劣化する安倍ファシズム政権と「リベラル野党共闘」の行程(25)
劣化する安倍ファシズム政権と「リベラル野党共闘」の行程(25)
《【国家「親子介入】知っていますか?親子断絶防止法案》
読者の皆様には「親子断絶防止法案」(正式名称:離婚後の父母との継続的な関係維持促進法)を御存知でしたか?正直、管理者は知らなかった。そこで慌てて同法案の骨格趣旨等を紹介し、まだ自分自身の同法案に対する評価・問題点等が、まだ熟成されていないので、識者・社説等を基本的には紹介に留める。
<「親子断絶防止法案」とは?>
同法案は、超党派の国会議員による議員連盟が共同提出されているもので、一言で言えば、離婚後の「親子断絶」を防ぐ法案で、何と開会中の臨時国会で提出を目指すという。主要内容は、父母の離婚や別居後も「子が両親と継続的な関係を持つこと」が「子の最善の利益に資する」とする。離婚する父母は、離婚後も子と会う「面会交流」や、養育費の分担について書面で取り決めることを努力義務とする。国や地方自治体の面会交流支援や子の連れ去り防止等の啓発も盛り込まれている。児童虐待や配偶者への暴力がある場合の「特別の配慮」も求めている。
<識者・社説等による「同法案への評価・問題点等」>
〔親子断絶防止法の案 親子関係維持のみでは子どもは生活できない(一部要約)〕
親子関係の維持をするのはいいことだ、と素朴に思っている方は多いと思う。 私も子供と親の交流は基本的には良いことだと思っている。
しかし法律をつくるとなると、いろいろな事情がある親子全てに適用されるのだから、誰にとっても納得のいく、権利を侵害しない法律でなければならない。しかし今、準備されている法案は、とても、そうはなっていない。
◎「親子断絶防止法案の案」の理念がまず不適切
同法案は「父母の離婚等の後も子が父母と親子としての継続的な関係を持つことが原則として子の最善の利益に資するものであるという基本理念に基づいて、父母がその実現に責任を有するというのが建てつけである。平和に面会交流ができれば、それは望ましい。
だがそもそも、この親子関係の維持という理念のみによって、子供の最善の利益が実現できるのだろうか。私自身、一人親家庭で男の子を育ててきて、その後シングルマザーと子供達の支援活動を行っているところから、一人親家庭の生活の困難を間近に感じてきた。一人親家庭の相対的貧困率は54.6%である。相対的貧困とは、所得の中央値の半分以下で生活していることである。この数字は先進国で、最も最悪数字である。
何故なのか。それは世界経済フォーラムが10月末に発表した、ジェンダーギャップ指数の日本の順位とも深く関わる。日本は男女の格差が145カ国中111と大きく、特に経済的な格差と政治的な格差が激しい国であるからである。世界各国の男女平等の度合いを指数化した世界経済フォーラム(WEF)の2016年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本の順位は調査対象144カ国のうち111位だった。前年より10下がり、過去最低の水準だ。こうした男女格差の下、シングルマザーも就労収入が少なく、経済的に困窮している人が半分以上となるわけである。近年、子供の貧困対策にも一定、力を入れてきている。しかし、まだまだ不十分でやるべきことはたくさんある。にも関らず、こうした状況に、この法律の案は全くコミットしていないのである。離婚後の子供の経済も含めた生活のことに関与しないで最善の利益は実現できるのだろうか。子供の貧困対策法ができて、一人親家庭の苦境にもやっと光が当たってきた。残念ながら親子関係の維持よりも、先ず明日食べていかなければならない、生活を維持していかなければならない一人親家庭がいかに多いか。毎日、私達の団体の電話相談には、食べていけない、派遣の仕事が契約切れで更新されないがどうすればいいか、子供が小さくて十分に働けないが養育費も低額にしか決まりそうもないので生活保護しかないのか、といった相談がある。
