた三笠宮も証言している。ところが放映から1年経って、産経新聞が前述のように、このドキュメンタリーが「裏付けのない虐殺写真」を掲載し、中国側の宣伝にのって一方的な偏向報道を垂れ流したと噛み付いたのだ。
これにネトウヨは大喜びで「まーた反日マスゴミお得意の想像報道か」「日テレにも居るコミンテルンのスパイ」「中共の意向で捏造の片棒を担いでいます。放送免許を取り消すべき」等と、どっちが「口汚いデマ宣伝か!」とのネット暴力を仕掛けている。
一方、日本テレビは先月26日、同局ホームページで“記事内容は、番組が放送した事実と大きく異なり、客観性を著しく欠く恣意的なもの”という趣旨の文書を掲載し、産経記事の指摘や主張に対して詳細に反論。
産経新聞社に厳重に抗議した。すると11月6日、今度は産経が再反論する記事を掲載。「産経と日本テレビの間の激しい応酬」という描画に見せて、産経は「せめて、どっちもどっち論」で逃げ切りを図っている。
しかし今回、改めて『南京事件-兵士たちの遺言』を見直し、産経の記事を検証してみて、口があんぐりとなった。産経の記事があまりにデタラメだったからだ。枝葉末節の間違いを針小棒大に騒ぎ立てて全体を否定してかかるのは歴史修正主義者の得意技だが、今回の産経の記事はそれですらない、嘘とデマゴギーだらけの言いがかりとしか思えないシロモノだった。
■他社記事の問題とスリ替え“捏造番組”とする卑劣手口
その典型が、産経新聞が見出しで「裏付けなし」と断じた「虐殺写真」だ。実は最初、見出しだけを読んだときは、この「虐殺写真」が何の事か解らなかった。番組のメインは元兵士の日記と証言の検証で、虐殺の証拠写真があるというような件は全くなかったからだ。記事を読んで、ようやく番組のプロローグとエンディングで流された写真である事が解ったのだが、頭の中の「?」は更に増すばかりだ。写真は確かに大勢の人間が防寒着姿で倒れている様子を写したものだが、番組はこれを「虐殺の証拠写真」として出した訳ではなく、検証の材料の一つとして紹介しただけ。
しかも番組は、この写真が日記の記述とは違う場所である事を明示している。つまり信用性について判断を留保しているのだ。
ところが産経は、この写真が「昭和63年12月12日、毎日新聞(夕刊、大阪版)が既に掲載していた」と鬼の首をとったようにあげつらい、毎日新聞の記事が「被写体が中国側の記録に残されているような同士打ちや溺死、戦死した中国兵である可能性には一切触れず、『大虐殺』の写真と報道した」と糾弾するのだ。いったい産経は何を言っているのだろう。
番組の写真は、毎日新聞に掲載されたものとは別ルートで入手したもののようだが、仮に毎日の写真と同じだったとして何の問題があるのか。
「大虐殺の写真」と報道したのは毎日新聞であって、日本テレビの『南京事件-兵士たちの遺言』ではない。実際、同番組はこの写真について、一言も「虐殺写真」等と紹介していない。それどころか、写っているのが「中国人」とも言っていないし「死体」とすら断定していない。
「防寒着姿で倒れた多くの人々」と、一切の主観や解釈、評価は排除し、見えるままをナレーションしているだけだ。しかも毎日新聞に掲載された写真もそれ自体は捏造でもなんでもなく、歴史修正主義者が「同士討ち」の記述のある中国の記録を持ち出して、この写真の死体も「同士討ちの結果の可能性だってある」と反論しているに過ぎない。むしろ、この規模や状況から考えて「虐殺写真」の可能性が極めて高いものだ。
その写真を「虐殺」という言葉を慎重に避けながら検証の対象として使っただけのテレビ番組に「裏付けなし」等と絡むというのは、まともな神経とは思えない。しかも、この件について日本テレビから「虐殺写真と断定して放送はしておりません。にも関らず産経新聞の記事は『写真がそれを裏付けている-そんな印象を与えて終わった』と結論づけ、大見出しに掲げました」と抗議を受けると、産経は11月6日の紙面でとんでもない反論を繰り出した。ギャラクシー賞の選考理由に「虐殺の一枚写真も、その背景から揚子江岸辺の現場が特定できる」との一文があるのを持ち出し、「ギャラクシー賞を辞退せず受賞した訳だから日テレ側も視聴者が『虐殺写真』と認識するのに異論はなかったはずだ」と因縁をつけ始めたのである。断定報道と解釈の余地のある報道を一緒くたにしてしまうこの記事は、本当に新聞記者の書いたものなのか、と疑いたくなる。
