コラムーひとりごと66 『戦争関連法案』の世論動向と雑感(2)
コラムーひとりごと66
『戦争関連法案』の世論動向と雑感(2)
実は本年5月8日にも〔コラムーひとりごと55「安保法制『戦争法案』の世論動向」にも類似の記事掲載したが、今回は「毎日」が先月23・24日に「戦争関連法案」の世論調査を行ったこと、「朝日」も再び先月16・17日に同様の世論調査を行ったこと、合わせて「戦争関連法案」国会審議が本格化して一層、現実味を帯びてきた事等を踏まえ、第二弾シリーズとして提供したい。
*但し本原稿は6月6日「憲法審査会」以前の原稿であることをお許し願いたい。
{「『毎日』世論調査結果の概要」}
<「戦争関連法案-反対」53%「同-34%」>
標記のとおり「戦争関連法案」について「反対」が「賛成」を明らかに上回った。更に安倍政権・与党の「戦争関連法案を今国会で成立させる方針」についても「反対」が54%を占め、「賛成」は32%。与党協議を行ってきた公明党支持層でも、いずれも「反対」が「賛成」を上回った。
なお安倍内閣の支持率は「高水準」と言われながらも45%で4月の前回調査から2ポイント減。不支持率は36%で同3ポイント増と、アベノミックスの失敗が社会的に明らかになってきて下落傾向が明らかになってきた。
これを政党支持別に見ると、自民支持層では6割が「戦争関連法案」に「賛成」と答え、「反対」は3割だった。これに対し同じ与党でも公明党支持層では「反対」が4割強、「賛成」が4割弱。民主支持層は「反対」が7割に達した。「維新」支持層は「賛成」「反対」がともに4割台で拮抗している。
これは「維新」が「橋下」「江田」の引退、「松野」の代表登場で、まだ「親自民」なのか「非自民」なのか、政治的スタンダードが明らかになっていないことと関係していると思う。ただ「松野」が党首討論で「我が党は何でも反対の立場でない」と売りにしていたが(「次世代の党-平沼」も同様な事を言っていた)、申し訳ないが「何でも反対」の党などなく、そんなこと「売り」にならない。おそらく共産党の事を想定して言いたかったのかも知れないが、最近の共産党が「反―大阪都構想」で共同の輪を広げるために積極的役割を果たしたこと、「全会一致」の国会決議はいくらでもあること、各地方首長選挙では共産党も推薦・支持しているケースもあること等々、国民の方が「共産党は広範かつ柔軟になった」と評価し始め、だから先の総選挙で共産党は議席数を伸ばしたのだ。いつまでも「古典的共産党誹謗」は止めた方がよい。ただ私自身は、「維新」は「新保守―新右翼」だと評価しており、あまり民主党との連携関係は深追いすべきでないと思っている。
加えて「支持政党はない」と答えた無党派層では「反対」が7割近くあった。
「『戦争関連法案』今国会成立方針」についても、自民党支持層では「賛成」が6割で「反対」は3割だったが、同じ与党-公明党支持層は5割近くが「反対」で、「賛成」は4割弱だった。民主党支持層は7割が反対。同法案への賛否が分かれた「維新」支持層は6割が反対した。
なお3月と4月の調査でも「戦争関連法案」の今国会成立には過半数が反対している。
政府・与党は26日から「猛スピード高校審議・決定」を目論んでいるが、国民の意向と逆行した審議対応は、国民の反発・批判が高まるのは必至だ。
<「安倍演説」と「改憲」論議>
安倍総理が、米議会上下両院合同会議の演説で「先の侵略戦争への『痛切な反省』を表明」したことに関して「評価する」が58%に上り「評価しない」は27%だった。これを内閣支持層別に見ると、内閣支持層では「評価する」が80%に達したが、内閣不支持層では「評価しない」(46%)が「評価する」(38%)を上回った。
来年夏の参院選後に憲法改悪を目指す自民党方針を「評価しない」は44%で、「評価する」の41%よりやや多かったものの拮抗している。これを与党間で見ると、自民党支持層では「評価する」が7割だったのに対し、公明党支持層では「評価しない」が5割を超えた。改憲を巡っても両党支持層に温度差がうかがえる。
なお無党派層は「評価しない」が6割だった。
{「『朝日』世論調査結果の概要」}
<「戦争関連法案-今国会成立」-「必要ない」60%>
「戦争関連法案」で自民党の「今国会成立方針」について「必要ない」が60%、「必要ある」23%を大きく引き離した。また「いつでも『我が軍』派遣恒久法案」=「自衛隊海外派遣恒久法」について「反対」が54%で「賛成」30%を上回り、この上記二質問は「朝日」の方が「毎日」より特に強い傾向にある。更に「どこでも『我が軍』派遣法案」=「重要影響事態法」についても「反対」が53%で「賛成」29%を大きく上回った。
更に「米国一番弟子戦争追随権」=「集団自衛権行使」法案には「反対」が43%で「賛成」33%を上回った。