面会交流をすることを調停等で迫られても、先ずは住まいを安定させ、子供の保育園や学校を確保し、仕事を見つけなければならない母子が如何に多いか。日々が必死なのである。先ず生活が安定しなければ、親子の関係を維持するための、面会するだけの時間、精神的余裕など生まれない。 その視点がすっぽり抜けていて、親子関係を維持すれば子供は幸せになる、という脳天気な法律を作ろうとしていることに心底、驚いてしまったのだった。脳天気というより、子供の事を考えている、考えている、と言いながら、本当は子供達の状況を見ていない法律なのではないかという疑念がわいてくる。 もしも離婚後(この点も不十分なのであとで触れるが)の子供の最善の利益を追求するのであれば、先ずは、そうした子供達の苦境も含めた、総合的な法律、総合的な生活支援、面会交流も含めた養育支援(という言葉が適切かなあとも思うが)を内容として、最善の利益を追求しなければならないのではないだろうか。
そうすれば、子供の貧困対策ともしっかりリンクしていくのである。
◎なぜ離婚後等の子供だけなのか。婚外子は排除するのか
法律の対象についても議論があるだろう。ここには、親と離れて暮らす子供達と父母全てではなく、離婚後親と離れている子供のみを対象としている。しかし婚外で出生する子供もいる。二親とも暮らしていない子供もいる。親がわからない子どももいる。それこそ子供の権利条約を活かして、全ての子供達を包括的に対象とすべきではないか。ここでも婚外子を排除してしまう事で、法律が脆弱となってしまう。 平成23年の全国母子世帯等調査によると、母子世帯の内、離婚が80%、未婚の出産による母子が7.8%、死別が7.5%と婚外の出産による子供は増えている。
この7.8%は、この法律の埒外でよいのだろうか。婚外子は父親が認知をすれば父子関係は成立する。養育の義務もある。この子供達の中にも、お父さんと会いたいという子供と母親もいるが実現できていない子もいるし、個々の様々な事情がある。また婚外で生まれた子供のいる母子家庭は、平均年収が格段に低く160万円である。 また厳しい状況ではあるが、その他の事情で親と暮らしていない子供達も、例えば社会的養護の子供達の事は、この法律では考えなくてよいのだろうか。離婚だけを(別居中は含めたい意向で「等」が入っているようだが)対象としている同法案の大きな欠陥と思える。
〔養育費についての取り立て確保が条文にない欠陥〕
また、せっかく子供の貧困議員連盟でも目標と掲げている、養育費確保については「書面による取り決めを行うよう努めなければならない」(6条)とだけ触れられており、確保の方策については全く言及していないということも驚いた。全国母子世帯等調査によると、養育費の取得率は2割以下である。養育費は4割が取り決めているが、子供を離したくないため、多くの一人親家庭は泣き寝入りしているのだ。残念ながら、しんぐるまざあず・ふぉーらむの調査でも、5年後には、取り決めしても半数は払われないようになってしまっている。
元夫が職場を変えてしまえば、どこの会社の給料を差し押さえていいかわからない。元夫の銀行口座がわからないので、何もできない、など訴えをよく聞く。泣き寝入りしている母子は多い。この状況をどう打開するかは、子供の貧困問題解決のためには、一つの大きな柱であるはずである。 実際のところ、養育費の取り立て確保をしてくのには沢山の課題を解決していく事が必要だ。 11月から法制審議会が、養育費の不払いの場合の、義務者の銀行口座の情報を金融機関に開示させるような制度の検討に入るという。 金田勝年法相は12日、法務省で開かれた法制審議会(法相の諮問機関)総会で、裁判で確定した養育費や損害賠償金の未払いを防ぐため、金融機関に口座照会への回答を義務付ける民事執行法の改正を諮問した。 来年にも答申を得た上で、2018年の通常国会への改正案提出を目指す。 しかし、そもそも養育費の額が低額である問題、取り決め率が低い問題、罰則規定の問題等、制度を創っていくには、それなりの手間と時間がかかる。その事にも全く触れないのは拙速すぎるといえないか。
いや、もっと大きな欠陥がある。
〔誰に義務を負わせるのか。国ではなく同居親の義務を強調している法案〕
いわゆる「親子断絶防止法案の案」は、子供の権利条約(児童の権利条約)の理念を援用しているように見える。しかし実は見えるだけなのである。子供の権利条約は、子供を権利主体と考え、大人とは別の人格としての権利主体と考え、権利保障していこうという条約である。
日本も1994年に批准した。条約を読んで頂ければ解るが、子供の権利条約は、締約国に子供の権利を守らせるための方策をするよう求めている条約である。
第2条
1. 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