要するに産経新聞は実証的に南京虐殺を証明した、この番組にケチをつけたくてしようがなかったのだが、攻撃箇所が見つけられなかったため、無理やり毎日新聞の話を持ち出し、その報道とわざと混同させて、番組を貶めようとしたのだろう。ところが、その手口を抗議されると、今度は慌ててギャラクシー賞の話をもってきて言い訳を始めたのだ。全くそのオツムは幼稚で小学生並み。「産経記者は、こんなに低知的レベルしかいないのか?」と、どうでもいい新聞社ながら「他社より安い新聞」だけに「安かろう・悪かろう」と思わざるを得ない。
■事実を捏造したのは産経新聞の方だった
産経のインチキは他にもある。それは揚子江岸での捕虜処刑が「暴れる捕虜にやむなく発砲」したものなのに、番組がその点に触れていないと主張していることだ。産経は東中野修道亜細亜大教授の著書『再現-南京戦』を引用してする形で「16日の揚子江岸での処刑対象は宿舎への計画的な放火に関与した捕虜だった。17日は第65連隊長、両角業作の指示で、揚子江南岸から対岸に舟で渡して解放しようとしたところ、北岸の中国兵が発砲。これを日本軍が自分達を殺害するための銃声だと勘違いして混乱した約2千人の捕虜が暴れ始めたため、日本側もやむなく銃を用いた」と、まるで見てきたかのような客観事実のように記述。その上で「番組は、こうした具体的状況や、その下での国際法の解釈には踏み込まなかった」と断じている。しかし産経が唱えている説は以前から南京虐殺否定論者が主張してきた「自衛発砲説」と呼ばれるもので、事実として証明されている訳でもなんでもない。根拠は戦後にまとめられた連隊長の両角業作の弁明の手記で、多くの矛盾が指摘されているものだ。
実際、保守派の歴史学者の中でも「自衛発砲説」には否定的な見方が強く、秦郁彦氏等は「もし釈放するのなら何故、昼間につれ出さなかったのか、後手に縛った捕虜が反乱を起こせるのか、について納得の行く説明はまだない」(『南京事件-増補版』2007年)と切って捨てている。こんな怪しげな説を平等に紹介しろ、と要求するだけでも噴飯物だが、更にもっと唖然とさせられるのは、産経が番組攻撃のために真っ赤な嘘をついていたことだ。実をいうと日テレのドキュメンタリーは、この自衛発砲説に、きちんと踏み込んで検証していた。
日本兵達の日記の記述を検証し、なぜ揚子江岸で捕虜の銃殺がなされたのかを考察する件で、番組は「戦後になって『捕虜を解放するために揚子江岸に連行したが暴動を起こされやむなく銃撃した』という証言がなされた」と具体的に紹介した上、31冊もある日本兵達の日記(1937年当時の一次資料)に「捕虜を解放しようとした」という記述は一つもなかったという事実を明らかにしている。ところが産経は自分達の主張する自衛発砲説が根拠薄弱である事を暴かれ、この放送部分を一切無視して「番組が自衛発砲説に触れなかった」と言い張った。これこそ捏造以外の何物でもないだろう。
■客観的な証言をネグり「中国の謀略宣伝と同じ」と陰謀論展開
しかも産経は、こうした卑劣な攻撃を繰り返す一方で、南京虐殺否定派の学者である北村稔・立命館大学名誉教授を登場させて、こう書いている。「北村は(番組が)客観的根拠を明示せずに『仄めかし』を駆使している事について『中国の謀略宣伝のやり方と酷似している』と批判する」
ここまでくると、もはや笑うしかない。何故なら番組は、仄めかしとは真逆の、虐殺の客観的な証拠を幾つも明示しているからだ。