また安倍総理の信頼度とも言える「戦争関連法案に絡んで、日本が米国の戦争に巻き込まれることは『絶対に有り得ない』」との説明について「納得できない」が68%で「納得できる」19%と殆ど信頼されていないことが解る。ただ、それでも私には「信頼できる」が19%でも多くて、そもそも①「集団的自衛権」は米国の「総体的力の低下」を補う意味で後方支援等を行うもので、ある程度の戦闘参加が前提だ。そして②「報道ステーション;元コメンテーター」古賀さんが言っていたとおり安倍総理にしてみれば「米国の正義は日本の正義」で米国が行う戦争には一定、「米国一辺倒」で付き合わざるを得ない。しかし過去の歴史を見ても米国は「有りもしない大量破壊兵器保有冤罪」で「イラク侵略」を行ったり、今でも「民間人虐殺・武力拡大」を堂々としているイスラエルの武力中東外交に「国連」の場でも擁護的であったりと米国に追随する事は危険極まりなく「日本が米国の戦争に巻き込まれることは『絶対に有り得ない』」は何の確証もない空手形もいいところだ。
<平和ボケで「緊急事態」も、見極められず>
「『戦争関連法案‐国会承認』が自衛隊海外派遣等への歯止めになるか」について「歯止めになる」が48%で「歯止めにならない」32%を上回った。
しかし実際のところ、どうなんだろう。事は「自衛隊を海外に派遣するかどうか」の少なくとも「準緊急事態」だ。全く歯止めにならないとまでは言わないが、そんなに、ゆっくりと国会審議している暇もない。せいぜい最初は「事後承認」で形式は整っていても、その内「形骸化⇒省略化」する可能性は十分ある。母や叔母(80歳以上)に聞いたが「戦前にあった民主的な諸制度・言論等が戦争が近づくに従って、だんだん窮屈になってきた」と言っていた。要は今の一応、平和で民主主義が曲りながらも機能している現状で、頭の中だけで「歯止め」を考えても、あまり実際的でなく、いわゆる「緊急事態」の状況下では「国会承認」といった「民主的機能」自体が健全に働くのかどうかを真剣に考えるべきではないかと思う。
また「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」改定で「日米軍事同盟が強化されたことを評価するか」について「評価する」が45%で「評価しない」32%を上回った。この事については既に一定、記述しているので多くは述べないが。ただ①「日米軍事同盟が強化されたこと」とは米国の「総体的力の低下」で、より一層、米国軍の二軍としての軍事的役割(後方支援等)が増大し、米国の戦争に付き合わされる可能性が増したこと②日・米両国以外の他国から日本を見れば、日本は「米国一番弟子で~す」と名乗り上げているようなもので、もはや日本独自の「平和外交戦略」は「放棄した」ようなもので日本独自の平和外交チャンネルは喪失したと言っても過言ではない。現に安倍総理は中東歴訪で米国を中心とした有志連合との連携・強化をアピールするあまり、中東各国から落胆と反発の声が多く上がった事はマスコミ等でも大きく報じられたところである。
更に尖閣諸島を含む「離島防衛」で、米軍が自衛隊協力することを確認したことについて「評価する」が61%で「評価しない」20%を大きく引き離した。しかし、これには設問の悪さもあるが「米国の本音」は「強固な日米軍事同盟」を示すことで「南沙諸島まで海洋進出する中国への牽制」もあるが、その一方、米国は中国を最も重要な「21世紀における国際社会の機軸」とも見ており、この間の米中関係を見ても解るように「つかず放れず」程度の友好関係を保っている。もう少し、具体的にハッキリ言おう。今、米国債を最も多く保有しているのは中国である。その中国が「米国経済を混乱させよう」と米国債を一斉に売り払おうとすると、米国債は下落し中国は大損をする。これは典型例だが、米国と中国は互いに利害と損得を共存する「二大経済大国同士」にある。そこの認識を、しっかり持たないと全ての国際政治・経済政策は間違える。
だから安倍総理が「日米同盟機軸」を世界の基本としていることが「危うい」と言われる所以なのだ。
〔浜 矩子;同志社大学大学院教授/寺島 実郎;評論家〕
その意味では米国は「離島防衛」で牽制しながらも、中国と交戦すること自体は避けたいと思っているし、ケリー国務長官は「基本的には日中間で話合いで解決すべき問題」とも言っている。要は「米国の離島防衛協力を評価するかしないか」の単純な国際社会ではないことだけは確かだ。
なお「安倍内閣支持率」45%「不支持率」32%で、「高水準」とはいえ「同支持率」50%を割り出した。
総じて「下落傾向にある安倍内閣支持率」とは別にしても「戦争関連法案」は国民には不評で、国民にしてみれば、安倍政権に「押し付けられた『戦争関連法案』」の感が強い。
(民守 正義)
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