2. 締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
ところが、このいわゆる「親子断絶防止法案の案」は、子どもの権利条約の親子関係の維持についての部分(留保事項は無視)のみ引用し、条約の精神、国の義務をであるところをも知らないふりをし、子どもと同居している親だけに、面会交流義務を負わせている。
第9条
1. 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従い、その分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。
*******
このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。これでは非同居親が同居親に面会の義務を負わせたいがために、子供の権利条約の都合のよいところだけひっぱってきて、子供の権利条約の精神については無視しているということになる。子供の権利条約を援用するのであれば、親と離れて暮らしている子供達の生活、権利、親との面会その他、総合的な支援について、国が義務を負う、そういう法律をつくるべきではないのだろうか。
〔子供の意見表明権も無視のご都合主義〕
更に子供の意見表明権は、子供の権利条約の中心的な概念であるが、このいわゆる親子断絶防止法ではそれも、意図的に無視し法案の案には盛り込まれていない。 子供の意見表明権を入れなかったのは、何故なのだろう。結局、子供の意見表明をさせることを恐れているのではないか、と思えてくるのである。以上のように一見、離婚後の親子関係を維持するという、良い法律の案に見えるが、法律の目的、理念だけ見ても致命的な欠陥があり過ぎる。このままこの法律を通して、その他の条約や法律との整合性をどう担保するのだろうか。
〔法案の建付けからみて、モラハラ法案〕
これでは離婚後、子供と暮らせない親が、子供の権利条約の一部を強引に引用して、子供と暮らす親と、子供に法律という強制力を使って、無理やり離婚後の関係の維持を迫る、いわば法律によるモラハラのように見えてくるのである。
〔親子断絶防止法案/まずは支援体制の拡充から:河北新報社説(要約)〕
両親の離婚や別居の後も、子どもが最善の利益を保障されなければならないのは当然のことだ。しかし一概に「父母と継続的な関係を維持することが、子の最善の利益に資する」とする法案の前提には、議論が必要だろう。離婚理由や夫婦・家族の在りよう、子供の意向など、離別家庭の事情は個々に異なる。継続的な親子関係が必ずしも子の利益に繋がるとは限らないのではないか。配偶者へのドメスティックバイオレンス(DV)や子供への虐待が離婚原因となるケースが少なくない。暴力から逃れ、身の安全を求める親子にとって、面会交流について話し合い、意思表示することは困難だ。警察庁のまとめでは今年上半期、警察が虐待の疑いで児童相談所に通告した子供の数は前年同期より4割以上増加。子供の面前で配偶者に暴力を振るう「面前DV」が全体の半数近くを占めるという現実もある。同法案は「児童虐待、DV等の事情がある場合には、特別の配慮がなされなければならない」としている。けれども具体的にどのような配慮が、どのように保障されるのかは不明だ。
虐待被害児童支援、DV被害者支援、一人親家庭支援の現場や専門家からの意見も交え、多角的な視点を踏まえた慎重な議論が求められる。
一人親家庭の貧困が深刻化している今、子供が安心して健やかに育つために養育費の分担を取り決める仕組みは確かに必要だ。
不払いの場合の対応についても検討し、盛り込まなければなるまい。
◎取り決めを進めるには、当事者同士が安全な場で
話し合い、意見を調整するための支援が不可欠だ。面会交流については、子供の意思が何よりも尊重されなければならない。
そのためにも子供に寄り添える知見を備えた第三者のサポートが要る。
現在はこうした態勢が不十分だ。面会交流の相談や面会時の付き添い等をする民間の支援組織はあるが数は少ない。法律で当事者に努力義務を課す前に、国や地方自治体はもちろん民間団体も含めて、先ずは支援体制を拡充整備することが先決ではないか。多様な家族に対応できる支援体制の在り方を、十分に吟味することも重要だろう。
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《読者:佐藤眞一さんがライブ更新!東海第二原発再稼動反対》