例えば、その一つが「支那事変日記帳」というタイトルがつけられた日誌だ。この日誌は陸軍歩兵第65聯隊と行動を共にした、山砲兵第19聯隊所属の上等兵の遺品で、昭和12年9月から南京が陥落するまでの3ヶ月間、ほぼ毎日書かれている。そこには、ごく普通の農民だった男性が中国で民間人から物資を奪い、銃口を向ける様等が詳述されていた。〈11月16日、食料の補給は全然なく、支那人家屋より南京米、その他の者を徴発して一命を繋ぎ、前進す〉〈11月17日、「ニャー」(注:中国人女性)を一人連れてきたところ、我らの目を盗んで逃げたので、直ちに小銃を発射し、射殺してしまう〉〈11月25日、実に戦争なんて面白い。酒の好きなもの、思う存分呑む事ができる〉そして12月13日、南京陥落。上等兵達の部隊は、武器を捨てて降伏してきた多くの中国兵を捕虜にする。捕虜は、その後1万人を超えたという。そして上等兵の日記には、国際法で禁じられていたはずの“捕虜殺害”の模様が、克明に記されていた。〈12月14日、途中、敗残兵を千八百名以上捕虜にし、その他たくさんの正規兵で、合計五千名の敗残兵を捕虜にした〉〈12月16日、捕虜せし支那兵の一部五千名を揚子江の沿岸に連れ出し、機関銃をもって射殺す〉〈その後、銃剣にて思う存分に突刺す〉〈自分もこのときばかりと支那兵を三十人も突き刺した事であろう〉〈山となっている死人の上を上がって突刺す気持ちは鬼をもひがん勇気が出て力いっぱいに突刺したり〉〈うーんうーんと呻く支那兵の声。一人残らず殺す。刀を借りて首をも切ってみた〉更に番組はこの上等兵が1994年にインタビューされたときの映像も放送している。彼はハッキリとした口調で、こう語っていた。「機関銃を持ってきてバババーッと捕虜に向かって撃っちゃったんだ。捕虜は皆、死んだけれども『中に弾に当たんねえみたいなのがいるかもしれないから着剣して死骸の上を突いて歩け』と。ザッカザッカ突いて歩いた。おそらく30人くらい突いたと思うが。何万という捕虜を殺したのは間違いねえ」番組は他にも1937年12月16日と17日に南京城外の揚子江沿岸で大量の捕虜を銃殺、刺殺した兵士達の日記や証言を紹介している。「この方(捕虜)を“お客さん”て言うんだよね。『今晩はお客さんが来て、お客さんを処理するんだ』と。そして“ピー”という呼び子の、将校の呼び子の合図で、一斉射撃。ダダダダダダダと始まる」(当時、機関銃の引き金をひいたという歩兵第65聯隊元第三機関銃隊兵)「とにかく1万人も(捕虜を)集めるっちゅんだから。相当広い砂原だったね」「有刺鉄線か何かを周囲に貼ったでなかったかな」(歩兵隊65聯隊元第一大隊本部行李系二等兵)「機関銃を載せて高くしてね。砂で、砂を積んで盛って」「サブロクジュウハチ……200発ぐらい撃ったのかな」「ダダダダダダダ、一斉に死ぬんだから」(歩兵第65聯隊元第一機関銃隊二等兵)しかも番組はこうした信用性のある第一次資料を紹介するだけでなく、それらの記述や証言について矛盾がないか、防衛省に残っている軍の公式記録等と矛盾がないか、記述を裏づける日本、中国両方で他に目撃者はいないか、と徹底的に裏を取り、信頼性のある証拠とそうでない証拠を番組内でもはっきりと腑分けしている。ところが産経は番組が示した、こうした客観的な虐殺の証拠には一切反論していない。
いや、反論しようと思ってもできなかったのだろう。だから前述の北村、東中野修道ら、まともな歴史学者からはトンデモ扱いされているような虐殺否定派の学者を登場させて、番組内容を一切無視して「偏向」のレッテル貼りをさせたのだ。いったい「謀略宣伝」をやっているのはどっちなのか、と言いたくなるではないか。
■産経の“いちゃもん”の背景にある安倍政権の“お墨付き”
改めて今回の産経の記事を振り返ってみると、そこで繰り広げられていたのは、こういうやり口だ。
・本題ですらない一枚の写真を大々的に取り上げ、番組全体が間違いだったかのような論点スリカエ。
・何ら番組と関係ない毎日新聞の記述と番組をわざと混同し、毎日新聞の記事の問題をあたかも番組の問題であるかのように語る印象操作。
・番組でも具体的に紹介された「自衛発砲説」を“触れていない”等という、見ればすぐに解る完全な嘘。
・なんら客観的証拠も示さず、番組があたかも「中国側のプロパガンダ」に乗せられて作られたかのように批判する、陰謀論。
