「連合統一は、期待に応えたか」
「連合統一は、期待に応えたか」
《はじめに》
《連合統一の頃の議論》
連合統一前の職場の労働組合等では、組合役員同士で「連合統一は賛成か否か」で、よく議論が交わされた。当時の私の見解は、確たるものではなかったが、連合統一には否定的だった。
その理由は、①民間連合を先行させながら、官公労や旧総評左派系労組の加入のハードルが高く、確かに労使協調・右翼的再編の意図が感じられたこと、②当時の共産党系労組は、自分は決して賛成ではなかったが、「連合統一反対!統一労組懇から全労連結成へ」が方針化されており、このままでは産別自治労及び自分の所属する単組が分裂するだろうことが、十分に予想されたことがある。別に組織分裂自体の是非はともかくとしても、そのことによる単組全体の力量低下、更には「労働戦線統一問題」は職場討議には馴染みにくく、結果的に多くの組合員が組合離れを引き起こすのではないかと危惧したからである。
しかし、その一方「全的連合統一」のメリットも感じ取られ、①「全的連合統一」が果たされることで、対経営側との対立軸が明確になること、②連合結成時に連合が標榜していた「力と政策」により、政治的・社会的インパクトが発揮されるのではないかとの期待があったこと、③そして何よりも一般論として、いつまでも労働四団体として固定化しているよりも、労働戦線は幅広統一が望ましいのではないかと思ったからである。
結局のところ、「労働四団体の枠を超えて産別共闘・統一を積み重ねながら、全的連合統一を模索すべき」という漠然とした見解に辿ったことを覚えている。
《「全的連合統一」の頃の実際の動き》
しかし実際の事態の推移は早く「全的連合統一」の頃には、自治労運動推進派と共産党系役員との抗争から単組分裂。自分も自治労運動推進派として自治労単組本部役員として奔走していた。
それから約12年間、本部・支部役員を歴任し、その間。自治労単組側も共産党系単組側とも善・悪行為とユーモラスなエピソードがあるが、それはまたの機会で紹介するとして、そもそも1999年(平成元年)「全的連合統一」の頃の思い、期待と実際の現状と歴史的比較評価してみたい。
<「全的連合統一」の頃の思いと「現状」との歴史的比較評価>
〔単組では〕
先ず単組の組合員組織率だが、分裂前は組合員約1万人 であったが、現在では人員合理化で組合員対象約8千人の内、今は双方の組合員数を合計しても2~3千人が良いところであろう。つまり本庁を中心に、殆どが非組合員化しているということである。
次に労使関係の実態だが、分裂頃は、良いか悪いかは別として緩やかな時間内組合活動や、いわゆる闇組合専従も一定、認められていたが、今は極めて厳格で実質的に組合活動ができないぐらいである。従って日常の労使の力関係は、当局側の方が強い。
〔連合では〕
では連合は、「全的連合統一」後、どう変わったか。
正直に言って、1951年当時の総評が「鶏からアヒル」に転化したように、全的統一したことを契機に総労働の先進的・中心的役割に発展するのではないかと言う期待もあったが、少なくとも今のところ、その可能性・予兆はない。実際のところは、日本の労働組合組織率(官公労を含めても20%を割っている)の低下とともに連合の政治的・社会的発言力も低下している。
元々、「力と政策」を標榜していた「全的連合統一」結成当時(1999年頃)は、少なくとも政策対置能力はあったように思うのだが、その後、連合の勉強不足か、年々、低下しているように思える。それと同時にナショナルセンターとしての指導力・権威も低下し、別稿「労働者派遣問題」で述べたように連合大阪幹部が、理不尽な主要産別からの抗議に対して謝罪文を出しているようでは話にならない。
《連合の今後の改革ポイント》
このように然様に考えると、何のための「全的連合統一」だったのか、いささか落胆もするが、それでも日本の労働組合の最大組織としての役割を期待せざるを得ない。そこで連合が労働界のみならず、社会的政治的にもインパクトある組織に改革してもらうために、ずけずけと私なりの問題指摘をさせてもらおう。
①先ず、もういい加減、労使癒着(協調)から脱却して労働組合としての自立した要求・チェック機能を果たしていただきたい。
(特に大企業労組。企業の不祥事を見逃した事件は多い。)
②派遣労働者をはじめとした非正規雇用の組織化。
◎連合は、別稿「労働者派遣問題」でも述べたように、「全国ユニオン」として合同労組との連携・協力関係を持っているが、個別産別・単組での非正規雇用労働者の組織化となると、あまり取組まれていない労組が多い。その理由にはユニオンショップ協定の関係や、組合員の中に「正社員だけ守ればいいじゃないか」といった本工意識もあると聞いているが、本当に労組組織を守るためには、非正規雇用も含めた幅広い組織化の方が強い。本工労働組合中心型だった郵政が、最後は本体ごと分割民営化されたことも教訓とすべき。加えて多様な雇用形態の労働者が一つの労組に組織されている方が、互いの立場を理解し合い、団結の質向上と人権意識の高まりのためにも、よい効果をもつ。
③経営側に対しては強面、他団体や行政等に対しては水平思考で対応を。