〔取手駅前金曜行動〕ぜひ、ご覧ください。
*下記アドレスをコピーして、通常検索エンジンに貼り付けて検索ください。システム上、クリック呼び出しができません。ごめんなさい。
https://www.facebook.com/100000203255545/videos/1540862949263799/
《「戦争法」違憲訴訟の会から「訴訟原告」のお願い!》
6月8日に第一次違憲訴訟を713人で提訴しましたが、その後10月28日には自衛隊の南スーダン派遣について「駆けつけ警護」派遣差し止め請求訴訟を34名で行いました。しかし安倍政権は15日に閣議決定して自衛隊第一陣を20日に派遣するとしています。私達は、この事に抗議も含めて第二次訴訟を21日に提訴する予定で準備しています。
第二次原告の委任状が現在で200名届いています。
第一次原告と合わせますと913名。今必死で委任状提出をお願いしていますが、私達だけでは限界に近いです。
皆さんお願い致します。周りの人に働きかけてください。
一人でも二人でも原告を増やしていただきたく存じます。
ぎりぎり19日までは間に合います。
思いを結集して裁判所へ届けたいのです。よろしくお願い致します。
提訴時間など決まり次第、後日お知らせいたします。
☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆
事務局
おかもと りゅうきち: 岡本 隆吉
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06-6392-4441/090-4546-4377
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《ブログ「リベラル広場」では次の事業も行っています。》
①職場(仕事)における労働・人権相談
(ハラスメント・メンタルヘルス等、含む)
*大阪府労働相談経験10年以上。*産業カウンセラー資格、有り。
*但しメンタルヘルスの場合、もし心療内科等に受診されている場合、または、その受診の方が望ましい場合は、当該医師の指導を優先し、カウンセリングを断る事もありますので予めご了承ください。
②採用コンサルタント。
*著作[「公正採用」と「能力発見!」採用選考のコツ]
【本ブログ:http://blog.zaq.ne.jp/yutan0619/article/27/】
*著作「採用面接」労働条件確認
【本ブログ: http://blog.zaq.ne.jp/sp/yutan0619/article/29/】
◎なお寄せていただく相談等は、とりあえず全てEメールで送信してください。
<送信先Eメールアドレス>yutan0571@yahoo.co.jp
●費用:交通費等、実費+α(若干-協議)
《とめよう改憲!おおさかネットワーク」主催「秋の憲法集会」開催》
「武力で平和はつくれない!憲法改悪をとめよう!」
■11月26日(土)午後1時半開場―2時開始
■場所:国労大阪会館(JR環状線・天満/地下鉄・扇町下車すぐ)
■資料代:1000円(学生以下半額・介護者無料)
※同額チケットも用意しています。
■主催:とめよう改憲!大阪ネットワーク
■内容①講演「安倍改憲と日本会議の正体」
講師:青木理(あおき・おさむ)
②[闘い報告]
◆【道徳の教科化が意味するもの
-戦争をする国の愛国兵士の育成を許すな!】
子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会
◆【安倍政権の『壊憲暴走』を支えるメディア】
新聞うずみ火 矢野宏さん
◆【「ピースおおさか」リニューアル裁判について】
「ピーおおさか」の危機を考える連絡会 井上淳さん、他3名
ぜひ多くの皆さんのご参加をお願いいたします。
《11・27(日)川内原発は2度と動かさない:御堂筋デモ》
◆名 称:11・27(日)川内原発は2度と動かさない 御堂筋デモ
◆と き:14:00※デモ出発14:45
◆ところ:新阿波座公園(地下鉄本町駅23番出口 西南へ徒歩2分)
《【国家「親子介入】知っていますか?親子断絶防止法案》