これが、仮にも全国紙のする事か、まるでネトウヨまとめサイトの手口ではないか、と呆れざるをえないが、しかし今回の産経による日テレへの言いがかりを「こいつらアホか?」と笑ってすませてはいられない。
こうした“南京事件はなかった”論はかねてよりずっと存在してきたが、安倍政権になってから、そのトンデモ歴史修正主義が政府の動きと完全に一体化しているからだ。実際、『南京事件-兵士たちの遺言』が初回放送された当時といえば、ちょうど中国による「南京大虐殺」のユネスコ世界記憶遺産申請(10月10日に登録)が行われた直後だった。当然のように、この「南京大虐殺」登録に極右陣営は猛反発。当時自民党の元文部科学副大臣だった原田義昭衆院議員からは「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、我が国は今や否定しようとしている時にも関らず(中国が)申請しようとするのは承服できない」等という発言が飛び出し、外務省も「極めて遺憾」「ユネスコの事業が政治利用されることがないよう、制度改革を求めていく」との報道官談話を発表した。そして実際に今年10月13日、外務省は自民党の会合で、日本政府がユネスコに対する今年の分担金約44億円を拠出していないことを明らかにした。あまりにも露骨な圧力としか言いようがない。もちろんこうした安倍政権の動きは、国民の世論にも多大なる影響を与えている。
極右界隈の歴史修正主義に政府の“お墨付き”を与えるに留まらず、昨今ネットを中心に跋扈している「南京大虐殺なんてなかった」「慰安婦は存在しなかった」という日本の戦争犯罪を否定する「デマ世論の常識化」を進めようとしている。この流れを食い止めるにも、それこそ『南京事件-兵士たちの遺言』が貫き通したように、調査報道によって、客観的な事実を突きつけなければならないし、産経の記事のようなあからさまな言いがかりについては「完全論証・論破」で、きっちり対処していく必要がある。(基本文献-リテラ/管理者:部分編集)
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◎なお寄せていただく相談等は、とりあえず全てEメールで送信してください。
<送信先Eメールアドレス>yutan0571@yahoo.co.jp
●費用:交通費等、実費+α(若干-協議)
《とめよう改憲!おおさかネットワーク」主催「秋の憲法集会」開催》
「武力で平和はつくれない!憲法改悪をとめよう!」
■11月26日(土)午後1時半開場―2時開始
■場所:国労大阪会館(JR環状線・天満/地下鉄・扇町下車すぐ)
■資料代:1000円(学生以下半額・介護者無料)
※同額チケットも用意しています。
■主催:とめよう改憲!大阪ネットワーク
■内容①講演「安倍改憲と日本会議の正体」
講師:青木理(あおき・おさむ)
②[闘い報告]
◆【道徳の教科化が意味するもの
-戦争をする国の愛国兵士の育成を許すな!】
子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会
◆【安倍政権の『壊憲暴走』を支えるメディア】
新聞うずみ火 矢野宏さん
◆【「ピースおおさか」リニューアル裁判について】
「ピーおおさか」の危機を考える連絡会 井上淳さん、他3名
ぜひ多くの皆さんのご参加をお願いいたします。
《11・27(日)川内原発は2度と動かさない:御堂筋デモ》
◆名 称:11・27(日)川内原発は2度と動かさない 御堂筋デモ
◆と き:14:00※デモ出発14:45
◆ところ:新阿波座公園(地下鉄本町駅23番出口 西南へ徒歩2分)
《南京の記憶を今につなぐ:映画&トーク》
◎日時:12月3日(土)午後1時10分開館/午後1時30分開始
◎場所:エルおおさか南館5Fホール
◎参加協力券:1000円
◎主催:南京の記憶を今につなぐ集会(映画とトーク)実行委員会
◎連絡先:090-8125-1757(銘心会南京-松岡)
(民守 正義)
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