◎行政側で側近にて連合(大阪)を見てきて、今は然程、問題を感じる連合役員・スタッフはいないが、かつては行政側ですこぶる評判の悪いA元幹部役員がいた。いつも上から目線で横柄な口調。私にも「お前は連合大阪事務所から出入り差し止めだ」と言われたことがある。また大阪府が主催する公式会議の委員になっていたB元役員は、会議の日程調整を行うに「先ずは私(連合大阪)の空き日程を聞いて調整すべきだ」と随分、叱られたことがある。しかし実際には、もっと優先して日程調整すべき重要委員は他にもいる。でも仕方がないので、B元役員の希望日程を優先して調整したところ、会議の直前になってドタキャン。
こうした事々は、瑣末なことではあるが、感情的には連合への反発が強まり、結果的に連合への信頼も損なうことを認識しておくべきだろう。
◎また最近での社会的問題には、「反原発」「集団的自衛権」等、多様でかつその闘う運動主体も、かつての総評(特に官公労)の動員中新型から、市民運動団体の横型ネットワークにより自発的な取組みに変化しつつあるように思える。その際の連合の果たす役割も一市民団体に過ぎず、水平的で下働き的な振舞いが大切だと思う。
かつて大阪市職員採用国籍条項撤廃運動で、自治労元幹部が在日運動団体元幹部に対し、「自治労が、どれだけ寄付(何百万円?)していると思っているのか!」と怒鳴って見苦しかっただけに、この忠告を付言せざるを得ない。
④連合と民主党(政治)との関係
現在、連合と民主党とは支持・協力関係にあり、過去の経過を見ても、それなりに蜜月的なときも見直しのときもあったようである。しかし現場感覚で見ていると、「連合は民主党なら支持・応援する」という考えが固定的になっていて、個別の民主党候補者の政策主張が連合の掲げる政策に反するかどうか、あまりチェックしていないように思える。現実、民主党政権時代の民主党閣僚の中にも「連合・労組嫌い」の者はいたし、連合との支持・協力関係を煩わしく思っている民主党政治家(候補者)がいることも知っている。連合も連合で、労働団体としての利益団体なのだから、民主党との支持・協力関係は大枠としてはあるとしても、労働団体(労働者)としての利益に反する意見の候補者は、個別に名を挙げて「不支持」を明らかにすべきではないか。また逆に民主党候補者ではなくても、労働団体(労働者)の利益政策を掲げる政党(例えば社民党・共産党)との支持・協力関係を追求・構築しても良いのではないか。つまり言いたいことは、連合は、もっと労働団体(労働者)としての利益中心型になって、主体的・自立的に政党との関係をドライに対応して良いのではないかと言うことである。その点では経団連は、自民党であれ、民主党であれ柔軟な対応をしていることを見習うべきである。なお連合が支持・協力すべきでない候補者の名を挙げることは控えるが、過去に「西村眞吾」を民主党・連合が支持・協力したことがあったことは、今でも歴史的恥部であることを指摘しておきたい。
《連合と全労連・全労協(民主党と共産党・社民党)との関係》
<連合と全労連・全労協との共闘関係>
詳しい経過は省略するが、全労連は度々、連合・全労協に対して個別課題(雇用等)を通じて共闘の申入れを行っている。これに対して簡単に言うと、連合は「これまでの経過が云々」「時期尚早」とかを理由に事実上、断っている。また全労協は「個別課題ごとに柔軟に対応」と共闘関係があることを言及している。こうした状況を見ると、1970年代前後の学生運動の共産党(民青)の独善・セクト主義とは違って、今は連合の方がセクト主義に見える。連合が全労連等との共闘を断る理由には、連合内部問題として民間主要組合の強い反共主義もあるからだろうが、それを克服してでも、連合・全労連・全労協の共闘・同時多発行動に取組む方が社会的インパクト・影響力が大きいことだけは知っておくべきだろう。
因みに西欧労働界から「ヨーロッパ諸国では、政府や財界の国民に犠牲を強いる政策には幾つもの組織が共同してデモ、ストライキをやっているのに、日本ではほとんどない」「連合は、余りにも企業と親しすぎるのではないか」「あまりにも日本の労働組合の弱さは際立っている。組合幹部が政府や財界に抱き込まれているからではないのか」等々と批判されていることを戒めておくべきである。
<政党間の問題>
また国政レベルの話であるが、国会でも一々「共産党を除く野党が共同してー」というフレーズをよく聞く。55年体制の遺物のような保守⇔革新の対立ベクトルに拘る自分には、本当によく判らないのだが、現状の一強他弱の政党状況を見ると、革新と呼べる政党は、社民党と共産党ぐらい。民主党は個別政策によりけり。他は全て保守で関心もない。今、言いたいのは、もう政党レベルでも、もういい加減、反共主義からの脱却は図って欲しいし、共産党も社民党も院内統一会派ぐらい組めないのかとも思う。これらの意見については、忌憚のない皆様の意見も頂きたい。
<単組レベルの共闘関係>
加えて我が現役時代の組合間でも共産党系組合が自治労系組合に、個別課題で共闘を申し入れているが、自治労系組合は拒否している。しかし一般組合員の目線から見れば、共産党系組合と自治労系組合との共闘の期待は大きいのではないかと思う。
連合統一が果たされて25年。まだまだ道半ばとして、「反共主義からの脱却」「経営側からの独立」「幅広統一」の機会を掴んで日本の労働界のみならず、社会変革の影響力のある団体に成長していて欲しい。(民守 正義)
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