読者の皆様には「親子断絶防止法案」(正式名称:離婚後の父母との継続的な関係維持促進法)を御存知でしたか?正直、管理者は知らなかった。そこで慌てて同法案の骨格趣旨等を紹介し、まだ自分自身の同法案に対する評価・問題点等が、まだ熟成されていないので、識者・社説等を基本的には紹介に留める。
<「親子断絶防止法案」とは?>
同法案は、超党派の国会議員による議員連盟が共同提出されているもので、一言で言えば、離婚後の「親子断絶」を防ぐ法案で、何と開会中の臨時国会で提出を目指すという。主要内容は、父母の離婚や別居後も「子が両親と継続的な関係を持つこと」が「子の最善の利益に資する」とする。離婚する父母は、離婚後も子と会う「面会交流」や、養育費の分担について書面で取り決めることを努力義務とする。国や地方自治体の面会交流支援や子の連れ去り防止等の啓発も盛り込まれている。児童虐待や配偶者への暴力がある場合の「特別の配慮」も求めている。
<識者・社説等による「同法案への評価・問題点等」>
〔親子断絶防止法の案 親子関係維持のみでは子どもは生活できない(一部要約)〕
【赤石千衣子 | しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長】
親子関係の維持をするのはいいことだ、と素朴に思っている方は多いと思う。 私も子供と親の交流は基本的には良いことだと思っている。
しかし法律をつくるとなると、いろいろな事情がある親子全てに適用されるのだから、誰にとっても納得のいく、権利を侵害しない法律でなければならない。しかし今、準備されている法案は、とても、そうはなっていない。
◎「親子断絶防止法案の案」の理念がまず不適切
同法案は「父母の離婚等の後も子が父母と親子としての継続的な関係を持つことが原則として子の最善の利益に資するものであるという基本理念に基づいて、父母がその実現に責任を有するというのが建てつけである。平和に面会交流ができれば、それは望ましい。
だがそもそも、この親子関係の維持という理念のみによって、子供の最善の利益が実現できるのだろうか。私自身、一人親家庭で男の子を育ててきて、その後シングルマザーと子供達の支援活動を行っているところから、一人親家庭の生活の困難を間近に感じてきた。一人親家庭の相対的貧困率は54.6%である。相対的貧困とは、所得の中央値の半分以下で生活していることである。この数字は先進国で、最も最悪数字である。
何故なのか。それは世界経済フォーラムが10月末に発表した、ジェンダーギャップ指数の日本の順位とも深く関わる。日本は男女の格差が145カ国中111と大きく、特に経済的な格差と政治的な格差が激しい国であるからである。世界各国の男女平等の度合いを指数化した世界経済フォーラム(WEF)の2016年版「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本の順位は調査対象144カ国のうち111位だった。前年より10下がり、過去最低の水準だ。こうした男女格差の下、シングルマザーも就労収入が少なく、経済的に困窮している人が半分以上となるわけである。近年、子供の貧困対策にも一定、力を入れてきている。しかし、まだまだ不十分でやるべきことはたくさんある。にも関らず、こうした状況に、この法律の案は全くコミットしていないのである。離婚後の子供の経済も含めた生活のことに関与しないで最善の利益は実現できるのだろうか。子供の貧困対策法ができて、一人親家庭の苦境にもやっと光が当たってきた。残念ながら親子関係の維持よりも、先ず明日食べていかなければならない、生活を維持していかなければならない一人親家庭がいかに多いか。毎日、私達の団体の電話相談には、食べていけない、派遣の仕事が契約切れで更新されないがどうすればいいか、子供が小さくて十分に働けないが養育費も低額にしか決まりそうもないので生活保護しかないのか、といった相談がある。
面会交流をすることを調停等で迫られても、先ずは住まいを安定させ、子供の保育園や学校を確保し、仕事を見つけなければならない母子が如何に多いか。日々が必死なのである。先ず生活が安定しなければ、親子の関係を維持するための、面会するだけの時間、精神的余裕など生まれない。 その視点がすっぽり抜けていて、親子関係を維持すれば子供は幸せになる、という脳天気な法律を作ろうとしていることに心底、驚いてしまったのだった。脳天気というより、子供の事を考えている、考えている、と言いながら、本当は子供達の状況を見ていない法律なのではないかという疑念がわいてくる。 もしも離婚後(この点も不十分なのであとで触れるが)の子供の最善の利益を追求するのであれば、先ずは、そうした子供達の苦境も含めた、総合的な法律、総合的な生活支援、面会交流も含めた養育支援(という言葉が適切かなあとも思うが)を内容として、最善の利益を追求しなければならないのではないだろうか。
そうすれば、子供の貧困対策ともしっかりリンクしていくのである。
◎なぜ離婚後等の子供だけなのか。婚外子は排除するのか
法律の対象についても議論があるだろう。ここには、親と離れて暮らす子供達と父母全てではなく、離婚後親と離れている子供のみを対象としている。しかし婚外で出生する子供もいる。二親とも暮らしていない子供もいる。親がわからない子どももいる。それこそ子供の権利条約を活かして、全ての子供達を包括的に対象とすべきではないか。ここでも婚外子を排除してしまう事で、法律が脆弱となってしまう。 平成23年の全国母子世帯等調査によると、母子世帯の内、離婚が80%、未婚の出産による母子が7.8%、死別が7.5%と婚外の出産による子供は増えている。
この7.8%は、この法律の埒外でよいのだろうか。婚外子は父親が認知をすれば父子関係は成立する。養育の義務もある。この子供達の中にも、お父さんと会いたいという子供と母親もいるが実現できていない子もいるし、個々の様々な事情がある。また婚外で生まれた子供のいる母子家庭は、平均年収が格段に低く160万円である。 また厳しい状況ではあるが、その他の事情で親と暮らしていない子供達も、例えば社会的養護の子供達の事は、この法律では考えなくてよいのだろうか。離婚だけを(別居中は含めたい意向で「等」が入っているようだが)対象としている同法案の大きな欠陥と思える。
〔養育費についての取り立て確保が条文にない欠陥〕
また、せっかく子供の貧困議員連盟でも目標と掲げている、養育費確保については「書面による取り決めを行うよう努めなければならない」(6条)とだけ触れられており、確保の方策については全く言及していないということも驚いた。全国母子世帯等調査によると、養育費の取得率は2割以下である。養育費は4割が取り決めているが、子供を離したくないため、多くの一人親家庭は泣き寝入りしているのだ。残念ながら、しんぐるまざあず・ふぉーらむの調査でも、5年後には、取り決めしても半数は払われないようになってしまっている。
元夫が職場を変えてしまえば、どこの会社の給料を差し押さえていいかわからない。元夫の銀行口座がわからないので、何もできない、など訴えをよく聞く。泣き寝入りしている母子は多い。この状況をどう打開するかは、子供の貧困問題解決のためには、一つの大きな柱であるはずである。 実際のところ、養育費の取り立て確保をしてくのには沢山の課題を解決していく事が必要だ。 11月から法制審議会が、養育費の不払いの場合の、義務者の銀行口座の情報を金融機関に開示させるような制度の検討に入るという。 金田勝年法相は12日、法務省で開かれた法制審議会(法相の諮問機関)総会で、裁判で確定した養育費や損害賠償金の未払いを防ぐため、金融機関に口座照会への回答を義務付ける民事執行法の改正を諮問した。 来年にも答申を得た上で、2018年の通常国会への改正案提出を目指す。 しかし、そもそも養育費の額が低額である問題、取り決め率が低い問題、罰則規定の問題等、制度を創っていくには、それなりの手間と時間がかかる。その事にも全く触れないのは拙速すぎるといえないか。
いや、もっと大きな欠陥がある。
〔誰に義務を負わせるのか。国ではなく同居親の義務を強調している法案〕
いわゆる「親子断絶防止法案の案」は、子供の権利条約(児童の権利条約)の理念を援用しているように見える。しかし実は見えるだけなのである。子供の権利条約は、子供を権利主体と考え、大人とは別の人格としての権利主体と考え、権利保障していこうという条約である。
日本も1994年に批准した。条約を読んで頂ければ解るが、子供の権利条約は、締約国に子供の権利を守らせるための方策をするよう求めている条約である。
第2条
1. 締約国は、その管轄の下にある児童に対し、児童又はその父母若しくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、種族的若しくは社会的出身、財産、心身障害、出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し、及び確保する。
2. 締約国は、児童がその父母、法定保護者又は家族の構成員の地位、活動、表明した意見又は信念によるあらゆる形態の差別又は処罰から保護されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。
ところが、このいわゆる「親子断絶防止法案の案」は、子どもの権利条約の親子関係の維持についての部分(留保事項は無視)のみ引用し、条約の精神、国の義務をであるところをも知らないふりをし、子どもと同居している親だけに、面会交流義務を負わせている。
第9条
1. 締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従い、その分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。
*******
このような決定は、父母が児童を虐待し若しくは放置する場合又は父母が別居しており児童の居住地を決定しなければならない場合のような特定の場合において必要となることがある。これでは非同居親が同居親に面会の義務を負わせたいがために、子供の権利条約の都合のよいところだけひっぱってきて、子供の権利条約の精神については無視しているということになる。子供の権利条約を援用するのであれば、親と離れて暮らしている子供達の生活、権利、親との面会その他、総合的な支援について、国が義務を負う、そういう法律をつくるべきではないのだろうか。
〔子供の意見表明権も無視のご都合主義〕
更に子供の意見表明権は、子供の権利条約の中心的な概念であるが、このいわゆる親子断絶防止法ではそれも、意図的に無視し法案の案には盛り込まれていない。 子供の意見表明権を入れなかったのは、何故なのだろう。結局、子供の意見表明をさせることを恐れているのではないか、と思えてくるのである。以上のように一見、離婚後の親子関係を維持するという、良い法律の案に見えるが、法律の目的、理念だけ見ても致命的な欠陥があり過ぎる。このままこの法律を通して、その他の条約や法律との整合性をどう担保するのだろうか。
〔法案の建付けからみて、モラハラ法案〕
これでは離婚後、子供と暮らせない親が、子供の権利条約の一部を強引に引用して、子供と暮らす親と、子供に法律という強制力を使って、無理やり離婚後の関係の維持を迫る、いわば法律によるモラハラのように見えてくるのである。
〔親子断絶防止法案/まずは支援体制の拡充から:河北新報社説(要約)〕
両親の離婚や別居の後も、子どもが最善の利益を保障されなければならないのは当然のことだ。しかし一概に「父母と継続的な関係を維持することが、子の最善の利益に資する」とする法案の前提には、議論が必要だろう。離婚理由や夫婦・家族の在りよう、子供の意向など、離別家庭の事情は個々に異なる。継続的な親子関係が必ずしも子の利益に繋がるとは限らないのではないか。配偶者へのドメスティックバイオレンス(DV)や子供への虐待が離婚原因となるケースが少なくない。暴力から逃れ、身の安全を求める親子にとって、面会交流について話し合い、意思表示することは困難だ。警察庁のまとめでは今年上半期、警察が虐待の疑いで児童相談所に通告した子供の数は前年同期より4割以上増加。子供の面前で配偶者に暴力を振るう「面前DV」が全体の半数近くを占めるという現実もある。同法案は「児童虐待、DV等の事情がある場合には、特別の配慮がなされなければならない」としている。けれども具体的にどのような配慮が、どのように保障されるのかは不明だ。
虐待被害児童支援、DV被害者支援、一人親家庭支援の現場や専門家からの意見も交え、多角的な視点を踏まえた慎重な議論が求められる。
一人親家庭の貧困が深刻化している今、子供が安心して健やかに育つために養育費の分担を取り決める仕組みは確かに必要だ。
不払いの場合の対応についても検討し、盛り込まなければなるまい。
◎取り決めを進めるには、当事者同士が安全な場で
話し合い、意見を調整するための支援が不可欠だ。面会交流については、子供の意思が何よりも尊重されなければならない。
そのためにも子供に寄り添える知見を備えた第三者のサポートが要る。
現在はこうした態勢が不十分だ。面会交流の相談や面会時の付き添い等をする民間の支援組織はあるが数は少ない。法律で当事者に努力義務を課す前に、国や地方自治体はもちろん民間団体も含めて、先ずは支援体制を拡充整備することが先決ではないか。多様な家族に対応できる支援体制の在り方を、十分に吟味することも重要だろう。
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《読者:佐藤眞一さんがライブ更新!東海第二原発再稼動反対》
〔取手駅前金曜行動〕ぜひ、ご覧ください。
*下記アドレスをコピーして、通常検索エンジンに貼り付けて検索ください。システム上、クリック呼び出しができません。ごめんなさい。
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《「戦争法」違憲訴訟の会から「訴訟原告」のお願い!》
6月8日に第一次違憲訴訟を713人で提訴しましたが、その後10月28日には自衛隊の南スーダン派遣について「駆けつけ警護」派遣差し止め請求訴訟を34名で行いました。しかし安倍政権は15日に閣議決定して自衛隊第一陣を20日に派遣するとしています。私達は、この事に抗議も含めて第二次訴訟を21日に提訴する予定で準備しています。
第二次原告の委任状が現在で200名届いています。
第一次原告と合わせますと913名。今必死で委任状提出をお願いしていますが、私達だけでは限界に近いです。
皆さんお願い致します。周りの人に働きかけてください。
一人でも二人でも原告を増やしていただきたく存じます。
ぎりぎり19日までは間に合います。
思いを結集して裁判所へ届けたいのです。よろしくお願い致します。
提訴時間など決まり次第、後日お知らせいたします。
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事務局
おかもと りゅうきち: 岡本 隆吉
大阪市淀川区東三国1-12-6
06-6392-4441/090-4546-4377
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《ブログ「リベラル広場」では次の事業も行っています。》
①職場(仕事)における労働・人権相談
(ハラスメント・メンタルヘルス等、含む)
*大阪府労働相談経験10年以上。*産業カウンセラー資格、有り。
*但しメンタルヘルスの場合、もし心療内科等に受診されている場合、または、その受診の方が望ましい場合は、当該医師の指導を優先し、カウンセリングを断る事もありますので予めご了承ください。
②採用コンサルタント。
*著作[「公正採用」と「能力発見!」採用選考のコツ]
【本ブログ:http://blog.zaq.ne.jp/yutan0619/article/27/】
*著作「採用面接」労働条件確認
【本ブログ: http://blog.zaq.ne.jp/sp/yutan0619/article/29/】
◎なお寄せていただく相談等は、とりあえず全てEメールで送信してください。
<送信先Eメールアドレス>yutan0571@yahoo.co.jp
●費用:交通費等、実費+α(若干-協議)
《とめよう改憲!おおさかネットワーク」主催「秋の憲法集会」開催》
「武力で平和はつくれない!憲法改悪をとめよう!」
■11月26日(土)午後1時半開場―2時開始
■場所:国労大阪会館(JR環状線・天満/地下鉄・扇町下車すぐ)
■資料代:1000円(学生以下半額・介護者無料)
※同額チケットも用意しています。
■主催:とめよう改憲!大阪ネットワーク
■内容①講演「安倍改憲と日本会議の正体」
講師:青木理(あおき・おさむ)
②[闘い報告]
◆【道徳の教科化が意味するもの
-戦争をする国の愛国兵士の育成を許すな!】
子どもたちに渡すな!あぶない教科書大阪の会
◆【安倍政権の『壊憲暴走』を支えるメディア】
新聞うずみ火 矢野宏さん
◆【「ピースおおさか」リニューアル裁判について】
「ピーおおさか」の危機を考える連絡会 井上淳さん、他3名
ぜひ多くの皆さんのご参加をお願いいたします。
《11・27(日)川内原発は2度と動かさない:御堂筋デモ》
◆名 称:11・27(日)川内原発は2度と動かさない 御堂筋デモ
◆と き:14:00※デモ出発14:45
◆ところ:新阿波座公園(地下鉄本町駅23番出口 西南へ徒歩2分)
(民守 正義)
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